2020年度公務労協情報 23 2020年8月5日
公務公共サービス労働組合協議会
公務員労働組合連絡会

人事院に2020人勧期要求書を提出−8/5

 公務員連絡会委員長クラス交渉委員は、8月5日13時30分から、一宮人事院総裁との交渉を実施し、「2020年人事院勧告に関わる要求書」(別紙)を提出した。
 給与改定勧告に当たっては、公務員連絡会との交渉・協議、合意に基づき行うことを求めるとともに、新型コロナウイルス感染症に対する超過勤務、休暇等の措置の検証と必要な労働条件等の改善などを主要課題として交渉を強化していく。

 交渉の冒頭、柴山議長は、
(1) 2020年人事院勧告に関わる要求書の提出に当たって、公務員連絡会を代表して一言述べさせていただく。
(2) 今年の職種別民間給与実態調査は、賞与等の調査が先行実施され、月例給の調査は、今月17日から9月末まで実施されることとなった。新型コロナウイルス感染拡大が継続するもと、調査は困難な状況にあることを共有しつつ、人事院及び人事委員会における感染防止に留意した尽力をお願いする。
(3) さて、新型コロナウイルスは、いまだに収束の兆しを見せないなかで感染拡大防止と社会経済活動の両立は困難を極めている。
 内閣府が3日に発表した2020年1〜3月期の実質GDPの再改定値は前期比0.6%減、年率換算で2.2%減と2四半期連続のマイナスとなった。さらに、4〜6月期については、戦後最大の落ち込みになるとの指摘もあり、わが国の経済は極めて厳しい状況に置かれている。
(4) このような環境のもと、新型コロナウイルス対策をはじめ、今年7月の豪雨災害など近年多発する自然災害への対応など、国民生活の基盤を担う公務・公共サービスの現場では、職員の懸命な奮闘が続いている。
 しかし、コロナ禍における「新たな日常」のもと、テレワークをはじめとした働き方改革にも積極的に取り組んでいるが、長時間労働の蔓延など勤務環境の厳しさは改善されておらず、適切な要員や労働条件等の確保が必要だ。
(5) むすびに、現在、公務員連絡会では、インターネットによる署名行動(ネットシグネ)に取り組んでおり、しかるべき時期に人事院に提出するので、現場の職員の声をしっかりと受け止めていただきたい。今後の交渉での前向きな対応を求めるとともに、本日提出した要求書に対する最終的な回答を、後日、総裁からいただきたいと考えているので、よろしくお願いする。
と述べ、その後、吉澤事務局長が要求事項について説明した。

 これを受けて一宮人事院総裁は、「ご要求は確かに受け取りました。本年は、新型コロナウイルス感染症の拡大により、民間給与実態調査の日程にも影響が生じているところですが、人事院としては、国会と内閣に対して必要な勧告・報告を行うという国家公務員法に定められた責務を着実に果たしていく所存です。今後、本年の勧告に向けて、要求された課題について皆さんの意見も聞きながら、検討を進めてまいりたいと考えています」と応えた。



(別紙)2020人勧期要求書

2020年8月5日

人事院総裁
 一 宮 なほみ 様

公務員労働組合連絡会
議 長  柴 山 好 憲


2020年人事院勧告に関わる要求書

 貴職におかれましては、公務員人事行政にご尽力されていることに敬意を表します。
 新型コロナウイルスは、いまだに収束の兆しを見せないもと、緊急事態宣言解除後は感染拡大防止と社会経済活動の両立が困難を極めています。一方、「経済財政運営と改革の基本方針2020」においては、わが国経済は感染症拡大の甚大な影響を受け、極めて厳しい状況にあり、とくに非正規雇用者やフリーランス、中小・小規模事業者がより厳しい生活・事業状況を強いられるなど、弱い立場の方々がしわ寄せを受けて苦境に陥っていると指摘しています。
 また、東日本大震災や熊本地震、昨年の台風被害、令和2年7月豪雨など、近年多発する自然災害からの復旧・復興なども喫緊の課題であり、新型コロナウイルス対策とあわせて、国民生活の基盤を担う公務・公共サービスの果たすべき役割は大きくなっています。
 このような環境のもと、国民・住民の安心と安全を確保するため、高い使命感と責任をもって公務員の懸命の奮闘が続いています。しかし、テレワークをはじめとした働き方改革が進められているもと、増大する業務量に見合った要員が恒常的に不足し超過勤務が蔓延するなど、勤務環境は厳しいものとなっており、良質な公務・公共サービスを確実に提供するためにも、必要な要員と適切な賃金労働条件が確保されなければなりません。
 公務員連絡会は、このような認識に基づき「2020年人事院勧告に関わる要求書」を提出します。貴職におかれましては、下記事項の実現に向け、最大限努力されるよう要求します。


1.賃金要求について
(1) 月例給与について
  2020年の給与改定勧告に当たっては、職員の月例給与の水準の維持を最低とし、公平・公正で客観的な官民比較に基づき、公務員連絡会と十分交渉・協議し、合意に基づいて行うこと。
(2) 一時金について
  一時金については、精確な民間実態の把握と官民比較を行い、職員の生活を守る支給月数を確保すること。
(3) 諸手当について
  社会経済情勢の変化、職員の職務や生活実態を踏まえて改善することとし、公務員連絡会と十分交渉・協議し、合意に基づいて勧告作業を進めること。
(4) 再任用職員の給与について
  再任用職員の給与制度について、その経済的負担、定年前職員との均衡を考慮して改善することとし、公務員連絡会との十分な交渉・協議、合意に基づいて行うこと。
2.新型コロナウイルス感染症への対応について
  新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、公務職場の実態を踏まえた感染防止や安全確保を強化するとともに、関連業務をはじめとする給与・労働条件を改善すること。また、この間の人事院の対応について、公務員連絡会との交渉・協議による検証と、それを踏まえて改善をはかること。
3.労働諸条件の改善について
(1) 労働時間の短縮及び休業制度等について
  公務職場におけるワーク・ライフ・バランスを実現するため、「働き方改革」等を次の通り進めること。
 @ 各府省においてICT等を活用した客観的で厳格な勤務時間管理を直ちに行うよう措置するなど、超過勤務の縮減に向けた取組について、人事院として積極的に役割を果たすこと。
 A 改正人事院規則等を踏まえ、「他律的業務の比重の高い部署の指定」の統一性の確保や厳格な上限規制の特例業務の扱いを含め、各府省への指導等を徹底すること。また、新型コロナウイルス感染拡大に伴う大幅な超勤増加をはじめ超過勤務の実績等を検証するとともに、   これを踏まえ必要な対策を講じること。
 B 1か月当たり45時間を超え60時間以内の超過勤務に対する手当の割増率を引き上げること。あわせて、超過勤務手当の全額支給の徹底について必要な対応をはかること。
 C 公務において、「勤務間インターバル」を確保すること。
 D 家族介護を理由とした離職を防止するため、介護休業制度を整備すること。
 E 妊娠・出産・育児に関わる休暇制度について、新設を含め改善を図ること。
(2) 障害者雇用について
  障害者が、無理なく、かつ安定的に働くことができるよう、人事院としての役割を適切に果たすこと。
(3) 女性公務員の採用等の推進について
  女性国家公務員の採用・登用・職域拡大の着実な推進に向け、積極的な役割を果たすこと。
(4) 福利厚生施策の充実について
 @ 心の健康づくりについては、勤務条件や職場環境の改善など総合的に取り組むこととし、ストレスチェックや「職員の心の健康づくりのための指針」等に基づく施策の着実な推進に向けて必要な対応を図ること。
 A ハラスメントの防止については、一層有効な対策を着実に推進すること。
   パワー・ハラスメント対策については、本年4月1日に公布、6月1日に施行された人事院規則10-16に基づいた各省各庁の取組状況を把握し、必要な指導を行うこと。また、苦情相談、紛争解決における人事院の役割を着実に果たすこと。とくに、新型コロナウイルス感   染拡大に伴う業務との関係から生じた、行政サービス利用者等から受ける職員の負荷について、実態等を把握すること。
4.非常勤職員等の制度及び待遇改善について
(1) 同一労働同一賃金をはじめとする均等待遇原則に基づき、非常勤職員等の給与を引き上げること。また、改正後の「非常勤職員給与決定指針」等に基づく、各府省の取組状況を踏まえ、現行指針のさらなる改善に向けて公務員連絡会と協議を行い、非常勤職員の着実な待遇の改善について一層努力すること。
(2) 新型コロナウイルス感染拡大に伴い、非常勤職員への雇用・待遇等への影響についての実態等を把握し必要な対応をはかること。
(3) 期間業務職員制度について、当該職員の雇用の安定と待遇の改善となるよう、適切な運用に努め、必要な改善措置を講じること。
(4) 非常勤職員の休暇制度等については、常勤職員との均等待遇をはかるため、無給休暇の有給化等を進めること。
(5) 非常勤職員制度の改善に関するこれまでの取組を踏まえ、制度の抜本的改善に向けた検討を継続することとし、公務員連絡会と十分交渉・協議し、作業を進めること。

以上