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労働基本権確立・公務員制度改革

対策本部ニュース

No.181 2004年12月17日

公務公共サービス
労働組合協議会


行革推進事務局が改正法案断念と現行制度下の見直しを提案

対策本部は抜本的改革見送りの責任を追及

 行政改革推進事務局は、17日、14時30分から「対策本部」に対して、年末に閣議決定する新行革方針の中に、行革大綱を踏まえた公務員制度改革と改革関連法案の提出については事実上断念し今後は現行制度の下での「改革」を進めることを盛り込む予定であるとしてその内容を説明してきた。
 これは、政府・自民党が、12月10日に公務員制度改革法案の国会提出を当面見送り、年末に予定されている新行革方針に今後の取り組み方針を盛り込むことを確認したことを踏まえたものである。説明には、推進事務局側から松田事務局長、磯部公務員制度改革等推進室長、出合室次長、笹島参事官らが出席し、「対策本部」側は山本事務局長のほか各構成組織書記長らが参加した。
 冒頭、松田局長から、以下の通りこの間の状況説明があった。
(1) 公務員制度改革については、6月の与党からの要請を踏まえ、8月には「国家公務員制度改革関連法案の骨子」(案)を取りまとめて示し、公務労協を始め関係者との議論を進めてきた。また、与党と連合との間でも踏み込んだ協議や調整作業がなされており、それを注視してきたところであるが、最終的には協議が整わなかったことは残念なことと思っていた。
(2) こうした中で、関係方面との調整状況を鑑みて、法案のとりまとめを見送ることとし、今後の取り組み方針について、官邸や与党と相談してきた。その結果、公務員制度改革については、制度設計の具体化と関係者間の調整をさらに進め、改めて改革関連法案の提出を検討することにした。
(3) 他方、国民世論を踏まえれば改革を早期に実施に移すことが必要なので、年末に決める新行革方針において、現行制度下での取り組みを含めて新たな方針を出すことにしたものである。
(4) 公務労協とは、これまで意見交換をしてきており、一致しない部分もあるが改革の必要性については理解していただいていると思っており、これからの取り組み方針を説明させていただくので、ご理解願いたい。
 なお、要請のあった大臣との会談は20日の15時からを考えているのでよろしくお願いしたい。
 続いて磯部室長から、政府部内で調整中の新行革方針のうち公務員制度改革関係の内容が次の通り説明された。
(1) 基本方針として、制度設計の具体化と関係者間の調整をさらに進めて、改めて改革関連法案の提出を検討することとし、現行制度の枠内でも実施可能なものは早期に実行に移すことにする。
(2) 当面の取り組みとしては、改革を着実に進める観点から3つの事項について重点的に取り組む。
@ 退職管理については、年次主義やピラミッド型人事構成の見直しを進め、スタッフ職の整備・充実や人事交流を進めるなどキャリアパスの多様化を推進する。また、独法、特殊法人等への公務員の再就職については累次の閣議決定を遵守するほか、新たに認可法人の役員就任についてあらかじめ官房長官へ報告することにする。さらに、公益法人役員についても同様の扱いにする。
A 能力本位で適材適所の人事配置等を図るため、職員が発揮した能力をより的確に把握できるよう、現行制度の下における評価手法を改善し、より実効ある評価を通じた公務能率の向上を図る。このため、平成17年度中に本府省を対象とした試行に着手し、段階的な取り組みを進める。
B 複雑かつ高度な行政ニーズに的確に対応するため、多様で質の高い人材の確保・育成、人材の交流等に取り組むこととし、17年度以降順次実行に移すよう検討する。
(3) (2)@の官房長官への報告は内閣官房で検討することとし、これ以外の事項については、内閣官房及び各府省との連携の下、人事院の協力を得つつ、総務省が中心になって検討、調整を行い、推進する。
 なお、現行制度下における改革の推進を図る観点から実施体制を整備する。
 説明に対し、「対策本部」側は以下の通り推進事務局の見解を糺した。
(1) 政府は、2000年の行政改革大綱、2001年の公務員制度大綱に基づいて公務員制度の抜本的改革をめざしてきたが、結果的に履行されなかったという、政治的社会的責任は極めて重く大きい。どうしてできなくなったのか。その原因を明確にする責任があり、誰がどのように責任を取るのか。
 公務労協としては、政府自らが宣言した抜本改革を現行制度の手直しに解消することは断じて容認できない。
(2) 5月13日に政労協議が行われ、その下で実務協議なども進めてきた。われわれはその中で公務員制度改革は必要という立場で議論してきた。今回改めて公務員制度改革を進める方針を示すということであるが、それはどういった考え方に基づき、どういった手法で行うものなのか明らかにすべきだ。また、政労会談の枠組みについて、今後維持して行くのか否か、ILO勧告を踏まえ労働基本権の問題について協議していく必要がある。
(3) 今日は方針の説明なのか、それとも交渉・協議なのか。交渉・協議としても年末に決めるのであれば議論する時間がないではないか。示された案についてわれわれが意見を言えば変わりうるものなのか。仕切直しは関係者との十分な協議に基づいてまとめないのならば、同じ失敗を繰り返すことになり認められない。こうしたやり方には強く抗議する。
(4) 評価の試行について、「現行制度の下で」ということは現行勤務評定制度の「運用改善」ということであり、これは不誠実であり論外だ。われわれは強く反対するし、末端の職場まで混乱することになりかねない。「現行制度の下」という文言と考え方を撤回し、新しい評価制度を作ることにすべきである。なお、今後は、行革推進事務局ではなく総務省が担当することになるのか。
 これに対し推進事務局側は次の通り答えた。
(1) 公務員制度改革大綱に書かれている16年中の法案提出が履行できなかったことは残念なことである。与党である自民党と連合との合意が得られなかったこともその理由のひとつであるが、政府部内での調整がつかず、制度設計と法案がまとまらなかったことがより大きな理由である。法案提出には至らなかったが、行政を支える公務員制度を改革する必要性は依然としてあることから、現行制度の下で実行できるものを進めていくことも重要なことである。
(2) 5月13日以降、実務レベルでも協議し、意見のすりあわせを行いたいと思っていたが、政府部内での調整がつかなかったことから、みなさんから求められた全体像を示すことができず、具体的な点については合意できなかった。今後も意見をいただきたいと思っている。提案している3点についてはいずれも重要な課題であるので、現行制度の下で、実行可能なものとして進めたいのでご理解願いたい。政労協議の枠組みについては努力したい。
(3) お示しした案については、与党との調整がギリギリまでかかり示すのが遅くなってしまった。政府部内で今検討しているが、みなさんの意見を反映するのは難しいと思う。
(4) 評価制度については総務省が担当することになっており、新行革方針に書かれていないことを含めて検討することになるのではないか。
 以上のように、@どうして抜本改革を断念し、現行制度の下での改革に変わってしまったのか。その責任をどうとるつもりか、A今後の進め方について、どういった考えに基づき、どのような手法と枠組みで進めていくつもりか、B政労協議の枠組みをどうしていくのか、について明確な見解は示されなかった。このため、山本事務局長から、「20日の大臣との会談では、これら3点について明確な見解をいただきたい」と強く要望し、締めくくった。

以上