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労働基本権確立・公務員制度改革

対策本部ニュース

No.117 2002年10月24日

連合官公部門連絡会


行革推進事務局と書記長レベルの交渉実施
2次原案交渉・協議の締めくくり質問事項を提出し、「主語入れ文書(議論のたたき台)」に関わって労働基本権の論議を約束させる

 連合官公部門連絡会対策本部書記長クラス交渉委員らは、10月24日、行革推進事務局春田公務員制度等改革推進室長と交渉を持ち、実務レベルで行ってきた「行政職に関する新人事制度の原案(2次)」の11回にわたった交渉・協議を締めくくる64項目に及ぶ質問事項を提出し文書回答を求めるともに、過日示された「新たな人事制度の設計の考え方について(議論のたたき台)」の説明を受けた。さらに、この「たたき台」が「労働基本権の制約に代わる相応の措置」として位置づけられていることから、今後、あらためて労働基本権問題について本格的な交渉・協議を行うことを約束させた。
 交渉は11時から行われ、対策本部は山本事務局長以下書記長クラス交渉委員が参加し、推進事務局は春田室長、高原参事官らが対応した。
 冒頭、山本事務局長が「実務レベルで人事制度各論の交渉・協議を行ってきたが、未解決な点や明確に回答されていない事項について、質問事項(別紙)として取りまとめたので文書回答をお願いしたい。また、提案されている評価制度は、新しい人事制度の中で、能力等級格付けや昇任、給与に直結することになるので、われわれは勤務条件と認識している。したがって、評価制度の設計についても、交渉に基づいて行うよう申し入れる。交渉・協議なしの『試行』は認められない。また、評価の勉強会を行うというが、どういう性格のものか」と要望するとともに、見解を求めた。
 これに対し、春田室長らは「勉強会は、各府省の人事担当者は評価がどういうものであるか十分認識していないので、民間の事例や運用などを勉強してもらうという趣旨であり、皆さんにも参加してもらいたいと思っている。評価制度の中身を検討したり周知するための場ではなく、評価について一般的な理解を深めてもらうために行うものである。試行については、勉強会とは別途相談しながら進めたい」と答えるにとどまり、推進事務局が行ってきた評価制度設計との関わりは明確にならなかった。このため対策本部側は、試行は交渉・協議・合意に基づいて進めるべきことを確認するとともに、「勉強会をやるのであれば、制度設計を行う前にフリーな議論の場として行うべきであり、もうすでに制度設計をしておいて、他方で勉強しましょうというのは論外である。われわれは評価制度について、4原則2要件を取り込んでほしいということを要求してきたところであり、勤務条件として交渉・協議すべきであることを強く申し入れておきたい」として、評価の勉強会に関わる論議を打ち切った。
 続いて行革推進事務局側が「たたき台」の位置づけについて、「今回の公務員制度改革は、最終的には国公法、関連法案、下位法令、人事院規則等で固まっていくことになるが、そこは皆さんと交渉・協議していくことにしている。われわれは、今、国公法の策定作業を進めており、『大綱』で書いた内容をどう条文に落とし込んでいくかということになるが、『大綱』では『主語入れ』が書いてなかったので法律を書くときどういう考え方でやるか、その基本的考え方を示したものである。来年、国公法から始めて法案を出すとき議論しなければならないが、その前に立法の態度を示しておきたいということである。これはディスカッションペーパーであり、十分整理されたものではないが、基本的態度として考えていることを切り出して、皆さんとの論議に供したいということである」との見解を示し、内容を説明した。
 説明に対し対策本部側が、「春田室長は、これまでの交渉の中で、『大綱』の『労働基本権の制約に代わる相応の措置』について、国公法改正法案を示す前にできるだけ早く皆さんに提示して十分な交渉・協議をしていきたいと約束していたが、この『たたき台』(主語入れ)はその『相応の措置』を提示したものと理解してよいか」と確認を求めたところ、室長は「条文の議論をする前に、労働基本権制約に代わる相応の措置の基本的考え方をお示ししたいと申し上げてきており、中立性・公正性という代償措置以外の話が入っていたり、細かい点では不足するものがあるかもしれないが、代表的なものについて基本的考え方を示したのがこれである」として、この「たたき台」がこれまで提示するとしてきた「相応の措置」であるとの考え方を示した。
 この確認を踏まえて対策本部側は、「これが『労働基本権の制約に代わる相応の措置』ということになるのであれば、その内容はこれまでの制約に関わる判例から見て『新解釈』であり、公務員労働者の権利を無にするものと受け止めざるを得ない」とその内容を厳しく批判し、推進事務局の見解を質した。これに対し春田室長は「基本権制約との関係は、相応の措置との関係で十分整理しなければならないと考えており、制約の話もその中に位置づけているところである。これにしたがって整理すれば、制約の代償として十分かどうかということについては、われわれは相応の措置として代償性を満たしているものと考えている」という考えを示し、代償措置を満たしていることを強弁した。
 こうした推進事務局の一方的な見解表明に対し対策本部側は、「認められない考え方だ。政府は、公務員制度改革の設計に当たって、『労働基本権の制約は維持する』ということを一方的に通告しただけで、この問題についてわれわれと一切議論していない。したがって、まず、労働基本権のあり方についての交渉・協議を行うべきだ。次回は、どうして公務員の労働基本権を制約しなければならないのか、文書で推進事務局の明確な見解を示してもらいたい。『たたき台』の中身については、その後、議論させていただきたい。また、『質問事項』への文書回答を重ねてお願いしておく」と確認を求めたところ、春田室長は「労働基本権問題については、皆さんと論議していきたい」と基本権問題について交渉・協議することを約束したが、文書回答については「検討する」との見解を示すにとどまった。

 以上のように、本日の交渉では、@「たたき台」が「労働基本権制約に代わる相応の措置」であること、A労働基本権問題について交渉・協議を行うこと、B評価の試行についても交渉・協議に基づいて進めていくこと、が明らかになった。こうした点を踏まえ、対策本部としては労働基本権の確立を基本として今後の交渉・協議を進めることとし、「相応の措置」の根本的問題点を追及するとともに、合意なき評価の試行には反対していくことにしている。


<資料>

「行政職に関する新人事制度の原案(2次)」についての質問事項


2002年10月24日
連合官公部門連絡会「対策本部」


はじめに

 「新人事制度第2次原案」に関わる交渉・協議は、5月24日に第1回目を行って以降、10月3日の第11回目まで行われてきた。この交渉・協議は、もっとも肝心な労働基本権制約の相応の措置の考え方が示されず、いわゆる「主語入れ」が行われていない段階のものであり、われわれ連合官公部門連絡会として第2次原案に対する賛否の態度を留保したまま行われてきたことに留意されたい。
 しかも、この11回の交渉・協議を振り返ってみると、回数はともかく、@われわれが示した疑問点・問題点に対して明確で納得のいく説明が行われていないことA一度たりともわれわれの意見が反映された事例がないこと、など貴事務局側の姿勢にはあまりに誠意がなく、実質的な意味合いの少ないものだったといわざるを得ない。
 今後、「相応の措置」や「主語入れ」が行われた後の交渉・協議については、文字通り「合意」を得る姿勢で臨み、誠意ある対応を行うよう強く要請する。
 以下に、これまでの交渉・協議の到達段階を相互に確認し、今後の交渉・協議を効率的かつ実効あるものとするため、この間の交渉・協議で疑問点として残されている事項や十分に解明されていない事項を中心に「質問事項」を提出するので、速やかに文書で回答されたい。


1.総論的事項

(1)今後の交渉・協議に臨む貴職の基本姿勢について明確にされたし。昨年来の政府・行革推進事務局の交渉・協議に臨む姿勢には、強い疑義を抱いており、その疑義はいまだ払拭されていない。回数だけこなしてILOや国会に報告するという姿勢ではなく、少なくとも勤務条件事項については「合意」を得るよう最大限努力する姿勢が必要と思われるが、いかがか。

(2)今後の交渉・協議の枠組みとスケジュールを明らかにされたし。すくなくとも、@国公法・地公法改正法案、関連法案の国会提出時期はいつ頃を予定し、いつまでにどのような運びで交渉・協議を行うのかA約束した国公法改正法案の「考え方」はいつ頃提示するのかB16日に提示されたいわゆる「相応の措置」や「主語入れ」の基本的考え方についての交渉・協議のあり方と具体案についての交渉・協議はどうなるのか、などについて明確にされたい。

(3)新人事制度についてのこれまでの交渉・協議で何度となく、@現行制度の何が、どのように問題であるのかAなぜ能力等級を中心とする新人事制度に変えなければならないのかB今回の公務員制度改革の基本理念・趣旨は何か、などを明確に示すよう求めてきたが、未だもってそれらについて納得のいく説明が行われていない。これら基本中の基本問題についての認識の共有なくして今後の交渉・協議を実りのあるものとすることは不可能なので、以下の具体的項目の回答の前提として、これらの問題について明確に回答されたし。


2.能力等級制度

(1)なぜ、現行の職務給の原則を否定して新たに能力等級制度を設けるのか、現行の「職務給」のなにがどのように問題なのか、なぜ運用ではできないのか、明確に回答されたし。

(2)「能力等級」とはいったい何か。「能力・人」を基準にした人事制度の考え方にするということで理解していいか。仮にそうだとすると、グローバル競争の時代に対応する形で進められている直近の民間における人事制度の改革の動向−「仕事の実績・成果」を基準とした−と逆行し、時代遅れのものとなるのではないか。また、人事院が本年の報告で「職務・職責」を基準とすべきとの「意見」を内閣官房に提出しているが、それにはどのような見解を持っているのか、明らかにされたし。

(3)能力を基本に人事制度を組み立てるのであれば、能力の体系をきっちりさせて、一つ一つの仕事に求められる能力を格付け、それに対応した処遇を行う「能力資格制度」が一般的なシステムとして考えられるが、どうしてそのシステムとしなかったのか、その理由はなにか。また、能力等級制度はそれとどこがどのように異なるのか、又は同じなのか。
○すくなくとも、能力主義を標榜するのであれば、職務・ポストとの対応関係はなくすべきではないか。
○組織区分を行う理由は何か。A〜Dの区分=序列化はどのような法的根拠で行うのか。
○「基本職位」を設ける狙いは何か。結局のところ、現行の職務と級との対応関係を「大括り」にして、人事管理権者が任用・処遇を弾力的に行いたいだけではないか。現実に、課長ポストに就いていたものを企画官にするというようなことが頻繁に生じれば、行政の秩序に混乱を来すのではないか。
○行政職以外の能力等級制度の考え方やイメージは、現行の職務給のもとでの標準職務表そのものであり、到底、まじめな検証に耐えられるものではない。何故、能力の区分(伸長度合いや発揮度合い)が生涯を通じて2区分しかないようなことになるのか、理解に苦しむが、見解や如何に。
○行政職以外の考え方に端的に現れているとおり、結局のところ、能力等級制度は実施不可能な机上の空論としか考えられないが、見解や如何に。

(4)能力等級基準は、だれがどのように定めるのか、法的な扱い(国公法か特別法か)も含めて明らかにされたい。われわれは勤務条件そのものと理解し、組合の関与は不可欠と考えているが、その理解でいいか。

(5)「人員枠」の決定主体はどこで、どのような手続き・手順で決めるのか。勤務条件と理解してよいか。この場合、交渉はどのように位置づけられるのか。
○職務の量、人員枠、昇格の対応(相関)関係は具体的にはどうなっていくのか。

(6)能力等級制度のもとでは昇格が任用、処遇に直接連動することから、極めて重要な意味合いを持つこととなる。その意味で、昇格の取扱いは勤務条件そのものであり、交渉事項であると理解していいか。
○昇格は、あらかじめ定める基準に従って能力評価の結果を基に昇格候補者を選定し、人事管理権者が人員枠の範囲で「総合的に考慮」して決めることとなっているが、能力評価の結果=イコール昇格ということではないとすれば、人事管理権者の恣意性を排除し国家公務員全体の統一性を確保するためにも、別途客観的な昇格基準を作る必要があると考えるが、貴職の見解や如何に。また、「あらかじめ定める基準」とは、誰がどのように決めるのか。

(7)2次原案、P10のCの「能力等級表を異にする異動」について、級の対応関係を検討するということだが、検討結果はどうか。

3.任用制度

(1)職務・職階制度を廃止するとしているが、何故廃止しかないのか、職務・職階制度を徹底すれば年功主義などは介在する余地はないと考えられるが、いかがか。
 また、その廃止によって、現行の「官職(職務)への欠員補充」という採用・任用制度の考え方は変わるのか、継続されるのか、明確にされたい。
○政府におけるこれまでの公務における採用・任用の考え方は、私的な契約関係ではなく、任用自体が行政行為であるとの考え方に立ち、実態はともかく、制度的には仕事・職務を基準とした欠員補充と成績主義の考え方をとってきたと考えられる。
 しかし、「能力等級制度を基礎とした新たな任用制度」での採用・任用は、「職務に求められる能力に応じた人の配置」という考え方であり、こうした考え方が成立しない仕組みとなっていると思われる。であるならば「労働契約」という考え方に立つのか、「任官補職」という考え方をとる以外にないと考えるが、貴職がどのような考え方に立っているのか明確にされたい。
○これまでの任用制度は、、国民に対する透明性確保、政治に対する公正・中立確保に配慮したシステムであったと考える。その任用概念を変えるのであれば、どのように国民に対して透明性を確保するのか、中立・公正性確保するのか、明確に回答されたい。また、文字通り国民的議論が必要ではないかと考えるが、この点は国民、有識者、労働組合等からの意見聴取をどのように行ったか、具体的に回答されたし。

(2)職務分類について、「職務を基本職位に分類整理する」ことと規定しているが、これは職階制そのものの考え方ではないか。職階制の概念ではないとすれば、そうした職務とはどういうのか、説明されたい。
○本来、能力主義を標榜する能力等級制度の下では職務分類という概念は成り立たないと考えるが、見解や如何に。
○また、誤解を与える「職務分類」という用語は再検討したいとの見解表明があったと理解しているが、その取扱いは。
○「あらかじめ定められた分類に関する明確な基準」は誰が定めるのか。その具体的イメージはどういうものか。
 また、職務分類は当該職務の等級格付けでもあることから、当然勤務条件性を有し、交渉を経ないで人事管理権者が一方的に分類することはできないと考えるが、見解や如何に。
○職務の重複分類は、能力等級制度の基本理念に反するものであり、やめるべきだと考えるが見解や如何に。

(3)新任用制度では、昇任・降任という概念にはほとんど意味がなくなり、「配置」という概念に意味合いがおかれるとの説明があったが、何故なのか。配置という概念は行政行為なのか。
○官職の序列が残るとすれば、基本職位を異にする下位の官職への配置は明らかに処分性を伴うと考えられるが、見解や如何に。また、降格は不服審査の対象であるか否か、明確にされたし。
○配置は能力評価の結果等を総合的に勘案して行うとあるが、提示されている職務を通じて発揮された能力を評価する能力評価の仕組み・手法では上位の基本職位に昇格するための能力実証はできないことから、結局のところ人事管理権者の裁量によって配置が一方的に行われるのではないか。別途、配置の統一的・客観的基準を作らないと、中立・公平性、職員の納得性が得られないと考えるが、見解や如何に。

(4)任用に何故原則と特例があるのか、または必要なのか、明確な理由を述べられたい。
○特例的な任用を行う場合の具体的なケースをできるだけ詳細に述べられたい。また、特例的な任用の基準は誰が定めるのか。だれがチェックするのか。
○特例的な任用は、メリットシステムを逸脱するものであり、能力等級制度の趣旨とまったく反するものであり、行うべきではないと考えるが、見解や如何に。
○新人事制度の任用の一般概念も明確でない段階で、あらかじめ特例的な任用制度を設けるのは、結局のところ、一種試験採用者を特別扱いするためとしか理解できないが、見解や如何に。

(5)上級幹部職員と非常勤職員については、能力等級制度を適用しないので従来の任用制度を適用するとの説明があったが、身分保障や服務関係を含めて全く同一な公務員制度を前提として2つの任用制度が成立することはあり得ないと考えるが、回答や如何に。

(6)記載されている内容は手続きが主であるが、例えば厳正な登用審査を行うときの基準は、定めるのか、定めないのか。定めないとすれば、結局のところ人事管理権者の裁量に左右されることとなり、手続きだけを強調しても国民に対する透明性・信頼性は確保できないと考えられるが、見解や如何に。

(7)公務員制度改革の重要課題である女性登用等について、一切記述がないが、何故か。これまで進められてきた政策をやめるということとしか理解できないが、それでいいか。

(8)貴職は、能力等級制度のもとで任用や分限概念を説明するのに、分類される以前の「裸の職」という新たな考え方を発明して示したが、何度聞いてもそれが現実の公務員制度や人事制度にどのような意味合いがあるのか、理解不能である。職をランクづけないで、職を置くことの公務員制度上の意味合いは何か、理解できるように回答されたい。
○能力等級制度が能力による職員をランク付けするためのツールだとも説明したが、降任は明確な不利益であることからして、ツールで不利益処分を受けることとなるが、見解や如何に。
○能力等級制度がツールだとすれば、結局、現実の人事行政はこれまで通り職務中心で動くこととなり、新人事制度は能力主義ではなく職務主義ということでしか理解できないが、その理解でいいか。

4.免職・降格の基準・手続き

(1)免職・降格とは、現行制度で言う分限処分(免職=官職を失うこと、降任=下位官職に就けること)と同じ概念か違う概念か、説明されたい。
○身分保障の考え方は残るのか。変わるのか、変わらないのか、明確にされたい。仮に免職・降格が分限=身分保障上の制度であるとするならば、たとえ手続き規定であっても第三者機関の意見の申出等を経ないで、人事管理権者が一方的に制度設計できないと考えるが、見解や如何に。
○これまでの分限の「基準」は公平性の観点から法律−人規となっているが、処分権は人事管理権者にあるとしても、第三者機関の関与なしに法律で基準を定めるだけでは公平性が担保されないのではないか。現行でも分限・懲戒処分の規定は抽象的で使用者の裁量が広すぎるという問題があり、仮に法律で定めるとなると、いまの人規よりさらに詳細な規定が必要ではないか。

(2)休職概念はどうなるのか、明確にされたい。

(3)労働基準法第19、20条や判例の趣旨に従い、公務員制度にも「解雇規制=雇用保障」の規定を新たに設けるべきではないか。

(4)能力等級制度を適用しない上級幹部職員の分限概念はどうなるのか。また、行政職以外の分限はどうなるのか。たとえば、国営企業職員や特定独法職員はどうか、具体的に回答されたい。


5.給与制度

(1)「給与制度」は賃金・労働条件そのものであることから、現行の国家公務員法の下では人事院の勧告又は意見の申出を経ないで、一方的に政府が見直すことはできないと考えるが、見解や如何に。中央人事行政機関でもない貴職が給与制度の設計を行っている法的根拠は何か、述べられたい。
○仮に内閣法12条を根拠とし、人事院の勧告又は意見の申出を経ないで貴職が給与制度の設計を行うとすれば、内閣官房としての貴職が一方的に給与制度を設計・変更することとなり、労働基本権制約の立法政策は憲法違反となると考えられるが、見解や如何に。憲法違反とならないためには、貴職を使用者と位置づけ、われわれに労働基本権を付与して団体交渉を行うか、協約締結権を有した団体交渉と同等の法的効力を持つ「交渉」を行い、合意を得る以外ないと考えるが、見解や如何に。
○貴職は、給与制度の設計のどこまでを行うのか、明らかにされたい。

(2)以上の点について明確な回答が得られるまで給与制度についての交渉・協議は留保し、「主語入れ」の考え方が明らかになった段階で改めこの点について交渉・協議を行うかどうか判断するとし、貴職もそれを了解してきたが、そのスタンスに変わりはないか。

(3)そもそも現行の給与制度の何が問題なのか、なぜ新給与制度に改めなければならないのか、明確な理由を示めされたい。

(4)「基本給」「職責手当」「業績手当」の3つに区分する理由は何か。現行は職務給という原則があるが、新給与制度における給与の原則はどのようになるのか、明確にされたい。


6.評価制度

(1)評価制度の検討は、これまで総務省人事・恩給局、人事院等とわれわれとが交渉・協議し、それを踏まえた施策の検討の段階まで進捗してきているが、それらの経過については行革推進事務局との交渉・協議では継承されるのか否か。あるいは、どういう関係性にあるのか。

(2)「能力等級制度を基礎としたトータルシステム」という新人事制度の中で、新評価制度はどのような位置づけとなるのか、明確に説明されたい。
○われわれの理解によれば、新人事制度のもとでの評価は任用や処遇に直結するシステムとなるが、現行の勤評制度をめぐる問題を含め、極めて重い歴史を持った公務内で、そうした性急なことが可能とは考えられないが、過去の評価制度をめぐる歴史的経過に対する見解や如何に。

(3)2006年度の新人事制度の発足時から直ちに新評価制度を機能させていく考えかどうか、回答されたし。

(4)新評価制度自体を機能させるとしても、まず能力開発・育成等に活用し、能力等級上の昇格や給与処遇にこれを活用させていくのは新評価制度への信頼が醸成されてからとすべきだと考えるが、見解や如何に。

(5)2006年度までの新評価制度の設計及び実施に向けた具体的なスケジュールや如何に。

(6)第2次原案で、新評価制度の「試行」を行うとしているが、「能力等級制度を基礎としてトータルシステムとしての新人事制度」という考え方からして、新人事制度の全体像が出そろわないうちに、「試行」を実施することは不可能と考えられるが、見解や如何に。
仮に「試行」を考えているとするなら、@何のために、Aどのような範囲で、Bどんな試行を、Cいつ頃やるつもりなのか、明確にされたし。
○「試行」についてわれわれといつ、どのような形で交渉・協議するのか、明確にされたし。過去の経緯からして、この問題は極めてデリケートであり、たとえ「試行」といえどもわれわれと十分交渉・協議し、文字通り合意の上で行うような手法をとらないと職場に不要な混乱を招き、公務能率にも影響を与える結果となると考えるが、貴職の見解や如何に。

(7)能力評価は「能力等級への格付け及び任用の重要な参考資料とする」と位置づけられているが、「重要な参考資料」とはどういう意味か、明確に説明されたし。
○能力評価がすべてではないとすれば、能力等級への格付けや任用はなにを基準にどのように行うのか、明確にされたし。
○能力評価自体が絶対評価で行われることに鑑み、別途客観的な格付け・任用基準を設けなければ、人事管理権者の恣意性は排除できないし、能力評価をやる意味はないと考えられるが、見解は如何に。
○「必要な範囲についてフィードバックする」とあるが、何をどのような形でフィードバックするのか、明確に回答されたし。
○評価の信頼性・納得性を高める上から評価の透明性を確保することは不可欠の要素であるが、新人事制度ではそもそも「開示」という考え方に立っておらず、決定的に不十分だと考えるが、見解や如何に。また、「フィードバック」ではなく「開示」とすべきだと考えるが、見解や如何に。
○能力評価における職務遂行能力基準は「等級格付けの重要な参考資料」(P33)であり、給与を決定することになることから、勤務条件そのものであり、評価制度の設計に関わる交渉・協議、評価基準作成段階の組合代表の参加、などを明記すべきと考えるが、見解や如何に。

(8)2次原案には、行(一)本省のライン官職の職務遂行能力基準しか示されていないが、@専門職、A地方機関、B施設等機関、C他の俸給表の基準は検討しているのか。検討しているとすれば、誰がどのように検討しているのか。その進捗状況はどうか。われわれにはいつ頃示すつもりか。

(9)職務遂行能力基準は、@等級別の定額部分の序列を明確に説明しうること、A異なった機関における評価の間に公平性を保障することが不可欠であると考えるが、示された能力基準は具体性・客観性に欠ける定性的基準であって、等級間(組織間は示されてもいない)の序列を客観的に説明するものとなっていないのではないか。
 例えば、「係長が担当する程度の業務」「課長補佐が担当する程度の業務」などの記述が見られるが、各府省・原局・各機関・職域によってバラバラであって一意的には定まらないと考えるが、その場合、どうやって公平・均衡を図るつもりか、明確にされたし。

(10)目標管理による業績評価を行う職員の対象は、具体的にどのような職種となるのか、それを可能とする根拠は何か、明確にされたし。また、「対象外職員」は具体的にどのような職種となり、それらの職員にはどのような手法の業績評価が行われるのか、明確にされたし。
○目標管理導入に不可欠な個々の仕事の職務範囲や役割期待は、どのような形で明確化するのか、回答されたし。「数値目標」を設定することは考えているのか、いないのか。いるとすればどのような職種が対象となり、除外されるのか、具体的に回答されたし。

(11)業績評価の基本給の加算部分決定の「勘案要素」とは、具体的に何を意味するのか。また、業績手当の業績反映部分決定の「重要な参考資料」とは、具体的に何を意味しているのか。「勘案要素」と「重要な参考資料」はどこがどう違うのか、説明されたし。
○能力評価と同様に、業績評価も絶対評価で行うとしているが、その結果が「勘案要素」「重要な参考資料」という位置づけであれば、別途客観的な決定基準が必要だと思われるが、見解や如何に。

(12)業績評価の「フィードバック」の問題点については能力評価と同じであり、評価基準、結果とも「開示」とすべきであると考えるが、見解や如何に。

(13)評価によって能力等級の格付けを行ったり、給与上の差を付ける人事制度を実施しようとするならば、評価制度が公平・公正、透明で納得性のあるものであることは当然として、適切な「苦情処理制度」が整備されているか否かが決定的に重要であると考えるが、貴職はこの考え方に同意するか。
○その苦情処理制度は、三者若しくは2者構成とし、労働組合代表が加わる公平で一定の権限を持った「独立・専門機関」を設ける必要があると考えるが、見解や如何に。
 こうした観点からみて第2次原案の「苦情対応の仕組み」は、使用者サイドの「苦情相談」の域を出ないものであり、そもそも「苦情処理制度」ではないと考えるが、見解や如何に。
○こうした使用者サイドの「相談」システムでは、新人事制度を実施することによって多発することが想定される個別事案に到底対処できないと考えるが、如何に。
○各府省の苦情対応の仕組みの整備について、「組織の規模や評価の運用実態に応じて検討する」とし、基本的に各府省に委ねることとしているが、これでは統一的な制度として構築することを最初から放棄したことになると考えられるが、見解や如何に。

(14)新たな評価制度を構築するためには、個別的な紛争を集団的な労使関係で律していくことが極めて重要であり、日常的にいろいろな機会を通じて労使が意思疎通を深めるとともに、評価の節々で労働組合が参加する形で話し合いが行われる必要があると考えるが、見解や如何に。
○われわれが要求している評価に関わる労使協議制の設置についてはどのような考え方を持っているのか、回答されたい。


7.組織目標・行動基準

(1)具体的な組織目標をどう設定するかについて、各府省とはどんな論議を行っているのか。本年度から始まった政策評価との関わりを含めて論議していることがあれば示して欲しい。

(2)この間、折に触れて指摘してきたように各府省の組織目標が設置法や国民の行政ニーズから見て適正なものであるかどうかについてはどういった手法で担保するつもりか。各府省政策評価委員会、総務省の評価委員会でチェックすることや予算と合わせて国会で承認するなどの措置は考えていないのか。

(3)職員の参加、上意下達ではなく全員参加の下で作り上げていくことがその実効性確保や業績評価における個別目標へのブレークダウンに有効ではないかと考えるがどうか。

(4)行動基準を設ける積極的理由を明確に説明されたい。また、行動規準と服務義務との関係はどう整理しているのか、具体的に説明されたい。

(5)行動規準と「懲戒処分との関係については、引き続き検討する」(P43)としていたが検討状況はどうか、説明されたい。

(6)交渉・協議の中で「違法な職務命令があったときの異議申し立て制度」を作るよう要求したが、それに対する回答を示されたい。


8.人材育成

(1)人材育成の項では「研修」という表現がないがどうしてか(幹部育成にはある)。

(2)「職員の育成に関する方針」(P44)は、まさに能力の開発に関わることから、能力等級制度の下においては勤務条件性を持つと考えるがどうか。そういう意味で基本権制約下においては第三者機関の関与、究極的には組合の参加が不可欠ではないか。

(3)「職員の責務」(P44)として設定するのであれば、意欲を持って自ら進んで能力開発に励める人事コースを設定することが前提であり、本人の希望を尊重することが重要ではないか。「職員の育成を図るため、職員にコースを提示する」ということではうまくいかないのではないか。基本設計には「本人の希望」との表現があったが消えたのはどういう理由か、説明されたい。

(4)1次案に記されていた「コースの変更」が削除されたのはなぜか。

(5)「人材育成コースは、その後の人事を制約するものとは位置づけない」と書かれているが、育成された能力にかかわらず、それとは別に人事管理権者が一方的な配置を行うことができるという趣旨としてしか理解できないが、その理解でいいか。


9.本府省幹部職員集中育成制度

(1)法制度上の位置づけを明確にされたい。
○現行の試験制度の枠組みを変えないでT種採用職員を自動的に対象職員として位置づけることは、特権キャリア制度として批判されている運用上の仕組みを制度化し、国民から批判されている特権性・閉鎖性を一層助長することにしかならないと考えるが、如何に。
○貴職が交渉・協議で示した「キャリア制度を大きく見直す」ということは具体的にどのようなことを指すのか、明確にされたい。

(2)「T種採用職員以外の職員」について、「あらかじめ定める基準」の内容はどの様なものであり、誰が定めるのか。

(3)「集中育成期間」のうち「あらかじめ定める期間」(P46)はどの程度を想定しているのか。

(4)育成プログラムについて、地方機関の現場の経験もなくいきなり管理職の勤務経験を付与することは特権意識を生み出すことにつながるし、将来、現場実態とずれた政策立案につながるなど弊害が大きいのではないか。

(5)特例的任用は「能力に基づく任用」という新たな人事制度の根本理念を否定することとなり、行うべきではないと考えるが、見解や如何に。


10.上級幹部職員の新人事制度

(1)現在の指定職は給与法上の区別でしかなかったが、公務員制度上の上級幹部職員とはいったいどういう概念か、国公法上に位置づけるのか、明確に説明されたい。
○能力等級法には書かないと理解してよいか。であるとすれば、能力等級制度に対応する上級幹部職員の任用上、給与上の基本理念や給与上の取り扱いについては、別の法律を制定するのかどうか、明確にされたい。

(2)上級幹部職員について、一般職でありながら今回の新人事制度の根幹である能力等級制度を適用しない理由が不明確であり、地方機関の長まで含めて「大臣等を直接補佐する」(P48)ことをその根拠とするには無理があると考えるが、見解や如何に。

(3)上級幹部職員の職務を基本職位に分類する「あらかじめ定められた明確な基準」(P48、9(3))の内容はどのような内容であり誰が定めるのか、明確にされたい。

(4)なぜ年俸制なのか不明である。提案されている年俸制は現在の月例給と一時金を合算して支給だけ分けるというような中途半端なものであるだけに、導入する意図が理解できない。職責加算だけでは年俸制の根拠たり得ないのではないか。年俸制の具体的内容を示すべきではないか。


(5)現行制度以上に、大臣がその任用、給与決定に直接関わる仕組みを設けるということであれば、その範囲を限定した上で、一般職ではなく政治的任用職とすべきであると考えるが、見解や如何に。


11.救済制度等

(1)第2次原案の提起は、法制度のあり方を含め具体性がなく、交渉・協議の対象となり得ないと主張し、貴職もそれを基本的に認めているが、いつ具体案を提示するか、明確にされたい。

(2)「苦情ありき」という前提に立って検討しているが、まず、職場における労使の意思疎通を制度化して苦情が出ない仕組みを作ることに全力を傾注すべきではないか。新しい制度を作ろうとしているだけに、労働組合を職場におけるイコールパートナーと位置づけて、労使が共同して職場の活性化をめざす姿勢を明確に打ち出すべきではないか。使用者の側が一方的に行おうとする態度は、時代遅れではないか。

(3)「苦情処理」は、使用者が「苦情相談」として行うのは論外ではないか。組織としての労使が責任を持って、一定の権限を持ち(仲裁権等)、それぞれの現場で処理する仕組みを検討すべきと考えるが、見解や如何に。
○したがって、苦情処理プロセスにおいて、組合または職員代表が参加する仕組みが必要だと考えるが、見解や如何に。

(4)「苦情処理」体制は、人事管理権者に任せるのではなく、どういった組織を置いて処理するかなど共通事項・最低要件は統一的に定めるべきではないか。

(5)人事院の救済機能については、現行のような「苦情相談」ではなく第三者機関としての「処理」として明確に位置づけるべきではないか。人事管理権者の権限が強まる一方、人事院は事後チェックへ機能が低下するだけに、「苦情相談」では救済機能と位置づけられないと考えるが、如何に。
○人事院の救済機能を使用者としての政府が一方的に検討できないと考えるが、検討できるという法的根拠を示されたい。

(6)公平審査については、登録団体以外を差別する仕組みを改めるなど抜本的な検討が必要だと考えるが、具体的な考え方は如何に。

以上