2018年度公務労協情報 12 2018年2月20日
公務公共サービス労働組合協議会
公務員労働組合連絡会

政府、人事院に2018春季要求書を提出−2/20

 公務員連絡会は2月20日、委員長クラス交渉委員が梶山国家公務員制度担当大臣、一宮人事院総裁にそれぞれ要求書を提出し、2018春季生活闘争の火蓋を切った。要求書では、非常勤職員を含めた公務員労働者の賃金を引き上げること、厳格な勤務時間管理やより実効性ある超勤縮減策を直ちに実施すること、定年の早期引上げとそれまでの間は職員の希望通りの再任用を実現することなどを強く求めている。今後、幹事クラス交渉、書記長クラス交渉などを節々で配置し、3月23日の回答指定日に向け、政府、人事院を追求することとしている。
 交渉の経過はそれぞれ次の通り。

<人事院総裁交渉の経過>
 一宮総裁との交渉は、13時30分から行われた。
 要求提出に当たって石原議長は次の通り述べ、今後十分交渉・協議を重ね、誠意ある回答を示すよう強く求めた。

(1) 東日本大震災、熊本地震、本年の寒波による豪雪など、自然災害が頻発している。国民の安全、安心の確保や被災者への対応が、最優先課題であることを改めて肝に銘じ、公務部門の労働組合としても、それぞれの職場で全力を尽くしていく。人事院総裁におかれても、組合員が安心して仕事に打ち込めるよう、勤務環境の一層の改善にご努力願いたい。
(2) さて、公務員連絡会は連合に結集し2018春季生活闘争において、「底上げ・底支え」「格差是正」を掲げ、賃金の引上げと「すべての労働者の立場に立った働き方の実現」をめざしている。
  公務員労働者は災害への対応をはじめ、国民の期待に応えるため、それぞれの持ち場で日夜自らの職務に全力を尽くしているが、その勤務環境は要員不足で超過勤務も一向に改善されないなど、厳しいものとなっている。
(3) 良質な公務・公共サービスを確実に実施していくためには、「働き方改革」について、公務部門が率先垂範してすすめていく必要がある。ワーク・ライフ・バランスを確保し、年齢、性別等を問わず誰もが活躍できる職場環境を構築するためには、代償機関としての役割を果たすべく、厳格な勤務時間管理や超過勤務の上限規制を講じることが不可欠だ。
  そして、それぞれの職場における組合員の奮闘に応えるために、賃金の引上げが何よりも重要だ。
  過日、政府が公務員の定年を引き上げるため、人事院に検討要請を行ったが、高齢職員の能力や経験の活用、高齢期における生活不安を解消するためにも不可欠だ。われわれとの十分な交渉・協議と合意のもとに作業を進め、速やかに実現することを強く求めておきたい。
(4) 総裁におかれては、以上申し上げたことも含めて、公務員労働者が国民の期待に応えるために生きがいを持って働くことのできる職場となるよう、要求事項をぜひとも実現して頂きたい。
  これから、交渉を積み重ね、3月23日には、労働基本権制約の代償そして職員の利益保護に責任を持つ総裁から直接春の段階の誠意ある回答を求める。

 続いて、吉澤事務局長が要求項目のポイントを説明し、回答日に向けた公務員連絡会との交渉・協議や要求への積極的な対応を強く要請した。

 これに対して、一宮総裁は「皆さんからの要求は承った。公務を巡る情勢は厳しい状況にある。各要求事項については、今後、誠実に検討し、しかるべき時期に回答する」と応え、今後公務員連絡会と交渉・協議していく姿勢を示した。

<国家公務員制度担当大臣交渉の経過>
 梶山国家公務員制度担当大臣との交渉は、15時30分から行われた。
 要求提出に当たって石原議長は次のように述べ、今後十分交渉・協議を重ね、誠意ある回答を示すよう強く求めた。

(1) 東日本大震災、熊本地震、本年の寒波による豪雪など、自然災害が頻発している。国民の安全、安心の確保や被災者への対応が、最優先課題であることを改めて肝に銘じ、公務部門の労働組合としても、それぞれの職場で全力を尽くしていく。梶山大臣におかれても、組合員が安心して仕事に打ち込めるよう、勤務環境の一層の改善にご努力願いたい。
(2) さて、公務員連絡会は連合に結集し2018春季生活闘争において、「底上げ・底支え」「格差是正」を掲げ、賃金の引上げと「すべての労働者の立場に立った働き方の実現」をめざしている。
  公務員労働者は災害への対応をはじめ、国民の期待に応えるため、それぞれの持ち場で日夜自らの職務に全力を尽くしているが、その勤務環境は要員不足で超過勤務も一向に改善されないなど、厳しいものとなっている。
(3) 良質な公務・公共サービスを確実に実施していくためには、「働き方改革」について、公務部門が率先垂範してすすめていく必要がある。ワーク・ライフ・バランスを確保し、年齢、性別等を問わず誰もが活躍できる職場環境を構築するためには、定員の確保と超過勤務の抜本的な縮減が不可欠だ。
  そして、それぞれの職場における組合員の奮闘に応えるために、賃金の引上げが何よりも重要だ。
  過日、政府が公務員の定年を引き上げるため、人事院に検討要請を行ったが、高齢職員の能力や経験の活用、高齢期の生活不安を解消するためにも定年の引上げが不可欠であり、速やかな実現を求めておきたい。
(4) 梶山大臣におかれては、以上申し上げたことも含めて、公務員労働者が国民の期待に応えるために生きがいを持って働くことのできる職場となるよう、要求事項を実現して頂きたい。
  これから、交渉を積み重ね、3月23日には、国家公務員の人事行政に責任を持つ大臣として直接春の段階の誠意ある回答を求める。

 これに対して梶山大臣は、「公務員の方々が国民全体のために献身的に職務に当たられていることに対し、敬意を表する。ただいま、要求書を受け取り、要旨は承った。各要求事項については、検討の上、しかるべき時期に回答させていただく」と応え、今後公務員連絡会と交渉・協議していく姿勢を示した。

(資料1)

2018年2月20日

人事院総裁
 一 宮 なほみ 様

公務員労働組合連絡会
議 長  石 原 富 雄


要 求 書

 貴職におかれては、日頃の公務員人事行政に対するご尽力に敬意を表します。  さて、公務員労働者は、公務・公共サービスに対する国民の期待に応えるため、それぞれの持ち場で自らの職務に全力を尽くしています。しかし、その勤務環境は、業務の遂行に必要な人員が恒常的に不足し、超過勤務も一向に改善の見通しがないなど厳しいものとなっています。
 良質な公務・公共サービスを確実に提供していくためには 、人材確保の観点も含めて、賃上げによる待遇改善はもとより、「働き方改革」を公務が率先垂範して推進していく必要があります。あわせて、高齢職員の能力や経験を最大限活用していくため定年の引上げが求められます。これらの実現を通じて公務・公共部門に働くものすべての雇用の安定、職務に相応しい賃金・労働条件を確保することが、喫緊かつ重要な課題です。
 公務員連絡会は、連合に結集し、「底上げ・底支え」「格差是正」と「すべての労働者の立場に立った働き方の実現」を通じて、「経済の自律的成長」「包摂的な社会の構築」「ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)」等の実現に向け、下記の通り2018年春季の要求を提出します。貴職におかれては、要求事項の実現に向けて、最大限努力されるよう要求します。


1.賃金要求について
(1) 2018年度賃金の引上げについて
  2018年度の給与改定に当たっては、民間賃金実態を正確に把握し、公務員労働者の賃金を引き上げること。また、水準・配分・体系等について公務員連絡会と十分交渉・協議し、合意すること。
(2) 社会的に公正な官民比較方法の確立について
  官民給与比較方法については、当面、現行の比較企業規模を堅持するとともに、社会的に公正な仕組みとなるよう改善すること。また、一時金についても、月例給と同様に、同種・同等比較を原則とするラスパイレス比較を行うこと。
(3) 諸手当について
 @ 社会経済情勢の変化、職員の職務や生活実態を踏まえて改善することとし、公務員連絡会と十分交渉・協議し、合意に基づいて進めること。
 A 住居手当については、公務員宿舎の削減及び宿舎使用料等の段階的引上げを踏まえ、総合的に改善すること。

2.非常勤職員等の雇用、労働条件の改善について
(1) 非常勤職員制度について、法律上明確に位置づけ、勤務条件等について、同一労働同一賃金及び常勤職員との均等待遇の原則に基づいて、関係法令、規則を適用すること。
(2) 改正後の「非常勤職員給与決定指針」等に基づき、着実な待遇改善に努めること。2018年度については非常勤職員の給与を1時間当たり37円引き上げること。また、国に雇用される労働者の最低賃金(高卒初任給相当)を定める人事院規則を制定すること。
(3) 期間業務職員制度について、当該職員の雇用の安定と待遇の改善となるよう、適切な運用に努め、必要な改善措置を講じること。あわせて、常勤職員と同等の勤務を行っている期間業務職員の給与を「均等待遇の原則」に基づき俸給表に位置づけること。
(4) 非常勤職員の休暇制度の改善について、慶弔に係る休暇を速やかに措置するとともに、他の休暇についても具体化を図ること。

3.労働時間の短縮及び本格的な短時間勤務制度等について
(1) ワーク・ライフ・バランスを確保するため、公務における年間総労働時間1,800時間体制を確立することとし、本年については、次の事項を実現すること。
 @ 使用者がその責務としてICT等を活用した厳格な勤務時間管理を直ちに行うよう措置すること。
 A 新たに超過勤務縮減目標等を設定するとともに、上限規制を講じるなど、より実効性のある超過勤務縮減の具体策を直ちに実施すること。
 B 1か月当たり45時間を超え60時間以内の超過勤務に対する割増率については、民間企業の実態を踏まえた引上げを行うこと。なお、超過勤務手当については全額支給すること。
(2) ライフステージに応じ、社会的要請に応える休暇・休業制度を改善・拡充することとし、休暇・休業制度の利用実態を検証し、制度の改善や環境整備に努めること。とくに、家族介護を理由とした離職を防止するため、介護休業制度を整備すること。
(3) 両立支援制度が円滑に活用できるよう、その周知を図るとともに、育児短時間勤務、育児時間等について、子の年齢要件等取得要件を緩和し、その在り方を改善すること。
(4) 本格的な短時間勤務制度の具体的な検討に着手すること。

4.女性公務員の労働権確立について
(1) 公務における女性の労働権確立を人事行政の重要課題として位置づけ、必要な施策の確立を図ること。
(2) 女性国家公務員の採用・登用・職域拡大の着実な推進に向け、積極的な役割を果たすこと。

5.高齢者雇用施策について
(1) 公務員の定年について、早期引上げを実現するため、その具体化に向けて、2011年の意見の申出を基本として、公務員連絡会と十分な交渉・協議を行い、合意に基づいて対応すること。
(2) 定年引上げまでの間は、2013年の閣議決定に基づき、フルタイムを中心とする職員の希望通りの再任用を実現するとともに生活水準を確保すること。
(3) 再任用職員の給与制度等について、その経済的負担、定年前職員との均衡を考慮して改善することとし、公務員連絡会との十分な交渉・協議、合意に基づいて改善すること。

6.福利厚生施策の充実について
(1) 公務員の福利厚生を勤務条件の重要事項と位置付け、職員のニーズ及び民間の福利厚生の正確な実態把握を行い、その抜本的な改善・充実に向けた提言を行うこと。
(2) 福利厚生の重要施策であるレクリエーションについて、事業が休止されている実態を重く受け止め、その理念の再構築と予算確保や事業の復活に努めること。
(3) 心の健康づくりについては、勤務条件や職場環境の改善など総合的に取り組むこととし、ストレスチェックを確実に実施するとともに、「職員の心の健康づくりのための指針」等に基づいて、カウンセリングや「試し出勤」など復職支援施策の着実な推進を図ること。
(4) ハラスメントについて、必要な対策を着実に実施すること。

7.その他の事項について
 障がい者雇用促進法に基づき、2018年4月からの精神障がい者に対する新たな措置も踏まえ、障がいの別をこえた雇用促進を図ること。

以上


(資料2)

2018年2月20日


内閣総理大臣
 安 倍 晋 三 様

公務員労働組合連絡会
議 長  石 原 富 雄


要 求 書

 貴職におかれては、日頃の公務員人事行政に対するご尽力に敬意を表します。
 さて、公務員労働者は、公務・公共サービスに対する国民の期待に応えるため、それぞれの持ち場で自らの職務に全力を尽くしています。しかし、その勤務環境は、業務の遂行に必要な要員が恒常的に不足し、超過勤務も一向に改善の見通しがないなど厳しいものとなっています。
 良質な公務・公共サービスを確実に提供していくためには 、人材確保の観点も含めて、賃上げによる待遇改善はもとより、「働き方改革」を公務が率先垂範して推進していく必要があります。あわせて、高齢職員の能力や経験を最大限活用していくため定年の引上げが求められます。これらの実現を通じて公務・公共部門に働くものすべての雇用の安定、職務に相応しい賃金・労働条件を確保することが、喫緊かつ重要な課題です。
 公務員連絡会は、連合に結集し、「底上げ・底支え」「格差是正」と「すべての労働者の立場に立った働き方の実現」を通じて、「経済の自律的成長」「包摂的な社会の構築」「ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)」等の実現に向け、下記の通り2018年春季の要求を提出します。貴職におかれては、要求事項の実現に向けて、最大限努力されるよう要求します。


1.働き方改革の推進及び賃金・労働条件の確保等について
(1) 働き方改革について、同一労働同一賃金原則に基づく非常勤職員等の待遇改善、長時間労働の是正、定年延長の実現による高齢職員の一層の活用等を進めること。
(2) 公共サービス基本法に基づいて良質な公共サービスが適正かつ確実に実施されるよう、公務員等公共サービス従事者の社会的に公正な賃金・労働条件を確保することとし、環境整備を図ること。
(3) 事務・事業の円滑な遂行とディーセント・ワークを保障するとともに、雇用と年金を確実に接続させるため、必要な定員を確保すること。

2.2018年度賃金について
(1) 公務員労働者の2018年度賃金については、引き上げること。
(2) 超過勤務手当の全額支給の実現、独立行政法人等を含めた公務員給与の支給に必要な財源の確保に努めること。

3.非常勤職員等の雇用、労働条件の改善について
(1) 非常勤職員制度の抜本的改善をめざし、公務員連絡会が参加する検討の場を設置し、政府全体として解決に向けた取組を推進すること。当面、国家公務員の非常勤職員制度について、法律上明確に位置付け、勤務条件等について、同一労働同一賃金及び常勤職員との均等待遇の原則に基づいて、関係法令、規則を適用すること。
(2) 非常勤職員の給与については、改正後の「非常勤職員給与決定指針」等に基づき、着実な待遇改善が行われるよう各府省を指導するとともに、2018年度については1時間当たり37円引き上げること。
(3) 期間業務職員制度について、当該職員の雇用の安定と待遇の改善となるよう、適切な運用に努め、必要な改善措置を講じること。あわせて、常勤職員と同等の勤務を行っている期間業務職員の給与を「均等待遇の原則」に基づき抜本的に改善すること。
(4) 非常勤職員の給与について、政府全体として統一的に対応することとし、常勤職員と同様に改定すること。

4.労働時間、休暇及び休業等について
(1) ワーク・ライフ・バランスを確保するため、公務における年間総労働時間1,800時間体制の確立と、ライフステージに応じ、社会的要請に応える休暇・休業制度の改善・拡充などを実現すること。
(2) 政府全体として超過勤務縮減のための体制を確立し、使用者の責務としてICT等を活用した厳格な勤務時間管理を直ちに実施すること。
(3) 新たに超過勤務縮減目標等を設定し、上限規制を含むより実効性のある超過勤務縮減策を直ちに実施することとし、その具体化に向けて公務員連絡会と協議すること。
(4) 公務における本格的な短時間勤務制度の具体的検討に着手すること。

5.女性公務員の労働権確立について
(1) 公務における女性の労働権確立を人事行政の重要課題として位置付け、政府全体として積極的に取り組むこと。
(2) 「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」(以下「取組指針」という)に基づく各府省の行動計画の着実な実施に向け、積極的な役割を果たすこと。なお、取組指針の見直しを行う場合には、公務員連絡会との十分な交渉・協議、合意に基づいて行うこと。

6.高齢者雇用施策について
(1) 公務員の定年について、公務運営を確保する観点からも早期に引き上げることとし、その具体化に向けて、人事院の意見の申出等を踏まえ、公務員連絡会と十分な交渉・協議を行い、合意に基づいて対応すること。
(2) 定年引上げまでの間は、2013年の閣議決定に基づき、フルタイムを中心とする職員の希望通りの再任用を実現するとともに生活水準を確保すること。
(3) 職員に希望通りの再任用を保障するため、必要な定員の確保に向け、弾力的扱いなどについて公務員連絡会と十分交渉・協議すること。

7.福利厚生施策の充実について
(1) 公務員の福利厚生を勤務条件の重要事項と位置付け、職員のニーズ及び民間の福利厚生の正確な実態把握に基づき、その抜本的な改善・充実を図ること。
(2) 「国家公務員健康増進等基本計画」の着実な実施を図るため、政府全体としての実施体制を確立し、使用者としての責任を明確にして積極的に対応すること。
(3) 心の健康づくりについては、管理職員の意識改革はもとより勤務条件や職場環境の改善など総合的に取り組むこととし、ストレスチェックを確実に実施するとともに、カウンセリングや「試し出勤」など復職支援施策を着実に実施すること。
(4) 福利厚生の重要施策であるレクリエーションについて、事業が休止されている実態を重く受け止め、その理念の再構築と予算確保や事業の復活に努めること。

8.公務員制度改革について
 ILO勧告に則り、国家公務員制度改革基本法に基づく自律的労使関係制度を確立するため、国家公務員制度改革関連四法案(2011年6月3日国会提出)における措置について、国家公務員法等改正法案の附帯決議(2014年3月12日衆議院内閣委員会及び同年4月10日参議院内閣委員会)に基づく、公務員連絡会との合意により実現すること。

9.その他の事項について
(1) 障がい者雇用促進法に基づき、2018年4月からの精神障がい者に対する新たな措置も踏まえ、障がいの別をこえた雇用促進を図ること。
(2) 国が民間事業者等に業務委託や入札等により、事務・事業の実施を委ねる場合においては、公正労働基準の遵守を必要条件とすること。

以上