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労働基本権確立・公務員制度改革

対策本部ニュース

No.68 2001年12月11日

連合官公部門連絡会


対策本部が「人事制度」以外の検討項目で推進事務局と交渉
「採用試験合格者枠の大幅拡大は情実採用を招く」と批判

 「対策本部」は12月11日午前8時30分から、行革推進事務局との間で、「人事制度の原案」以外の検討項目について交渉した。「対策本部」から山本事務局長及び書記長クラスが出席、行革推進事務局側は、春田公務員制度等改革推進室長、高原・千葉・井上・田家各参事官らが対応した。
 12月4日に提示された検討項目は、@採用試験制度の見直し、A官民交流の推進、B公募制の推進、C自己啓発のための休業、D留学費用の返還スキーム、E国家戦略スタッフ、の6項目。このうち「採用試験制度の見直し」では、当面、T種試験の合格者数を平成14年度に採用予定者の2.5倍、15年度から4倍に増やす、「官民交流の推進」では、公務員と民間企業従業員の地位の併有(身分併有)を可能とする、「国家戦略スタッフ」では、公募制を活用して時々の総理の判断により配置する、などの考えが提示されている。
 これらの検討項目について対策本部側は、「官僚主導から政治主導に移す考えが伺えるが、公務員制度の基本を成す公正・中立性の確保やメリツトシステム(成績主義)がどう担保されるのかが示されず、疑問と危惧を感じる」として、以下の通り問題点を追及した。
@ 採用試験の企画立案を内閣に移すこと、試験合格者数を大幅に拡大し人事院の試験を資格試験的なものとすることは、メリットシステムの原則からみて問題である。
A 官民交流で「身分併有」の場合、労働関係の適用、服務規律の適用はどうなるのか。
B 自己啓発のための休業については、海外留学等だけでなく、国外長期ボランティアや育児・介護などの少子・高齢化への対応等を含め、総合的な休業制度を検討すべきだ。
C 国家戦略スタッフについて、内閣主導の企画立案を行うためとするなら、一般職でなく政治任用職として制度化すべきだ。
D 天下りや退職手当についての考え方は、いつ、どのような形で提示するのか。
 こうした質問・意見に対し、推進事務局は次の通り見解を示した。
@ 採用試験制度については、各府省のニーズに応える人材をどう確保するかということで、幅広い層から優秀な人材を確保するため、合格者数を大幅に増加することにした。企画・立案は内閣に移すが、公正・中立性を確保する観点から人事院による意見の申出ができるようにした。情実採用防止のため実効ある措置について考えている。T種試験合格者の採用後の扱いについては、現行のキャリア制度の弊害を除くため、集中育成制度のなかで厳しい厳正な評価にさらされることにする。
A 官民交流での「身分併有」の問題であるが、これまでの官民交流法では、民間企業を一旦退職して公務に採用されていたが、これが民間からの有能な人材確保の妨げになっていた。こうした問題点を改め、民間企業従業員の地位を有したまま公務に採用できる仕組みを考えた。交流職員には国公法の定める服務規律を適用し、また、労働関係では、労働基準関係法制は適用しないことを前提としたいと考えているため、身分併有による問題は生じないと考えている。
B 自己啓発については、行政課題に対応するために自己の能力開発を求められており、このための休業制度を提示した。要望される国外長期ボランティア等は、今回の制度の主旨に当てはまらない。
C 国家戦略スタッフについては、行政課題に応じて総理の政策決定を専門的な立場からサポートするものとして、時々の総理の判断により設けられるようにしたものである。必ずしも政治任用の特別職とする必要はないと考えている。
D 天下り問題については、現在、与党で特殊法人問題を含めて検討が行われており、その議論結果を待って提示したい。

 これらの見解について、組合側は、とりわけ「採用試験」「官民交流」及び「国家戦略スタッフ」について問題視し、重ねて追及した。まず、「採用試験」では、「T種試験の合格者数を大幅に増やすことで人事院の試験は資格試験的なものとなる。その合格者のなかから各省庁が採用者を決定することになるが、その際、情実採用を防いで公務員制度の本質に関わるメリットシステムの保障は担保されるのか」と質した。推進事務局は、「T種採用者の2倍というこれまでの合格者を4倍にすることで、資格試験になるとはみていない。採用試験の成績優秀者を合格者としており能力は実証されている。そのなかから各府省が人物を評価して採用する仕組みなのでメリットシステム上からの問題はない。公正・中立の観点からは採用の企画立案について人事院が意見の申出も行えるようにした」として、質問には明確には応えず、これまでの見解を繰り返した。 「国家戦略スタッフ」については、「総理大臣と大臣の2種類の任用を考えているのか。また、制度の主旨からして政治任用職にすべきだ」と質した。これに対しては「総理の判断により総理をサポートするものとして設けるものである」とし、国家戦略スタッフを内閣官房に置く考えを示した。このため、各府省の大臣スタッフは組織的に別のものであることが明確となった。また、その定員枠については、「定員管理の柔軟化のもとで判断し決められる」とし、予め定員枠は設定しないとの考えを示した。
 「官民交流」で「身分併有」という新しい概念を持ちだしたことについて「私企業からの隔離という職業公務員の大原則を逸脱することになり、法理上の問題は生じないのか」と質したのに対し、推進事務局は、「国公法上からも、身分の併有は可能との判断を内閣法制局から得ている」と述べた。また、労働関係制度については「現実に民間の仕事に就いていないことから問題は生じない」との見解を示した。採用者の雇用保険の扱いについては検討中ということで明言を避けた。
 交渉の最後に、休業制度について、対象範囲を限定せず総合的な休業制度を検討するよう申し入れた。

 以上で、6回に及ぶ「新人事制度の原案」と人事制度以外の検討項目に対する推進事務局との交渉・協議は一巡した。しかし、制度設計の前提として強く求めていた労働基本権のあり方等について提示されていないことから、極めて変則的で一方的な指摘に終始する不十分な協議に留まった。なお、推進事務局は今週中にも「大綱原案」を提示するとしており、引き続き交渉のなかで問題点を追及することにしている。

以上