2018年度公務労協情報 23 2018年4月17日
公務公共サービス労働組合協議会
公務員労働組合連絡会

人事院と民調作業方針をめぐって交渉

 人事院は、本年の民間給与実態調査に関する方針が固まったとして、賃金・労働条件専門委員会にその骨格を示した。
 冒頭、大場職員団体審議官付参事官は、以下の通り基本的な骨格を明らかにした。

1.調査期間
 5月1日(火)〜6月18日(月)の49日間。
2.調査対象事業所
 昨年と同様に、国・地方の公務、外国政府・国際機関等を除く民間のすべての産業の中で、企業規模50人以上でかつ事業所規模50人以上の母集団事業所約58,400(昨年は約57,700)より約12,500(昨年は約12,400)を抽出して行う。なお、母集団事業所の従業員数(正社員)は平成26年経済センサスにおける従業員数(正社員)の6割を超える。
3.調査の方法
 人事院、47都道府県、20政令指定都市、特別区及び和歌山市の69人事委員会の職員が分担し、実地調査で行う。調査員は約1,100人(昨年と同じ)である。
4.調査の内容
 事業所単位で行う調査事項については、@賞与及び臨時給与の支給総額と毎月決まって支給する給与の支給総額、A本年の給与改定等の状況(ベース改定、定期昇給、賞与の支給状況等)、B諸手当の支給状況(住宅手当・家族手当の支給状況等)、C高齢者雇用施策等の状況(一定年齢到達時に常勤従業員の給与を減額する仕組み等)、について調査する。
昨年からの変更点については、給与改定状況について、ベース改定を行う際、重点配分する年齢階層の設問が追加される。また、住宅手当について、支給要件・手当額の決定要素についての選択肢を細分化することとしたほか、家族手当について、扶養する家族の区分に配偶者と子の組み合わせに加えて、子のみの場合の手当月額を聞くこととしている。さらに、高齢者雇用施策の状況として、定年年齢の引上げ・廃止の有無に関する設問、一定年齢到達時に常勤従業員の給与を減額する仕組み等についての設問が追加される。なお、本年は時間外労働の割増賃金率の状況については調査しない。従業員別に行う調査事項については、昨年と同じである。
 
 これに対し、渡辺賃金・労働条件専門委員長は以下の通り質問、意見を述べた。
(1) 母集団事業所数、調査対象事業所数はほぼ昨年並みと受けとめるが、特段の事情があれば伺いたい。また、企業規模、事業所規模、対象事業所、役職定義は昨年と同じということでよいか。
(2) 事業所単位で行う調査について、本年は時間外労働の割増率の状況について調査しないとのことだが、引上げを排除する趣旨ではないと受けとめる。月45時間を超える場合の割増率の引上げは努力義務であり、人勧期要求では引き続き引上げを求めるので、勧告期に向け検討していただきたい。
(3) 住宅手当について、支給要件・手当額決定に関わって、より一層詳しく調べるということだが、民間と公務の住宅事情は異なる。公務員宿舎の廃止、宿舎料の引上げにより、住居手当改善は組合員の差し迫った要求だ。この際、改善を求めておく。
(4) 高齢者雇用施策に関わって、「一定年齢到達時に給与減額する仕組み」等について調査するとのことだが、調査結果ありきではない対応を求めておく。
(5) 民調の対象ではないが、引き続き「働き方改革」が重要課題だ。民間労使では36協定の見直し、勤務間インターバル制度の導入や非正規職員の待遇改善が進められている。長時間労働の是正、ワーク・ライフ・バランスの確保、非常勤職員の待遇改善は、直ちに取り組むべき課題。勧告期に向けて、そういった観点からの検討作業も、求めておきたい。

 これに対し、大場参事官は、以下の通り答えた。
(1) 母集団事業所数、調査対象事業所数については、経済センサス調査票情報の提供を受け、新たな企業などが確認されたことから微増した。企業規模、事業所規模、役職定義については、昨年と同様である。
(2) 時間外労働の割増賃金率については、定年引上げに関わる高齢者雇用施策の調査等に優先して調査するということには至らなかった。
(3) 住居手当の見直しにあたっては、職員の家賃の負担状況に加え、民間における住宅手当の支給状況を踏まえる必要があり、今回詳細を調査することとした。手当改善の要望についてはその趣旨を踏まえて検討させていただきたい。
(4) 一定年齢到達時に給与を減額する仕組みについて、現在、定年引上げの検討を行っているところであり、みなさんの要求を踏まえながら作業を進める必要があると考えており、調査結果ありきとは考えていない。
(5) 働き方改革については、人事院としても重要な課題であり、公務でも直ちに取り組むべき課題だと認識している。民間労働法制の議論を踏まえ、職員団体の意見も聴きつつ、検討を行ってまいりたい。

 見解を受け、渡辺賃金・労働条件専門委員長は「民間給与実態調査は官民比較の基礎であり、しっかり調査を行って、夏の勧告では納得できる結果を出していただきたい。そうした観点から、配分等についてもしっかりと議論させていただきたい。そのためにも、毎年申し上げてきたが、調査の進展や集計状況について、是非とも途中段階を含めて前広に説明してもらいたい」と求め、この日の交渉を終えた。

以上