2019年度公務労協情報 27 2019年7月11日
公務公共サービス労働組合協議会
公務員労働組合連絡会

人勧期要求をめぐり連絡会幹事クラスが人事院交渉−7/11
−明確な回答なく、25日の局長交渉では中身ある回答を要求−

 公務員連絡会幹事クラス交渉委員は7月11日13時30分から、2019年人勧期要求に関わり、練合人事院職員団体審議官との交渉を実施した。
 冒頭、森永副事務局長が「6月19日に提出したわれわれの要求に対する現時点での回答を伺いたい」と求めたのに対し、練合審議官は次のとおり回答した。

1.勧告等について
(1) 勧告作業について
今年の職種別民間給与実態調査は、4月24日〜6月13日までの期間で実施したところであり、現在集計中である。
本年も、労働基本権制約の代償機関として、人事院としての責務を着実に果たすよう、国家公務員の給与と民間企業の給与の精緻な調査に基づき、その精確な比較を行い、必要な勧告、報告を行いたいと考えている。
(2) 賃金の改善について
月例給与・一時金については、現在、民調結果を集計中であり、今の段階では何とも言えない状況である。
本年においても民調の結果に基づき、適切に対処したいと考えている。
(3) 諸手当について
諸手当については、民間の状況、公務の実態等を踏まえ、職員団体の皆さんの意見も聴きながら、必要となる検討を行っていくこととしたい。
住居手当については、本年の勧告における見直しを念頭に検討を進めている。現時点では、
@いわゆる基礎控除額(当該額を超える家賃を支払う場合に住居手当支給対象となるとともに、手当額算定時に家賃から控除される額。現行12,000円)について、公務員宿舎使用料の引上げも考慮し、公務部内の均衡を図る必要があることから、引上げを行うこと
A最高支給限度額(現行27,000円)の取扱いについては、本年の国家公務員給与実態調査における状況等を踏まえて検討すること
を方針としているが、最終的には、国家公務員給与実態調査の結果等を踏まえ、見直しについて判断することを考えている。
引き続き、各府省及び職員団体の皆さんからの意見・要望等も聞きながら、必要な検討を進めていきたいと考えている。
(4) 再任用職員の給与について
再任用職員の給与については、民間企業における定年制や高齢層従業員の給与の状況、各府省における再任用制度の運用状況を踏まえつつ、職員団体の皆さんの意見も聴きながら、引き続き必要な検討を行っていくこととしたいと考えている。

2.労働諸条件の改善について
(1) 労働時間の短縮等について
(超過勤務の縮減、上限規制について)
超過勤務命令を行うことができる時間の上限、上限時間の特例・要因の整理分析、職員の健康確保措置の強化・超過勤務時間の適切な把握等について、本年2月に改正人事院規則等を発出し、本年4月から施行している。
勤務時間管理については、超過勤務の運用の適正を図るため、課室長等による超過勤務予定の事前確認等を徹底させるとともに、超過勤務時間の確認を行う場合は課室長等による現認等を通じて行うものとし、客観的な記録を基礎として在庁の状況を把握している場合は、これを参照することもできる旨を局長通知で規定したところである。
公務における長時間労働の是正については政府全体で連携して取り組んでいくことが必要であり、人事院としても、必要に応じて制度の運用状況を把握し、各府省を指導していくなど、引き続き適切に役割を果たしていきたい。
(勤務間インターバルについて)
公務においては、公務の特殊性に応じた様々な勤務形態があることから、一律に連続勤務時間を短縮したり、勤務間隔の基準を示したりすることには様々な課題がある。このため、民間労働法制の改正を踏まえた議論や民間企業における導入状況等について注視していくこととしている。
(休暇制度等の改善について)
職員の休暇・休業制度については、従来より情勢適応の原則の下、民間における普及状況に合わせることを基本に、適宜見直しを行ってきたところであり、引き続き民間の動向等を注視していきたいと考えている。
(2) 障害者雇用について
今般の障害者雇用問題に関しては、「公務部門における障害者雇用に関する基本方針」に基づき、再発防止と障害者雇用の推進に全力で取り組むこととされている。
人事院としては、障害を有する職員が自らの希望や障害等の特性に応じて、無理なく、かつ、安定的に働くことができるよう、フレックスタイム制の柔軟化等を実現するための人事院規則等の改正を昨年12月に行い、本年1月から施行されている。
また、公務の職場における障害者雇用に関する理解を促進し、障害を有する職員が必要な配慮を受けられるよう、「職員の募集及び採用時並びに採用後において障害者に対して各省各庁の長が講ずべき措置に関する指針」を、昨年12月に発出し、各府省に対して、当該指針に沿って適切に対応することを求めたところである。引き続き、関係機関と連携して勤務環境の整備等に向けて必要な取組を行っていきたいと考えている。
(3) 女性国家公務員の採用等の推進について
女性職員の採用・登用の拡大等については、政府全体で取組が進められており、人事院としても、女性を対象とした人材確保活動や女性職員の登用に向けた研修、両立支援策等により各府省の取組を支援してきている。
人事院としては、今後とも、各府省の具体的な取組が進むよう支援していきたいと考えている。
(4) 定年の引上げ等について
昨年8月の意見の申出に至る過程での各府省及び職員団体の意見も踏まえ、定年の引上げの実現に向け各施策の必要性等の理解の促進に一層努めるとともに、政府における検討に際して、これまでの検討結果に基づき必要な協力を行うこと等を通じて、必要な法律改正が早急に行われるよう、人事院として、その責任を適切に果たしていきたいと考えている。
なお、当面の措置としての義務的再任用については、新規採用者を一定数確保しながらフルタイム中心の再任用が実現できるよう、定員上の取扱いについて関係機関に働きかけを行うなど、引き続き必要な取組を行っていくこととしたい。
(5) 福利厚生施策について
(心の健康づくり対策について)
心の健康づくりについては、これまでも研修の充実・強化、心の健康相談室の運営、ストレスチェック制度の実施など、様々な取組を行い対処してきたところである。引き続き心の健康づくり対策にしっかりと取り組んでいきたいと考えている。
(ハラスメント特にパワーハラスメント対策について)
パワー・ハラスメント(パワハラ)の防止については、これまでも周知を図ってきたところであるが、民間においては、労働施策総合推進法の改正案が成立するなど、パワハラ防止対策が進められている。
人事院でも、公務職場におけるパワハラ防止対策について更なる検討を行うため、「公務職場におけるパワー・ハラスメント防止対策検討会」を平成31年3月から開催しているところであり、6月10日には職員団体の皆さんにもヒアリングに御協力いただいたところである。
今後、皆さんからいただいたご意見や、民間分野のパワハラ対策についての検討状況等も注視しつつ、検討会の議論を継続し、その結果も踏まえて、公務におけるパワハラ防止対策を講じていくこととしたい。

3.非常勤職員制度等について
(1) 非常勤職員の給与について
非常勤職員の給与については、平成20年8月に非常勤職員の給与についての指針を発出し、各府省において適正な給与の支給が行われるよう、必要な指導を行ってきている。平成29年7月には、常勤職員の給与との権衡をより確保できるよう指針を改正したところであり、今後とも、指針の内容に沿った適切な処遇が図られるよう取り組んでいきたい。
(2) 非常勤職員の休暇・休業について
非常勤職員の休暇・休業については、民間の状況との均衡等を考慮し、必要な措置を行ってきているところであり、今後とも、民間における措置の状況を見つつ、必要な改善を図っていきたいと考えている。
(3) 期間業務職員制度について
期間業務職員制度は、従来の日々雇用の非常勤職員の在り方を見直すため、職員団体を始め各方面の意見等を踏まえ、平成22年10月に導入したものであり、人事院としては、各府省において、本制度を設けた趣旨に則った適正な運用がなされるよう、制度の周知等を行うなど取り組んでおり、今後とも、関係方面と協力しながら、適切に対応していきたい。

 これに対して、森永副事務局長は3点の課題について、人事院の見解を質した。
1.賃金要求について
(1) 勧告作業及び月例給与について
先月13日を期限とした今年の民間給与実態調査については、例年と異なり、国の統計調査に関わる問題がある中での実施となったが、調査完了率はどのような状況か。また、国公実態(平均年齢や給与水準等)はどうか。
○ 月例給について
民間の賃上げ状況は、各調査機関公表結果によってバラツキが見られるものの、6年連続で賃上げの流れは継続している。
民調の結果は現在集計中とのことだが、6年連続の引上げ勧告となるよう、改めて求めておく。また、社会全体への波及の意味合いからも人事院勧告の果たすべき役割は極めて重要であることを強調しておく。
(2) 一時金について
連合の集計結果や各種報道ベースによる民間動向は、昨年冬が微増、今年夏が減という動向であり、今年は、緊張感を持って臨まなければならないと認識している。厳しい民間動向を踏まえ、少なくとも支給月数の維持ということを前提としながら、支給月数の引上げを求めておく。
(3) 諸手当について
@ 住居手当の見直しを本年勧告において行うことが明らかにされたが、一定の額以下の家賃の職員に大幅な減額となるような措置については、これは認めがたいということを申し上げておく。
その上で、現段階での検討状況を明らかにしていただきたい。
検討の素材である国公実態、民調における住宅手当の支給状況、また、現在検討している具体の内容が明らかにされなければ中身の議論ができないではないか。
少なくとも、給与局長との交渉では、突っ込んだ議論ができるように国公実態含めて検討状況を明らかにするよう強く求めておく。
A 住居手当以外に具体的に見直しを検討している手当があれば検討状況を明らかにすること。仮に見直すべき手当があれば、十分な議論と合意が不可欠である。
(4) 再任用の職員の給与について
再任用職員の給与制度については、教育費をはじめとした経済的負担の実態も踏まえて改善すること。また、転勤が前提の単身赴任手当を支給しつつ、住居手当を支給しないのは不合理ではないか。

これに対し、練合審議官は以下の通り回答した。
(1) 民調の完了率は例年並みの水準を維持できたと考えている。国公実態調査については、現在集計中であるため現時点で回答できることはない。
(2) 月例給与、一時金の官民較差については、民調、国公実態調査とも作業を進めているところであり、現時点で回答できることはない。
(3) 住居手当の見直しについて、冒頭申し上げた以上に現時点で申し上げられることはない。ご意見は承った。
(4) その他の手当について、毎年、医療職俸給表(一)が改定されると自動的に初任給調整手当も改定されるが、それ以外の見直しは現時点では承知していない。仮に政策的に手当を見直す際には、職員団体の意見を伺う場を設けるよう努める。
(5) 再任用職員の給与については、任期が一定期間であることを踏まえれば、住居手当のような長期間の雇用を前提としたライフサイクルに対応するような生活関連手当は、慎重な検討を要する。単身赴任手当はあくまで異動を要件とした人事管理上必要な手当と整理している。一方で住居手当は、異動と関連しても直接的な要件とはなっていないため、支給していない。皆さんから毎年強い要望があることは認識している。引き続き民間状況等を踏まえながら必要な検討を行ってまいりたい。

2.労働諸条件の改善について
(1) 労働時間の短縮及び休業制度等について
@ 超勤縮減、長時間労働の是正に向けて、改正人事院規則に基づいた実効ある措置をより具体化していくことが課題となっている。特に、他律的業務の範囲や上限時間を超えることの出来る特例業務について、この間、各省の労使関係の中で対応を図ってきているが、その取扱いが不適切ではないかと思われる事例も散見されており、人事院として、各省の実態を把握し、適切な指導等をさらに徹底するよう求めておく。
改正人事院規則の本年4月施行がゴールではなく、あくまでスタートであることをお互いに改めて共有し、引き続きの課題である、ICTを活用した客観的な勤務時間管理の体制整備や「勤務間インターバル」の実効性確保に向けた取組などを含めて、超過勤務縮減に向けて、公務員連絡会との間で、職場実態と課題の共有をはかりながら協議を行うよう強く求めておく。
A 妊娠・出産・育児に関わる休暇制度については、職員が希望する妊娠・出産を実現できるよう、不妊治療にかかる制度の新設を含め改善するよう求める。
(2) 障害者雇用について
障害者雇用については、採用された職員の職場定着が図られるよう、人事院としての役割を適切に果たしていただきたい。
その上で、採用された障害者の離職に関わって、その要因等の分析は一義的には各省が行うことになると想定するが、人事院においても、定着に向けた職場への啓発や研修等を実施するなど、その役割を適切に果たしていただきたい。
(3) 福利厚生施策の充実について
人事院に設置された「公務職場におけるパワー・ハラスメント防止対策検討会」から6月10日に公務員連絡会の意見を聞いていただく機会を設けていただいた。
改めて、@パワハラの定義については、少なくとも民間と同等のものとすること、A民間に措置される紛争解決機能と実質的に同等な「紛争解決」のための手段となり得る体制整備及び必要な措置をはかること、を求めておく。いずれにせよ、民間の施行に遅れることのないように、公務員連絡会との協議に基づき早急な対応を図るよう求めておく。

これに対し、練合審議官は以下の通り回答した。
(1) 各府省の他律的業務の範囲に関しては、現在把握に努めているところ。特例業務に関しては1年後の半年以内に整理分析検証を行うことになっている。人事院として必要に応じて各府省をフォローアップをするなど、引き続き必要に応じて各府省に指導や説明を行うなど役割を果たしていきたい。
(2) 妊娠・出産・育児に関わる休暇制度については、不妊治療と仕事の両立に関し、昨年の勧告時報告においても課題認識を示したところ。民間の状況を見つつ、必要な検討を行ってまいりたい。
(3) ハラスメント対策については、皆さんからのご意見を踏まえつつ、適切に対応してまいりたい。

3.非常勤職員等の制度及び待遇改善について
(1) 非常勤職員の待遇改善に向けては、同一労働同一賃金の原則を一層推進するため、人事院として、改正後の「非常勤職員給与決定指針」に沿った対応を徹底するよう各省を指導するとともに、現行指針のさらなる改善等を検討すべきと考えるが人事院の認識は如何。
(2) 働き方改革の具体化という観点から、常勤職員との間で取扱いが異なる休暇・休業に関して、網羅的な点検作業を実施した上で、本年の勧告時報告において、具体的な措置をはかるよう強く求めておく。また、同一労働同一賃金原則を踏まえた非常勤職員の着実な待遇改善がはかられるよう、引き続き、公務員連絡会と協議するよう求めておく。

これに対し、練合審議官は以下の通り回答した。
(1) 非常勤職員の給与については、まずは平成29年7月に改正した「非常勤職員給与決定指針」に沿った運用を徹底することが課題である。今後の指針の改正については、民間の状況を踏まえて検討する。
(2) 非常勤職員の休暇・休業に関しての要望は承った。合理的な説明のつかない差異がある場合については、是正するという立場である。

また、各交渉委員からは、最低賃金と低位号俸の関連性の整理、住居手当の総合的な制度見直し、再任用職員に対する生活関連手当の支給、超過勤務の上限規制の実効性確保、不妊治療休暇の創設、非常勤職員の夏季休暇付与などについて強い要望が出された。
最後に、森永副事務局長が「本日の回答は、現時点において、全般的に集計中であったり、検討しているというほぼ例年どおりの内容に止まっている。特に、給与関係では、ここ数年の中では取り巻く環境は厳しい情勢であるにも関わらず、今年の人事院勧告のイメージがおぼろげながらでも明らかになっていない。今後の両局長との交渉では、公務員連絡会の要求・主張に沿った中身のある回答を求めておく」と要望し、本日の交渉を締めくくった。


以上