2020年度公務労協情報 21 2020年7月9日
公務公共サービス労働組合協議会
地方公務員部会

地公部会が、全人連に対し民間給与実態調査等に関わる要請書を提出-7/9
−基本権制約の代償機関としての使命を果たすよう要請−

 公務労協地方公務員部会は、7月9日、全国人事委員会連合会(全人連)に対して、民間給与実態調査等に関する要請を行い、要請書に対する回答を引き出した。
岡崎事務局長(右)に要請書を手交する二階堂議長(左)
 10時から都内で行われた全人連への要請には、地方公務員部会からは二階堂議長(全水道委員長)と事務局長が出席し、全人連からは岡崎事務局長(東京都人事委員会事務局長)が対応した。

 冒頭、二階堂議長は要請書(資料1)を提出し、次の通り述べた。
(1) 新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、景気動向は全くの不透明な状況だ。人事院は「令和2年職種別民間給与実態調査」を先行して一時金だけ始めているが、月例給についても早期に調査を始め、精確な官民比較の上で、生活を守るための賃金水準の確保が必要である。
(2) 医療機関や学校現場も含めた各自治体職場では、コロナへの対応をはじめ、住民の期待に応えるべく、日夜職務に全力を尽くしているが、勤務環境は大変厳しい。職員が国民・住民の期待に応え、より質の高い公務・公共サービスを確実に提供していくためには、職員の雇用の安定と賃金・労働条件の改善・確保が不可欠だ。
(3) 各人事委員会が、労働基本権制約の代償機関の立場から、中立かつ公正な第三者機関としての使命を十分に果たされるよう強く求めるとともに、下記事項の実現に向け最大限の努力をお願いしたい。

 続いて、加藤事務局長が要請書の趣旨を説明した。
 地方公務員部会の要請に対し、岡崎全人連事務局長は以下の通り回答し、要請を終えた。

<全人連回答>

令和2年7月9日


 この度の要請につきまして、確かに承りました。
 速やかに、全国の人事委員会にお伝えします。

 さて、新型コロナウイルス感染症の拡大は、世界経済に深刻な打撃を与え、人々の生活様式に大きな変容を迫るなど、社会経済に多大なる影響を及ぼしており、従来の常識では対応できないような時代の転換点を迎えております。

 国内の経済状況に目を向けると、6月の月例経済報告においては、景気について、「新型コロナウイルス感染症の影響により、極めて厳しい状況にあるが、下げ止まりつつある。」との判断が示されていますが、先行きについては、「国内外の感染症の動向や金融資本市場の変動等の影響を注視する必要がある。」としています。

 また、民間における春季労使交渉の状況は、大手企業の回答状況について、米中貿易摩擦や消費税率の引上げなどを背景として、定期昇給を含めた月額賃金の引上げは、前年を下回る回答であったと報道されています。一方、中小企業においては、賃上げの流れは継続しているものの、賃上げ額・率は昨年を下回る状況にあります。

 さらに本年は、新型コロナウイルス感染症の拡大が企業業績にどの程度影響を及ぼしているか、労使交渉の動きも含め、引き続き動向を注視する必要があると考えております。

 民間における賃金の状況を的確に把握するために毎年実施している「職種別民間給与実態調査」について、本年は、新型コロナウイルス感染症の影響により、例年より遅い6月29日から7月31日の調査期間で、現在、調査を進めているところです。
 本日、要請のありました個々の内容は、各人事委員会において、調査の結果や各自治体の実情等を踏まえながら、本年の勧告に向けて検討していくことになるものと思います。

 人事委員会の重要な使命は、中立かつ公正な第三者機関として、公務員の給与等の勤務条件について、社会情勢に適応した、適正な水準を確保することであると認識しております。

 全人連といたしましては、今後も、各人事委員会の主体的な取組を支援するとともに、各人事委員会や人事院などと十分な意見交換に努めてまいります。

(資料1)

2020年7月9日

全国人事委員会連合会
 会 長  青 山  ●(やすし) 様

公務公共サービス労働組合協議会
地方公務員部会議長 二階堂健男


民間給与実態調査等に関わる要請書

 各人事委員会における地方公務員の賃金・労働条件の改善に向けたご努力に敬意を表します。
 さて、新型コロナウイルス感染症拡大の影響から、景気減速懸念が強まっており、景気動向は先行き不透明な状況になっています。
 人事院は、「令和2年職種別民間給与実態調査」の実施について、本年は、新型コロナウイルス感染症の拡大の影響を考慮し、賞与等の調査を先行実施し、月例給の調査については、今後の状況を踏まえて実施時期等を判断するとしています。しかし、均衡の原則の観点からすれば、月例給についても早期に調査を開始し、民間の状況を精確に比較した上で、生活を守るための賃金水準を確保することが必要です。
 一方、医療機関や学校現場も含めた各自治体職場においては、新型コロナウイルス感染症への対応をはじめ、住民の期待に応えるべく、それぞれの持ち場で日夜自らの職務に全力を尽くしておりますが、その勤務環境は大変厳しいものとなっています。職員が国民・住民の期待に応え、より質の高い公務・公共サービスを確実に提供していくためには、職員の雇用の安定と賃金・労働条件の改善・確保が不可欠です。
 そのためには、各人事委員会が、労働基本権制約の代償機関の立場から、中立かつ公正な第三者機関としての使命を十分に果たされるよう強く求めるとともに、下記事項の実現に向け最大限の努力を払われますよう要請します。



1.2020年度の民間給与実態調査にあたっては、現行の比較企業・事業所規模を堅持するとともに、社会的に公正な仕組みとなるよう抜本的な改善を検討すること。

2.民間賃金実態に基づく公民較差を精確に把握し、地方公務員の生活を守るための賃金水準を確保すること。

3.諸手当については、地域の実情や、新型コロナウイルス感染症拡大防止の関連業務をはじめとする職務や生活実態を踏まえ、組合との十分な交渉・協議に基づき進めること。

4.公立学校教員の給与に関わり、引き続き、各人事委員会が参考としうるモデル給料表を作成・提示すること。また、作成に当たっては、関係労働組合との交渉・協議、合意に基づき進めること。

5.人事委員会の勧告に向けた調査や作業に当たっては、組合との交渉・協議、合意に基づき進めること。

以上