2018年度公務労協情報 17 2018年3月15日
公務公共サービス労働組合協議会
公務員労働組合連絡会

2018春季生活闘争中央行動を実施−3/15
−最終回答に向け、人事院職員福祉、給与両局長交渉で厳しく追及−

 公務員連絡会は15日、2018春季要求の実現をめざして中央行動を実施した。13時から全電通会館で開かれた中央集会には、全国の仲間約450人が結集した。賃上げの実現に向け連合の取組みに結集するとともに、非常勤職員の待遇改善、超勤縮減施策の具体化、早期の定年引上げなどをめざし、回答指定日に向け闘う決意を固めた。

 中央集会では、冒頭、主催者を代表して石原議長が「集中豪雨や寒波による豪雪など全国各地で自然災害が頻発し、甚大な被害をもたらしている。また、東日本大震災から7年、熊本地震から約2年が経過するが、被災地の復興・再生、被災者支援など、公共サービスの果たす役割はますます重要となっており、公務員労働者はこうした災害や増大する行政需要への対応など、昼夜を問わず職務を遂行している。しかし、業務の見直し、効率化が進まないなか、人員不足による業務過多で慢性的な超過勤務が一向に改善されないなど、厳しい勤務環境となっている。良質な公共サービスを提供するためには、組合員が安心して働くことができる勤務環境の構築や非常勤職員を含めた賃金・労働条件の改善が重要だ。あわせて、十分な交渉・協議、合意に基づく定年引上げの早期実現や、自律的労使関係制度の確立などの重要課題についても取組を強化していかなければならない。私たちの闘いは、春闘期、人勧期、給与決定期と続く。公務員連絡会が一丸となり積極的に取組を進めていこう」と強く訴えた。
 続いて、激励に駆けつけた連合の相原事務局長が「2018春闘のヤマ場となった昨日段階では、5年連続で賃金改善の回答を引き出すことができた。この流れを、中小・地場、非正規、未組織、そして人事院勧告へと波及させ、すべての働く者の待遇改善につなげていくことが重要であり、公務員連絡会のより一層の奮闘をお願いしたい。また、同一労働同一賃金を含む働き方改革が重要課題とされるなか、公務においては臨時・非常勤職員の待遇改善も喫緊の課題だと認識している。とりわけ地方公務員については地方公務員法および地方自治法の改正により、会計年度任用職員制度が整備されることになったが、着実な移行はもとより、雇用形態間における不合理な格差の解消に向けた取組が重要であり、真に待遇改善につなげていくために各職場における交渉が不可欠だ。さらに、長時間労働是正などの働き方改革についても、公務が率先して民間を引っ張るよう取組を推進していただきたい。さらに、頻発する災害への対応も含め、国民の安心・安全な生活のためには、良質な公共サービスを実現することが不可欠であり、労使双方が責任を持ち、働き方や組織のあり方を不断に見直すことが必要だ。しかし、公務員の労働基本権は制約され続け、ILOからは10度にわたり勧告がなされているが、いまだ具体的措置は講じられていない。連合は、本年も公務員制度改革に関するシンポジウムを開催し、社会的アピールを継続するとともに、6月のILO総会において、この課題が個別審査として取り上げられるよう取り組んでいるところ。引き続き、民主的な公務員制度改革の実現に向けて、全力で取組を進めていく」と連帯の挨拶を行った。

 このあと基調提起に立った吉澤事務局長は、「昨日、連合は集中回答日を迎え、民間組合が奮闘した結果、5年連続でベアを獲得することとなった。一方で、マスコミの報道ぶりを見ると、春闘に対し批判的な論調であり違和感を禁じ得ない。春闘はこれからが正念場だが、株価が乱高下するなど、わが国経済の先行きが不透明な状況にあって、賃上げは容易くないのが現状だ。あわせて、公務においては超勤縮減や非常勤職員の待遇改善、働き方改革、定年の引上げなど、重い課題が山積している。本集会を契機に、今春闘に対する構成組織の積極的な対応をお願いしたい」と提起した。
 構成組織決意表明には、錦邉国公連合・国税労組書記次長、栗田日高教栃木高教組執行副委員長、成瀬林野労組中央執行委員が、それぞれの取組課題を報告し、全力で闘い抜く決意を述べた。

 集会後、人事院前交渉支援行動では、「公務員労働者の賃金を上げろ」「非常勤職員の待遇を改善しろ」「長時間労働を是正しろ」などと力強くシュプレヒコールや決意表明を行い、最後に、吉澤事務局長から書記長クラス交渉の報告を受け、団結がんばろうでこの日の行動を締めくくった。

 この日に行われた人事院職員給与局長、職員福祉局長との交渉経過は次の通り。

<職員福祉局長交渉の経過>
 森永職員福祉局長との交渉は、14時15分から行われた。
 吉澤事務局長が、現時点での回答を求めたのに対し、森永局長は以下の通り答えた。

1.労働時間の短縮、休暇等について
〇 公務においても、職員の健康保持や仕事と家庭生活の両立に加え、魅力ある公務職場の実現のため、長時間労働の是正の重要性はかつてなく高まっており、従前の取組にとどまらない、実効的な取組を推進していく必要があると認識している。
  昨年の勧告時報告においては、長時間労働の是正のため、マネジメントの強化を図るとともに、業務の削減・合理化に取り組むことなどが必要であること、また、職員の健康管理の観点からは、超過勤務手当が支給されない管理職員も含めて、適切な方法により職員の勤務実態を把握することが重要である旨を述べたところである。
  さらに、長時間労働の是正のための制度等についても、今後、各府省の取組や、国会における民間労働法制の議論等を踏まえ、各府省や職員団体等の意見を聴きながら、実効性ある措置を検討することとしている。
  人事院としては、引き続き関係機関とも連携しつつ、長時間労働の是正に向けた取組を強力に推進していきたいと考えている。
○ 両立支援制度を含む職員の休暇、休業等については、従来より情勢適応の原則の下、民間における普及状況に合わせることを基本に、適宜見直しを行ってきたところであり、引き続き民間の動向等を注視してまいりたい。
  両立支援制度の活用については、制度の周知を図るとともに、指針の発出などにより各府省の着実な取組を促すなど、その活用がより図られるよう人事院として取り組んできている。また、昨年8月の勧告時報告で言及した「指針の見直し」については、本日、改正指針を各府省に対して説明し、同時に職員団体の皆さんの所にもお知らせしたところである。今後は新たな指針の周知も含めて、引き続き、環境の整備等に取り組んでいきたい。

2.非常勤職員の休暇について
○ 非常勤職員の休暇については、民間の状況との均衡や常勤職員の状況を考慮し、必要な措置を行ってきているところである。平成28年12月に働き方改革実現会議で示された「同一労働同一賃金ガイドライン案」については、国会審議等を経て確定することとなるものと承知しており、人事院としては、そこでの議論等を踏まえて、慶弔に係る休暇等について、必要な検討を進めてまいりたい。

3.健康・安全の確保等について
○ 心の健康づくり対策については、平成16年3月に発出した「職員の心の健康づくりのための指針」を基本として、研修の充実・強化や「心の健康相談室」の運営など様々な取組を通じて対処しているところであり、引き続き適切に対応してまいりたい。
〇 さらに、平成28年度より、職員に医師等によるストレスチェックの受検機会を付与すること及び職員からの申出に応じて面接指導を実施することを義務付けることなどを内容とするストレスチェック制度が実施されているところであり、各府省と連携し、同制度の着実な実施に努めてまいりたい。
〇 ハラスメント防止対策については、昨年1月に、妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメントの防止等に関する新たな人事院規則を施行したほか、シンポジウムや講演会等により意識啓発等を進めてきている。
  また、いわゆる「パワハラ」の防止についても、シンポジウム等のほか、ハンドブックを作成・配布し、その周知を図ってきたところである。引き続き、厚生労働省に設置された「検討会」での議論やパワハラに関する裁判例など社会的な動向等にも留意しつつ、パワハラ防止のための施策等について検討してまいりたい。

回答に対し、吉澤事務局長らは、次の通り森永職員福祉局長の見解を質した。
(1) 働き方改革について、昨年の勧告時報告等で公務においても急務である旨が示されているところ。民間に遅れず推進すべきであると考えるが、人事院の認識如何。
(2) 本年の民間春闘では、働き方改革関連法案に先行して、労使で議論が行われている。例年、秋民調において民間の労働諸条件等を調査しており、その結果を踏まえてということでは遅いのではないか。人事院として民間における状況をどのように把握し、具体的対応を図るのか。
(3) 法案の動向は不透明ではあるが、本年の勧告時報告において具体案が打ち出されるとの認識で良いか。民間は労使交渉で決定できるが、公務員は労働基本権が制約されており、代償機関である人事院がしっかりと具体策を講じるべきだ。
(4) 超勤縮減について、@一昨年の報告で事前確認の徹底、A業務の削減・合理化、B要員確保を打ち出したが、各府省の取組状況如何。改善が図られるよう、人事院として積極的に対応すべきだ。あわせて、現場では人員不足のなか、増大する業務への対応で限界だ。超勤縮減のためには定員の確保が不可欠であり、労働基本権の代償機関として、積極的に働きかけを行うべきだ。
(5) 上限規制について、民間においては罰則付きとなるが、公務においても然るべき措置が必要だと考えるが如何。
(6) 実効性ある超勤縮減策について、具体策如何。民間では労使で知恵を出しながら取組を進めている。公務においても、このタイミングを逃すことなく取組を推進していくべきと考えるがどうか。あわせて、高度プロフェッショナル制度について、公務においては該当するような職種はないとの認識で良いか。

これに対し、森永職員福祉局長は次の通り回答した。
(1) 公務においても働き方改革を推進することは、社会的意義や健康管理の観点からも極めて重要であり、人材確保等のためにも、民間に遅れることなく推進していくことが不可欠であると認識している。他方、超過勤務が常態化しているなか、民間労働法制を踏まえた措置も重要ではあるが、各府省において業務を見直すなどの努力を行っていくことも必要である。人事院としては、法案の動向等を注視しつつ、民間との均衡を考慮し、必要な対応を図ってまいりたい。
(2) 民間春闘において、働き方改革の議論がなされていることは承知をしている。人事院としては、法案の動向等の注視とあわせて、引き続き、各府省における長時間労働の是正に向けた取組を支援してまいりたい。あわせて、民間の状況については遅れることなくしっかりと把握し、然るべき対応を図ってまいりたい。
(3) 現時点では法案の動向が不透明であるため、公務における働き方改革の具体的内容をお示しする状況にはないが、本年の人事院勧告が一つの大きなタイミングであることは認識している。いずれにしても、一定の時期には皆様からのご意見もいただきつつ、検討を進めてまいりたい。
(4) 事前確認の徹底や業務の合理化等については、各府省において概ね取り組まれ、一定の効果があったと聞いているが、一方で取り組まれていない府省もあるところ。要員確保については内閣人事局において一定の配慮がなされたと承知している。引き続き、各府省の取組を把握しつつ、必要な対応を図ってまいりたい。
(5) 上限規制については、公務において如何なる措置が適切か検討しているところであり、皆様からのご意見も踏まえつつ対応してまいりたい。
(6) 実効性ある超勤縮減策については、現在検討中であり、然るべき時期にお示しする。また、高度プロフェッショナル制度については、現時点では直接的に対応する職種はないと認識しており、国会でも同様にご答弁申し上げているところ。

最後に、吉澤事務局長から「本日の議論も含めて、23日には、要求に沿った積極的な回答を求める」と強く要請し、職員福祉局長交渉を締めくくった。

<給与局長交渉の経過>
 千葉給与局長との交渉は、14時45分から行われた。
 吉澤事務局長が、現時点での回答を求めたのに対し、千葉局長は以下の通り答えた。

1.賃金要求について
○ 最近の経済情勢についてみると、2月の月例経済報告は、1月に続き個人消費の持ち直しや雇用情勢の着実な改善等を受けて、基調判断を「景気は、緩やかに回復している」とし、先行きについても、「緩やかな回復が続くことが期待される」としている。
○ 雇用情勢についてみると、有効求人倍率は、平成30年1月は1.59倍であり、昨年同月比で0.16ポイントの改善となっている。また、完全失業率についても、1月は2.4%であり、昨年同月比で0.6ポイントの改善となっている。
○ 今年の春闘については、連合が、月例賃金の要求水準について、「それぞれの産業全体の『底上げ・底支え』『格差是正』に寄与する取組を強化する観点から、2%程度を基準とし、定期昇給相当分を含め4%程度とする」としているものと承知している。
  一方、経団連は、本年1月16日に発表した「経営労働政策特別委員会報告」において、「3%の賃金引上げ」との社会的期待を意識しながら、自社の収益に見合った前向きな検討を行うよう各社に要請し、賃金の引上げに当たっては、基本給の一律的な引上げや、特定層への重点配分、賞与・一時金の増額など、様々な手法の組合わせの中から検討するべきとしているところである。
  こうした状況の中、昨日以降順次、経営側からの回答、妥結が行われるので、その動向を注視してまいりたい。
○ 国家公務員の給与について、人事院としては例年と同様、情勢適応の原則に基づき、国家公務員の給与と民間企業の給与の実態を精緻に調査した上で、その精確な比較を行い、必要な勧告を行うことを基本に臨むこととしている。
○ 諸手当については、民間の状況、公務の実態等を踏まえ、職員団体の意見も聴きながら、必要となる検討を行ってまいりたい。
  住居手当については、公務員宿舎の削減等により受給者の増加が続いており、平均給与額に占める住居手当額も増加している。このような公務の状況や民間の状況等を踏まえ、必要な検討を行ってまいりたい。

2.非常勤職員の給与について
○ 非常勤職員の給与については、平成20年8月に非常勤職員の給与に関する指針を発出し、昨年7月には、常勤職員の給与との権衡をより確保し得るよう、この指針を改正したところであり、改正後の指針の内容に沿った適切な処遇が図られるよう取り組んでまいりたい。

3.高齢期雇用施策について
○ 定年の引上げについて
  人事院としては、質の高い行政サービスを維持していくためには、高齢層職員を戦力として、その能力及び経験を本格的に活用することが不可欠と考えている。そのためには、公務員の高齢期雇用について、65歳までの定年の引上げによって対応することが適当であると考えており、昨年の勧告時報告でもその旨を述べ、論点整理を進めてきたところである。
  政府からの検討要請も踏まえつつ、今後、定年の引上げに係る人事管理諸制度の具体的な設計を行うに当たり、平成23年以降の諸状況の変化に加え、民間の諸情勢を参考とするとともに、各府省や職員団体の皆さんの意見、行政現場の実態も聴きながら、鋭意検討してまいりたい。
○ 再任用職員制度について
  当面の措置としての義務的再任用については、新規採用者を一定数確保しながらフルタイム中心の再任用が実現できるよう、定員上の取扱いについて関係機関に働き掛けを行うなど引き続き必要な取組を行うこととしている。
  人事院としては、各府省における円滑な人事管理を図る観点から、民間企業の再雇用者の給与の動向や各府省における再任用制度の運用状況等を踏まえつつ、定年の引上げに向けた具体的な検討との整合性にも留意し、職員団体の皆さんの意見も聴きながら、引き続き再任用職員の給与の在り方について必要な検討を行ってまいりたい。

 回答に対し、吉澤事務局長は、次の通り千葉給与局長の見解を質した。
(1) 総理は企業への賃上げ要請に際し、あらゆる政策を総動員すると言及している。賃上げが社会的要請であることを踏まえた上で、公務員が除外されるものではないと考えるが認識如何。
(2) 給与制度の総合的見直しが完了する中、財政再建計画が見直されることになり、本年の骨太方針において、政府が一方的に公務員人件費の取扱いを決定し、人事院が引き取るということは断じてないことを確認したい。
(3) 官民給与の比較企業規模については、現行と変更がないことを確認したい。
(4) 扶養手当の見直しに関わって、生活関連手当全般のあり方が検討課題となってきていたが、住居手当を含めて、勧告期に向け前広に議論を行っていくということで良いか。
(5) 昨年、非常勤職員給与決定指針が改正されたが、各府省においてどのように機能しているか。働き方改革において、同一労働同一賃金を実現していこうという時に、予算が確保できないという理由では済まない。早急に各府省の状況を把握し、働きかけを行っていくべきだ。
(6) 定年引上げについて、政府は人事院の検討結果を踏まえて制度設計を行うとのことだが、政府に検討結果を出す前に、われわれと交渉・協議を行い、合意のもとに進めてもらいたい。夏の勧告期に結論を出したいということか。
(7) 定年引上げは雇用と年金を接続するためだととらえているが、「公務員の定年の引上げに関する検討会」の論点整理では年金について何ら触れていない。年金支給開始年齢と定年引上げとの整合性如何。いずれにしても、早期に定年を引き上げるべきだということを強調しておく。
(8) 検討会の論点整理では定員の問題について消極的すぎる。人事院が政府に検討結果を示す際には、定員確保について意見することを強く求める。

 交渉委員からは、住居手当額、住居・通勤手当の支給基準日、再任用職員に係る定員問題について改善すべきとの要望が出された。

 これに対し、千葉給与局長は次の通り回答した。
(1) ご指摘の状況は承知しているが、人事院としては労働基本権制約の代償機関として公務員給与がどうあるべきか、民間給与実態調査の結果に基づき官民比較を行っていくものである。
(2) 財政問題自体は所管外の話であり、人事院としては、公務員賃金のあるべき水準を示していくということに変わりはない。
(3) 本年の民間給与実態調査における比較企業規模については現行通り行う。
(4) 住居手当をはじめとした生活関連手当全般について、引き続き、皆様から現場の実情を聞きつつ議論を行ってまいりたい。
(5) 指針改正を踏まえ、一定程度進んでいるものと理解している。各府省における予算等の状況把握については、関係機関と話をしながら進めてまいりたい。
(6) 定年引上げについては、職員団体のみなさまの意見も踏まえ、対応していく。具体的時期については、申し上げる段階にない。今年の勧告時が注目されるという意識をもって進めてまいりたい。
(7) 既に雇用と年金の接続が崩れており、定年後の職員については、できるだけフルタイムの再任用で対応することとしている。一挙に引上げるというわけにもいかないということも踏まえ、定年引上げの早期実施に向け検討していく。
(8) 定員問題については、強い要望があることを踏まえながら検討を進めてまいりたい。

 最後に、吉澤事務局長から「23日の総裁回答がわれわれの要求内容に則した内容となるよう、積極的な回答を求める」と要請し、給与局長交渉を締めくくった。

以上