みんなの力で、労働基本権の確立と民主的な公務員制度改革を実現しよう

労働基本権確立・公務員制度改革

対策本部ニュース

No.49 2001年10月17日

連合官公部門連絡会


対策本部が自民党行革本部と意見交換し「労働基本権の確立」求める
「対等・平等な労使関係の確立が公務員制度改革の最重要課題」と主張

 連合官公部門連絡会の対策本部は、10月 16日午後2時から、自民党の行政改革本部正副役員会との間で、公務員制度改革と公務員の労働基本権確立の問題を中心に意見交換した。
 12月の「公務員制度改革大綱」の策定を前にして、連合官公部門に対する自民党行革本部からのヒアリングの要請を受けて行ったもので、組合側は「『基本設計』や『新人事制度の基本構造』に沿って人事・給与制度を見直すのであれば、労働基本権の確立は不可欠」と主張し、制度設計のなかで10月中に見解を示すよう努力を求めた。
 なお、このヒアリングには、自民党側から行政改革本部の太田本部長、橋本最高顧問、野中・中村各常任顧問、牧野本部長代理、熊代事務局長、茂木・林両事務局次長らが参加、対策本部からは丸山副本部長(国公総連委員長)、山本事務局長(公務員共闘事務局長)、轆轤副事務局長(全官公事務局長)らが出席した。
 冒頭、丸山副本部長から、連合官公部門連絡会の考えをまとめた「公務員制度改革と公務員の労働基本権について」(別紙)と題するペーパーを提出し、「公務員制度改革の検討が進められているが、最重要課題である労働基本権確立の課題に対する考え方を説明したい。そもそも、『公務員制度を抜本的に改革するに当たって労働基本権確立の問題は避けて通れない』として、この問題は本年3月に自民党から提起されたものであり、変革の時代に相応しい公務員制度改革がなされるよう強く望む」と前置きし、次のような意見を述べ理解を求めた。
@ 公務員制度改革の最も重要なポイントは、公務にも民間に準じてパートナーシップに基づく対等平等な新たな労使関係を確立することと考える。そのためには、労働基本権制約の立法政策を改め、労使が責任を持って賃金・労働条件を決定できるシステムの確立が必要である。
A 「基本設計」や「新人事制度の基本構造」に沿って人事・給与制度を見直すのであれば、団体交渉による賃金・労働条件決定制度の確立は不可欠だ。労働基本権を制約したまま各府省の人事管理権限を拡大し、能力・実績主義的な人事・給与制度に見直すことになれば、使用者たる政府・当局の権限だけが一方的に強まり、基本権制約の代償機能は著しく低下して違憲性の疑いが生じることになる。国際労働基準に照らしても、先進国に相応しい制度とはいえない。
B われわれは、石原行革担当大臣に、10月末までに基本権の在り方について回答するよう申し入れている。したがって、自民党としても、早急に労働基本権問題に関わる結論を得るよう最大限の努力を要請したい。
C キャリア制度の廃止と「天下り」の禁止は、民主的な公務員制度改革を行ううえで必要と考えている。
D われわれは、成熟した労使関係に基づき、社会的責任を自覚した公務・公共部門の労働運動の発展と組織の強化・拡大を目指して取り組んでいる。
 こうした組合側の意見に対し自民党行革本部側からは、@労働協約締結権について、どのようなイメージを持っているのか、A民間の労使関係と身分が保障され解雇の心配のない公務員とを同一に扱うことには若干無理がある、B公務員の人事・給与については、能力や職責を評価して処遇に反映する仕組みにし、あるべき姿を描いた結果、労働基本権問題に抵触するのかどうか見極めて議論すべきものと考えている、C諸外国の労働基本権については、どのように理解されているのか、D従来の公務員の労使関係をみると、徹夜交渉や政治主義的な運動がみられた、E権限・予算を背景とした「天下り」は規制すべきだが、それ以外は大臣の承認制のもとで認めてもよいと考えている、などの質問・意見がだされた。
 意見交換のなかで、労働基本権の在り方について、組合側は「10月末までに結論を得るよう最大限の努力」を重ねて要請し、「労働基本権問題を曖昧にしたまま人事・給与制度の見直しが先行して検討されるのは問題であり、そのスタンスを取り続けるのであれば、人事・給与制度の設計自体を待ってくれといわざるを得ない」と釘を刺した。これに対し自民党行革本部側は、「労働基本権の在り方は人事・給与制度の検討が進んだ段階で検討するが、それほどタイムラグを置かない『半歩』遅れた形で提起できると思う」との考えを示した。
 自民党行革本部との意見交換は、今月末までに再度行うことにしている。
 なお、この日、人事院と総務省行政管理局からのヒアリングも行われた。

(別紙)

公務員制度改革と公務員の労働基本権について

2001年10月16日
連合官公部門連絡会

1.公務員制度改革の最も重要なポイントは、公務にも民間に準じたパートナーシップに基づく対等平等な労使関係を確立することです。

(1) 社会経済情勢の大きな変化の中で、既存の社会経済システム、行政システムの見直しに対応した形で公務員制度を21世に相応しいものに改革することが求められています。
 これまでの特権的で閉鎖的な公務員制度を民主的な形で改革していくためには、@国民が常に公務員をコントロールするシステムを作ること、A公務内部においても成熟社会に相応しい新たな労使関係を確立していくこと、が極めて重要です。
 これまでとかく一方通行で、「対立」的になりがちであった労使関係を、国民本位の中立・公正で透明な行政を目指すという価値意識を共有した、対等平等の原則に基づいたパートナー関係に改革していくことが必要です。
(2) そのためには、公務員の「労働基本権制約」という立法政策を改め、公務においても労使が責任を持って賃金・労働条件を決定できるシステム―団体交渉による賃金・労働条件決定制度を確立することが必要だと考えます。

2.政府の行政改革推進事務局が検討している「基本設計」や「基本構造」に沿った人事・給与制度の見直しを行うのであれば、労働基本権の確立と団体交渉による賃金・労働j条件決定制度の確立は不可欠です。

(1) 周知の通り、現在、公務員の労働基本権は公務の職務の公共性や地位の特性等を理由に一律・全面的に制約され、それに対する代償措置として人事院勧告制度が設けられています。
 仮に、労働基本権を制約したまま、政府の行政改革推進事務局が検討している方向で@人事院の権限を縮小して各府省の人事管理権限を拡大し、A能力・実績主義的な人事・給与制度に見直すこととなれば、使用者たる政府・当局の権限だけが一方的に強まり、労働基本権制約の代償機能は著しく低下することとなり、全農林最高裁判決に照らしても違憲性の疑いが生じてきます。
(2) われわれは、政府が「公務員制度改革の基本設計」や「新人事制度の基本構造」にそった形で公務員制度―人事・給与制度の見直しを検討するのであれば、それとあわせ、公務員の労働基本権を確立し、人事院勧告制度に代わって団体交渉による賃金・労働条件決定制度を確立することは不可欠であると考えます。そうでなければ、今回の公務員制度改革全体が極めて整合性のないものになります。また、国際労働基準に照らしても、到底先進国に相応しい制度とはいえません。

3.貴党としても、10月末までに労働基本権問題や賃金・労働条件決定制度に関わる結論を得るよう最大限の努力を要請します。

(1) 政府の行政改革推進事務局は、10月末か11月上旬に「人事・給与制度についての具体案」を提示し、12月中には「公務員制度改革の大綱」を決定するとしてます。
 われわれは、9月11日に石原行革担当相に、10月末までに労働基本権の在り方について回答を示すよう申し入れました。しかし同事務局は、今日に至るも、「人事・給与制度の在り方の細部を詰めてから、制約の在り方等について検討する」として、その考え方を示していません。これでは、人事・給与制度の改革案に対するわれわれの基本スタンスが検討できません。
(2) 公務員制度改革に関わって政府が約束した「誠意ある交渉・協議」は、同事務局から正式の提案がないまま、いまだ行われていません。人事・給与制度に関わる「交渉・協議」を十分に行うためにも、貴党として、早期に労働基本権等の在り方について結論を得るよう最大限の努力を強く要請します。

4.われわれは、成熟した労使関係に基づき、社会的責任を自覚した公務・公共部門の労働運動の発展と組織の強化・拡大を目指して取り組んでいます。

以上