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労働基本権確立・公務員制度改革

対策本部ニュース

No.56 2001年11月6日

連合官公部門連絡会


連合官公部門が石原行革担当大臣と交渉
早急に「労働基本権のあり方」の見解示すよう強く求める

 連合官公部門連絡会は11月6日午前10時20分から、内閣府で石原伸晃行革担当大臣と交渉し、労働基本権のあり方について現在の検討状況を質した。石原大臣の回答は、「まだ結論がでていないが、できるだけ早く結論をだせるようにしたい」との見解に留まった。また、席上、推進事務局から、12月の「大綱」の基本となる「行政職に関する新人事制度の原案」が正式に提示された。
 交渉には、連合官公部門の対策本部側から丸山本部長(国公連合委員長)、大原(自治労委員長)・榊原(日教組委員長)・石川(全逓委員長)各副本部長、山本事務局長、轆轤副事務局長が参加した。行革推進事務局からは春田公務員制度等改革推進室長、高原参事官が同席した。
 冒頭、丸山本部長から、@労働基本権については、10月末までにその考え方を示すよう要求してきたが、現在の検討結果はどうか、A12月の「大綱」策定にむけた作業スケジュールを示してほしい、B今後の交渉・協議は、単に意見を聞くだけでなく、職員団体との合意を必要とすることを確認願いたい、とのべ、回答を求めた。
 これに対し石原大臣は、次のような見解を示した。
@ 労働基本権問題は、非常に重要な問題であり、人事制度とも密接に関係していることから、早く固める必要があると認識しているが、現在までのところ結論がでていない。積極的に検討を進めるよう事務局にも指示しているが、議院内閣制のもとで、与党における議論も重要な要素であり与党の意向も取り入れて行く必要がある。できるだけ早く与党に結論をだしてもらうようお願いしているところだ。「大綱」策定までの間みなさんとも議論ができるようできるだけ早く結論がだせるよう事務局に指示したい。もうしばらく時間を貸してほしい。
A 本日、この後、「行政職に関する新人事制度の原案」を提示したいと考えており、今後、この具体案をもとに更に関係者と議論を深めていきたいと考えている。職員団体とは、引き続き誠実に交渉・協議を行っていく。
B 以前より、職員団体とは誠実に対応してきたつもりであり、今後の交渉・協議に当たっても十分に意見を聞きながら、大綱の策定に活かしていきたいと考えている。「合意の確認」といわれるが、交渉・協議については誠意を持って対応したい。取り入れられる部分については取り入れていきたいと考えている。十分意見を聞かせてほしい。
 こうした見解表明に対し組合側は、「労働基本権のあり方は、人事・給与制度の制度設計と並行して議論されるべきものである。『大綱』策定までの時間が限られたなかで、いつ頃をメドに結論をだすのか」と質し、早期に結論を示すよう重ねて見解を求めた。
 これに対し石原大臣は、「与党の意見がまだ固まっていない」ことを理由に時期については明言を避けた。また、組合側の「12月『大綱』策定との関係から結論がだされる時期については11月下旬から12月上旬がタイムリミットと考えるがどうか」との指摘に、同席した春田室長から「できるだけそういう方向で早く結論がだせるよう努力したい」との見解が示された。組合側は最後に、「公務員制度を抜本的に見直すとして始まった今回の制度改革では、きちんとした筋道の通った整合性のあるものにしなければならないと考えている」とのべ、労働基本権にさわらずに使用者側の「いいとこ取り」に留まることは認められない、とクギを刺した。
 このあと、春田室長から、「行政職に関する新人事制度の原案」が正式に提示された。対策本部では、9日に再度、企画委員による交渉で、「原案」の考え方について説明を受け、交渉・協議に入ることにした。


行革推進事務局の「行政職に関する新人事制度の原案」提示に対する考え方


 行政改革推進事務局は、11月6日の石原大臣との交渉の席上、「行政職に関する新人事制度の原案」(以下「原案」)を「対策本部」に提示してきた。
行革推進事務局によれば、この「原案」は12月に決定される予定の「大綱」の原案そのものではないが、「大綱」の基本となるものと位置づけている。今後、各府省やわれわれとの議論を踏まえ、できうる限り「原案」を「大綱」に盛り込みたいとの考え方である。
 「対策本部」は、「基本構造」に対してはその性格が曖昧なことから「意見交換」として対応してきたが、この「原案」に対しては、使用者としての政府の正式の提案であることなどを踏まえ、本格的な交渉・協議に入っていくことを石原大臣や行革推進事務局にも伝えた。今後「交渉・協議」を進めていくに当たっては、賃金・労働条件事項については「合意」に基づいて大綱原案を策定することについて行革推進事務局に約束させる必要がある。

 本日提示された「原案」は、6月の「基本設計」、9月の「基本構造」に基づいて作業を進めてきたものであるが、新人事制度の基本的な考え方等に大きな変化はなく、これまでわれわれが指摘してきた基本的な問題点が何ら解消されていないばかりか、制度自体が具体化されることによってその問題点や矛盾がますます浮き彫りとなっている。その基本的な問題点は次の通り確認できる。
@依然として、21世紀に相応しい公平・公正、透明で国民本位の公務員制度に改革していくための基本的な理念が欠落しており、キャリア制度を維持したまま公務に「能力・実績主義的な人事管理」を導入し、「競争原理」を持ち込もうとする考え方しか見えない。
A人事管理における人事院の関与を「基準」設定に制限し、各府省の権限を大幅に拡大する制度設計でありながら、またしても政治的判断を優先して、賃金・労働条件決定制度の在り方や労働基本権の在り方についての結論が先延ばしされている。そのことによって、人事院の代償機能を縮小しながら、人事院勧告制度や労働基本権の制約を現行のまま維持しようとする意図が次第に鮮明となりつつある。
B新人事制度の内容自体についても、「基本構造」などでわれわれが指摘してきた基本的な問題点が全く解消されておらず、制度の具体化によってさらに矛盾だらけの問題あるものとなっている。われわれがその制度の矛盾を強く指摘してきた能力等級制度を軸とした評価が昇進や処遇に直結するトータルシステム、マスコミ等から強く批判されてきたキャリアシステムの公然たる制度化や天下り容認の考え方などが、まったく見直されず具体化されている。

 「対策本部」では、新人事制度の疑問点・問題点の解明とわれわれの提言に基づく改革案への見直しを求めて行革推進事務局との交渉・協議を本格的に進めるとともに、団体交渉に基づく賃金・労働条件決定制度と労働基本権の確立を求めて取り組みを一段と強めることとしている。また、本日提示された「原案」に関わる「討議資料NO4」を早急に発行して、各構成組織や職場で問題点等の認識と今後の取り組みに対する意思統一を強めることとしている。



公務員連絡会地公部会が地方三団体に要請行動
「労働基本権確立・交渉権整備を柱とした公務員制度改革」を要望

 公務員連絡会地公部会は、11月2日、地方三団体に対して公務員制度改革に関わる要請行動を行った。この要請行動には、公務員連絡会から岩本事務局次長、地公部会幹事の自治労・加藤労働局長、日教組・島生活局長、吉原女性部長、都市交・横沢書記次長、全水道・湊書記らが参加した。

【全国町村会への要請行動】
 全国町村会への要請は、13時15分から行われ、全国町村会からは関場行政部長が応対した。
 岩本事務局次長は、要請書(別紙)を手渡し、「政府・行革推進事務局は、12月中に『大綱』をまとめるとして作業を進めている。また、11月6日にも、『新人事制度の具体案』を各府省、組合に明らかにすると聞いており、公務員制度改革はまさにヤマ場をむかえている。私たちは要請書にある通り、公務員制度改革にあたっては、@労働基本権の確立、A人事制度に係る4原則2要件の実現、Bキャリア制度の廃止、「天下り」の禁止、C地方分権の時代にふさわしい改革を求めている。特に、労働基本権の代償措置といわれる人事院の機能が各府省に移されるとするならば、労働基本権の確立、交渉制度の整備は不可欠であると考えている」と要請の趣旨を説明した。
 これに対し、関場行政部長は、「今回の公務員制度改革は、国家公務員一般職の人事のひずみを正していくことがもともとの課題だったと認識しているが、現在の段階にいたっても、地方にどのように適用されるのか見えていない。町村会は、国の本省を対象に考えた制度を、そのまま地方に適用するのではとても運用できないと考えており、総務省に春の段階から要請を行ってきたところである。また、人事評価制度についてもどのようになるのか関心を持っている。あまり細部まで規定しないで、良いものは残し、必要な部分については手直しをすればいいのではないかと考えているが、今の時点では、具体の案が示されていないし、地方への適用の方法が示されていないので、意見のいいようがない。皆さんの要請については、お伺いし今後の参考とさせていただきたい」と答えた。
 これに対し、岩本事務局次長は、「町村の役場は、職員の数も少ないし、仕事も国とは異なっている。そのため、国の制度をそのまま適用することはできないと考える。しかし、地方分権の時代になっても、国の仕組みを準用する傾向が残っている。そのため、仮に国の制度であるとしても、今後、地方に影響があることが想定される。要請の主旨についてご理解と協力をお願いしたい」と伝え、要請行動を終えた。

【全国知事会への要請行動】
 全国知事会への要請行動は、14時から行われ、知事会からは石上調査第一部長が応対し、岩本事務局次長が、要請書を手渡し主旨を説明した。
 石上部長は、「地方公務員制度の改革は、6月の『基本設計』に『地方自治の本旨に基づき、地方公務員の実情を十分勘案しながら、国家公務員制度の抜本的改革に準じて検討を行う』とされている。住民に密着した行政サービスを行うなど、地方には国にはない職種などがあり、国と地方は必ずしも同じというわけにはいかない。そのような実情を政府に認識してもらうために、今までも地方の意見を聞くよう要請を行ってきたところである。今後については、現時点では、具体案が示されていないので答えられない。具体案が示されたら、地方に適用できるのかなど検討し、対応していきたい」と答えた。
 また、人事評価制度については、「県の段階でも難しい点がある。現在、人事に活用している自治体はあるが、給与には連動させていないのではないか。この制度を具体的に導入するとなると多くの課題があると考えている。目標管理制度については、自治体の業務は、営利を追求する民間企業と異なっており、目標そのものがたてにくいケースもあり、難しい点があるのではないか」。さらに、労働基本権については、「基本権の制約は、人事院勧告制度や公務員の性格に基づいたものであり、慎重に検討されるべきものであると考えている」と述べた。
 これに対して、岩本事務局次長は、「知事会が、国家公務員の制度に意見をいいづらいという点は理解する。しかし、今後、自治体に影響があることを想定し、国の制度設計の段階で意見をいうべきではないか。『大綱』作成の前にしっかりと意見反映をお願いしたい」とあらためて要請した。
 これに対して石上部長は、「要請の主旨については、理解した。地方の実情をふまえた案になるよう引き続き努力していきたい。今後も意見交換を行うことにやぶさかではない」との考えを示した。

【全国市長会への要請行動】
 全国市長会への要請は、15時から行われ、市長会からは、小林行政部長が応対し、岩本事務局次長が、要請書を手渡し主旨を説明した。
 小林部長は、「昨年12月に『行革大綱』が閣議決定されて以来、市長会はこの問題に関心をもってきた。そして、『大枠』発表の前後に、地方三団体として関係機関に対して、@改革の中身を示すこと、A地方は国にどのように準じるのか示すこと、Bその点を明確にした上で、地方の意見を聞くこと、C労働基本権については、各市長の声を反映し、『慎重の上にも慎重に検討を行うように』と要請を行ってきたところである。その後、『基本設計』が発表されたが、依然として具体的な内容がどうなるのか示されておらず、注目しているところである。具体案が示されれば、各市長の意見を聞きながら対応を行うことになるが、地方は国と異なる実情があり、国の制度を地方公務員に適用することが可能かどうかという観点で意見をいっていきたい。また、皆さんの要請については、参考とさせていただきたい」と答えた。


(別紙1)

2001年11月2日

全国市長会
会長 高秀 秀信 様

公務員労働組合連絡会地方公務員部会
全日本自治団体労働組合     
中央執行委員長 大原義行
日本教職員組合         
中央執行委員長 榊原長一
日本都市交通労働組合      
中央執行委員長 松島 稔
全日本水道労働組合       
中央執行委員長 足立則安
全国自治団体労働組合連合    
中央執行委員長 武田幸男


公務員制度改革に関する要請書


 常日頃より、地方公務員の雇用や処遇の改善へのご努力に対しまして心から感謝申し上げます。
 私たちは国民が求める行政改革・公共サービスの確立、それを実現するための民主的公務員制度への改革をめざし、「公務員制度の民主的で抜本的な改革に向けた私たちの提言」を取りまとめ、その実現のため、組織の総力を挙げて取り組んでいます。
 政府・行政改革推進本部は、6月の「公務員制度改革の基本設計」を基礎に、12月の「公務員制度改革大綱」の策定に向けて作業を進めています。その中で、各府省の人事・組織管理体制を強化し、労働基本権制約の代償機能である人事院の役割を大きく後退させる考えを打ち出しながら、公務員労働者の労働基本権問題については結論を先送りしています。これでは、整合性ある公務員制度改革はとても期待できません。「公務員制度改革大綱」では、改革に向けた法制化等の具体的内容、2005年度までの集中改革期間におけるスケジュール等を明らかにするとしており、公務員制度改革は大きな山場を迎えようとしています。
 貴職におかれましては下記事項の実現に向けてご尽力を頂きますようお願い申しあげます。



一、労働基本権を確立し団体交渉に基づく賃金・労働条件決定制度を実現すること。

一、新たな人事管理システムの設計に当たっては人事評価制度に係る「4原則(公平・公正性、透明性、客観性、納得性)2要件(苦情処理制度、労使協議制)」を実現すること。

一、キャリア制度を廃止し、「天下り」を禁止した民主的で国民に開かれた公務員制度とすること。

一、地方公務員制度の改革については、国家公務員制度と地方公務員制度のそれぞれの特性および地方自治の本旨を踏まえ、地方分権をいっそう推進する立場に留意し、改革の手順を明確にすること。

以上