2017年度公務労協情報 28 2017年8月4日
公務公共サービス労働組合協議会
公務員労働組合連絡会

委員長クラスが人事院総裁と最終交渉し回答引き出す−8/4
−官民較差は0.1%台半ば、一時金は勤勉手当を0.1月増、指針に基づき非常勤職員の処遇を改善−

 公務員連絡会石原議長ほか委員長クラス交渉委員は、8月4日14時30分から一宮人事院総裁と交渉し、6月20日に提出した本年の人勧期要求書に対する最終回答を引き出した。
 公務員連絡会は、この回答を受けて、7日に代表者会議を開催し、公務員連絡会としての態度を確認し、声明などを決定する予定である。

 交渉の冒頭、石原議長が「6月20日に本年人勧期の要求書を提出し、今日まで事務レベル交渉を積み上げてきた。直前でもあるので、本日は総裁から最終的な回答を頂きたい」と求めたのに対し、一宮総裁は次の通り回答を示した。

1 民間給与との較差に基づく給与改定について
 勧告日については、8月8日(火)となる予定である。
(1)民間給与との比較について
 月例給の民間給与との較差は、0.1%台半ばとなる見込みである。
 特別給は、0.10月分の増加となる見込みある。
 増加分は、今年度については、12月期の勤勉手当に充てる。
 来年度以降については、0.05月分ずつ、6月期と12月期の勤勉手当に充てる。
(2)給与改定の内容について
 @ 俸給表の改定
  行政職俸給表(一)について、民間の初任給との間に差があること等を踏まえ、総合職試験、一般職試験(大卒程度)及び一般職試験(高卒者)採用職員の初任給を1,000円引き上げることとし、若年層についても同程度の改定を行う。その他は、それぞれ400円の引上げを基本に改定する。
  その他の俸給表については、行政職俸給表(一)との均衡を基本に改定する。なお、指定職俸給表については改定しない。
 A 本府省業務調整手当
  給与制度の総合的見直しを円滑に進める観点から、本府省業務調整手当の手当額を、係長級は900円、係員級は600円、本年4月に遡及して引き上げる。
 B 初任給調整手当
  医療職俸給表(一)の改定状況を勘案し、医師の処遇を確保する観点から、所要の改定を行う。

2 給与制度の総合的見直し等
(1)給与制度の総合的見直しについて
 @ 平成30年度は、本府省業務調整手当の手当額について、係長級は基準となる俸給月額の6%相当額に、係員級は同4%相当額にそれぞれ引き上げる。
 A 行政職俸給表(一)6級相当以上で55歳を超える職員の俸給等の1.5%減額支給措置及び俸給水準の引下げの際の経過措置については、平成30年3月31日をもって廃止する。
 B 経過措置の廃止等に伴って生ずる原資の残余分を用いて、若年層を中心に、平成27年1月1日に抑制された昇給の回復を行う。具体的には、平成30年4月1日において37歳に満たない職員の号俸を同日に1号俸上位に調整する。
(2)その他
 @ 住居手当
   住居手当については、受給者の増加の動向を注視しつつ、職員の家賃負担の状況、民間における住宅手当の支給状況等を踏まえ、必要な検討を行ってまいりたいと考えている。
 A 再任用職員の給与
   再任用職員の給与の在り方について、各府省における円滑な人事管理を図る観点から、民間企業の再雇用者の給与の動向、各府省における再任用制度の運用状況等を踏まえつつ、定年の引上げに向けた具体的な検討との整合性にも留意しながら、引き続き、必要な検討を行ってまいりたいと考えている。
 B 非常勤職員の給与
   本年7月に、勤勉手当に相当する給与の支給に努めることを追加するなど、非常勤職員の給与に関する指針を改正したところ。早期に改正内容に沿った処遇の改善が行われるよう、各府省を指導してまいりたいと考えている。

3 公務員人事管理に関する報告について
 以上のほか、公務員人事管理に関して報告することとしている。
 報告では、まず、働き方改革などにより、有為の人材を確保し、全ての職員の十全な能力発揮を可能とする魅力ある職場を実現することは、公務が行政ニーズに応えていくための基盤であるとし、
 また、職員意識調査の結果も踏まえ、国民の理解を得つつ、活力ある公務組織を維持できるよう、引き続き、中・長期的視点も踏まえた総合的な取組を進めるとしており、これらを踏まえた個別課題の取組の方向性について次のとおり言及することとしている。
○ 長時間労働の是正の取組については、
 ・ 超過勤務予定の事前確認等の徹底など職場におけるマネジメントの強化、府省のトップが先頭に立って組織全体として業務量の削減及び合理化に取り組むことなどが必要であること
 ・ 人事院としても、官民の参考事例の収集や提供等により、各府省の取組を支援していくこと
 について言及することとしている。
○ 長時間労働の是正のための制度等の検討については、
 ・ 各府省の取組や上限規制に係る民間法制の議論等を踏まえ、各府省や職員団体等の意見を聴きながら実効性ある措置を検討すること
 等について言及することとしている。
○ 高齢層職員の能力及び経験の活用については、
 ・ 質の高い行政サービスを維持するには、高齢層職員を戦力としてその能力及び経験を本格的に活用することが不可欠であること
 ・ このためには採用から退職までの人事管理の一体性及び連続性が確保され、職員の意欲と能力に応じた配置や処遇も可能となることから、定年の引上げが適当であること
 ・ その際、組織活力の維持のための方策について政府全体で検討を進めることが必要であること
 ・ 人事院は、定年の引上げに係る人事管理諸制度の見直しについて、平成23年の意見の申出以降の諸状況の変化も踏まえ、論点整理を行うなど鋭意検討を進めること
 について言及することとしている。
 そのほか、
○ 人材の確保及び育成のため、
 ・ 多様な有為の人材の確保
 ・ 能力・実績に基づく人事管理の推進
 ・ 人材育成
 について、
○  働き方改革と勤務環境の整備のため、
 ・ 仕事と家庭の両立支援の促進
 ・ フレックスタイム制の活用促進
 ・ ハラスメント防止対策
 ・ 心の健康づくりの推進
 ・ 慶弔に係る休暇等の検討など非常勤職員の勤務環境の整備
 について言及することとしている。

以上の回答に対し、石原議長は以下の通り公務員連絡会としての見解を述べ、交渉を締めくくった。
(1) いま、本年の月例給については引き上げ、一時金についても支給月数を引き上げる等の回答があった。月例給・一時金のいずれについても4年連続の引上げとなるが、民間における賃上げ動向を反映し、組合員の期待にも一定程度応えたものと受けとめたい。月例給の配分については、昨年同様、幅広く俸給月額を改定したことは、較差が小さい中ですべての公務員に配慮した措置であると理解する。
  長時間労働を是正することが、極めて重要な課題であることは評価できるが、勤務時間管理や上限規制などを含めた、より実効性のある具体策に踏み込まなかったことは、職員の健康安全や人材の確保の観点などから見て残念なことである。
  雇用と年金の接続に関わって、政府が、骨太方針に「公務における定年延長の具体的検討」を明記し、他方、再任用制度の限界も極まりつつある中で、人事院の改めての主体的な対応が求められたが、積極的提起を見送ったことは機を失するものである。
(2) 今日の回答については、機関に持ち帰って報告し、われわれとしての最終的な態度を決定することとしたい。

以上