2019年度公務労協情報 7 2018年12月20日
公務公共サービス労働組合協議会
公務員労働組合連絡会

2019年度基本要求に対する回答を引き出す−12/20

 公務員連絡会は12月20日、幹事クラス交渉委員が人事院、内閣人事局との交渉を実施し、2019年度の基本要求に対する回答を引き出した。公務員連絡会は、今回の回答を踏まえて、2019春季生活闘争の取組を進めることとし、基本要求に関わる交渉・協議に区切りを付けることとした。
 それぞれの交渉経過は次の通り。

<人事院との交渉経過>
 人事院との交渉は10時30分から行われ、人事院は前園職員団体審議官、大場職員団体審議官付参事官が対応した。
 冒頭、森永副事務局長が、基本要求に対する回答を求めたのに対し、前園審議官は「今後引き続き検討すべき事項が多いが、主な要求事項について現時点での検討状況等について申し上げる」として次の通り人事院の現段階の見解を示した。

一、賃金に関する事項
(1) 給与水準について
  公務員給与の改定については、情勢適応の原則に基づき、民間準拠により適正な給与水準を確保するという基本姿勢に立った上で、職員団体の皆さんの意見も聴きながら適切に対処していきたいと考えており、引き続き、春闘における民間の動き等を注視してまいりたい。
(2) 官民の給与の比較方法について
  官民給与の比較方法については、公務と民間で同種・同等の業務を行っている者同士を比較するという民間準拠方式の下、民間企業従業員の給与をより広く把握し国家公務員の給与に反映させるため、必要な見直しを行ってきており、比較対象企業規模を含め、現行の取扱いが適当と考えている。
(3) 諸手当について
  住居手当については、本年の勧告時報告で述べたとおり、公務の状況、民間の状況等を踏まえ、宿舎使用料の引上げも考慮して、必要な検討を行ってまいりたい。
  その他の諸手当についても、民間の状況、公務の実態等を踏まえ、職員団体の皆さんの意見も聴きながら、必要となる検討を行ってまいりたい。
二、労働時間、休暇、休業に関する事項
(1) 超過勤務の縮減について
  長時間労働の是正は極めて重要な課題であると認識しており、人事院としては、民間労働法制の改正を踏まえ、本年の勧告時報告において、人事院規則において超過勤務命令を行うことができる上限の時間を設定するなどの措置を講ずることを申し上げ、現在、具体的な人事院規則改正等の作業を進めているところである。
  具体的にどの部署が他律的業務の比重の高い部署に該当するか、どの職員が重要性・緊急性が高い業務に従事して公務の運営上真にやむを得ない場合に該当するかについては、人事院規則の規定内容の下で、各府省において業務の状況等を十分に踏まえて判断していただく必要があると考えており、人事院規則を公布する際には、 その解釈が府省によって異なることのないよう各府省に対して適切に説明していくこととし、あわせて、それらの部署や対象者については、適切に周知又は職員に知らせるなどの措置を講じていただくことについても検討したい。
  また、勤務時間管理については、課室長等による超過勤務予定の事前確認や、所要見込時間と異なる場合の課室長等への事後報告を徹底させるとともに、超過勤務時間の確認を行う場合は、課室長等や周囲の職員による現認等を通じて行うものとし、客観的な記録を基礎として在庁の状況を把握している場合は、これを参照することもできることとしたいと考えている。
  公務における長時間労働の是正は重要な課題であり、政府全体で連携して取り組んでいくことが必要である。人事院としても、必要に応じて制度の運用状況を把握し、各府省を指導していくなど、引き続き適切に役割を果たしてまいりたい。
(2) 休暇、休業制度について
  職員の休暇、休業については、従来より情勢適応の原則の下、民間における普及状況に合わせることを基本に、適宜見直しを行ってきたところである。ご要求のうち、不妊治療の支援については、本年の勧告時報告において、民間の動向等を注視しつつ、不妊治療を受けやすい職場環境の醸成等を図っていく旨言及したところであり、その他の休暇等も含め、引き続き民間の動向等を注視してまいりたい。
(3) 勤務時間制度について
  勤務間インターバル制については、職員の健康保持や仕事と家庭生活の両立の観点から有効な取組であると認識しているが、公務においては、国民生活の安全や利益のために果たすべき責務があり、また、職務の特殊性に応じて様々な勤務形態があることから、一律に勤務間隔の基準を設けることについては、様々な課題もあると考えている。これらのことから、民間企業における導入状況等を注視してまいりたい。
  また、従前、早出・遅出勤務について各府省にモデル例を示して活用を依頼する等の取組を行ってきたところであり、引き続き、各府省において、公務の円滑な運営に配慮するとともに、職員の健康及び福祉を十分に考慮した組織運営が行われるよう、一層の配慮を要請してまいりたい。
三、女性公務員の労働権確立に関する事項
  人事院としては、女性の活躍推進を人事行政における重要な課題の一つと認識しており、女性の採用・登用の拡大や両立支援等の拡充など様々な施策を行ってきているところである。
  今後とも、女性を対象とした人材確保活動や女性職員の登用に向けた研修、両立支援施策等により、次世代育成支援対策推進法や女性活躍推進法等に基づく各府省の取組の支援や男女ともに働きやすい勤務環境の整備についての所要の検討などを進めてまいりたい。
  なお、メンター制度については、メンター養成研修の実施に加え、本年2月に、各府省における職員の職場環境への円滑な適応、能力開発・専門性習得等のキャリア形成、仕事と生活の両立等に向けたメンター制度の活用に資するよう、「メンター制度実施の手引き」(人事院人材局企画課長通知)を作成するとともに、女性職員の登用拡大に向けたメンター制度を類型例の一つとして示し、その概要や留意点について説明するパンフレットを作成したところである。
  今後とも、各府省の具体的な取組が進むよう支援してまいりたい。
四、福利厚生施策に関する事項
(1) 心の健康づくり対策について
  心の健康づくり対策については、平成16年3月に発出した「職員の心の健康づくりのための指針」を基本として様々な施策を展開しているところであり、引き続きそれらの取組を進めてまいりたい。
  さらに、平成28年度より、各省各庁の長に対して、職員に医師等によるストレスチェックの受検機会を付与すること及び職員からの申出に応じて面接指導を実施することを義務付けることなどを内容とするストレスチェック制度が実施されているところであり、各府省と連携し、同制度の着実な実施に努めてまいりたい。
(2) ハラスメント対策について
  ハラスメントのうちセクシュアル・ハラスメントについては、外部の者からの相談窓口を人事院に設けることとするとともに、課長級職員・幹部職員への研修の義務化、新たな研修教材の作成等セクハラ防止に必要な対策について所要の措置を講じてまいりたいと考えており、現在、具体的な検討を進めているところである。
  パワー・ハラスメントについては、民間におけるパワハラ対策に関する労働政策審議会等の議論も踏まえつつ、年度内には検討会を設けて、外部有識者の意見も聴きながら、公務におけるパワハラ対策について検討してまいりたい。
  また、妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメントについても、これを防止するため、引き続き職員に対する意識啓発等を図ってまいりたい。
五、雇用と年金の接続に関する事項
  人事院としては、意見の申出に至る過程での職員団体の皆さんと各府省の意見も踏まえ、定年の引上げの実現に向け、各施策の必要性等の理解の促進に一層努めるとともに、政府における検討に際して、これまでの検討結果に基づき必要な協力を行うこと等を通じて、必要な法律改正が早急に行われるよう、その責任を適切に果たしてまいりたい。
  再任用職員の給与については、公務における人事運用の実態や民間企業の再雇用者の手当の支給状況を踏まえ、これまでも見直しを行ってきているところであるが、引き続き民間企業における定年制や高齢層従業員の給与の状況、各府省における再任用制度の運用状況を踏まえつつ、職員団体の皆さんの意見も聴きながら、再任用職員の給与の在り方について必要な検討を行ってまいりたい。
六、非常勤職員制度に関する事項
  非常勤職員の任用、勤務条件等については、その適切な処遇等を確保するため、法律、人事院規則等に規定しており、期間業務職員制度、育児休業など、これまで職員団体の皆さんの意見も聴きながら見直しを行ってきたところである。
  非常勤職員の給与については、平成20年8月に発出した非常勤職員の給与に関する指針について、昨年7月、常勤職員の給与との権衡をより確保し得るよう改正したところであり、今後とも、各府省において指針の内容に沿った適切な処遇が図られるよう取り組んでまいりたい。
  非常勤職員の休暇については、業務の必要に応じてその都度任期や勤務時間が設定されて任用されるという非常勤職員の性格を考慮しつつ、民間の状況との均衡や常勤職員の状況を踏まえて、必要な措置を行ってきている。
  なお、本年の勧告時報告において言及したように、民間の状況等を踏まえて、平成31年1月より結婚休暇を新設するとともに、忌引休暇について対象となる職員の限定を外し、全ての非常勤職員が使用できるように改善を行ったところである。
  本年6月に成立した「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」において、短時間・有期雇用労働者と正規労働者との間の不合理な待遇差の禁止に関して、厚生労働大臣が指針を定めることが規定されており、この民間指針の内容等も考慮し、必要な検討を行うなど適切に対応してまいりたい。
  期間業務職員を含む非常勤職員の任用、勤務条件等について、今後とも、関係方面と協力しながら、適切に対応してまいりたい。
七、その他の事項
  今般の障害者雇用問題に関しては、政府として今回の事態を深く反省し、真摯に重く受け止め、公務部門における障害者雇用に関する基本方針に基づき、再発防止と障害者雇用の推進に全力で取り組むこととされている。
  人事院としては、障害を有する職員が自らの希望や障害等の特性に応じて、無理なく、かつ、安定的に働くことができるよう、フレックスタイム制の柔軟化等を実現するための人事院規則等の改正を行い、平成31年1月から施行することとしている。
  また、公務の職場における障害者雇用に関する理解を促進し、障害を有する職員が必要な配慮を受けられるよう、国家公務員における合理的配慮に関する指針を、年内を目途に策定すべく鋭意作業を進めているところである。

 これに対して、公務員連絡会側は、次の通り質すとともに重ねて要請を行った。

(1) 公務員給与については、国会及び国民に向けた丁寧な説明が必要だ。それが公務員給与に対する社会的合意に結びつき、有為な人材確保につながっていく。2019春闘に向けては、賃上げを通じて「経済の自律的成長」を確実にしていくことが官民共通の課題だ。人事院としても民間春闘の動向を把握するなど、積極的な対応を求める。官民比較については、比較対象企業規模を含めて、現行の取扱いが適当であるとの回答であったが、来年も今年と変わらないと受け止める。
(2) 労働時間、休暇・休業等とWLB、女性の労働権は一体の課題だ。回答では長時間労働の是正が極めて重要であるとの認識だったが、われわれも同様の認識であり、これまで以上に働き方改革を公務が率先して推進していくことが重要だ。超過勤務の上限規制に向けて、人事院規則の策定作業が行われているとのことであり、この間のやりとりの中で、組合からの意見も提出している。今後の過程において、前広にわれわれとの十分な交渉・協議を行うよう求めておく。また、他律的業務や重要性・緊急性の高い業務についての解釈が府省間で異なることのないよう各府省に適切な説明を行うこと、必要に応じて制度の運用状況を把握し、各府省を指導し、人事院として適切に役割を果たしていくとの回答については、超勤縮減への決意として受け止める。今後、公務員連絡会としても改正労働基準法及び人事院規則等の労働時間規制の実効性をはかる取組を進めていくが、改めて、基本権制約の代償機関である人事院の役割を踏まえた対応を強く求めておく。
(3) 非常勤職員については、慶弔休暇に係る措置が行われたことについては一定評価するが、同一労働同一賃金の法整備を踏まえ、職場における雇用形態間の不合理な労働条件について検証を行い、その改善に取り組むことを求める。

 これに対し、前園審議官は次の通り答えた。
(1) 給与については、これからの春闘、人勧に向けて皆さんと議論をしつつ進めてまいりたい。比較方法については、回答したとおり来年も変わることはない。
(2) 労働時間について、人事院規則の改定にむけて作業中である。仕組みとしても法令に格上げし、各府省にしっかりと上限の規制を求め、また事後検証の義務化を課すなどした上で、必要に応じて状況を把握して各府省を指導しつつ、実効性ある上限規制をしっかりと進めてまいりたい。仕組みがあっても運用がどうなるかが重要である。しっかりと動向を注視し、実効性ある超過勤務の縮減に取り組んでまいりたい。もちろん規則の改定作業にあたって皆さまからいただいた意見に対しても回答しつつ進めてまいりたい。
(3) 非常勤職員制度について、まさに同一労働同一賃金のこともあるので、人事院としても当然説明のつかない不合理な差がないように、民間の状況も踏まえ、公務内部の状況について適切に対応してまいりたい。

 続いて、各交渉委員が職場実態を踏まえ、@東京オリンピック・パラリンピック開催年を含む夏季休暇の取得可能期間の弾力的な対応、A超過勤務の上限規制に伴う人事院の積極的な関与、などについて要請した。

 最後に、森永副事務局長が「本日の回答については、今後に向けての現時点における人事院としての考え方が示されたものと受け止めておくが、「職場」の実態をより丁寧に把握した上で労働条件の改善に向けて努力すること。基本要求に掲げた事項はすべて重要なものだ。特に2019年度の課題として「賃上げの実現」、「働き方改革、とりわけ長時間労働の是正と超過勤務の縮減」、「段階的定年引上げ」、「障害者雇用」、これらの課題に対する現状認識を人事院とわれわれとの間でこれまで以上に共有するため、引き続き、様々な場面で協議の場を設定すること。来年2月に改めて春季要求書を提出する。公務員の賃金・労働条件が改善されるよう、労働基本権制約の代償措置としての人事院の役割を踏まえ、引き続き努力することを強く求めておく」と重ねて要請し、要求回答交渉を終えた。

<内閣人事局との交渉経過>
 内閣人事局との交渉は13時45分から行われ、内閣人事局は稲山内閣審議官らが対応した。
 冒頭、森永副事務局長が、基本要求に対する回答を求めたのに対し、稲山審議官は「本日は、先に提出された要求書について、現時点における回答を行う」と述べ、次の通り答えた。

一、雇用と賃金・労働条件に関わる事項
  国家公務員の給与改定に当たっては、国家公務員の給与を社会一般の情勢に適応させるとの原則の下、人事院勧告制度を尊重することが基本姿勢と考えている。
  平成31年度の給与改定については、人事院勧告も踏まえ、国政全般の観点に立って総合的に検討を行った上で方針を決定してまいりたいと考えている。その際には、皆様とも十分に意見交換を行ってまいりたい。
二、労働時間、休暇及び休業等に関わる事項
  長時間労働の是正については、平成26年10月に取りまとめた「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」に基づき、政府一丸となって、
  ・長時間労働を前提とした働き方を改める意識改革や業務の効率化等を通じた超過勤務の縮減
  ・テレワークや、フレックスタイム制などによる働く時間と場所の柔軟化
等に取り組んできたところ。
  平成29年4月からは、超過勤務を実施する際に、その理由や見込時間等を上司が把握するなど、勤務時間の適切な管理を更に徹底することとしたところ。今後とも、
  ・リモートアクセスとペーパレスの推進
  ・管理職をはじめとしたマネジメント改革
等にも積極的に取り組みつつ、全ての職員が存分に能力を発揮できる環境づくりに努めてまいりたい。
なお、本年8月に人事院から超過勤務の上限等に関する措置を含む「公務員人事管理に関する報告」がなされ、現在、人事院規則の改定作業が行われているものと承知している。
  政府としても制度の施行に向けて準備を進めるとともに、引き続き、国家公務員の長時間労働の是正に向けた、より実効性ある対策を検討してまいりたい。
三、女性公務員の労働権確立に関わる事項
  男女双方のワークライフバランス及び女性職員の活躍については、平成27年12月に閣議決定された「第4次男女共同参画基本計画」等を踏まえ、平成28年1月に改正した「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」や、同年4月に施行された女性活躍推進法等に沿って、取組を進めているところ。
  内閣人事局としては、これら取組指針等に基づき、各府省の取組みを引き続きフォローアップし、その取組を促進させるようなサポートを行うことにより、職員のワークライフバランスを実現し、女性活躍の動きを更に加速してまいりたい。
四、福利厚生施策等に関わる事項
  福利厚生施策等については、平成28年3月に改正した「国家公務員健康増進等基本計画」に基づき、職員の心身の健康の保持増進等に努めてまいりたい。
  基本計画には数値目標(実施率100%)を導入しているが、このうち、昨年度におけるストレスチェックの実施率はほぼ100%、管理職員等に対するハラスメント防止等に関する研修の受講率は9割超、要医療該当職員の受診率は7割超、二次健診対象職員の受診率は6割超などとなっている。
  引き続き、各府省における基本計画の実施状況を把握し、必要な措置が講じられるよう取り組んでまいりたい。
五、人事評価制度に関わる事項
  人事評価制度については、評語区分のレベル感の整理・徹底及び所見欄の充実など、評語区分の趣旨の徹底や、人材育成等への一層の活用として、職員の能力開発やスキルアップ、さらには組織のパフォーマンスの向上につながるように指導・助言を行うための面談手法等、被評価者への指導に役立つ評価者訓練の充実等を図っているところである。
  今後とも、皆様とも十分意見交換し、御理解をいただきつつ、円滑かつ効果的に制度を運用していきたいと考えている。
六、雇用と年金の接続に関わる事項
  国家公務員の定年の引上げについては、その論点を整理し、本年2月に、人事院に対して検討を要請していたところであるが、本年8月、「意見の申出」という形で定年の引上げについて第三者機関である人事院の見解が示されたところ。
  平均寿命の伸長や少子高齢化の進展を踏まえると、公務において培った知識、技術、経験等が豊富な高齢期の職員の最大限の活用を目指すことは、人的資源の有効活用や、複雑高度化する行政課題への的確な対応などの観点から合理的であり、重要な意義を有すると考える。
  公務員の定年の引上げについては、人事院の意見の申出も踏まえつつ、国民の理解が得られるよう、政府として更なる検討を重ね、結論を得てまいりたいと考えているところであり、その際、皆様も含めた関係者の意見も聞きつつ、進めてまいりたい。
七、非常勤職員制度等に関わる事項
  非常勤職員の処遇改善については、昨年5月に、非常勤職員の基本給・特別給・給与改定に係る平成30年度以降の取扱いについて各府省で申合せを行った。今般、この申合せに沿った取組が進んでいるか、内閣人事局において調査を行ったところ、期末手当や勤勉手当について、平成28年の調査では2〜3割弱の支給率であったのに対し、9割超の非常勤職員に対し支給される予定となるなど、着実に処遇改善が進んできている。皆様とも引き続き真摯に意見交換を重ねつつ、この申合せに沿った処遇改善が進むよう、必要な取組を進めてまいりたい。
八、公務員制度改革に関わる事項
  自律的労使関係制度については、国家公務員制度改革基本法第12条において「政府は、協約締結権を付与する職員の範囲の拡大に伴う便益及び費用を含む全体像を国民に提示し、その理解のもとに、国民に開かれた自律的労使関係制度を措置するものとする」とされている。
この自律的労使関係制度については、多岐にわたる課題があり、引き続き慎重に検討する必要があると考えており、皆様とは、引き続き意見交換をさせていただきたい。
九、その他の事項
  障害者雇用については、関係閣僚会議において決定された「公的部門における障害者雇用に関する基本方針」に基づき、職場実習の実施や講習会の開催、障害者雇用マニュアルの整備などにより、障害者が意欲と能力を発揮し、活躍できる場の拡大に向けて、職場における環境整備や職員に対する理解を促進してまいりたい。

 これに対して、公務員連絡会側は次の通り質すとともに重ねて要請を行った。
(1) 給与改定については、「人勧尊重が基本」との回答だが、基本権制約のもとでは当然のことだ。政府として、国会及び国民に向けて今まで以上に丁寧な説明が必要であり、そのことが公務員給与に対する社会的合意につながり、公務への有為な人材確保につながっていく。2019年度に向けても、賃上げを通じて、「経済の自律的成長」を確実にしていくことが官民共通の課題であるとの認識をお互いに共有することが重要だ。
(2) 労働時間、休暇・休業等とWLB、女性の労働権は一体の課題であり、これまで以上に働き方改革を公務が率先して推進していくことが重要となる。改めて、「超過勤務の縮減」に向けて、より具体的な方策を講じるよう強く求めておく。現在、公務員連絡会も春季生活闘争方針の検討を行っているが、本格的に改正労働基準法及び人事院規則等の労働時間規制の実効性をはかるため、超過勤務の縮減を具体化する取組を開始することとしている。お互いに職場の状況をより丁寧に把握をしながら、職員、組合員がポジティブに「超過勤務が減って、職場の働き方が変わってきたな」と実感できる方策を考えていただきたい。その上で、様々な課題の要因の根幹にあるのは「定員」問題であることをしっかりと受け止める必要がある。我が国が置かれている厳しい現下の財政状況では、一気に解決をはかることは一筋縄ではいかないとは思うが、現場の声をよく聞いて対応していただきたい。
(3) 公務員の定年の引上げについては、人事院の意見の申出を踏まえ、政府として更なる検討を重ねているとのことであったが、節目節目において前広にわれわれとの十分な交渉・協議を行い、合意に基づく対応を求めておく。
(4) 非常勤職員の課題について、申合せ及び改正後の給与決定指針に基づく対応を実現するために、同一労働同一賃金の原則を踏まえ、内閣人事局としての役割をしっかりと果たしていただきたい。
(5) 公務員制度改革については、遅々として議論が進んでいない。引き続きわれわれとの真摯な議論を求めておく。自律的労使関係制度を措置することが政府の責務であり、労働条件については、労使が交渉で決めることが大原則であることを強調しておく。
(6) 障害者雇用については、組合の立場でも政府の取組に積極的に協力していくが、そのためには現場における十分な認識の共有が必須だ。より丁寧な対応を強く求めておく。

 これに対し、稲山審議官は次の通り答えた。
(1) 給与については、現行、労働基本権が制約されているもと、人事院勧告に基づいて民間準拠を基本として給与改定を行ってきている。それが公務員給与に対する国民の理解を得る上でも重要だと考えている。公務の魅力についての発信、働き方改革の推進、一定の給与確保が有為の人材確保につながると考えている。
(2) 超過勤務については、人事院が規則改正の作業を行っており、その施行に向けた準備を進めるとともに、われわれとしても長時間労働の是正に向けて、実効性ある対策を検討していきたい。
(3) 定員については、厳しい財政状況の中で、新たな行政需要に的確に対応していくため、閣議決定している「国の行政機関の機構・定員管理に関する方針」に沿って業務の見直しに取り組みながら、定員の再配置を推進していくとの考え方のもと、各府省からの要求内容を精査し、必要な対応がなされていると理解している。また、育児・介護等の制約を抱える職員が、産前産後の休暇や介護休暇を取得できるようなワークライフバランスを政策的に推進するための定員措置を行っている。
(4) 障害者雇用については、内閣人事局としても、基本方針に基づき、関係機関と連携しつつ、各府省の人事担当者向けの講習会の開催、障害者雇用マニュアルの整備等による各省職員の障害者雇用への理解の促進、テレワークの活用などの環境整備、ステップアップ雇用の取組など、障害のある方々が安心して働くことのできる職場環境を整備していきたい。

 続いて、交渉委員から、本年頻発した山地災害への対応における体制整備について改善を求める強い要望が出された。

 最後に、森永副事務局長が「本日の回答については、今後に向けての現時点における内閣人事局としての考え方が示されたものと受け止めておく。基本要求に掲げた事項はすべて重要なものだ。特に2019年度の課題として「賃上げの実現」、「働き方改革、とりわけ長時間労働の是正と超過勤務の縮減」、「段階的な定年引上げ」、「障害者雇用」、これらの課題に対する現状認識を政府とわれわれとの間で従前以上に共有するため、引き続き、様々な場面で協議の場を設定すること。要求提出時にも主張したが、「現場」で何が起こっているのか、その根本要因は何なのか、お互いが解決のための処方箋を考えていかなければならない。来年2月に改めて春季要求書を提出する。公務員の賃金・労働条件のみならず、人事行政全般の改善に向け、引き続き、公務員の人事行政に責任を持つ内閣人事局としての機能を遺憾なく発揮することを強く求めておく」と重ねて要請し、要求回答交渉を終えた。

以上