みんなの力で、労働基本権の確立と民主的な公務員制度改革を実現しよう

労働基本権確立・公務員制度改革

対策本部ニュース

No.63 2001年12月5日

連合官公部門連絡会


対策本部が自民党行革推進本部と「人事行政機関の機能整理」等で意見交換
「団体交渉による賃金・労働条件決定制度」への抜本改革と「大綱」の延期を申入れ

 連合官公部門連絡会の対策本部は、12月4日午後3時から、自民党の行革推進本部・本部長会議の求めに応じ、行革推進事務局検討案としてまとめた「中央人事行政機関の機能整理」や「人員枠の設定」などについて意見をのべ、制度設計を行う前提として「労働基本権制約の立法政策を根本から改め、対等平等な労使関係を確立する方向が不可欠であり、そうした制度設計が行われなければ検討案は容認できない」と労働基本権確立を求めるとともに、いまだその結論が得られていない現状を強く批判し、「大綱」決定の延期を申し入れた。
 この意見交換には、自民党側から行革推進本部の橋本最高顧問、中村常任顧問、太田本部長、牧野本部長代理、熊代事務局長、茂木事務局次長が参加、対策本部からは丸山本部長(国公連合委員長)、大原(自治労委員長)・榊原(日教組委員長)両副本部長、山本事務局長、宮入副事務局長らが出席した。
 冒頭、丸山本部長は、「11月27日の政労会見でも、連合として労働基本権を保障した制度設計とするよう政府に申し入れたが、公務員制度改革が『大綱』策定に向け大詰めをむかえているなかで、時代の要請に応えた抜本的な改革を行うべきだ」と前置きし、「大綱」の策定作業に関して別紙の「意見書」を提出、次のような点を強調して理解を求めた。
@ 労働基本権に手をつけないまま中央人事行政機関の機能分担を整理するという検討案は、労働基本権制約の代償機能を著しく低下させ、内閣や各府省大臣の人事管理権限だけを一方的に強めるもので、認めることはできない。
A 「人件費予算の決定の枠組み」の検討案について、人員枠の設定それ自体が勤務条件であるにもかかわらず、内閣・各府省の決定権限が強まる一方で、代償機能の発揮は形式に止まり、実質的に意味を持たないものとなるおそれが強く、このままでは到底認められない。
B こうした方向で議論されるのであれば、労働基本権を現状のままにおいて制度設計するのは不可能と考える。制度を抜本的に改革するためには、この際、労働基本権制約の立法政策を根本から改め、公務にも、民間に準じたパートナーシップに基づく対等平等な労使関係を確立する方向で、「白紙」から検討しなおす必要がある。
C 内閣が企画立案を行うとしながら、その主体や組織の在り方が不明確だ。給与・任用・退職手当・共済等労働条件に関わる事項を一元的に所掌し使用者としての責任が明確となる体制を整備すべきだ。
D 「新人事制度の原案」は、中途半端な制度見直しとなっている。能力主義の人事制度を導入するとしているが、その前提としての評価制度について4原則2要件が担保されていない。制度を実効あるものにするには、評価制度について労使協議を保障したものにすべきだ。また、キャリアシステムの制度化は時代に逆行するものである。
E 「12月中」という当初スケジュールにこだわらず、「大綱」の取りまとめ時期を条件が整うまで延期するよう求める。仮に、「大綱」を十分な交渉・協議を経ずして一方的に決定した場合は、強い姿勢で臨まざるをえない。

 こうした組合側の意見をめぐって、次のような意見交換が行われた。
 自民党 「人件費予算の決定の枠組み」について、人件費予算のすべてが勤務条件という考え方の根拠は何か。
 組合 人事院の代償機能としては、給与勧告と級別定数があり、後者について人件費枠の設定として各府省、内閣に権限を移し、人事院は意見の申出を行うということであるが、内閣のどこに持っていくのか不明である。これまでの給与決定システムとは異なることになり、どこと交渉して決めていくのかが課題とならざるを得ない。
 公務員制度を50年ぶりに大改革するというのであれば、人事管理権者が責任を持てる体制を作るべきだし、組合の方にも労働基本権を保障して責任を持たせるべきである。当局の一方的な権限強化には反対である。
 自民党 公務員制度改革の検討にあたって、労働基本権の制約に抵触しない範囲でどこまで制度改革ができるか推進事務局に指示した。検討案について、内閣法制局は憲法に抵触しないとの見解で、人事院も違憲ではないと答えている。人事制度の企画立案について内閣でどのように行うか、という問題だが、内閣府の中に仕組みを作って責任を果たすことがいいのではないか。政府側がまだ決めていないので、固まってはいないが、この問題は早く結論をださなければならないと考えている。
 組合 労働基本権制約に抵触しない範囲で制度設計を行うというが、判例からは代償措置の範囲は明確にされていない。今回の機能分担にかかわっては人事院が意見の申出を行う仕組みをとっているが、意見の申出ということでは代償足り得ないと考えている。
 採用から退職管理まで一元的に所管し、使用者としての政府の責任を明確にすることが大切であり、そうなれば当然、基本権の問題がでてこざるを得ず、踏み込んだ改革を行うべきだ。
 自民党 必ずしもそうは考えない。(※との対応に終始)
 組合 公務員制度の中立・公正を確保するための人事行政と人事管理の問題は分けて考えていただきたいし、前者については、別途慎重な議論が必要である。われわれが一元化してほしいのは後者の方である。企画立案は内閣府、執行は人事・恩給局という仕組みとなれば二重行政の問題も起きてくるが、その辺についてはどう考えているのか。
 自民党 まだ議論する段階ではない。
 組合 能力等級制度を中心に据えた制度設計を行うのであれば、その基準を誰が作るかが問題となる。給与水準だけ人事院がやれば、それで基本権の代償機能が満たされるということにはならない。また、能力等級制度は評価が基本になることから、評価制度について労使が十分協議したうえで実施するのでなければ実効はあがらない。「憲法に抵触しない」ということでなくて、労働基本権の問題を前向きに考えてもらいたい。提案されているのは中途半端であり、人事管理に血が通わない。新しい時代に合う労使関係、決定制度の実現に向けてぜひ決断をすべきだ。
 自民党 国民の信頼を失っている公務が、いかにして信頼してもらえるようにするか、また、若い職員にいかに意欲を持って働いてもらうか。それが今回の制度見直しの基本である。はじめから労働基本権の問題をやると議論が混乱して先に進まなくなるので、基本権の枠内でということにした。国民が公務員を信頼してくれる制度設計をする。それが、「白地で設計する」という意味である。人事院の代償措置を動かさない中で、内閣や各府省の人事管理機能を高めようということで検討してきた。
 組合 使用者の権限だけ強まってそこで働く者は全くの無権利状態になるような制度設計は認められない。公務員制度改革の検討に当たり、自民党からは「組合はいいとこ取りをしないで臨めるのか」という提起がなされた。これまでの流れは、「当局の権限は強化、しかし、労働基本権は制限したまま」ということで、行政や政治の側が「いいとこ取り」をしているようなものだ。
 自民党 人事院の役割の縮小がそのまま代償機能の縮小ということではないし、職員の救済機能は強めようと考えている。憲法との関わりで、代償機能には触れないよう配慮している。これまで、いろいろな問題について少しずつ詰めながら作業してきており、大枠は「大綱」として決めさせてもらう。まとまらないものは引き続き検討していくことになる。
 組合 労働基本権をいじらないとすれば、そうした制度設計は「違憲である」と考えており、そうした観点から運動を進めざるを得ない。使用者権限の拡大・強化は明らかであり、基本権も回復してもらわねばならない。そして労使双方が責任を持つ体制を作らなければならない。
 自民党 労働基本権については、制度設計の最終段階でどうするか結論をだすべきものと考えている。「問題を積み残した大綱」もあり得るし、残った課題はお互いに議論していけばいい。

 以上のような意見交換の後、組合側は丸山本部長が締めくくりの意見として、「公務員制度制度の抜本改革に当たり、自民党からは『公務員の身分に安住してはいけない。労働基本権の議論は避けられない』という提起があった。われわれは、意を決して対案を作り、国民の立場や国際的労働基準の実現を求めてきた。労働条件は労使が対等の立場で交渉で決定していくという制度改革を行うべきだ」と重ねて要請し、今後、更に議論していくことを確認して意見交換を終えた。


(別紙)
「中央人事行政機関の機能分担」や「人員枠の設定」など
公務員制度改革の「大綱」策定作業に関わる意見

2001年12月4日
連合官公部門連絡会


<中央人事行政機関の機能分担と人員枠の設定について>
1.「労働基本権を現行と同様の扱い」としたままで「中央人事行政機関の機能分担」の整理を行う現在の検討案は、労働基本権制約の代償機能を著しく低下させ、内閣や各府省大臣の人事管理権限だけを一方的に強める内容であり、われわれとしては到底認めることはできません。

2.また、「人件費予算の決定の枠組み」の検討案についても、人員枠の設定それ自体がすぐれて勤務条件であるにもかかわらず、内閣・各府省の決定権限が強まる一方で、代償機能の発揮は形式に止まり、実質的に意味を持たないものとなるおそれが強く、このままでは到底認められません。

3.われわれは、中央人事行政機関の機能分担や人員枠の設定が検討案の方向で議論されるのであれば、「労働基本権を現行と同様の扱い」として制度設計することはもはや不可能であると考えます。公務員制度を抜本的に改革するためには、この際、労働基本権制約の立法政策を根本から改め、公務にも、民間に準じたパートナーシップに基づく対等平等な労使関係を確立する方向で、文字通り「白紙」から検討しなおす必要があります。
 また、「検討案」では、「内閣」が企画立案を行うとしながら、その主体や組織の在り方が不明確です。そのため、給与・任用・退職手当・共済等労働条件に関わる事項を一元的に所掌し使用者としての責任が明確となる体制を整備するとともに、団体交渉による賃金・労働条件決定制度と労働基本権の確立を前提とした制度設計を行うことを強く求めます。

<「行政職に関する新人事制度の原案」について>
1.行政改革推進事務局が提示した「能力等級制度」をはじめとした「新人事制度の原案」は、@「能力主義」という観点からみても、民間の能力資格制度とは似て非なる極めて中途半端な制度であることAわれわれが強く求めている評価の「4原則(公平・公正性、透明性、客観性、納得性)2要件(苦情処理システムと労使協議制)」が担保されていないことB「能力主義」の考え方と相反し、時代に逆行するキャリアシステムの制度化が盛り込まれていること、など、あまりに矛盾と問題が多い制度改革案といわざるをえません。仮にこの「原案」を実行に移したとしても、このままでは機能せず、いずれの制度改革も中途半端におわり、現状と大差ない運用が行われる結果となりかねません。

2.また、随所に各府省の決定権限を強めることを明記しながら、それに対する労働組合の関与の在り方、賃金・労働条件決定制度や労働基本権の在り方が一切提起されておらず、このままではわれわれの「原案」に対する賛否を明確にできません。
 われわれは、行政改革推進事務局に対してこれらの点を明確にするよう求め続けてきましたが、いまだ明確な見解は示されておらず、現状では「原案」に対する有効な交渉・協議を行うことは困難な状況に至っています。

<公務員制度改革の「大綱」の取りまとめに当たって>
1.公務員制度改革の「大綱」を十分かつ誠実な交渉・協議によって取りまとめることは日本政府の国際公約となっています。そのためには、労働基本権や賃金・労働条件決定制度の在り方についての結論を早急にわれわれに提示し、その上で中央人事行政機関の在り方や人事・給与制度の在り方などについて誠実な交渉・協議を行うことが不可欠ですが、残された期間からみてそのタイムリミットはもはやすぎているといわざるを得ません。

2.したがって、「12月中」という当初スケジュールにこだわらず、「大綱」の取りまとめ時期をそれらの条件が整うまで延期することを求めます。仮に、「大綱」を十分な交渉・協議を経ずして一方的に決定(時期的にも内容的にも)した場合は、われわれとしてもその後の作業に対して強い姿勢で臨まざるをえない状況であることを申し添えます。

以上