2019年度公務労協情報 15 2019年3月6日
公務公共サービス労働組合協議会
公務員労働組合連絡会

2019年春季要求事項で幹事クラスが内閣人事局・人事院と交渉−3/7

 公務員連絡会は3月6日、人事院職員団体審議官、内閣人事局内閣審議官との交渉を実施し、2月19日に提出した2019春季要求に対する中間的な回答を引き出した。いずれからの回答も抽象的で不満な内容であったため、公務員連絡会は、今後行う書記長クラスの交渉ではさらに具体的かつ前向きな回答を行うよう要求し、回答指定日に向けて交渉を積み上げていくこととした。

<人事院職員団体審議官交渉の経過>
 人事院の前薗職員団体審議官との交渉は、13時30分から行われた。
 冒頭、森永副事務局長が中間的な回答を求めたのに対し、前薗審議官は、次の通り答えた。
1.賃金要求について
 今年の春闘では、連合は「賃上げ要求について、それぞれの産業全体の「底上げ・底支え」「格差是正」に寄与する取組を強化する観点から、2%程度を基準とし、定期昇給相当分を含め4%程度として、6年連続で月例賃金の引上げを求める」との目標を掲げ、その実現に向けて取組を進めることとしている、と承知している。
 一方、日本経団連は、自社の状況に見合った年収ベースの賃金引上げ方法を検討することを基本とした上で、定期昇給やベースアップの実施、諸手当の改定・見直し、賞与・一時金の増額など多様な選択肢の中から検討する必要があるとしている、と承知している。
 こうした状況の中、3月中旬以降、経営側からの回答・妥結が行われるので、人事院としてもその動向を注視しているところである。
○ 国家公務員の給与について
 国家公務員の給与について、本年も情勢適応の原則に基づき、民間給与の実態を精緻に調査した上で、民間給与との精確な比較を行い、必要な勧告を行うという基本的スタンスに変わりはない。
 官民給与の比較方法については、これまでも必要な見直しを行ってきており、比較対象企業規模を含め、現行の取扱いが適当と考えている。
 諸手当については、民間の状況、公務の実態等を踏まえ、職員団体の皆さんの意見も聴きながら、必要となる検討を行っていくこととしたい。
 住居手当については、昨年の勧告時報告で述べたとおり、公務における実態や民間の状況等を踏まえ、宿舎使用料の引上げも考慮して、必要な検討を行ってまいりたい。

2.非常勤職員等の雇用、労働条件の改善について
 非常勤職員の勤務条件については、民間の状況との均衡や常勤職員の状況を考慮し、基準の設定等の必要な措置を行ってきているところである。
 非常勤職員の給与については、平成29年7月に常勤職員の給与との権衡をより確保し得るよう、非常勤職員の給与に関する指針(平成20年8月発出)を改正したところであり、今後とも、各府省において、指針の内容に沿った適切な処遇が図られるよう取り組んでまいりたい。
 非常勤職員の休暇制度については、昨年の勧告時報告において言及したとおり、民間の状況や職員団体の皆さんの要望等を踏まえて、本年1月より結婚休暇を新設するとともに、忌引休暇について対象となる職員の限定を外し、全ての非常勤職員が使用できるように改善を行ったところである。

3.労働時間の短縮等について
○ 超過勤務の縮減について
 超過勤務命令を行うことができる時間の上限、上限時間の特例・要因の整理分析、職員の健康確保措置の強化・超過勤務時間の適切な把握等について、2月1日に改正人事院規則等を発出し、この4月から施行することとして いるところである。
 具体的にどの部署が他律的業務の比重の高い部署に該当するか、どの職員が上限の特例業務に従事するかについては、人事院規則の規定内容の下で、各府省において業務の状況等を十分に踏まえて判断していただく必要があると考えており、人事院規則を公布する際に、その解釈が府省によって異なることがないよう各府省に対して適切に説明したところである。あわせて、それらの部署や対象者については、適切に周知又は職員に知らせるなどの措置を講じることについても運用通知で規定したところである。
 また、勤務時間管理については、課室長等による超過勤務時間の事前確認や事後報告を徹底させるとともに、超過勤務時間の確認を行う場合は課室長等や周囲の職員による現認等を通じて行うものとし、客観的な記録を基礎として在庁の状況を把握している場合は、これらを参照することもできる旨を局長通知で規定したところである。
 人事院としても、必要に応じて制度の運用状況を把握し、各府省を指導していくなど、引き続き適切に役割を果たしてまいりたい。
○ 休暇・休業制度について
 両立支援制度を含む職員の休暇、休業制度については、従来より情勢適応の原則の下、民間における普及状況に合わせることを基本に、適宜見直しを行ってきており、引き続き民間の動向等を注視してまいりたい。
 また、両立支援制度の活用については、昨年3月に発出した「仕事と育児・介護の両立支援制度の活用に関する指針」の内容が各府省において徹底されるよう更なる周知に取り組んでまいりたい。

4.障害者雇用について
今般の障害者雇用問題に関しては、「公務部門における障害者雇用に関する基本方針」に基づき、再発防止と障害者雇用の推進に全力で取り組むことされており、人事院としては、本年2月に障害者選考試験を実施したほか、障害を有する職員が自らの希望や障害等の特性に応じて、無理なく、かつ、安定的に働くことができるよう、フレックスタイム制の柔軟化等のための人事院規則等の改正を昨年12月に行い、本年1月から施行したところである。
また、公務の職場における障害者雇用に関する理解を促進し、障害を有する職員が必要な配慮を受けられるよう、「職員の募集及び採用時並びに採用後において障害者に対して各省各庁の長が講ずべき措置に関する指針」を昨年12月に発出し、各府省に対して、当該指針に沿って適切に対応することを求めたところである。

5.女性公務員の労働権確立について
 人事院としては、公務におけるワーク・ライフ・バランスの推進及び女性の活躍推進に向けた取組を人事行政における重要施策と位置付け、国家公務員法に定める平等取扱の原則、成績主義の原則の枠組みを前提とした女性の参画のための採用・登用の拡大、両立支援など様々な施策を行ってきているところであり、引き続き、各府省の具体的な取組が進むよう支援してまいりたい。 6.高齢者雇用施策について
○ 定年の引上げについて
 人事院としては、昨年8月の意見の申出に至る過程での、各府省及び職員団体の意見も踏まえ、定年の引上げの実現に向け各施策の必要性等の理解の促進に一層努めるとともに、政府における検討に際して、これまでの検討結果に基づき必要な協力を行うこと等を通じて、必要な法律改正が早急に行われるよう、その責任を果たしてまいりたい。

○ 再任用職員制度について
 再任用職員の給与については、公務における人事運用の実態や民間企業の再雇用者の手当の支給状況を踏まえ、これまでも見直しを行ってきているところである。
 人事院としては、民間企業における定年制や高齢層従業員の給与の状況、各府省における再任用制度の運用状況等を踏まえつつ、職員団体の皆さんの意見も聴きながら、引き続き再任用職員の給与の在り方について必要な検討を行ってまいりたい。

7.福利厚生施策の充実について
○ 心の健康づくり対策について
 心の健康づくり対策については、平成16年3月に発出した「職員の心の健康づくりのための指針」を基本として対処しており、これまでも「こころの健康相談室」の運営など様々な取組を進めてきている。引き続き、各府省と連携しつつ、適切に対応してまいりたい。
 また、ストレスチェック制度についても、必要な支援等を行ってまいりたい。
○ ハラスメント対策について
 昨年4月に、本府省の幹部職員が関係するセクシュアル・ハラスメント事案が生じ、国民の信頼を損なう事態となったところである。これを受け、人事院では各府省に対し、セクハラに関する基本的な事項について改めて全職員に周知徹底することなどを求める通知を発出し、また、昨年8月の勧告時報告で言及したとおり、外部の者からの相談窓口を人事院に設けるとともに、課長級職員・幹部職員への研修義務化、新たな研修教材の作成等、セクハラ防止に必要な対策について所要の措置を講じるため、現在、具体的な検討を進めているところである。
 パワー・ハラスメントの防止については、これまでに、シンポジウムやハンドブックの作成等により周知を図ってきたが、民間においてもパワハラ対策が進められている状況等も踏まえて、本年3月から、学識経験者及び実務者によって構成する検討会を開催し、公務職場におけるパワハラ防止対策について検討することとしている。
 また、妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメントの防止についても、引き続き、職員に対する意識啓発等を図ってまいりたい。

 春季要求事項に先立ち、森永副事務局長は、「4月の人事異動期には、トラック運転手の不足により希望の時期に転居できない、いわゆる「引っ越し難民」や引っ越し料金が高騰していることへの対応が昨年に続いて課題となっている」と問題提起し、交渉委員からは、「赴任期間の取扱いの緩和の必要性」「組合で調査したところ移転料では足りず本人の持ち出しとなっていることが少なくないため旅費法の改正が必要」「移転料については実費弁償の観点から言っても勤務条件に関わる問題ではないか」「職場では大きな課題として捉えており、是非、全省庁共通の課題とするべき」など、職場実態を踏まえた発言がなされ、人事院の関与の必要性など人事異動期に関わる課題について意見交換した。
 続いて、次の通り春季要求事項に関わり人事院の見解を質した。
(1) 人事院勧告制度のもとで、引き続き、民間の動向を精確に把握し、賃金引き上げの勧告を行うべく積極的な姿勢で臨んでもらいたい。回答の中で、「比較対象企業規模を含め、現行の取扱いが適当」との見解が示されたが、改めて、官民比較方法については、現行どおり行うことを確認しておく。
 住居手当については、「公務における実態や民間の状況等を踏まえ、宿舎使用料の引上げも考慮して、必要な検討を行う」とのことだが、総合的な改善に向けて、どのような見直しが可能なのか議論を前広にするよう求めておくが、現在の検討状況はどうなっているのか。
(2) 民間における同一労働同一賃金の法整備が2020年4月より施行されることを踏まえ、勤務条件についての網羅的な点検作業を行い、公務における雇用形態の違いによる不合理な待遇差の改善を速やかに行うべきだ。
(3) 4月から施行される「超過勤務の上限等に関する措置」について、実効性をより確保するために人事院において府省統一的な基準のもとで公平・公正な運用となるよう、各府省に対し、適切な指導・助言を行うなど超過勤務縮減に本腰をいれて取り組むこと。改めて、規則改正が超過勤務縮減に向けたゴールではなくスタートであることを互いに認識し、われわれも職場段階での点検をはじめ、取組を強化していく。
(4) 障害者雇用は「雇用率達成」という消極的な理由だけで進めるのではなく、公務職場における障害者の参画という積極的な視点で進めることが大切だ。われわれも職場段階で障害者に寄り添った職場環境の整備をはじめ、組合として協力・努力をしていくので、十分に情報を共有するよう求める。
(5) 段階的な定年引上げについては、人事院の意見の申出を踏まえて政府での検討が行われているが、着実かつ確実な早期実施がはかられるよう人事院の責任を果たすこと。
 現行の再任用制度については、職員の希望どおりの再任用となるよう、人事院としても努力すること。また、再任用職員に生活給的手当を支給すべきであると考えるがこの間の検討状況も含めて人事院の認識を伺う。
(6) 昨年12月に取りまとめられた、厚労省労働政策審議会における「職場のハラスメント防止対策」について、公務においても民間に遅れることなく対応すること。

 これに対し、前薗審議官は次の通り答えた。
(1) 国家公務員給与については、しっかりと調べて、精確な比較を行い、必要な勧告を行うという基本的スタンスは変わらない。民調の仕方についても、現行の取扱いが適当だと考えている。
 また、住居手当については、民間の実態や国家公務員給与実態調査の結果を踏まえ、皆さんの話を聞きながら検討をできるだけ前広に行っていきたい。
(2) 同一労働同一賃金については、民間の取組、動向を注視し、われわれとしても適切に対応していかなければならないと考えている。
(3) 再任用職員への生活給的手当に関しては、引き続き、民間の状況を踏まえ総合的に考えて検討していきたい。

 また、各交渉委員からは、職場実態を踏まえ、@初任給基準の抜本的見直し、A再任用職員の期末手当支給月数、B再任用職員への特地勤務手当の支給、C不妊治療休暇の新設、などについての意見・要望が出された。

 最後に、森永副事務局長が「本日の回答は、現時点における人事院の検討状況と受け止めるが、昨年末の基本要求に関わる交渉も踏まえて、今回の春の交渉では、夏の人勧期に向けて互いに課題を確認し、その解決に向けて方向性を探っていくことが重要だ。14日の両局長との交渉では、われわれの要求について具体的かつ前向きに回答するよう求めておく」と要請し、交渉を締めくくった。

<内閣人事局内閣審議官交渉の経過>
 稲山内閣審議官との交渉は、15時から行われた。
 冒頭、森永副事務局長が中間的な回答を求めたのに対し、稲山審議官は「主な事項について、現時点における回答をさせていただく」と述べ、次の通り答えた。(見出し番号は春季要求書の要求事項の番号と同じ)

2.2019年度賃金について
 国家公務員の給与改定に当たっては、国家公務員の給与を社会一般の情勢に適応させるとの原則の下、人事院勧告制度を尊重することが基本姿勢と考えている。
 本年の給与改定については、人事院勧告も踏まえ、国政全般の観点に立って総合的に検討を行った上で方針を決定してまいりたいと考えている。その際には、皆様とも十分に意見交換を行ってまいりたい。
3.非常勤職員等の雇用、労働条件の改善について
 非常勤職員の処遇改善については、平成29年5月に、非常勤職員の基本給・特別給・給与改定に係る平成30年度以降の取扱いについて各府省間で申合せを行っており、昨年、内閣人事局において調査を行ったところ、期末手当や勤勉手当について、平成28年の調査では2〜3割弱の支給率であったのに対し、9割超の非常勤職員に対し支給される予定となるなど、着実に処遇改善が進んでいる。皆様とも引き続き真摯に意見交換を重ねつつ、この申合せに沿った処遇改善が進むよう、必要な取組を進めてまいりたい。
4.労働時間、休暇及び休業等について
 長時間労働の是正については、平成26年10月に取りまとめた「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」に基づき、政府一丸となって、
・長時間労働を前提とした働き方を改める意識改革や業務の効率化等を通じた超過勤務の縮減
・テレワークや、フレックスタイム制などによる働く時間と場所の柔軟化
等に取り組んできたところ。
また、平成29年4月からは、超過勤務を実施する際に、その理由や見込時間等を上司が把握するなど、勤務時間の適切な管理を更に徹底することとしたところ。今後とも、
・リモートアクセスとペーパレスの推進
・管理職をはじめとしたマネジメント改革
等にも積極的に取り組みつつ、全ての職員が存分に能力を発揮できる環境づくりに努めてまいりたい。
なお、本年2月に人事院規則が改正され、超過勤務命令を行うことができる上限の時間を設定するなどの措置について、本年4月から施行されると承知している。
このような制度改正を踏まえ、政府としても、職員の超過勤務時間管理など、同制度の適切な運用をはかりつつ、運用状況を見ながら必要な対策を検討してまいりたい。

5.障害者雇用について
 関係閣僚会議において決定された「公的部門における障害者雇用に関する基本方針」に基づき、職場実習の実施や講習会の開催、障害者雇用マニュアルの整備などにより、障害者が意欲と能力を発揮し、活躍できる環境の整備や、職員の理解促進に取り組んでまいりたい。
6.女性公務員の労働権確立について
 男女双方のワークライフバランス及び女性職員の活躍については、平成27年12月に閣議決定された「第4次男女共同参画基本計画」等を踏まえ、平成28年1月に改正した「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」や、同年4月に施行された女性活躍推進法等に沿って、取組を進めているところ。
 内閣人事局としては、これら取組指針等に基づき、各府省の取組を引き続きフォローアップし、その取組を促進させるようなサポートを行うことにより、職員のワークライフバランスを実現し、女性活躍の動きを更に加速してまいりたい。
 男女双方のワークライフバランス及び女性職員の活躍については、平成27年12月に閣議決定された「第4次男女共同参画基本計画」等を踏まえ、平成28年1月に改正した「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」や、平成28年4月に施行された女性活躍推進法等に沿って、取組みを進めているところ。
 内閣人事局としては、これら取組指針等に基づき、各府省の取組みを引き続きフォローアップし、各府省の取組を促進させるようなサポートを行うことにより、職員のワークライフバランスを実現し、女性活躍の動きを更に加速してまいりたい。

7.高齢者雇用施策について
 国家公務員の定年の引上げについては、その論点を整理し、昨年2月に、人事院に対して検討を要請していたところであるが、同年8月、「意見の申出」という形で定年の引上げについて第三者機関である人事院の見解が示されたところ。
 平均寿命の伸長や少子高齢化の進展を踏まえると、公務において培った知識、技術、経験等が豊富な高齢期の職員の最大限の活用を目指すことは、人的資源の有効活用や、複雑高度化する行政課題への的確な対応などの観点から合理的であり、重要な意義を有すると考える。
 公務員の定年の引上げについては、人事院の意見の申出も踏まえつつ、国民の理解が得られるよう、政府として更なる検討を重ね、結論を得てまいりたいと考えているところであり、その際、皆様も含めた関係者の意見も聞きつつ、進めてまいりたい
 なお、定年退職者の再任用については、引き続き平成25年3月の閣議決定に沿って、政府全体で着実に推進していまいりたい。
8.福利厚生施策の充実について
 福利厚生施策等については、平成28年3月に改正した「国家公務員健康増進等基本計画」に基づき、職員の心身の健康の保持増進等に努めてまいりたい。
 基本計画には数値目標(実施率100%)を導入しているが、このうち、昨年度におけるストレスチェックの実施率はほぼ100%、管理職員等に対するハラスメント防止等に関する研修の受講率は9割超、要医療該当職員の受診率は7割超、二次健診対象職員の受診率は6割超などとなっている。
 引き続き、各府省における基本計画の実施状況を把握し、必要な措置が講じられるよう取り組んでまいりたい。

9.公務員制度改革について
 自律的労使関係制度については、国家公務員制度改革基本法第12 条において「政府は、協約締結権を付与する職員の範囲の拡大に伴う便益及び費用を含む全体像を国民に提示し、その理解のもとに、国民に開かれた自律的労使関係制度を措置するものとする」とされている。
 この自律的労使関係制度については、多岐にわたる課題があり、引き続き慎重に検討する必要があると考えている。皆様とは、引き続き意見交換をさせていただきたい。


 これに対して、森永副事務局長等は、人事院との交渉と同様に、4月の人事異動に伴う転居費用の本人負担に関する組合の調査結果に基づく実態と問題意識を述べた上で、政府全体で課題を共有するよう強く求めた。続いて、次の通り春季要求事項に関わり内閣人事局の見解を質した。
(1) 公共サービス基本法に基づいて、職員をはじめ、公共サービス従事者に、社会的に公正な賃金・労働条件を確保するとともに、必要な人件費予算等の財源を確保することが重要だ。また、すべての課題に直結するのが定員問題であり、使用者として必要な定員を確実に確保すべきと考えるが、政府としての見解を伺う。
(2) 公務労協が実施した生活実態調査によれば、賃金水準については、不満(39.3)が満足(32.6)をやや上回る結果となっており、その傾向は、高齢層ほど顕著になっている。職員がより一層意欲を持って働くためには賃上げが必要だという認識をもって臨むこと。
(3) 民間において、同一労働同一賃金の法整備が2020年4月より施行される。この間、非常勤職員給与の申し合わせが行われているが、各省において手当や給与改定時期等の取扱いが異なっていることから、政府全体として統一的な対応となるよう予算措置を含めて万全の取組を進めるべきだ。総人件費抑制の観点から継続的な定員削減が行われ、その結果、アウトソーシングや非常勤職員の増加につながっていると考えるが、このような公務職場の現状を政府としてどう考えているのか。
(4) 「超過勤務の上限等に関する措置」が4月から始まる。現在、政府として、超過勤務の上限時間の遵守に向けた対策についての検討状況を明らかにされたい。
超過勤務時間数の縮減という数字の結果ももちろん大事だが、超勤縮減指針が定められて以降、現状は何ら変わっていない。今般の措置でも、他律的業務や上限時間の特例が設けられたことを踏まえれば、縮減に向けて何をしたのかという過程が大事であり、職場における取組の共有こそが、職員自身が「働き方が改善された」という実感につながるのではないか。また、管理監督者を含むすべての職員の労働時間を適正に把握するためには、民間におけるガイドラインと同様に、客観的な勤務時間管理は絶対に導入すべきであると考えるが政府の見解を伺う。
(5) 障害者雇用は「雇用率達成」という消極的な理由だけで進めるのではなく、公務職場における障害者の参画という積極的な視点で進めることが大切だ。政府においては、法定雇用率の達成期限を延長する方向で調整に入ったとの報道もあるが、障害者雇用に関する現状を伺う。われわれも職場段階で障害者に寄り添った職場環境の整備をはじめ、組合として協力・努力をしていくので、十分に情報を共有するよう求めておく。
(6) 女性公務員の労働権の確立について、数値目標のみにこだわりすぎることがないように職場実態に応じた施策を推進すること。性別を問わず、個々人の置かれている状況も踏まえ、男女ともに働きやすい職場となるよう、職場環境や職員の意識を改めていくべきだ。
(7) 段階的な定年引上げについては、人事院の意見の申出を踏まえて政府で検討が進められていると承知しているが、引き続き、着実かつ確実な早期実施に向けて、われわれとの十分な交渉・協議と合意のもとに作業を進めることを強く求めておく。また、現行の再任用制度については、職員の希望どおりの再任用となるよう、定員管理の弾力的な運用をはかること。
(8) 公務員制度改革について、引き続き、国家公務員制度改革基本法の自律的労使関係制度を確立することが課題であり、われわれと十分に話し合いながら検討を進めるよう求める。

 これらに対して、稲山内閣審議官から次の通り回答があった。
(1) 所管部署ではないため、一般論になるが、定員については、「機構・定員管理に関する方針」に沿って、既存の業務見直しに積極的に取り組みながら定員の再配置を推進し、内閣の重要政策に的確に対応できる体制を構築をはかるという考え方のもと、各省からの要求内容を精査し、対応している。内閣人事局の取組としては、ワークライフバランス確保のための、政策的な定員措置、平成31年度の定員審査の中では、新しい試みとして高齢職員の活躍の場の定員も措置を行っている。
(2) いずれにしても、行政需要に応じて必要な定員が措置されていると承知している。
われわれとしては、引き続き、非常勤職員の処遇改善に努めていきたい。
(3) 人事院規則に格上げされ、4月から施行されるという意味では新たな仕組みが公務においても適用される。制度が円滑に施行、運用されることが重要だと考えている。上限時間に係る特例業務の要因の整理・分析などを含めて、運用状況を見ながら適切に対応していく。
(4) 人事院の通知の中でも「超過勤務時間の確認を行う場合は課室長等や周囲の職員による現認等を通じて行うものとし、客観的な記録を基礎として在庁の状況を把握している場合は、これを参照することもできる」とされており、民間においては、労働安全衛生法について、平成31年度から労働時間の状況の把握が求められている。長時間労働を是正するためには、勤務時間把握を適切に行うことが必要であり、民間の事例を参考にしながら人事院、各府省と連携し、検討していきたい。

 また、交渉委員からは、職場実態を踏まえ、長時間労働の是正や段階的な定年引上げの実施等を踏まえると、これまでと同様の考え方で定員管理を行うべきではないとの意見が出された。

 最後に、森永副事務局長は「本日の回答は、現時点における内閣人事局の考え方と受け止めるが、指摘した様々な課題について、その解決に向けた具体的な検討が進められているのか明確になっていない。われわれも職場実態をはじめとした取り巻く情勢等も踏まえこれからも議論していくが、13日の統括官との交渉では、具体的かつ前向きに回答するよう求めておく」と強く要請し、交渉を終えた。

以上