2017年度公務労協情報 24 2017年7月13日
公務公共サービス労働組合協議会
公務員労働組合連絡会

人勧期要求をめぐり連絡会幹事クラスが人事院交渉−7/13
−明確な回答がなく、局長交渉では中身ある回答を強く要請−

 公務員連絡会幹事クラス交渉委員は7月13日13時30分から、2017年人勧期要求に関わり、池本人事院職員団体審議官との交渉を実施した。
 冒頭、大塚副事務局長が「6月20日に提出したわれわれの要求に対する現時点での回答を伺いたい」と求めたのに対し、池本審議官は次のとおり回答した。

1.勧告等について
(1) 勧告作業について
 今年の職種別民間給与実態調査は、5月1日〜6月16日までの期間で実施したところであり、現在集計中である。
 本年も、労働基本権制約の代償機関として、人事院としての責務を着実に果たすよう、国家公務員の給与と民間企業の給与の精緻な調査に基づき、その精確な比較を行い、必要な勧告、報告を行いたいと考えている。
(2) 賃金の改善について
 月例給与・一時金については、現在、民調結果を集計中であり、今の段階では何とも言えない状況である。
 本年においても民調の結果に基づき、適切に対処したいと考えている。
(3) 諸手当について
 諸手当については、民間の状況、公務の実態等を踏まえ、職員団体の皆さんの意見も聴きながら、必要となる検討を行っていくこととしたい。
(4) 再任用職員の給与について
 再任用職員の給与については、これまでも単身赴任手当の支給をはじめ改善を行ってきているが、引き続き、各府省における円滑な人事管理を図る観点から、民間企業の再雇用者の給与の動向等を注視するとともに、各府省における今後の再任用制度の運用状況を踏まえ、職員団体の意見も聴きながら必要な検討を行っていくこととしたいと考えている。

2.労働諸条件の改善について
(1) 労働時間の短縮等について
 長時間労働の是正については、人事院としても、重要な課題であり各府省とともに組織を挙げて取り組む必要があると認識している。
 昨年の勧告時報告で述べたとおり、まず各府省のトップが長時間労働の是正に向けた強い取組姿勢を持ち、組織全体の業務量削減・合理化に取り組むことが重要であり、その上で、現場の管理職員による超過勤務予定の事前確認や具体的指示等の取組を徹底することが有効と考えており、これらの考え方については、昨年11月に開催されたワークライフバランス推進協議会の場でも改めて各府省に示したところである。
 人事院としては、今後国会に提出される民間労働法制の内容や国会における議論も注視しながら、より実効性のある超過勤務の縮減策について検討を進めていきたい。
(2) 45時間超60時間以内の超過勤務の割増率について
 民調による平成28年4月の民間企業の状況をみると、ご指摘の時間に係る割増賃金率を30%以上としている事業所の従業員の割合は、43.6%という状況にあり、今後も民間企業の動向を注視していく必要があると考えている。
(3) 勤務間インターバルについて
 勤務時間の割振りに当たっては、各省各庁の長が公務の円滑な運営に配慮するとともに、職員の健康及び福祉を考慮して職員の適正な勤務条件の確保に努めるべきこととされており、各職場において職場の実態に即した適正な対応に努めることが重要であると考えている。
 なお、人事院においては、職員の疲労蓄積の防止のための早出・遅出勤務について各府省にモデル例を示して活用を依頼する等、各府省における取組を促してきているところである。
(4) 妊娠等に関わる休暇制度について
 職員の休暇については、従来より情勢適応の原則の下、民間における普及状況に合わせることを基本に、適宜見直しを行ってきたところであり、引き続き民間の動向等を注視していきたいと考えている。
(5) 女性国家公務員の採用等の推進について
 女性職員の採用・登用の拡大等については、「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」に基づき、女性職員の職域拡大も含め、政府全体で取組が進められているところである。
 人事院としても、今後とも、女性を対象とした人材確保活動や女性職員の登用に向けた研修、両立支援策等により、各府省の取組を支援していきたいと考えている。
(6) 高齢者雇用施策について
 本年6月9日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2017」いわゆる骨太の方針において「公務員の定年の引上げについて、具体的な検討を進める」とされたことを踏まえ、政府に「公務員の定年の引上げに関する検討会」が設置された。
 人事院としては、定年の引上げについては、平成23年に意見の申出を行うなど積極的に取り組んできたところであり、引き続き適切に対応していきたいと考えている。
 なお、当面、フルタイム中心の再任用勤務を実現することを通じて、各府省において再任用職員の能力及び経験の一層の活用が図られるよう、引き続き必要な取組を行っていくこととしたい。
(7) 福利厚生施策の充実について
 心の健康づくり対策については、これまでも様々な取組を行い対処してきたところであり、引き続きしっかりと取り組んでいきたいと考えている。
 また、ストレスチェック制度については、各府省において適切に実施されるよう、現場の実情や運用上の課題等を丁寧に把握した上で、必要に応じて改善を図るなど適切な措置を講じるとともに、引き続き各府省に対し職場環境改善の積極的な取組を促していくこととしたい。
 いわゆるパワハラ、セクハラについては、これまでもその防止対策に取り組んできている。
 昨年12月には、性的指向や性自認をからかいの対象とする言動等もセクハラに当たることを明確にするため、人事院規則10−10(セクシュアル・ハラスメントの防止等)の運用通知を改正し、本年1月から施行したところである。
 また、本年1月には、人事院規則10−15を施行し、妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメントの防止に取り組んでいるところである。今後、「仕事と育児・介護の両立に関する連絡協議会」などの機会を活用して、各府省に対し所属職員への周知・徹底を求めていきたい。

3.非常勤職員制度等について
 非常勤職員の給与については、平成20年8月に非常勤職員の給与についての指針を発出し、各府省において適正な給与の支給が行われるよう、必要な指導を行ってきている。
 給与指針について、常勤職員の給与との権衡を考慮した給与処遇が図られるよう、勤勉手当に相当する給与の支給について明示する等の改正を行ったところであり、これにより非常勤職員の給与の一層の適正化が進むことを期待しているところである。今後も、適正な給与の支給が行われるよう取り組んでいきたい。
 非常勤職員の休暇については、民間の状況との均衡等を考慮し、必要な措置を行ってきているところであり、同一労働同一賃金の議論や民間の状況等を踏まえて、対応していきたいと考えている。
 育児休業については、既に成立した民間法制の改正法案の附則において、民間法制の改正内容に即した育児休業法の整備が行われており、今後は、本年10月1日の施行日に向けて、厚生労働省令の改正内容も踏まえ、人事院規則等の改正作業を適切に行いたいと考えている。
 期間業務職員制度は、従来の日々雇用の非常勤職員の在り方を見直すため、職員団体を始め各方面の意見等を踏まえ、平成22年10月に導入したものであり、人事院としては、各府省において、本制度を設けた趣旨に則った適正な運用がなされるよう、制度の周知等を行うなど取り組んでおり、今後とも、関係方面と協力しながら、適切に対応していきたい。

 これに対して、大塚副事務局長は次の通り人事院の見解を質した。
1.賃金要求について
(1) 勧告作業及び月例給与について
@ 民調は、どの程度の調査完了率になったのか。国公実態はどんな状況か。平均年齢や給与水準はどうなっているのか。
A 「集計中」とのことだが、官民較差についてはどのような状況か。
B 民間の賃上げは4年連続で、水準もほぼ昨年並で、昨年以上に広く波及している。地域経済への波及、国民生活の安定をあまねく実現するために公務員賃金が果たす役割は大きい。是非とも、引上げを勧告していただきたい。
(2) 一時金について
 民間企業の各種調査結果を見ると、夏の状況は厳しいものがある。一時金は実態として生活費そのものになっており、少なくとも水準の維持を求める。
(3) 諸手当について
 住居手当について、公務員宿舎の廃止による受給者増なども踏まえ、総合的改善を求める。その他、見直すべき手当があれば、十分な議論と合意が不可欠だ。
(4) 再任用職員の給与について
 雇用と年金の接続は、本年の重要課題であり、定年延長につなげるためにも、再任用職員の給与制度の改善が必要だ。単身赴任手当を支給する一方、それに伴う住居の手当を措置しないことは整合性に欠ける。教育費負担の実態も踏まえた改善を求める。加えて、一時金についても引き上げるべきだ。
(5) 給与制度の総合的見直しに関わる今後の対応について
 給与制度の総合的見直し関係では、本府省業務調整手当が残っている。原資にも関わるので、前広に議論させていただきたい。

2.労働諸条件の改善について
(1) 労働時間の短縮及び休業制度等について
@ 働き方改革、すなわち長時間労働の是正が国を挙げた取り組みになっており、「働き方改革実行計画ロードマップ」でも、「より実効性ある対策の検討」が課題とされている。まずは、勤務時間を客観的に把握するため、厚生労働省が民間企業に求めている「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」の同程度のことを公務部内でも実施すべきだ。
  人事院として、この際、具体的な勤務時間管理について踏み込むべきではないか。何か検討するつもりはないのか。
A 超勤を縮減するために、縮減目標を設定すること、少なくとも半減をめざすことや720時間の上限目安時間は禁止的に運用することを繰り返し求めてきたが、超勤実態の改善は進んでいない。この間、われわれが求めてきた事前命令についても、一層の徹底を図っていただきたい。
B 昨年の年次報告では「インターバル規制や、上限規制等について、導入の必要性について研究することも考えられる」としていたところであり、導入を前提とした対応を強く求める。
(2) 高齢者雇用施策について
@ 再任用制度では、高齢者の経験や能力を本格的に活用できていないことについて関係者の認識は一致している。まずは、希望する職員には、フルタイム勤務を保障すべきだ。
A 当面、フルタイムで本格的に活用するためには定員の確保が不可欠だが、様々な指摘にもかかわらず、事態は改善していない。長時間労働対策の観点と合わせて、定員の確保を制度官庁に強く求めるべきだ。
B 公務の再任用には限界がある。骨太の方針に「公務員の定年の引上げについて、具体的な検討を進める」と明記され、人事院の年次報告でも「定年延長に向けて、計画的に取り組む必要がある」旨言及している。定年延長に向けて計画的に取り組むためにも、この機を捉え、政府における具体的な検討を促進し、一刻も早く公務における定年延長を実現するため、改めて人事院の意見の申出に基づく定年延長の実施を政府に申し入れるべきだ。
(3) 福利厚生施策の充実について
 年次報告では、意識調査の職場へのフィードバックに言及しているが、ストレスチェックについても、職場毎の集団分析の活用を図っていただきたい。
 また、6月に苦情相談の状況が公表されたが、とくにパワーハラスメントが問題化している。苦情相談の内容を分析して、ハンドブックの改正や管理職に対する研修の徹底など、対策を一層強化すべきだ。

3.非常勤職員の制度及び処遇改善について
@ 非常勤職員の処遇を改善するため、給与の引き上げを最重要課題として、春闘期から取組みを進めてきた。人事院としても課題の重要性をしっかりと受け止めて、ぜひとも引上げを実現していただきたい。
A 昨日、いわゆる非常勤職員給与決定ガイドラインが改正・施行された。われわれの要求からすれば不十分であるが、予算を確保しつつ、最低基準として順守されるよう各府省に対する働きかけを強めていただきたい。
B 休暇・休業制度について、公務員連絡会の基本的考え方は、常勤職員との均衡であり、まずは休暇権の問題として、無給となっている休暇などについて、順次改善していただきたい。
C 非常勤職員をめぐっては、民間における同一労働同一賃金の議論への具体的な対応を含めて、抜本的な改善に向けた検討を継続することとし、引き続き話し合ってもらいたい。

 これに対し、池本審議官は以下の通り回答した。
(1) 民調の完了率について、今年についてもほぼ例年並みの水準を確保できるよう努めている。国公実態調査については、現在、取りまとめを行っているところ。官民較差については集計中であるため、一時金も含め、現時点で回答できることはない。
(2) 住居手当については、公務員宿舎の縮減、宿舎料の段階的値上げの影響も含め、実態を踏まえ引き続き検討していく必要があると考えている。
(3) 再任用職員の給与については、引き続き民間の状況を注視し、再任用職員の人事管理、任用実態等を踏まえて、今後とも対応してまいりたい。
(4) 給与制度の総合的見直しに関わる今後の対応については、今年の勧告時報告に向けては、職員の在職状況等を踏まえ職員団体等の意見も聴きながら検討していく。
(5) 勤務時間管理について、各府省では、職場の実情に応じて合理的な方法により適切かつ厳正にその把握を行っているところ。人事院としても、厳格な勤務時間管理の重要性は認識しており、この間、超過勤務予定の事前確認の徹底や職場におけるマネジメントについて各府省に呼びかけているところ。引き続き、職員団体の皆さんのご意見も伺いつつ、必要な対応をおこなってまいりたい。
(6) 長時間労働の是正について、人事院としても民間動向等を注視しつつ、超過勤務縮減等に取り組んできているところ。公務においては、公務運営の確保が前提であるが、職員の健康管理の観点からも、各府省における超過勤務縮減の取組みが重要だ。長時間労働の是正は官民問わず重要な課題であり、人事院としても、より実効性のある超過勤務の縮減策について、検討をおこなってまいりたい。
(7) 雇用と年金の接続について、必ずしも希望通りの任用となっていないことは人事院としても認識している。他方、勤務時間数の拡大や上位級への格付けなど、若干の改善が図られてきているところであり、様々な機会を捉え、フルタイム勤務が実現するよう取り組んでまいりたい。
(8) 非常勤職員の休暇等について、これまでも民間との均衡を図りつつ改善してきているところ。今後も政府における同一労働同一賃金の議論等を注視しつつ、必要な検討をおこなってまいりたい。

 また、各交渉委員からは、俸給表における下位級・低位号俸の水準見直し、勤務間インターバル運用の仕組みの検討、長時間労働の是正、希望通りの再任用の実現、などについて強い要望が出された。

 最後に、大塚副事務局長が「本日の回答は、毎年のことでもあるが、集計中、検討しているというような話だけで、何をどうするつもりなのか、まったく明らかにならなかった。月末には各局長との交渉を行うので、その際には、月例給、一時金の改善を中心として公務員連絡会の要求・主張に沿った中身のある回答をお願いしたい」と要望し、本日の交渉を締めくくった。

以上