2018年度公務労協情報 25 2018年7月12日
公務公共サービス労働組合協議会
公務員労働組合連絡会

人勧期要求をめぐり連絡会幹事クラスが人事院交渉−7/12
−明確な回答がなく、局長交渉では中身ある回答を強く要請−

 公務員連絡会幹事クラス交渉委員は7月12日15時から、2018年人勧期要求に関わり、前薗人事院職員団体審議官との交渉を実施した。
 冒頭、大塚副事務局長が「6月20日に提出したわれわれの要求に対する現時点での回答を伺いたい」と求めたのに対し、前薗審議官は次のとおり回答した。

1.勧告等について
(1) 勧告作業について
 今年の職種別民間給与実態調査は、5月1日〜6月18日までの期間で実施したところであり、現在集計中である。
  本年も、労働基本権制約の代償機関として、人事院としての責務を着実に果たすよう、国家公務員の給与と民間企業の給与の精緻な調査に基づき、その精確な比較を行い、必要な勧告、報告を行いたいと考えている。
(2) 賃金の改善について
  月例給与・一時金については、現在、民調結果を集計中であり、今の段階では何とも言えない状況である。
  本年においても民調の結果に基づき、適切に対処したいと考えている。
(3) 諸手当について
  諸手当については、民間の状況、公務の実態等を踏まえ、職員団体の皆さんの意見も聴きながら、必要となる検討を行っていくこととしたい。
  住居手当については、公務員宿舎の削減等により受給者の増加が続いており、平均給与月額に占める住居手当額も増加している。このような公務の状況や民間の状況等を踏まえ、必要な検討を行いたい。
(4) 再任用職員の給与について
  再任用職員の給与については、引き続き、各府省における円滑な人事管理を図る観点から、民間企業の再雇用者の給与の動向や各府省における再任用制度の運用状況等を踏まえつつ、職員団体の皆さんの意見も聴きながら、必要な検討を行っていくこととしたいと考えている。
2.労働諸条件の改善について
(1) 労働時間の短縮等について
  国家公務員の長時間労働の是正については、従来から重要課題として取り組んできており、長時間労働を行う職員の健康確保等を含めた措置について、民間労働者を対象とした時間外労働の上限規制等を含めた働き方改革関連法が今国会において成立したことも踏まえ、検討を行っているところである。
  引き続き、職員団体の皆さんや各府省の意見をお聴きしながら検討を進めていきたいと考えている。
(2) 勤務間インターバルについて
  勤務時間の割振りに当たっては、職員の健康と福祉への配慮を行いつつ、各職場の実態に即した適正な対応に努めることが重要であると考えており、人事院においては、職員の疲労蓄積の防止のための早出・遅出勤務について各府省にモデル例を示して活用を依頼する等、各職場において連続勤務を避ける取組を促してきている。
  なお、今国会で成立した働き方改革関連法では、勤務間インターバル措置を事業主の努力義務とする内容となっていると承知しており、今後の民間企業における導入状況を注視していきたいと考えている。
(3) 休暇制度等の改善について
  職員の休暇・休業制度については、従来より情勢適応の原則の下、民間における普及状況に合わせることを基本に、適宜見直しを行ってきたところであり、引き続き民間の動向等を注視していきたいと考えている。
(4) 女性国家公務員の採用等の推進について
  女性職員の採用・登用の拡大等については、政府全体で取組が進められており、人事院としても、女性を対象とした人材確保活動や女性職員の登用に向けた研修、両立支援策等により各府省の取組を支援してきている。
  また、本年2月に作成した「メンター制度実施の手引き」においては、女性職員の登用拡大に向けたメンター制度を類型例の一つとして示したところであり、今後とも、各府省の具体的な取組が進むよう支援していきたいと考えている。
(5) 定年の引上げ等について
  本年2月の政府における論点整理及び検討要請も踏まえながら定年引上げに係る人事管理諸制度の見直しについて検討を進めてきたところである。引き続き、職員団体の皆さんや各府省の意見もお聴きしながら、検討を進めていきたいと考えている。
  なお、当面の措置としての義務的再任用については、新規採用者を一定数確保しながらフルタイム中心の再任用が実現できるよう、定員の取扱いについて関係機関に働きかけを行うなど、引き続き必要な取組を行っていくこととしたい。
(6) 福利厚生施策について
  心の健康づくりについては、これまでも研修の充実・強化、心の健康相談室の運営、ストレスチェック制度の実施など、様々な取組を行い対処してきたところである。引き続き心の健康づくり対策にしっかりと取り組んでいきたいと考えている。
  パワー・ハラスメント、セクシュアル・ハラスメント、妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメントなどの各種ハラスメントについては、これまでも様々な施策を講じてその防止に取り組んできている。
  ハラスメントは職員の尊厳や人権を侵害する行為であり、その防止を図るため、引き続き取組を進めていきたいと考えている。
3.非常勤職員制度等について
  非常勤職員の給与については、平成20年8月に非常勤職員の給与についての指針を発出し、各府省において適正な給与の支給が行われるよう、必要な指導を行ってきたが、昨年7月にこの指針を改正し、常勤職員の給与との権衡をより確保できるようにしたところである。今後とも、指針の内容に沿った適切な処遇が図られるよう取り組んでいきたい。
  非常勤職員の休暇については、民間の状況との均衡等を考慮し、必要な措置を行ってきているところである。
  昨年の勧告時報告において、「今後、民間における同一労働同一賃金の実現に向けた議論を踏まえ、慶弔に係る休暇等について検討を進める」と言及しており、引き続き、慶弔に係る休暇等について必要な検討を進めていきたいと考えている。
  期間業務職員制度は、従来の日々雇用の非常勤職員の在り方を見直すため、職員団体を始め各方面の意見等を踏まえ、平成22年10月に導入したものであり、人事院としては、各府省において、本制度を設けた趣旨に則った適正な運用がなされるよう、制度の周知等を行うなど取り組んでおり、今後とも、関係方面と協力しながら、適切に対応していきたい。

 これに対して、大塚副事務局長は次の通り人事院の見解を質した。
1.賃金要求について
(1) 勧告作業及び月例給与について
@ 民調の調査完了率、国公実態はどんな状況か。官民較差はどうか。
A 民間の賃上げは5年連続で、加えて水準は昨年を上回り、かつ昨年以上に賃上げが波及している。地域経済への波及に公務員賃金が果たす役割は大きい。引上げを勧告していただきたい。
(2) 一時金について
  民間企業の一時金は昨年を超える高水準になっている。引上げ勧告を求める。生活費となっていること、6月の最高裁判決を踏まえ、公務においても非常勤職員、再任用職員に配慮した対応を強く求める。
(3) 諸手当について
  住居手当については、とりわけ若年層にとって住居費負担が重くなっており、総合的改善を求めている。その他、見直すべき手当があれば、検討状況を伺いたい。
(4) 再任用職員の給与について
  本年は定年引上げが具体的に検討されているところであり、整合性の確保が課題となるが、6月の最高裁判決では、住宅手当は住居移転の可能性がなければ、契約社員に適用しなくても不合理とは言えない、逆に住居移転の可能性があれば、支給しないのは不合理ということになる。
  公務では、再任用職員に対して、転勤が前提の単身赴任手当を支給しつつ、住居手当を支給しないのは不合理だ。定年後も子どもの教育費負担が相当残っている実態も踏まえた改善も必要ではないか。
2.労働諸条件の改善について
(1) 労働時間の短縮及び休業制度等について
@ 勤務時間の上限規制について、民間では災害等の場合を除いて罰則でその遵守が保証される。公務では、使用者の判断で上限時間を超えて勤務させることができてしまう。使用者の責任追及は当然であり、「特例」扱いについては職員が納得するよう、事前・事後を含めて人事院が関与すべきだ。上限時間の実効性確保に向けて、考えていることがあれば伺いたい。
A 勤務時間管理の「適切な方法」について、客観的勤務時間管理が原則とされていないのは問題だ。
B 長時間労働是正について、問題は実際に超勤が減っていくかどうかだ。その意味で、縮減目標を設定する必要があるのではないか。少なくとも半減をめざすべきだ。
C 「勤務間インターバル」について、現在の早出遅出勤務が、実効性あるものとして活用できるよう、各府省に対する指導等をさらに強めていただきたい。
(2) 高齢者雇用施策について
@ 本年は、定年引上げが課題であり、この間、人事院との間で議論を行い、質問、意見も提出してきたので、それを踏まえた対応を求めておきたい。
A 60歳超の給与水準にかかわって、現行定年までの給与カーブを維持すること、および現行再任用職員の給与水準を実質的に上回ることが前提だ。また、役職定年制について、あくまで過渡的な仕組みであること、新たな定年までは一定の処遇のもと、公務員としての任用を確保する仕組みとすることを、重ねて要望しておく。
 加えて、高齢者の経験と能力の活用、新規採用者の確保が重要であり、そのためには定員の扱いを抜本的に改める必要がある。
B 意見の申出に向け、残された給与等の課題について、引き続きわれわれと十分な議論を行い、合意に基づき進めていただきたい。
(3) 福利厚生施策の充実について
  公務運営のありようが批判されているが、背景には上意下達の業務運営の下、上局、上司の意向に反対しにくい職場環境がある。パワハラは上司と部下の認識が異なるところから起こりうるものであり、まさに風通し、職場内の意思疎通が重要だ。
  民間の対応を待つのではなく、公務が先行して対策を一層強化すべきではないか。
3.非常勤職員の制度及び待遇改善について
@ 非常勤職員の待遇改善に向けては、人事院として、予算の確保と指針の順守状況について点検を行い、一層の改善に向けて努力願いたい。
A 昨年報告した慶弔休暇の改善は速やかに措置すべきだ。現時点の考えを伺いたい。あわせて、年次休暇の夏季特例についても一層の改善が必要だ。
B 同一労働同一賃金ガイドラインへの対応を含めて、引き続き話し合ってもらいたい。

 これに対し、前薗審議官は以下の通り回答した。
(1) 民調の完了率について、今年についてもほぼ例年並みの水準を確保できるよう努めている。国公実態調査については、現在、取りまとめを行っているところ。官民較差については集計中であるため、一時金も含め、現時点で回答できることはない。
(2) 住居手当については、受給者が増え、平均給与月額に占める額が増加している状況も踏まえ、引き続き検討してまいりたい。
(3) 再任用職員の給与について、6月の最高裁判決が国家公務員に直接影響するとは考えていないが、同一労働同一賃金に関する議論を注視し、今後の検討に活かしたい。
(4) 上限時間の実効性確保については、各省各庁に特例業務として超勤を命じる要因を整理・分析し、真にやむを得ない業務であるかの検証を行うことを義務づけており、適切な運営が確保できると考えている。必要に応じて人事院が調査をすることもある。
(5) 60歳超の職員の給与水準については、当面、民間企業における60代前半層の正社員の給与水準を前提に、一定程度引下げた水準に設定することを基本としている。役職定年制については、役職定年官職に就いていない職員との公平性の確保、任用換をする職員が能力・経験を活かせるポストにするなどの一定の基準を検討している。
(6) パワハラ対策については、労政審における議論に留意しつつ検討してまいりたい。
(7) 非常勤職員の休暇制度については、民間の状況との均衡等を考慮し、必要な措置を行ってきているところであり、同一労働同一賃金ガイドライン案が確定していない状況だが、慶弔休暇等について引き続き必要な検討を速やかに進めていきたい。

 また、各交渉委員からは、再任用職員に対する特地勤務手当支給、上限時間の実効性確保について強い要望が出された。

 最後に、大塚副事務局長が「本日の回答は、給与関係では集計中、検討しているというような話だけであるし、働き方改革についても実効性の確保が心配される内容だ。月末には各局長との交渉を行うので、その際には、定年引上げを含め、公務員連絡会の要求・主張に沿った中身のある回答をお願いしたい」と要望し、本日の交渉を締めくくった。

以上