みんなの力で労働基本権確立と民主的公務員制度改革を実現しよう

労働基本権確立・公務員制度改革

対策本部ニュース

No.123 2002年12月2日

連合官公部門連絡会


 連合官公部門連絡会は、11月29日、「ILO勧告を全面的に実施させよう」をメインスローガンに「透明で民主的な公務員制度改革を求める11.29中央行動」に取り組んだ。13時から上京団による地元国会議員への要請行動を実施、15時50分からは、連合会長・連合官公部門代表委員・3野党幹事長が官房長官に会い、ILO勧告を全面的に受け入れ「公務員制度改革大綱」を再検討するよう申し入れた。18時からは、連合との共催で日比谷大音楽堂で1万人が参加しての中央集会を開催し、国会と一般コースに分かれてデモ行進した。なお、連合官公部門は、この日を「全国統一行動日」に設定、各構成組織は、職場単位に集会を持ち、小泉首相と石原行革担当大臣に「ILO勧告の全面実施」等を求める趣旨の要請打電を行った。

連合会長・3野党幹事長が共同で官房長官に強く申入れ
ILO勧告の受け入れ・労働基本権確立に向けた協議の場設定求める
 連合と連合官公部門は、29日15時40分から、首相官邸で福田官房長官に会い、「ILO勧告を受け入れ労働基本権を確立した民主的な公務員制度改革を求める申入書」(別紙1)を提出した。会見には、政府側から福田官房長官のほか伏屋内閣官房副長官補、春田行革推進事務局・公務員制度等改革推進室長が同席、組合側は、笹森連合会長、須賀連合経済政策局長と連合官公部門から北岡・榊原・丸山各代表委員が参加した。また、「労働基本権問題は極めて重大な課題である」として、政府がILO勧告を速やかに受け入れるよう求め、3野党から中野民主党幹事長、福島社民党幹事長、藤井自由党幹事長が揃って申入れに同席した。
 冒頭、笹森会長は、「先のILO勧告に則り、公務員の労働基本権の確立にむけ、大綱の見直しを含め、3野党幹事長ともども、政府としての真摯な対応をお願いにあがった」と前置きし、次のように訴えた。
 「連合は、今年の2月にILOに提訴していたが、11月21日のILO理事会でご承知の勧告が採択された。先週、OECDの会議に参加したが、そこでも、この問題が話題にのぼり、各国大使や代表からは『日本の労使関係は発展途上国以下だ』と批判された。政府として直ちにILOの勧告を受け入れ、大綱を見直して公務員の労働基本権の確立に向け、民間で行われているような十分な労使協議を直ちに始めるように、具体的な方策を示してほしい。」
 ついで、丸山連合官公部門「対策本部」本部長が、申入れの趣旨について、@公務員制度改革にあたって、大綱の再検討がILOの意向であるということ、A大綱に基づく法案作成作業を中断して、来年3月開催の次期ILO理事会までに、大綱見直しの結論を提示すること、Bそのため、ILO勧告の中身について、労使で十分に協議する場を設置することである、と説明した。さらに、「勧告では、労働基本権を付与する公務員の範囲について、軍隊や警察、さらに国の政策の企画立案に携わる上級公務員と、一般の公務員を明確に区分し、後者には労働基本権を保障すべき、と具体的に指摘している。日本はILO87・98号条約を批准しており、常任理事国としてのわが国の識見・品位が問われている。総理に決断を求めたい」とのべ、「官房長官から総理に伝え、ILO勧告を踏まえ、早急に協議の場を設けるなど申入れ事項に明確な回答を行って貰いたい」と強く求めた。
 これに対し福田官房長官は、@申入れのご趣旨は承った。よく検討してみたい。これから、皆さんのご意見を伺う機会もあると思うので、皆さん方と相談させてもらう、A物事は大局的に判断すべきだ。いまの経済・雇用情勢を踏まえ、判断する必要がある。どういう協力関係を作ったら、労使対立でなく理想的な労使関係にもっていけるのか、話し合いをさせていただきたい、とのべ、申入れ事項の検討を約束した。

延べ600人参加し各県上京団の地元選出議員への要請行動終わる

 11月25日から行っていた各都道府県上京団による地元選出国会議員への要請行動は、29日の取り組みで1週間の行動を終了した。この間の行動には、地方連合会の会長や各県の官公部門構成組織の代表ら延べ600人が参加し、衆参両院の与野党議員686人に要請した。要請先の与党議員からも「ILO国際基準を視野に皆さんの意見を聞きながら対応したい」「大綱では、労働基本権制約の代償機能としての人事院の取り扱いに矛盾が生じていることは確かだ」「公務員のやる気を失わせるようなことはすべきでない」などの考えが示された。



(別紙1)

2002年11月29日


内閣総理大臣
 小泉純一郎 殿

日本労働組合総連合会
会  長 笹森  清
連合官公部門連絡会 
代表委員 北岡 勝征
代表委員 榊原 長一
代表委員 石川 正幸
代表委員 橋爪利昭紀
代表委員 丸山 建藏



ILO勧告を受け入れ労働基本権を確立した民主的な公務員制度改革を求める申入書


 日頃より、私どもにご指導ご鞭撻を頂き心から感謝申し上げます。
 私どもは、本年2月に、政府の「公務員制度改革大綱」が国際労働基準に違反しているとして、ILOに提訴しました。これに対しILOは11月21日の理事会で、日本政府に対し、「公務員の労働基本権の制約を維持するとの公表した意図を再検討すべきである」として「大綱」を見直し、公務員制度をILO条約に適合したものとすべく「すべての関係者と全面的で率直かつ有意義な協議」を直ちに実施するよう勧告を行いました。
 私どもは、政府がこの勧告を全面的に受け入れ、その実現に向けて私どもと直ちに協議を開始し、その中で、公務員労働者に労働基本権を確立する方向での改革案を、次期ILO理事会の開催時期までにとりまとめるべきものと考えます。
 以上のことから、下記事項の実現に向けて最大限の努力を払われるよう強く申し入れます。



1.ILO勧告を全面的に受け入れ、「公務員制度改革大綱」を見直して、次期ILO理事会の開催時期までに、公務員労働者に労働基本権を確立する方向での改革案をとりまとめること。

2.上記国際労働基準に沿った公務員制度改革案取りまとめのため、労使協議の場を直ちに設けること。


11.29中央集会に1万人が参加、国際組織から連帯メッセージ
ILO勧告の全面実施求め国会・推進事務局に向けデモ

 11月29日18時から日比谷大音楽堂で、「透明で民主的な公務員制度改革を求める11.29中央集会」が開催された。連合と連合官公部門連絡会の共催によるもので、全国から1万人が参加、会場の外まで参加者であふれた。会場の舞台正面には、「ILO勧告を全面的に実施させよう」とのメインスローガンの入った大きな看板が掲げられた。
 集会は、宮入対策本部事務局次長の司会ではじまり、議長に選出された榊原「対策本部」副本部長(連合会長代行)は、「政府に11月21日のILO勧告の全面実施を強く求めるための意思結集の場に」と集会と行動の意義を訴え、集会成功への協力を求めた。
 主催者を代表して笹森連合会長があいさつ、公務員の労働基本権問題について官民一体で取り組むのは、旧労働4団体時代以来初めての画期的なことであるとし、「OECDの会議では日本の労使関係は途上国並とみられている。事は働く者全体の問題であり、団結権・団体交渉権・スト権なくして労働条件がよくなることはない。連合全体の課題であり、自ら先頭に立ち政労交渉はじめ、最後まで闘い抜くことを約束する」と訴えた。
 連合会長のあいさつが終わったところで、会場外で待機していた参加者は、国会請願コースのデモを開始。会場内からは、国会に向かう仲間に連帯の拍手が起こった。
 集会には、来賓として野党3党の国会議員が駆けつけ、各党からあいさつを受けた。  中野寛成民主党幹事長は、「政府は自らの失政を棚にあげ、働くものを犠牲にしようとしている。ILOの審判を重く受けとめ、野党一致して闘い抜く」。中西績介社民党副党首は、人勧完全実施を勝ち取るための一斉休暇闘争など自らの闘いの経験を紹介しながら、「政治反動が進むもとで、平和憲法を政策的に実現する闘いの一環として最後まで共に闘う」。中井洽(ひろし)自由党副代表常任幹事は、「公務員のみなさんがこれまで不自由な状況で労働組合運動をしてきたことに愕然とする思いだ。ILO勧告を受け、世界に向かって胸をはれる公務員制度、労使関係をつくっていくため、野党一致して対案を出してがんばる」と述べ、それぞれ力強い連帯と、共に闘うとの決意が示された。
 来賓あいさつの後、2つの国際労働組合組織から寄せられた連帯メッセージ(別紙2)が披露された。ILO結社の自由委員会への共同提訴団体である国際自由労連(ICFTU)の書記長ガイ・ライダー氏と、韓国で厳しい弾圧のもと公務員労働者の労働基本権の確立のため闘っている韓国公務員労働組合(KGEU)の委員長職務代行・主席副委員長ノ・ミョンウ氏からのもので、榊原集会議長が読みあげ、会場からは大きな拍手で、連帯メッセージに応えた。
 ついで、山本対策本部事務局長が「ILO勧告と今後の取組方針」について、要旨次のような基調報告を行った。
@ 国内での1千万署名運動とICFTU、PSIをはじめとした国際労働運動の全面的な支援・協力によって、ILO提訴は完全勝利を収めることができた。勧告は、日本の公務労使関係制度が「ILO87、98号条約に違反している」と指摘、日本政府に「労働基本権制約の再検討」と「法改正のため労働組合をはじめ全ての関係者との交渉・協議」を求めており、闘いの極めて有効な武器と評価できる。この成果を活用し、公務労働関係を抜本的に改革することができるか否か、日本の労働組合運動の力量が問われることになる。
A ILOの11月勧告は、新たなILO闘争のスタートと位置づける必要がある。運動の基本スタンスが国民本位の民主的な公務員制度の確立(主要3要求)であることに変わりないが、取組みの中心に「ILO勧告の全面実施」を据え、連合を先頭とした総力戦と位置づける必要がある。基本要求は「ILO勧告の受け入れと労使協議の場の設定」の2点(別紙1参照)。政府がILO勧告を無視し得ない政治的・社会的条件をつくりだすことを最重点課題として、「政治対策」、「マスコミ対策」、「教宣活動」、「職場・地域からの大衆行動」に取り組む。
 基調報告の提案中の18時50分には、TBSラジオが集会のもようを実況中継、「ここ日比谷公園では、連合が1万人の集会を開き、政府にILOからの勧告を実施して公務員の労働基本権の制限をやめるよう求めています」と報じた。
 最後に、宇井全逓東京地本執行委員が「ILO勧告の全面実施、『大綱』の撤回を求める決議案」(別紙3)を読みあげ、満場の拍手で採択した。轆轤「対策本部」副事務局長が閉会のあいさつ、丸山「対策本部」本部長(連合副会長)の音頭で「団結がんばろう」を三唱して、集会を締めくくった。
 集会後、参加者は、「政府にILO勧告の全面的な実施を求め、公務員の労働基本権を確立しよう」の横断幕やのぼり旗を持ち、一般デモ(芝公園)コースに出発、「大綱」に基づいて国公法の改正作業を進めている行革推進事務局(東京・港区にある第10森ビル4階)の前では、「ILO勧告を受け入れ直ちに作業を中止せよ」とシュプレヒコールを連呼した。



(別紙2)
国際労働組合組織からの連帯メッセージ


【国際自由労連(ICFTU)のメッセージ】
 国際自由労連(ICFTU)は、透明で民主的な公務員制度改革を求める皆さまのキャンペーンを緊密にフォローしてきました。ICFTUとグローバル・ユニオンのパートナーは、連合と連合官公部門連絡会による提訴行動に対し、国際労働運動から全面的な政治的支援を続けることをお約束いたします。
 9月のキャンペーンの折りには私自身が来日し、皆さまの運動の目的と動員力の力強さに感銘を受けました。このキャンペーンは必ず、公務員の労働基本権尊重という皆さまの正当な要求に対する世論の注目を喚起し、政府方針の変更へと繋がるでしょう。
 ICFTUは改めて皆さまの闘いに全面的な連帯を表明し、日本の公務員が労働基本権を獲得できるよう成功をお祈りいたします。

国際自由労連(ICFTU)
書記長 ガイ・ライダー


【韓国公務員労働組合(KGEU)のメッセージ】
 日本の公務員労働組合の兄弟姉妹の皆さん、私たちは労働組合権の奪還および民主的公務員制度改革をめざす、皆さま方の闘争を全面的に支持致します。
 去る11月4日と5日の韓国公務員労組の年休闘争の際、PSI副会長をつとめる自治労の北岡委員長が韓国を訪問し、連帯と支持を表明していただいたことは、私たち組合員の大きな力となり、労働者の連帯の大きさと大事さを、改めて認識することができました。
 皆さまがいま取り組んでおられる公務員制度改革闘争は、現在行われているヨーロッパの公共部門労組のストライキと韓国公務員労組のストライキに対しても大きな励みとなり、重要な意味を持っています。
 新自由主義的政策を口実とした公共部門改革は、公共サービスの質をより悪化させ、労働者の労働基本権を抑圧するということを、私たちは経験的にも良く分かっています。私たちは、ILOが連合の提訴に応えて出した勧告を速やかに実行に移すよう、日本政府に対して強く要求致します。
 私たちは闘争と連帯こそ、困難に打ち勝ち全世界の労働者の大きな力になるということを知っており、皆さまの闘争に熱い連帯の声援を送りたいと思います。皆さま方の闘争は、私たちの闘争でもあります。公務員の労働三権を勝ち取るまで決して屈せず、最後まで闘いぬくことを約束致します。
 日本と韓国の公務員労働者は、団結してガンバロー!

韓国公務員労働組合(KGEU)  
委員長職務代行・主席副委員長
ノ・ミョンウ



(別紙3)
ILO勧告の全面実施、「大綱」の撤回を求める決議


 ILOは、公務員の労働基本権を制約し続ける日本政府に厳しい勧告を突きつけた。政府が進める公務員制度改革に、国際社会から全面見直しが求められた。
 ILO理事会は、11月21日、日本政府への勧告を採択した。その内容は、第1に「労働基本権の制約を維持する」という「公務員制度改革大綱」の考えを再検討すること、第2に、ILO87号・98号条約に違反している日本の法令を改正して、公務員のスト権、団体交渉権の付与等について、全ての関係者と全面的で率直かつ有意義な協議を直ちに実施すること、というもので、労働側の主張を受け入れた画期的な勧告となった。
 こうした勧告の採択は、この間の、国民世論に訴えた1千万署名運動の成功と、共同提訴団体のICFTU(国際自由労連)をはじめとする国際労働組合組織の全面的な支援・協力によるものである。
 政府は、「わが国の事情」を理由に「承服しがたい」などと発言し、ILO条約違反との指摘を無視しようとしているが、こうした態度をとり続けることは許されない。「結社の自由の原則は、全ての国に一様に適用されるべき」とのILOの指摘を踏まえ、勧告を全面実施すべきである。
 国内でも、マスコミや各界有識者から、ILO勧告の実施やキャリア制度の廃止・天下りの禁止を求める意見が強まってきており、「大綱」は大きな綻びをみせてきた。
 本日、私たちは政府に対し、「大綱」を撤回して労働基本権を保障した制度に改めるため、全面的かつ率直な労使協議を直ちに開始するよう、強く求めた。ILO勧告と本日の中央行動を契機に、これから来年の通常国会に向け最大のヤマ場を迎える。
 日本の公務員の労働基本権は、国際労働運動の重要な課題に発展している。アジアをはじめ世界の労働者は、日本の公務員制度改革の帰趨を注視しており、わが国の労働組合運動の力量が問われている。政府がILO勧告を受け入れ、「大綱」を撤回し、労働基本権を確立した民主的な公務員制度改革を実現するため、不退転の決意で闘いぬこう。

2002年11月29日
連合・連合官公部門連絡会
透明で民主的な公務員制度改革を求める11.29中央集会

以上