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労働基本権確立・公務員制度改革

対策本部ニュース

No.110 2002年9月9日

連合官公部門連絡会


行革推進事務局との交渉・協議(第8回)9/9
給与制度の具体的議論を保留し、評価制度で交渉協議

 対策本部は、9月9日午前11時から行政改革推進事務局と8回目の交渉・協議を行い、推進事務局は、高原・鈴木参事官らが対応、対策本部から実務クラス交渉委員が参加した。
 冒頭、対策本部が、給与制度の検討に関わる推進事務局と人事院の検討作業の線引き、人事院の意見の申し出等のあり方について、推進事務局としての最終的な見解を求めたのに対し、高原参事官は次の通り答えた。
(1) 労働基本権制約の下にあっては、国公法23条に基づく人事院の意見の申出がなければ、法律改正を含めて勤務条件の変更はできないのではないかというご意見だが、法律的な枠組みは最終的には国会で決められることになるにしても、それに至る過程で法案提出権のある内閣が企画立案できると考えている。人事院には、国公法23条(意見の申出)、28条(情勢適応の原則に基づく勧告)の権限があり、それに基づいて意見の申し出等を行うのであればそれを尊重すべきであるのは当然のことであるが、そのことが内閣の企画立案・法案提出権や国会における法改正を拘束するものとは考えていない。
(2) 作業の過程で人事院から意見は聞くし、国公法に基づく「意見の申出」があれば検討するが、それがなければ勤務条件に関わる事項について企画立案することができないとは考えていない。したがって、給与制度の企画立案は内閣が行う。内閣法12条の企画立案権に基づいて作業していくということだ。

 これに対し、対策本部は「受け入れられない見解だ。労働基本権の制約下にあっては、使用者や労働組合ではなく、第三者機関である人事院が代償機能として、勤務条件の変更を行ってきた。これについて、使用者である内閣が自由に企画立案できるというのであれば、代償機能を形骸化するものであり、認められない。そういう見解の下で作業するということであるのなら、到底、今の段階で第2次原案の給与制度の具体的論議に入ることはできない。最終的に給与制度の交渉・協議をどう扱うかについては、第2次原案全体を通じた『主語入れ』の提起を近々行うことになっており、その内容がどれだけ代償制度を満たしているのかなどを含め総合的に判断する」として、現段階では給与制度の具体的議論は保留し、次の評価制度の議論に進むこととした。
 評価制度について、対策本部は以下の点について見解を示すよう求めた。

(1) 評価制度については、これまで総務省人事・恩給局、人事院とわれわれの間で交渉・協議を行ってきた経過があるが、推進事務局はこれを継承するのかどうか。
(2) 「能力等級制度を基礎としたトータルシステム」という新人事制度の下で、評価制度はどう位置づけられるのか。
(3) 2006年度から直ちに機能させるのではなく、信頼を得ながら段階的に進めるべきではないか。
(4) 実施へ向けたスケジュールはどうか。
(5) 「試行」はどう行うつもりか。行うとすれば、われわれとの交渉・協議を十分行い、合意に基づいて進めるべきではないか。また、試行と現在の勤務評定の関係はどうか。
(6) 能力評価は絶対評価であるが「重要な参考資料」に過ぎず、能力評価結果だけで格付け・任用されるものでないことから、人事管理権者の恣意性を排除するためには、別途客観的な格付け・任用基準を設けるべきではないか。
(7) 評価者の都合による「フィードバック」ではなく、評価結果の「本人開示」という考え方に立つべきではないか。
(8) 目標管理の対象職員と非対象職員の中身は具体的に何か。また、対象職員について目標管理が可能な根拠は何か。
(9) 目標管理に当たっての職務範囲、役割期待はどのような形で明確化するのか。数値目標はどうするのか。
(10) 基本給の加算額決定の「勘案要素」、業績手当の業績反映部分の「重要な参考資料」とは具体的にどういうことか。
(11) 苦情処理については、労働組合の参加を保障すべきであるし、苦情対応の仕組みの整備を各府省に委ねたのでは統一性を保てないのではないか。
(12) 新たな評価制度を構築するためには、労使の意思疎通が重要であるが、評価に関わる労使協議制についてどう考えているのか。

 これに対し、推進事務局は次の通りの見解を示した。
(1) これまで、人事・恩給局や人事院が検討してきたのは現行制度の下での評価制度であるのに対し、今回は能力等級制度の下における評価制度であるのでフレームワークが違っている。「継承」するかどうかではなく、これまでの経過を含めて検討しており、内容的には参考にするものは当然あると考えている。
(2) 評価制度の位置づけについては、「大綱」に明確に書いてあるし、それに基づいて慎重な検討を進めているところである。
(3) スケジュールは、まず試行を行って、2006年度からトータルに実施できるようにしたい。現場で混乱しないよう、これから4年かけて慎重にやろうということである。
(4) 具体的な試行についてどういう形でやっていくか、事務的にはまだ固まっていない。皆さんとの議論を踏まえてどうやっていったらよいか検討していきたい。年内は試行がないとまでは言えないし、皆さんの「同意」を得てということにはならないが、中身については十分説明する。現在の勤務評定と試行の関係については、それぞれ行うということだ。人事制度のフレームが違うので試行結果を現行制度に反映するわけにはいかないと考えている。
(5) 「重要な参考資料」とは、能力評価の高い者を昇格候補者として位置づけるという意味である。原案に昇格の手続きとして書いてあるように、基準を明示するので今までより透明で客観的な仕組みになると考えており、別途の昇格基準を設けるつもりはない。
(6) 「フィードバック」は、重要な仕組みと考えており、能力評価の趣旨に基づいて具体的な中身を考えることにしている。「本人開示」の仕組みとしては考えていない。
(7) 目標管理は民間企業でも多く使われており、有効な仕組みであることは間違いないが、例外として、管区機関の長など個人が目標を立てるというのではなく組織そのものの目標を実現するのが役割になるし、条件付採用期間中の職員はまだ目標を設定することにはならないということだ。
(8) 目標はできるだけ具体的に設定することが重要であり、それにより納得性が確保できる。目標の中身は、何を、いつまでに、どこまでやるかということになる。数値目標は否定しないが、全員がそれをやるべきだということでもない。
(9) 「勘案要素」「重要な参考資料」の意味は、給与の項に書いてあるとおりの趣旨である。
(10) 苦情の対応については、各府省の責務を強調したものであり、実情に合わない仕組みを押し付けるのではなく、各府省に責任を持って対応してもらうということである。

 これらの見解に対し、対策本部は@フレームワークが違うというのであれば、「評価制度とは何か」などの基本に立ち返って論議する必要がある、A評価制度を定着させるためには信頼されることが何よりであり、試行の実施に当たっても十分な交渉・協議と合意が前提であり、明日から試行をするのでよろしくということにはならないし、少なくともわれわれが了解できる試行でなければならない、B能力等級制度や給与制度の基本もまだ固まっていないのに、新評価制度を2006年度から全面展開するのは無理であり、管理職から始めたり人材育成から活用するなど段階的に進めるべきではないか、C能力・業績評価結果が直接昇格や給与に連動せず、別途の客観的基準も設けないのなら人事管理権者の恣意的は判断をチェックできず、却って不透明になり何のための評価かということになる、などとさらに明確な見解を示すよう求めたが、推進事務局は大綱や原案の字句を繰り返すばかりで、中身のある考え方を示さなかった。
 このように、本日の交渉・協議では、推進事務局における新評価制度の検討は、これまでわれわれと総務省人事・恩給局、人事院との間で進められてきた評価制度をめぐる論議と基本的フレームワークが異なっており、労使の意思疎通を重視し十分な交渉・協議と合意に基づいて進めることや評価結果の反映については信頼を得ながら段階的に進めるとの考え方ではないなど、大きく異なっていることが明らかになった。このため対策本部としては、「評価制度の枠組みを含めた論議が必要である」として、次回も評価制度めぐる論議を行うこととし、本日の交渉・協議を打ち切った。

以上