2019年度公務労協情報 20 2019年3月20日
公務公共サービス労働組合協議会
公務員労働組合連絡会

政府、人事院から春の段階の回答引き出す−3/20
−公務員連絡会は回答を確認し、人勧期闘争への決意固める「声明」を発出−

公務員連絡会は3月20日、委員長クラス交渉委員が一宮人事院総裁、宮腰国家公務員制度担当大臣と2019春季段階の最終交渉を行った。この交渉で人事院総裁、国家公務員制度担当大臣はそれぞれ、春の段階における最終的な回答を示した。(資料1、2)
これに対して、公務員連絡会は代表者会議で、「これらの回答は、課題認識を共有するとともに公務員連絡会の意見を聞く姿勢を確認したものの、われわれの要求に対して明確には応えていない。しかし、障害者雇用問題や統計問題をはじめとする公務に対する厳しい批判のもと、人事院勧告による賃金・労働条件決定制度のもとでの春の段階における交渉の到達点と受け止め、今後、人事院勧告期、賃金確定期に向け闘争態勢を堅持・強化していく。」との声明(資料3)を確認。22日の第3次全国統一行動では、人勧期の取組の決意を固める時間外職場集会等の行動を実施することを決定した。
この日行われた人事院総裁、国家公務員制度担当大臣との交渉経過は次の通り。

<人事院総裁交渉の経過>
一宮総裁との交渉は、13時30分から行われた。
冒頭、柴山議長が、2019春季段階の最終回答を求めたのに対して、総裁は本年の民間春闘の動向について述べた上で、現段階の考え方等を資料1の通り回答した。

この回答に対し、柴山議長は次の通り見解を述べた。

(1) 連合の春季生活闘争は、景気の先行きをめぐる不透明な状況等厳しい環境のもと、先行・大手組合の多くでベースアップを確保し、それを土台として中小組合、地場に確実に広げていくため、引き続き、全力を尽くしての取組が進められている。また、本年は、勤務間インターバル制度の導入、定年年齢の引き上げ、年次有給休暇の取得促進、非正規労働者の処遇改善などへの対応がはかられている。夏の勧告では、非常勤職員を含めた賃上げの実現に向け、積極的な対応を求めておく。
(2) 長時間労働の是正については、この間の交渉において、今般の措置はゴールではなくスタートであるとの認識を人事院と共有した。4月以降、改正人事院規則のもとで超勤縮減に向けた取組がスタートするが、とくに、他律的業務の比重の高い部署の指定や特例業務の特定については、各府省で異なることがないよう、人事院が、その責を果たすことによって統一性と公平性を確保するとともに、職場労使間におけるこれら業務の厳格化をはじめ、超勤縮減に向けた取組を着実に進めていかなければならない。
(3) 高齢期の雇用については、多くの再任用者が短時間勤務を余儀なくされ、生活水準の確保も不十分であり、再任用職員の給与等の改善が必要だ。段階的な定年の引上げに向けても、人事院としてその実現に最後まで責任を果たしていただきたい。
(4) 東日本大震災から8年、熊本地震から3年となるが、その後の自然災害を含め、復興・再生を被災地と当該自治体の責に帰することなく、改めて国はもとより国民全体の課題として共有する必要がある。公務公共サービスの果たすべき役割は大きく、公務員労働者が健康を害することなく職務に臨めるよう、良好な労働条件を確保していただきたい。

最後に柴山議長は、「きょうの回答で、諸課題について、お互いに認識の共有ができたと考えるので、今後も、公務員連絡会の意見を聞きながら検討を進めていただきたい。本日の回答は、人事院の春の段階の最終回答として受け止め、組織に持ち帰って協議したい」と述べ、この日の交渉を終えた。

<国家公務員制度担当大臣交渉の経過>
宮腰国家公務員制度担当大臣との交渉は、17時から行われた。
冒頭、柴山議長が、2019春季段階の最終回答を求めたのに対して、宮腰国家公務員制度担当大臣は、資料2の通り回答した。

この回答に対し、柴山議長は次の通り見解を述べた。

(1) 連合の春季生活闘争は、景気の先行きをめぐる不透明な状況等厳しい環境のもと、先行・大手組合の多くでベースアップを確保し、それを土台として中小組合、地場に確実に広げていくため、引き続き、全力を尽くしての取組が進められている。また、本年は、勤務間インターバル制度の導入、定年年齢の引き上げ、年次有給休暇の取得促進、非正規労働者の処遇改善などへの対応がはかられている。宮腰大臣におかれては、賃上げ等による処遇改善が良質な公務公共サービスにつながるとの認識のもと、積極的な役割を果たしていただきたい。
(2) 長時間労働の是正については、この4月から改正人事院規則のもとで超勤縮減に向けた取組がスタートする。われわれも、職場労使間での真摯な議論を通じて、超勤縮減に向けた取組を着実に進めていく決意だが、政府としても、各府省の取組状況を適切に把握し、府省間での取扱いが異なることのないように統一的な対応に努めていただきたい。また、客観的な勤務時間管理をはじめ実効性のある施策を打ち出していただきたい。
(3) 定年引上げに関して、今通常国会における法案提出が見送られたことは残念である。60歳以降の賃金水準については、与党の一部において批判的な議論もあるが、労働基本権制約の代償機関である人事院の意見の申出と異なる措置は断じて認められない。引き続き、段階的な定年引上げの着実かつ確実な早期実現に向け、われわれとの交渉・協議、合意に基づいて早急に検討を行うよう強く求めておく。
(4) 障害者雇用については、採用される障害者の皆さんの職場定着が図られるよう、職場環境の整備に積極的に取り組んでいただきたい。われわれも、現場段階で引き続き協力、努力していく。
(5) 自律的労使関係制度の検討は政府の法的責務である。進展に向け、われわれと向き合い、真摯に対応することを強く要求する。
(6) 東日本大震災から8年、熊本地震から3年となるが、その後の自然災害も含め、復興・再生を被災地と当該自治体の責に帰することなく、改めて国はもとより国民全体の課題として共有する必要がある。公務公共サービスの果たすべき役割は大きく、公務員労働者が健康を害することなく職務に臨めるよう、必要な定員や予算の確保を含めて、良好な労働条件を確保していただきたい。

そのうえで柴山議長は、「きょうの回答では、大臣からは、引き続き、労使関係に基づいて、公務員連絡会の意見を聞きながら、誠意をもって話し合っていくとの決意が示されたことを確認する。本日の回答は、国家公務員制度担当大臣の春の段階の最終回答として受け止め、組織に持ち帰って協議したい」と公務員連絡会としての意見を表明し、この日の交渉を終えた。 資料1−人事院の2019春季要求に対する回答

人事院総裁回答

2019年3月20日


1.賃金の改善について
○ 人事院としては、労働基本権制約の代償措置としての勧告制度の意義及び役割を踏まえ、情勢適応の原則に基づき、必要な勧告を行うことを基本に臨むこととしています。

○ 俸給及び一時金については、国家公務員の給与と民間企業の給与の実態を精緻に調査した上で、その精確な比較を行い、適切に対処したいと考えています。

○ 諸手当については、民間の状況、官民較差の状況等を踏まえ、必要となる検討を行っていきたいと考えています。
住居手当については、公務における実態や民間の状況等を踏まえ、宿舎使用料の引上げも考慮して、勧告に向けて、職員団体の皆さんの意見も聴きながら必要な検討を行っていきたいと考えています。

2.労働時間の短縮、休暇等について
〇 長時間労働の是正に関し、先般、超過勤務命令の上限時間の設定、上限時間を超えた場合の要因の整理分析、職員の健康確保措置の強化などを内容とする人事院規則の改正を行い、本年4月1日から施行することとしています。
長時間労働の是正は、政府全体で取り組む必要のある重要な課題であり、人事院としても、必要に応じて制度の運用状況を把握し、各府省を指導していくなど、引き続き適切に役割を果たしていきたいと考えています。

○ 両立支援制度を含む職員の休暇、休業等については、これまで民間の普及状況等を見ながら改善を行ってきたところであり、引き続き、職員団体の皆さんの意見も聴きながら必要な検討を行っていきたいと考えています。

3.非常勤職員の処遇改善について
非常勤職員の給与については、平成29年7月に改正した指針の内容に沿った適切な処遇が図られるよう、引き続き取り組んでいきたいと考えています。
非常勤職員の休暇については、民間における措置の状況等を見ながら、引き続き適切に対応していきたいと考えています。

4.高齢期雇用施策について
○ 定年の引上げについて
人事院としては、定年の引上げの実現に向け各施策の必要性等の理解の促進に一層努めるとともに、政府における検討に際して、必要な協力を行うこと等を通じて、その責任を適切に果たしていきたいと考えています。

○ 再任用職員制度について
民間企業における定年制や高齢層従業員の給与の状況、各府省における再任用制度の運用状況を踏まえつつ、引き続き再任用の給与の在り方について必要な検討を行っていきたいと考えています。

5.障害者雇用について
今般の障害者雇用問題に関しては、政府一体となった対応が進められており、人事院としても、第1次選考を人事院が統一的に行う障害者選考試験を本年2月に実施したほか、フレックスタイム制の柔軟化等を実現するための人事院規則等の改正や、「合理的配慮に関する指針」の発出等の措置を行ったところです。
各府省に対して、引き続き適切に対応するよう必要な指導を行っていきたいと考えています。

6.女性の活躍推進について
人事院としては、女性の活躍推進を人事行政における重要な課題の一つと認識しており、女性の採用・登用の拡大や両立支援策の拡充など様々な施策を行ってきているところです。
引き続き、女性を対象とした人材確保活動や女性職員の登用に向けた研修、両立支援施策等により、各府省の取組が進むよう支援していきたいと考えています。

7.健康・安全確保等について
心の健康づくりをはじめとした健康管理対策やハラスメント対策の推進については、公務全体の共通の課題として、これまでも各府省と協力して積極的に取り組んできたところです。
セクシュアル・ハラスメントの防止については、外部の者からの相談窓口を人事院に設置することや、幹部職員、課長級職員への研修実施の義務化などの措置を講じることを予定しているところです。
また、公務職場におけるパワー・ハラスメント防止対策について検討するため、有識者による検討会を設置し、その第1回の会議を3月11日に開催したところです。
人事院としては、引き続き健康安全対策の取組を進めていきたいと考えています。
資料2−政府の2019春季要求に対する回答
国家公務員制度担当大臣回答

2019年3月20日



○ 平成31年度の給与については、本年の人事院勧告も踏まえ、国政全般の観点から検討を行い、方針を決定してまいりたいと考えています。その際には、皆様とも十分に意見交換を行ってまいりたいと考えています。

○ 非常勤職員の処遇改善については、民間における同一労働同一賃金の実現に向けた取組等も踏まえながら、引き続き皆様のご意見も伺いつつ、各府省申合せに沿った処遇改善が着実に進むよう、関係機関とも連携して、必要な取組を進めてまいりたいと考えています。

○ 長時間労働の是正については、超過勤務命令を行うことができる上限の時間を設定するなどの制度改正を踏まえ、職員の勤務時間管理等、同制度の適切な運用をはかってまいりたいと考えています。
また、政府一丸となって、全ての職員が存分に能力を発揮できる環境づくりに努めるとともに、引き続き、皆様のご意見も伺いつつ、実効ある施策を推進してまいりたいと考えています。

○ 障害者雇用については、障害者が意欲と能力を発揮し、活躍できる環境の整備や、職員の理解促進に取り組んでまいりたいと考えています。

○ 国家公務員の定年の引上げについては、人事院の意見の申出も踏まえ、引き続き更なる検討を重ね、皆様のご意見も十分に伺いつつ、結論を得てまいりたいと考えています。

○ 自律的労使関係制度については、多岐にわたる課題があることから、皆様と意見交換しつつ、慎重に検討してまいりたいと考えています。

○ 最後になりますが、今後とも公務能率の向上と適正な勤務条件の確保に努めるとともに、安定した労使関係を維持する観点から、職員団体とは誠意を持った話合いによる一層の意思疎通に努めてまいりたいと考えています。

資料3−2019春季生活闘争に関わる公務員連絡会の声明
声  明


(1) 本日、公務員連絡会は、国家公務員制度担当大臣、人事院総裁と交渉を持ち、2019年春季要求に対する回答を引き出した。

(2) 連合の2019春季生活闘争は、景気の先行きをめぐる不透明な状況等厳しい環境のもと、先行・大手組合の多くでベースアップを確保し、それを土台として中小組合、地場に確実に広げていくため、引き続き、全力を尽くしての取組が進められている。また、本年は、勤務間インターバル制度の導入、定年年齢の引き上げ、年次有給休暇の取得促進、非正規労働者の処遇改善などへの対応がはかられている。
 公務員連絡会は、連合に結集し、「底上げ・底支え」「格差是正」と「すべての労働者の立場にたった働き方」の実現を図るため、非常勤職員を含む公務・公共部門で働くすべての労働者の待遇改善をめざし、賃金引上げ、公務における働き方改革の推進、超過勤務の縮減とワーク・ライフ・バランスの確保、段階的定年引上げの着実かつ確実な早期実現などを最重要課題として位置づけ、取組を進めてきた。

(3) 委員長クラス交渉委員による最終交渉で、国家公務員制度担当大臣は、@2019年度賃金については、公務員連絡会の意見を聞く、A非常勤職員の処遇改善については、民間における取組を踏まえながら、公務員連絡会の意見も聞きつつ、必要な取組を進めていく、B長時間労働の是正については、制度改正を踏まえ、適切な運用をはかるとともに、政府一丸となって、引き続き公務員連絡会の意見も聞きつつ、実効ある施策を推進する、C障害者雇用については、環境の整備や職員の理解促進に取り組む、D定年の引上げについては、人事院の意見の申出も踏まえ、公務員連絡会の意見も十分に聞きながら結論を得ていく、E公務員連絡会とは誠意を持った話合いによる一層の意思疎通に努めていく、などと回答した。また、人事院総裁は、@賃金等については、情勢適応の原則に基づき、必要な勧告を行う。住居手当については、勧告に向けて、公務員連絡会の意見も聞きながら必要な検討を行う、A長時間労働の是正については、政府全体で取り組む必要のある重要な課題であり、人事院としても、引き続き適切に役割を果たしていく、B非常勤職員の給与については、改正した指針に沿った適切な処遇が図られるよう取り組む、C定年の引上げについて、人事院としては、その責任を適切に果たしていく。再任用の給与の在り方について必要な検討を行っていく、D障害者雇用については、各府省に対して、引き続き適切に対応するよう必要な指導を行っていく、Eハラスメント対策については、公務職場におけるパワー・ハラスメントについて検討するため、有識者による検討会を設置し、取組を進めていく、などと回答した。

(4) これらの回答は、課題認識を共有するとともに公務員連絡会の意見を聞く姿勢を確認したものの、われわれの要求に対して明確には応えていない。
しかし、障害者雇用問題や統計問題をはじめとする公務に対する厳しい批判のもと、人事院勧告による賃金・労働条件決定制度のもとでの春の段階における交渉の到達点と受け止め、今後、人事院勧告期、賃金確定期に向け闘争態勢を堅持・強化していく。
(5) 長時間労働の是正については、この間の交渉において、今般の措置はゴールではなくスタートであるとの認識を人事院と共有した。4月以降、改正人事院規則のもと、とくに、他律的業務の比重の高い部署の指定や特例業務の特定については、各府省で異なることがないよう、人事院が、その責を果たすことによって統一性と公平性を確保するとともに、職場労使間におけるこれら業務の厳格化をはじめ、超勤縮減に向けて着実に取組を進めていかなければならない。
一方、定年引上げに関して、今通常国会における法案提出が見送られたことは遺憾である。60歳以降の賃金水準については、与党の一部において批判的な議論もあるが、労働基本権制約の代償機関である人事院の意見の申出と異なる措置は断じて認められない。
(6) 公務員連絡会は、連合・公務労協に結集し、引き続く、中小及び地域民間構成組織、独立行政法人等関係組合の交渉強化に連帯し、すべての労働者の賃金引上げを実現するため、全力をあげる。

2019年3月20日

公務員労働組合連絡会

以上