2020年度公務労協情報 15 2020年3月18日
公務公共サービス労働組合協議会
公務員労働組合連絡会

政府、人事院から春の段階の回答引き出す−3/18

−公務員連絡会は回答を確認し、人勧期闘争への決意固める「声明」を発出−


 公務員連絡会は3月18日、委員長クラス交渉委員が武田国家公務員制度担当大臣、一宮人事院総裁と2020年春季要求に関わる交渉を行い、春の段階における最終的な回答を引き出した。(資料1、2)
 公務員連絡会は、代表者会議を開催し、「これらの回答案は、新型コロナウイルス対策という国民生活における喫緊かつ最重要な課題への対応が求められるもと、春季における課題認識を共有するとともに公務員連絡会の意見を聞く姿勢を確認したものの、要求に対して明確に応える回答とはなっていない。しかし、人事院勧告による賃金・労働条件決定制度のもとでの春の段階における交渉の到達点と受け止め、今後、人事院勧告期に向け闘争態勢を堅持・強化していく」との声明(資料3)を確認した。
 また、19日を基本に全国統一行動を実施し、今後の取組に対する決意を固める観点から、各構成組織は、その実情に応じた行動を実施することを決定した。
 この日行われた国家公務員制度担当大臣、人事院総裁との交渉経過は次のとおり。

<国家公務員制度担当大臣交渉の経過>
 武田国家公務員制度担当大臣との交渉は、10時50分から行われた。
 冒頭、柴山議長は、「公務員の定年引上げに関する法律案が国会に提出された。この間の、武田大臣をはじめとする内閣人事局の努力を多とするが、いよいよこれからが正念場である。われわれとしても、速やかな法律案の審議・採決、可決、成立をめざし、国会対策に全力をあげるが、武田大臣におかれては、法案の早期成立に向けて、改めて、最大限の努力をしていただきたい。一方、新型コロナウイルス対策という国民生活における喫緊かつ最重要な課題への対応も求められている。われわれ、公務公共サービスの果たすべき役割は大きい。武田大臣におかれては、職員が安心して職務に臨むことができるよう、必要な定員や予算の確保を含めて、適切な労働条件を確保していただきたい。」と大臣へ要請した上で、2020春季段階の最終回答を求めたのに対して、武田国家公務員制度担当大臣は、資料1のとおり回答した。
 この回答を踏まえ、柴山議長は次の2点について要請した。

(1) 第一に、連合の2020春季生活闘争は、新型コロナウイルスの感染が世界規模での拡大となり、交渉環境が急変する中にあって、各労使が真摯に交渉を重ねてきているが、先行組合の回答は、7年ぶりに平均で2%を割り込むなど、極めて厳しい状況となっている。このような民間の厳しい状況を踏まえつつも、景気の減速を深刻化する悪循環を断ち切るためにも、武田大臣におかれては、賃上げ等による処遇改善が良質な公務公共サービスにつながるとの認識のもと、積極的な役割を果たしていただきたい。

(2) 第二に、「働き方改革」の推進は、官民を問わず、まさに公務が率先して対応すべき最重点の課題である。人事院任せではない、政府としての積極的な対応が必要だ。とくに、非常勤職員の一時金について、速やかに全府省すべての非常勤職員への支給を実現するとともに、支給月数については、国として統一した水準にすることを求めておく。
 また、改正人事院規則等を踏まえた超過勤務の縮減に向けては、政府において、実態を把握した上で、実効ある具体策を積極的に講じていただきたい。

 そのうえで柴山議長は、「最後に、春季の最終回答において、大臣からは、引き続き、労使関係に基づいて、公務員連絡会と誠意をもって話し合っていくとの決意が示されたことを確認する。本日の回答は、国家公務員制度担当大臣の春の段階の最終回答として受け止め、組織に持ち帰って協議したい」と述べ、交渉を終えた。

<人事院総裁交渉の経過>
 一宮総裁との交渉は、13時30分から行われた。
 冒頭、柴山議長は、「新型コロナウイルス対策という、国民生活における喫緊かつ最重要な課題への対応が求められており、われわれ、公務公共サービスの果たすべき役割は大きい。職員が安心して職務に臨むことができるよう、適切な労働条件の確保に向けた人事院の対応を強く求めておく」と要請した。
 続いて、2020春季段階の最終回答を求めたのに対して、総裁が本年の民間春闘の動向について、「本年の民間の春闘については、今月11日の大手企業の集中回答日以降、順次明らかになってきており、ここまでの状況をみると、月例賃金については、ベースアップを見送る企業や昨年の実績を下回る企業が相次ぐなど、昨年と比べて厳しい状況にある。また、一時金についても、昨年の実績を下回る企業が多く見られるところ。新型コロナウイルスの世界的な感染拡大に伴う企業活動の停滞など経済情勢は一層不透明感を増しているが、人事院としては、引き続き中小企業を含めた民間の動向を注視していきたいと考えている」と述べた上で、現段階の考え方等を資料2のとおり回答した。

 この回答に対し、柴山議長は、勧告期を視野に入れて次のとおり見解を示した。

(1) 連合の2020春季生活闘争は、新型コロナウイルスの感染が世界規模での拡大となり、交渉環境が急変する中にあって、各労使が真摯に交渉を重ねてきているが、先行組合の回答は、7年ぶりに平均で2%を割り込むなど、極めて厳しい状況となっている。
 このような民間の厳しい状況を踏まえつつも、景気の減速を深刻化する悪循環を断ち切るためにも、生活の維持・改善を重視した給与勧告に向け、積極的な対応を求めておく。

(2) 非常勤職員の処遇改善については、一時金の支給実態を踏まえた支給水準の統一化や休暇の有給化を求めておく。また、長時間労働の是正については、改正人事院規則のもと、この1年間の状況を検証し、改めて、人事院の役割を適切に果たしていただきたい。われわれとしても、実質的な課題は職場・労使間にあることを踏まえ、取組の再構築をはかっていく。さらに、パワー・ハラスメント防止対策については、苦情相談、紛争解決のための実効性を確保することが最大の課題であり、引き続き、人事院による積極的な対応を求めておく。

(3) 一方、定年引上げに関しては、今通常国会に法律案が提出された。われわれも早期の審議・採決、可決、成立に向けて取り組むが、人事院としても、早期成立に向けて最後まで責任を果たしていただきたい。

 最後に柴山議長は、「春季のこの間の交渉の中で、諸課題について、お互いに認識を共有することができたと考えるので、今後も、われわれ公務員連絡会との交渉・協議を踏まえて検討を進めていただきたい。本日の回答は、人事院の春の段階の最終回答として受け止め、組織に持ち帰って協議したい」と述べ、春季要求をめぐる交渉を締めくくった。

以上




資料1−政府の2020春季要求に対する回答

国家公務員制度担当大臣回答

2019年3月20日



○ 令和2年度の給与については、本年の人事院勧告も踏まえ、国政全般の観点から検討を行い、方針を決定してまいりたいと考えています。その際には、皆様とも十分に意見交換を行ってまいりたいと考えています。

○ 非常勤職員の処遇改善については、民間における同一労働同一賃金の実現に向けた取組等も踏まえながら、引き続き皆様のご意見も伺いつつ、全ての非常勤職員に対する期末・勤勉手当の支給を目指すなど、各府省申合せに沿った処遇改善が着実に進むよう、関係機関とも連携して、必要な取組を進めてまいりたいと考えています。

○ 長時間労働の是正については、昨年4月に超過勤務命令を行うことができる上限時間が定められたことを踏まえ、超過勤務の縮減に向けて取組を進めてまいりたいと考えています。
  また、政府一丸となって、全ての職員が存分に能力を発揮できる環境づくりに努めるとともに、引き続き、皆様のご意見も伺いつつ実効ある施策を推進するとともに、パワーハラスメント防止対策にも適切に取り組んでまいりたいと考えています。

○ 障害者雇用については、障害者が意欲と能力を発揮し、活躍できる環境の整備や、職員の理解促進に取り組んでまいりたいと考えています。

○ 国家公務員の定年を段階的に引き上げるための「国家公務員法等の一部を改正する法律案」を先週13日の閣議において決定し国会に提出したところであり、今後は、法案の成立に向けてしっかり取り組んでまいります。

○ 自律的労使関係制度については、多岐にわたる課題があることから、皆様と意見交換しつつ、慎重に検討してまいりたいと考えています。

○ 最後になりますが、今後とも公務能率の向上と適正な勤務条件の確保に努めるとともに、安定した労使関係を維持する観点から、職員団体とは誠意を持った話合いによる一層の意思疎通に努めてまいりたいと考えています。



資料2−人事院の2020春季要求に対する回答

人事院総裁回答

2020年3月18日



1.賃金の改善について
○ 人事院としては、労働基本権制約の代償措置としての勧告制度の意義及び役割を踏まえ、情勢適応の原則に基づき、必要な勧告を行うことを基本に臨むこととしています。
○ 俸給及び一時金については、国家公務員の給与と民間企業の給与の実態を精緻に調査した上で、その精確な比較を行い、適切に対処したいと考えています。
○ 諸手当については、民間の状況、官民較差の状況等を踏まえ、必要となる検討を行っていきたいと考えています。

2.労働時間の短縮、休暇等について
○ 長時間労働の是正については、昨年、人事院規則を改正し、超過勤務を行うことができる時間の上限の設定等を行って、昨年4月から施行しています。
  長時間労働の是正は、政府全体で取り組む必要のある重要な課題であり、人事院として、今後とも、制度の運用状況についてフォローアップを行い、必要に応じて各府省を指導していくなど、引き続き適切に役割を果たしていきたいと考えています。
○ 両立支援制度を含む職員の休暇、休業等については、これまで民間の普及状況等を見ながら改善を行ってきたところであり、引き続き、職員団体の皆さんの意見も聴きながら必要な検討を行っていきたいと考えています。

3.非常勤職員の処遇改善について
  非常勤職員の給与については、平成29年7月に改正した指針に基づく各府省の取組が進んでいるところであり、引き続き、常勤職員の給与との権衡をより確保しうるよう取り組んでいきたいと考えています。
  非常勤職員の休暇については、民間の状況等を見ながら、引き続き適切に対応していきたいと考えています。

4.高齢期雇用施策について
○ 定年引上げに関しては、今月13日に国家公務員法等の一部を改正する法律案が国会に提出されました。人事院としても、成立に向けて国会審議等に適切に対応してまいります。また、定年引上げ後の給与制度の在り方については、職員団体の皆さんの意見を聞きながら検討を進めていきたいと考えています。
○ 再任用職員制度については、民間企業における定年制や高齢層従業員の給与の状況、各府省における再任用制度の運用状況を踏まえつつ、引き続き再任用の給与の在り方について必要な検討を行っていきたいと考えています。

5.障害者雇用について
  障害者雇用に関しては、政府一体となった対応が進められており、人事院としても、フレックスタイム制の柔軟化等を実現するための人事院規則等の改正や「合理的配慮に関する指針」の発出等の措置を行ったほか、障害者選考試験を実施するなどしています。
  このほか、厚生労働省と連携して、各府省における合理的配慮事例の情報共有などの支援を行っており、今後とも、必要に応じて各府省への支援を行っていきたいと考えています。

6.女性の活躍推進について
  人事院としては、女性の活躍推進を人事行政における重要な課題の一つと認識しており、女性の採用・登用の拡大や両立支援策の拡充など様々な施策を行ってきているところです。
  引き続き、女性を対象とした人材確保活動や女性職員の登用に向けた研修、両立支援施策等により、各府省の取組が進むよう支援していきたいと考えています。

7.健康・安全確保等について
  心の健康づくりをはじめとした健康管理対策やハラスメント対策の推進については、公務全体の共通の課題として、これまでも各府省と協力して積極的に取り組んできたところです。
  パワー・ハラスメントの防止については、先週、職員福祉局長が説明したとおり、人事院規則等の制度措置について4月1日に公布、6月1日に施行できるよう準備を進めているところであり、人事院としてしっかりと取り組んでいきたいと考えています。
  人事院としては、引き続き健康安全対策の取組を進めていきたいと考えています。

8.新型コロナウイルス感染症対策について
  今般の新型コロナウイルス感染症対策については、いわゆる出勤困難休暇や時差出勤に関する休憩時間の特例の措置を行い、また、本日、防疫等作業手当について適用範囲と額の特例を設けたところです。今後とも事態を注視し、必要な対応を行っていきたいと考えています。



資料3−2020春季生活闘争に関わる公務員連絡会の声明

声  明


(1) 本日、公務員連絡会は、国家公務員制度担当大臣、人事院総裁と交渉を持ち、2020年春季要求に対する回答を引き出した。

(2) 連合の2020春季生活闘争は、新型コロナウイルスの感染が世界規模での拡大となり交渉環境が急変する中にあって、各労使が真摯に交渉を重ねているが、先行組合の回答は、7年ぶりに平均で2%を割り込むなど、極めて厳しい状況となっている。今後、本格化する中堅・中小組合の交渉においては、景気の低迷を打破する意味からも、個人消費の拡大に向けた賃上げが不可欠という立場からの対応が求められている。

(3) 公務員連絡会は、連合に結集し、「底上げ」「底支え」「格差是正」と「すべての労働者の立場にたった働き方」の実現を図るため、非常勤職員を含む公務・公共部門で働くすべての労働者の待遇改善をめざし、賃金引上げ、超過勤務の縮減、パワー・ハラスメント防止対策の措置などを最重要課題として位置づけ、取組を進めてきた。

(4) 2月18日の要求提出以降、新型コロナウイルス対策のために中央行動を中止とする異例の取組となったが、3月3日の幹事クラス、12日の書記長クラス交渉を積極的に積み上げてきた結果、委員長クラス交渉委員による最終交渉で、国家公務員制度担当大臣は、@2020年度賃金については、公務員連絡会の意見を聞く、A非常勤職員の処遇改善については、民間における取組を踏まえながら、公務員連絡会の意見も聞きつつ、全ての非常勤職員に対する期末・勤勉手当の支給を目指すなど必要な取組を進めていく、B長時間労働の是正については、 超過勤務命令の上限時間が定められたことを踏まえ、超勤縮減に向けて取り組む、また、パワー・ハラスメント防止対策にも適切に取り組む、C障害者雇用については、環境の整備や職員の理解促進に取り組む、D定年の引上げについては、法案の成立に向けてしっかり取り組 む、E公務員連絡会とは誠意を持った話合いによる一層の意思疎通に努めていく、などと回答した。また、人事院総裁は、@賃金等については、情勢適応の原則に基づき、必要な勧告を行う、A長時間労働の是正については、政府全体で取り組む必要のある重要な課題であり、 制度の運用状況についてフォローアップを行い、引き続き適切に役割を果たしていく、B非常勤職員の給与については、常勤職員の給与との権衡をより確保し得るよう取り組む、休暇については、民間の状況等を見ながら適切に対応していく、C定年の引上げについては、法案 の成立に向けて適切に対応する、再任用の給与の在り方について必要な検討を行っていく、D障害者雇用については、必要に応じて各府省への支援を行っていく、Eパワー・ハラスメントの防止については、人事院規則等の制度措置を行い、しっかりと取り組む、F新型コロナ ウイルス感染症対策については、今後とも事態を注視し、必要な対応を行っていく、などと回答した。

(5) これらの回答は、新型コロナウイルス対策という国民生活における喫緊かつ最重要な課題への対応が求められるもと、春季における課題認識を共有するとともに公務員連絡会の意見を聞く姿勢を確認したものの、要求に対して明確には応えていない。しかし、人事院勧告による賃金・労働条件決定制度のもとでの春の段階における交渉の到達点と受け止め、今後、人事院勧告期に向け闘争態勢を堅持・強化していく。

(6) 2020年度賃金については、民間の厳しい状況を踏まえつつも、景気の減速を深刻化する悪循環を断ち切るためにも、生活の維持・改善を重視した給与勧告の実現をめざす。非常勤職員の処遇改善は、一時金の支給実態を踏まえた支給水準の統一化をはかることや休暇の有給化について、春季交渉を端緒として求める。また、長時間労働の是正については、改正人事院規則のもと、この1年間の状況を検証し、改めて、政府、人事院の果たすべき役割を追求するとともに、実質的な課題は、職場・労使間にあることを踏まえた取組の再構築をはかる。さらに、パワー・ハラスメント防止対策については、苦情相談、紛争解決のための実効性を確保させることが最大の課題であり、引き続き、3月末にも行われる人事院規則の制定に向けた人事院との交渉・協議を継続していく。
 一方、定年引上げに関しては、今通常国会に法律案が提出されたことから、速やかな法律案の審議・採決と成立をめざし公務労協に結集して取り組んでいく。

(7) 公務員連絡会は、国民の命と暮らしを守るための新型コロナウイルス感染拡大の早期収束に向けた公務・公共をはじめとする社会全体としての対応に協働するとともに、今後の、中小及び地域民間構成組織、独立行政法人等関係組合の交渉強化に連帯し、すべての労働者の賃金引上げを実現するため、連合、公務労協に結集し、全力をあげる。

2020年3月18日

公務員労働組合連絡会