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労働基本権確立・公務員制度改革

対策本部ニュース

No.114 2002年10月4日

連合官公部門連絡会


「一般の行政職員以外の職員に対する新人事制度の適用について」を提示
一般の行政職員と同様の能力等級制度・評価制度を導入

 行政改革推進事務局は、連合官公部門連絡会に対し、「昨年12月に決定された『公務員制度改革大綱』では『一般の行政職員以外の職種に係る制度の検討を急ぐ』ことにしていたが、それがこのほどまとまった」として、9月24日、「一般の行政職以外の職員に対する新人事制度の適用について」とする行政職(一)以外の職種の能力等級制度・評価制度等の考え方を提示してきた。この考え方に対する説明会が3日14時から開かれ、連合官公部門側対策本部実務交渉メンバーと各単産担当者が参加し、推進事務局側は森永参事官らが対応した。
 提示された内容は、「基本的考え方」にも示されているように「各職種の職員についても能力等級制度を基礎とする新人事制度を導入することは適切かつ必要である」として、一般の行政職員と同様の能力等級制度・評価制度などを導入するというものである。「それぞれの職種の特性等を十分踏まえて、弾力的な対応が可能となるような制度設計を行う」としているが、これにより非現業国家公務員全体に能力等級制度を基本とする新人事制度を導入することを明確にしたものである。これについて推進事務局は、「今後、各府省協議や組合の意見を踏まえて、いずれかの機会に政府として方針決定したい」としている。なお、「参考資料」として示された「能力等級表のイメージ(案)」は各府省に相談しながら推進事務局として取りまとめたものであるが、あくまで素案に過ぎず固まったものではなく、今後変わっていくものであり、今回の協議対象ではない(=今後の決定の範疇には入らない)と説明している。
 説明に対し連合官公部門側は、目標設定の取扱いや能力等級表のイメージなどについて疑問点を質すとともに、「本日提示されたその他職種の能力等級表等の考え方は、現行の俸給表上の職種の区分けや標準職務表をそのまま横滑りさせたもので、多種多様な職種の発揮能力を分類し、作成したものとは思えない。こんないい加減なことしかやれないところに、能力等級制度自体の制度的な矛盾・問題点が現れており、到底これをもとに他職種にも適用するという結論をわれわれが納得することにはならない。本日の提示内容については、2次原案に関わる交渉・協議と同様に位置づけて、われわれと十分議論させてもらいたい」と要望し、推進事務局側がこれを了承したことから、提示に関わる説明会を終えた。

新人事制度の2次原案では11回目の交渉・協議を実施
本府省幹部候補集中育成、上級幹部職員、救済制度を議論

 対策本部は、3日15時30分から行政改革推進事務局と11回目の交渉・協議を行い、推進事務局は、高原・鈴木・森永参事官らが対応、対策本部から実務クラス交渉委員が参加した。
 「本府省幹部候補職員集中育成制度」、「上級幹部職員の新人事制度」、「救済制度等」について交渉・協議を行い、対策本部側は次の通り疑問点や要望を指摘し、推進事務局としての考え方を示すよう求めた。

1.本府省幹部候補職員集中育成制度
(1) 法制度上はどう位置づけるつもりか。
(2) キャリア制度を見直すというのはどういう意味か。
(3) キャリア制度の弊害を解消するには、T種採用者の特別扱いをやめる必要があり、そのためT・U種試験は統合して、能力で幹部に登用すればよいのではないか。T種試験をやめない限り、キャリア制度の見直しは弥縫策でしかない。
(4) クローズで公務員制度をやっていくという発想だから、一部の人間を特別扱いして育てていくという発想になるのではないか。
(5) 特例任用を行って能力と一致しない職務に就けることは反対である。能力等級制度の根本に反するのではないか
2.上級幹部職員の新人事制度
(1) どういう理由で上級幹部職員という制度を設けるのか趣旨が不明である。公務員制度上何をしたいのかわからない。能力等級制度は適用除外するなど特別に扱う一方で、一般職に位置づけて身分保障をするというのはおかしいのではないか。「大臣を直接補佐する」ことを強調するのであれば特別職にすべきではないか。再検討すべきだ。
(2) 給与は年俸制ということだが、民間のようなものをやって毎年契約するのか。
(3) 上級幹部職員は能力等級制度を適用しないので、一般の職員と任用概念が異なることになって、昇格・降格概念がない。一般職に位置づけることによって適用される身分保障以外は、違う制度設計だ。一般職の中で特別扱いするのは反対である。
3.救済制度等
(1) 何をどうしたいのか趣旨がわからない。「検討する」という話ばかりでは、意見も言いようがない。
(2) 当局サイドが、組織として職員個人の相談にのるという話でしかない。国労法にあるような苦情処理の受け止め方がない。当局が相談を受けるということではなくて、職場で組合代表または職員代表が参加して集団的に解決する仕組みを作らなければいけない。新しい評価制度を導入するのであれば、労使関係で集団的に処理する仕組みが不可欠だ。
(3) 人事院の救済機能は、人事院に検討させるのか。
(4) 行政措置要求に加えて、苦情相談を設けるという理解でよいか。

 これに対し推進事務局は次の通り見解を示した。
1.本府省幹部候補職員集中育成制度
(1) 法制度上どうするかは検討中である。国公法の中に取り込むかどうかはまだ定まっていないが、キャリア制度を大きく見直すべきとの発想に立っているので、形に表す必要はあるのではないかと思っている。例えば内閣の方針として決定することなども考えられる。
(2) キャリア制度の問題はいろいろ指摘されているが、見直すという意味は、入ったときの試験で処遇が有利になっていることについて、育成期間を限るとか、適性がない場合には外すとか、U・V種からも登用することなどを明確化したいということである。
(3) エリートは若いうちからきちんと育てなければいけないと考えているので、T・U種の統合は適当でない。しかし、エリートからはじき出されるようにしたり、U・V種から引き上げることなどは行っていきたい。
(4) 任期付任用もあるし、必ずしもクローズシステムで考えているのではないが、幹部となる中核的人材は内部で育てる必要があるということだ。
(5) 幹部候補者については、いろいろな経験を積ませることが有意義であり、特例任用を行えるようにしたものである。
2.上級幹部職員の新人事制度
(1) 上級幹部職員の役回りとして大臣を直接補佐するが、一般の職員と一緒にやる話なので、ポリティカルアポインティー(政治任用職)というのはなじまない。
(2) 民間でも年俸制には幅があるが、われわれがやろうとしているのは、年度の当初に今年はこういう仕事なのでこれで頑張ってくれと大臣が年収を定める。これを年俸制といっている。
(3) 確かに、人材育成、給与体系は一般職と異なることになる。国公法上、制度的に違うのは能力等級制度を適用しないということになる。
(4)制度の趣旨を明確化すべきという意見もよくわかるので、明確にするよう検討する。
3.救済制度等
(1) 人事管理権者が責任を持って苦情を処理するシステムを作る。そのための体制を整備するということである。「検討する」が多くて具体的でないのは、代償措置や組合と使用者のあり方に関わってくるからである。まず法律的にどうするか、体制をどうするかを検討しないといけないと思っている。
(2) われわれはあくまで個別労使関係の中で対応すべきものと考えており、不満があれば人事院に持っていけばよいと考えている。
(3) 人事院の救済機能も当方で検討する。
(4) 人事院の苦情相談もしっかりとさせるし、各府省にもやらせるということである。
(5) 対策本部が主張している苦情相談ではない苦情処理制度については、さらに検討させてもらいたい。

 以上のように推進事務局は、対策本部の意見には一切耳を貸さず「話を聞いた」ということにとどまった。このため、対策本部は@本府省幹部候補職員集中育成には反対であり、T種試験廃止などキャリア制度を抜本的に見直すこと、A上級幹部職員の一般職としての特別扱いには反対であり再検討すること、B苦情相談・救済制度については、労働組合が関与して職場で解決する仕組みを設けること、を強く要求し、今回の交渉・協議を打ち切った。
 なお、これにより留保している給与制度を除いて2次原案に関わる交渉・協議を一通り終えたことから、次回までにこれまでの交渉・協議で解明されなかった問題点を整理・提出し、推進事務局の明確な見解を求めることにした。

以上