2018年度公務労協情報 27 2018年7月26日
公務公共サービス労働組合協議会
公務員労働組合連絡会

人勧期中央行動で職員福祉局長、給与局長と交渉−7/26
−月例給・一時金等の具体的回答が示されなかったため、給与局長と再交渉へ−

 公務員連絡会は、26日、全国から3千人の仲間を結集し、人勧期中央行動を実施した。13時30分から、日比谷大音楽堂で中央集会を開催したほか、霞ヶ関を一周するデモ行進と人事院前での交渉支援行動を行った上で、音楽堂に再結集し、人事院交渉の報告集会を行い、要求実現を求めて最後までたたかい抜く決意を固めあった。

中央行動に約3000人が集まった  この中央行動を背景として行われた書記長クラス交渉委員との交渉で職員福祉局長は、@長時間労働の是正について、働き方改革関連法の成立を踏まえ、超勤時間の上限を人事院規則で定める、Aパワハラ防止については、検討会を設けるなどして公務における対策を検討していきたい、B非常勤職員の休暇について、結婚休暇を設けるなど、慶弔に係る休暇について所要の措置を講じていきたい、などと回答した。また、給与局長は、@勧告は例年とおおむね同様の日程を念頭に作業中、A官民較差・一時金は現在集計中であるが、民間の状況について各種調査結果を見ると定昇分を含む賃上げ率は昨年を上回る結果となっている。一時金は、各種調査結果では前年より増加しているものと見受けられる、B諸手当については、民間の状況、公務の実態等を踏まえ、必要となる検討を行っていく、などの回答を示すにとどまった。
 加えて、定年引上げ等について@定年を段階的に65歳に引き上げること、A役職定年制を導入すること、B定年前の再任用短時間勤務制を導入すること、C60歳を超える職員の年間の給与水準は、現行定年年齢前の水準から一定程度引き下げた水準に設定すること、等について検討を行っていると表明した。

 中央集会に先立ち、大阪北部地震及び西日本豪雨により亡くなった方々に黙祷を行った。集会議長として篠原副議長を選出した後、主催者代表として石原議長が挨拶を行った。石原議長は、「人事院勧告を目前とし、私たちの賃金闘争は山場を迎えている。大阪北部地震、西日本豪雨をはじめとした大規模災害への対応など、公務労働者は大変厳しい環境の中、全国・各地域で、高い使命感と責任をもって日々の職務に精励している。良質な公共サービスを提供し、国民の安心、安全を確保するためにも、公務員労働者の賃金・労働条件の改善は不可欠だ。一方で、民間においては5年連続で賃上げの流れが継続している。これを止めることなく、給与引上げ勧告を実現し、長時間労働の是正、非常勤職員の待遇改善を含む働き方改革、そして定年引上げなど、労働諸条件の改善に向け、公務員連絡会一丸となって取組みを推進しよう」と訴えた。
 続いて激励挨拶に駆けつけた相原連合事務局長は、「春季生活闘争において粘り強く交渉を進めた結果、5年連続で賃上げの流れが継続しており、特に中小組合が賃上げ率において3年連続で大手を上回る結果となった。公務においても、この流れを継続すべく、しっかりと人事院勧告に向けて取り組んでいただきたい。また、「働き方改革」に関わって、民間においては、野党への働きかけもあり、多くの附帯決議を盛り込むことができた。今後、われわれが求める姿になるよう労政審の場で取り組んでいく。公務においても、多くの職場で長時間労働が常態化するなど、その是正は喫緊の課題であり、労使一体となって取り組むことが重要だ。しかし、国際的に見た時、日本の公務員制度は遅れている。先月のILO総会の個別審査では日本政府に対し、公務員の労働基本権問題解決に向け厳しい勧告が行われた。良質な公共サービスを実現するためには、自律的労使関係制度の構築が必要だ。公務員においても、民間企業においても働き方を底上げしなければならない。それが、若者にとって希望を持てる職場を構築することの最大で唯一の方法だと考える。公務員連絡会の皆さんの奮闘を心より祈念し、連合としても精一杯取り組んでいくことを誓う」と連帯の挨拶を行った。
 基調提起に立った吉澤事務局長は、正念場を迎える本年の人事院勧告について、「最後まで要求の実現にこだわり、賃上げの流れを止めてはいけないという社会的責任のもと、公務の労働組合として全力をあげて取り組む」と決意を表明した。
 構成組織の決意表明には、国公連合・全財務・橋本康広書記次長、全水道・樫本洋全水道九州地方本部執行委員長、林野労組・山田明裕本庁本部執行委員長が登壇し、たたかう決意を力強く表明した。
 集会を終えた参加者は、人事院前交渉支援行動と霞ヶ関一周のデモ行進を行い、「公務員の賃金を上げろ」「定年年齢を引き上げろ」「超過勤務を削減しろ」「非常勤職員の賃金を上げろ」などと力強くシュプレヒコールを繰り返した。
 行動を終えた参加者は日比谷大音楽堂に再結集し、書記長クラス交渉の報告を受けた。吉澤事務局長は交渉の概要を報告した上で「本日の交渉において人事院は具体的な回答を示していないため、給与局長と再度交渉を行うこととした。具体的な内容を引き出すため全力をあげる」とし、今後の交渉に向けた基本姿勢を明らかにした。
 最後に、石原議長の団結がんばろうで集会を締めくくった。

この日に行われた人事院職員福祉局長、給与局長との交渉経過は次の通り。

<人事院職員福祉局長との交渉経過>
合田職員福祉局長との交渉は、14時30分から行われた。
吉澤事務局長が、現時点での検討状況について回答を求めたのに対し、合田局長は、以下の通り答えた。
1 労働諸条件の改善について
(1) 長時間労働の是正について
 国家公務員の超過勤務は、民間労働者の時間外労働と枠組みは異なっているものの、公務においても職員の健康保持や人材確保の観点等から長時間労働を是正することの必要性は異なるものではない。
 先の国会で「働き方改革関連法」が成立し、民間労働者の時間外労働の上限等が定められたことを踏まえ、国家公務員についても超過勤務命令を行うことができる上限の時間を人事院規則で定めることを考えている。
 大規模な災害への対応などやむを得ない場合には、この上限を超えることができることとするが、その場合には、各省各庁の長が、超過勤務を命ずることが公務の運営上真にやむを得なかったのか事後的に検証を行うものとすることを考えている。
 また、1箇月について100時間以上の超過勤務を行った職員等については、職員からの申出がなくとも、医師による面接指導を行うこととするなど、職員の健康確保措置についても強化することとし、 あわせて、面接指導の適切な実施を図るため、超過勤務手当が支給されない管理職員も含めて、適切な方法により職員の超過勤務の状況を把握することとすることを考えている。
 さらに、民間労働法制における年次有給休暇の時季指定に係る措置を踏まえ、年次休暇の使用を促進するため、各省各庁の長が、休暇の計画表を活用するなどして職員が年次休暇を確実に使用できるよう配慮を行うこととすることを考えている。
 長時間労働の是正のためには、引き続き府省のトップが先頭に立って組織全体として業務の削減・合理化に取り組むなどの対策が必要であるが、 国会関係業務など府省単独では業務合理化が困難なものについては、関係各方面の理解と協力を求め、政府全体として取組を進めることも必要であると考えている。 
(2) 仕事と家庭の両立支援、心の健康づくりの推進等について
 仕事と家庭の両立支援については、本年3月に発出した「仕事と育児・介護の両立支援制度の活用に関する指針」の内容が各府省において徹底されるように更なる周知に取り組んでいきたい。また、不妊治療を受けやすい職場環境の醸成等を図ることや、 心の健康づくり等についても、引き続き必要な取組を進めていくこととしたい。
(3) ハラスメント防止対策について
 職場におけるハラスメントは、職員の尊厳を傷つけ、その能力発揮を妨げるとともに、職場の効率的な運営にも支障をもたらすものである。
 セクシュアル・ハラスメントの防止については、平成10年に人事院規則10−10(セクシュアル・ハラスメントの防止)の制定以来、セクハラを公務から排除するよう取組を進めてきたが、人事院規則の内容が十分に理解されていないと判明したことから、本年5月に、各府省に対し、セクハラに関する基本的事項について改めて全職員に周知徹底すること、幹部職員及び管理職員を積極的に研修に参加させることなどを求める通知を発出したところである。
 この問題については、政府においても緊急対策が決定され、人事院に対し、各府省から独立した外部の者からの相談窓口の設置等のセクハラ対策強化に向けた検討要請が行われた ことも踏まえ、外部の者からの相談窓口を人事院に設けることとともに、課長級職員・幹部職員への研修の義務化、新たな研修教材の作成等セクハラ防止に必要な対策について検討し、所要の措置を講じていくことを考えている。
 パワー・ハラスメントの防止については、これまでに、シンポジウム等の開催や、「パワー・ハラスメント防止ハンドブック」の作成などにより周知啓発を図ってきたところであるが、引き続き民間におけるパワハラ対策に関する議論等も注視しつつ、検討会を設けるなどして外部有識者の意見も聴きながら、公務における対策を検討していくこととしたい。
 また、妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメントについても、これを防止するため、引き続き職員に対する意識啓発等を図っていくこととしたい。
(4) 女性公務員の採用等の推進について
 人事院としては、女性の活躍推進を人事行政における重要施策の一つと認識しており、女性の採用・登用の拡大に向けた施策や両立支援施策の拡充など様々な施策を行ってきているところである。
 引き続き、女性を対象とした人材確保活動や女性職員の登用に向けた研修、両立支援施策等により、各府省の取組が進むよう支援していきたいと考えている。
2 非常勤職員制度等について
 非常勤職員の休暇については、民間の状況等を踏まえて、いわゆる結婚休暇を設けるなど慶弔に係る休暇について所要の措置を講じていきたいと考えている。

回答に対し、吉澤事務局長は、次の通り局長の見解を質した。
(1) 非常勤職員の慶弔休暇について、審議官交渉においては検討するという回答にとどまっていたが、本日の回答を踏まえて措置するということでよいか。また、時期、内容については然るべきタイミングで議論させてもらう。
(2) 長時間労働の是正について、これまで人事院が提起した内容について各府省がどう対応してきたかについて、評価も含めどう認識しているか。
(3) 働き方改革関連法を踏まえ、国家公務員においては超過勤務命令を行うことができる上限の時間を人事院規則で定めるとのことだが、今までなぜ定めていなかったのか。
(4) 上限時間の特例について、災害対応は特例だとしても、災害以外の判断が各府省の裁量になるとすれば、府省間の公平性が担保されないことも考えられる。その規制を誰がやるのか。労使関係及び勤務条件に関わる課題であり、人事院としての機能発揮が求められる。
(5) 長時間労働の是正について、組合も取り組んでいくが、人事院としても、超過勤務を減らすという決意を表明すべきではないか。

 これに対し、合田局長は次の通り回答した。
(1) 慶弔休暇については、所要の措置を講じる。
(2) 国家公務員の超過勤務縮減について、各府省のトップが率先して業務改革に取り組む必要があると昨年報告したが、人事院としては、各府省が工夫して取り組んできたと認識しているが、課題として残っていると考えている。
(3) これまでは指針で目安時間を定め、各府省ならびに職員団体の意見も聴きながら縮減に取り組んできたが、民間が法律による規制をかけたことや社会全体の機運が高まる中、今回法令である規則で定めることにした。一段階格上げしたということだ。
(4) 規則で限度を定めるものであり、特例業務の適用については、指導をするなど、各府省任せになることのないよう人事院としても取り組む。
(5) 超過勤務を縮減していくという共通認識のもと、取り組んでいく。減らしていくことが管理職に求められており、職員団体にも削減の取組に参加してもらいたい。
 最後に、吉澤事務局長から「上限時間の特例に対する不満は残るが、事後的な検証あるいは規則を定めるにあたり、誰が見ても例外だと思えるものにしていただきたい。今後、現場で取組を進めることとし、改めて議論させてもらう」と強く要請し、職員福祉局長交渉を締めくくった。

<給与局長交渉の経過>
 森永給与局長との交渉は、15時から行われた。
 吉澤事務局長が、現時点での検討状況について回答を求めたのに対し、森永局長は、以下の通り答えた。
1 勧告について
 人事院としては、公務員の給与等の適正な水準を確保するため国会と内閣に必要な勧告を行うという国家公務員法に定められた責務を着実に果たすこととしている。
 本年の勧告については、例年とおおむね同様の日程を念頭に置いて、鋭意作業を進めているところである。
2 官民較差について
 行(一)職員の平均年齢は、本年の国公実態調査によると昨年と比べほぼ横ばいとなっている。
 官民較差については、現在集計を行っているところである。
 本年の民間企業における春季賃金改定状況について、現時点で発表されている各種調査結果を見ると、定昇分を含む賃上げ率は昨年を上回る結果となっているものも見られるが、最終的に較差がどうなるか注目しているところである。
 一時金については、昨年冬のボーナスは、各種調査の結果を見ると、前年同期比で増加とするものが多くなっている。また、本年夏のボーナスは、現時点で発表されている各種調査を見ると、昨年より増加しているものも見受けられるが、いずれにしろ、一時金についても現在集計を行っているところである。 
3 諸手当について
 諸手当については、民間の状況、公務の実態等を踏まえ、皆さんのご意見もお聴きしながら必要となる検討を行ってまいりたい。
4 再任用職員の給与について
 再任用職員の給与については、引き続き、各府省における円滑な人事管理を図る観点から、民間企業の再雇用者の給与の動向、各府省における再任用制度の運用状況等を踏まえ、皆さんのご意見もお聴きしながら必要な検討を行ってまいりたい。
5 定年引上げ等について
 人事院では、本年2月の政府における論点整理及び検討要請も踏まえながら、定年引き上げに係る人事管理諸制度の具体的な制度設計の検討を進めてきたところである。
 その内容としては
 (1) 定年を段階的に65歳に引き上げることを基本に定年制度の見直しを行うこと
 (2) 組織活力を維持する観点等から、当分の間、役職定年制を導入すること
 (3) 60歳を超える職員の多様な働き方を可能とするため、定年前の再任用短時間勤務制を導入すること
 (4) 民間企業における高齢期雇用の実情を考慮し、60歳を超える職員の年間の給与水準は、現行定年年齢前の水準から一定程度引き下げた水準に設定すること
 (5) 60歳前の職員を含めた能力・実績に基づく人事管理の徹底等について検討を行っているところである。
 引き続き、皆さんのご意見もお聴きしながら、必要な検討を進めてまいりたい。
 一方、当面の措置としての義務的再任用については、新規採用者を一定数確保しながらフルタイム中心の再任用が実現できるような定員上の取扱いについて、引き続き関係機関に働きかけを行うなど必要な取組を行ってまいりたい。
6 非常勤職員等の処遇改善について
 非常勤職員の給与については、平成20年8月に非常勤職員の給与に関する指針を発出し、各府省において適正な給与の支給が行われるよう、必要な指導を行ってきた。
 昨年7月に常勤職員の給与との権衡をより確保し得るよう、この指針の改正を行ったところであり、指針に基づく各府省の取組状況等を踏まえ、必要な取組を行っていくこととしたい。

 回答に対し、吉澤事務局長は、次の通り局長の見解を質した。
(1) 勧告日について、例年と同様とのことだが、どのような日程か。
(2) 官民較差の状況は、審議官との交渉における回答と全く同じで、勧告まで2週間ほどしか時間がない中、極めて不満だ。再回答を求める。
(3) 一時金について、人事院としてどのような印象を持っているか。
(4) 住居手当については、公務員宿舎の削減と宿舎料の段階的な引上げが行われており、現場組合員の実情をもとに交渉のたびに再三改善を要求してきたが、どういう検討状況か。
(5) 一昨年、扶養手当の支給額が改定され、配偶者がいない場合の子に対する支給額は減額された。少子化対策という視点で、この不合理を解消するべきではないか。
(6) 改正した非常勤職員の給与に関する指針に基づき、各府省を指導するとの回答だが、各府省には当然守るべき基準として対応を求め、人事院として指導を徹底するべきではないか。
(7) 定年引上げについて、今回が最後の機会になるのではないかということも踏まえ、その実現を期すため慎重さを持って対応すべきではないか。
(8) 定年引上げ後の給与水準はどうするのか。一定程度引き下げるとのことだが、職務給の原則のもと、同じ仕事をしているのにどうして引き下げるのか、丁寧な説明をすべきだ。
(9) 定年引上げに際して、給与の扱いについては、現行定年までの給与カーブの維持と実質的な再任用職員の給与を上回る水準とすることを前提とし、当該世代における標準的な生計費を満たすものとすべきだ。
(10) 定年引上げの検討に関わって、分限について必要な見直しを検討するということだが、定年引上げと分限処分の見直しは次元が違うのではないか。

 これに対し、森永局長は次の通り回答した。
(1) 勧告日については、昨年と同様の日程を念頭に置きながら作業を進めている。
(2) 民間では5年連続の賃上げが行われ、一方で国家公務員の平均年齢の伸びは止まっている状況ではあるが、様々な要素があり較差がどうなるかは最終集計が出るまでは分からない。
(3) 一時金については、各種調査結果では増加傾向にあるが、現在集計を行っているところである。
(4) 住居手当については、民間の状況や宿舎料を踏まえたものとしており、参考としている基準との格差が生じているなど見直す必要があると考えられるが、引き続き検討していく。
(5) 扶養手当については、一昨年勧告に基づき段階的に見直しを実施しており、最終的な段階でバランスが取れるという判断をしている。法改正も済んでいるので、まずは現行制度のままとしたい。
(6) 非常勤給与決定指針に基づき、各府省は計画性をもって予算要求するなど、改善を行っていると認識している。指針で示した水準に届くよう今後も各府省に対し個別に指導を行っていく。
(7) 定年の引上げについて、人事院としては、機を失しない、しかるべき遅くない時期に意見の申出を行いたいと考えている。
(8) 定年引上げの際の給与については情勢適応の原則を踏まえつつ根拠をもった数字とすべく、検証を含め詰めているところ。職務給の原則といっても、同一職務の級でも俸給月額には幅があり、一定程度引き下げてもその範囲内と考えている。有識者の意見も聞きつつ丁寧に説明をしていく。
(9) 定年引上げに際しての給与に対する要望として承った。
(10) 分限についての必要な見直しは、適正な人事管理を徹底する姿勢を示すことで、定年引上げ実施への理解を得るための環境整備として考えている。具体的には手続等の周知・徹底や事例集の提供を検討している。

最後に、吉澤事務局長から「較差を含め、本日は具体的な回答が示されていないため、改めて局長と議論させてもらいたい」と強く要請し、給与局長も了としたことから、この日の交渉を締めくくった。

以上