みんなの力で、労働基本権の確立と民主的な公務員制度改革を実現しよう

労働基本権確立・公務員制度改革

対策本部ニュース

No.83 2002年3月26日

連合官公部門連絡会


第16回書記長会議で、署名活動の取組み方針確認
民主的公務員制度の実現求め,4月15日から署名活動開始

 対策本部は3月25日午前8時から、KKRホテル東京で第16回書記長会議を開催し、運動の目標である、「公務員制度改革大綱」の撤回と、民主的な公務員制度改革の実現に向けた今後の取組み方針について協議した。その結果、4月中旬から国民的規模での署名運動に入ることを確認、あわせて民間への第3次要請行動を行うことを決めた。また、先に連合との連名で行ったILO提訴について、対策を一層強めることで意思統一を図った。 
 冒頭、来日中のハンスPSI(国際公務労連)書記長からあいさつを受けた。そのなかでハンス氏は、「PSIは今回の提訴を全面的に支持している」としたうえで、日本の公務員の労働基本権制約の現状が国際基準に違反している点を厳しく批判、「日本の政府や国会に働きかける取り組みを行う」と決意を述べた。 
 会議では、この間の経過として、@ILO結社の自由委員会への追加情報の送付、A国会と政党対策の現状、B推進事務局の動き、C事務局体制の再確立、などが報告された。
 方針として確認された署名活動について、@署名の性格は、衆参両院議長宛の請願署名、@取扱い団体は、連合及び連合官公部門、B署名期間は、4月15日から7月末とし、6月7日をメドに第1次集約、C署名配布枚数は、組織人員の1.2倍を原則に個別協議、D署名用紙、ポスター(室内用)、チラシ、署名の手引き等の教宣物は、4月第2週はじめまでに構成組織に送付、などで、こうした取り組みの意思統一のため、4月5日に各構成組織の担当者会議を開くことにした。


ハンスPSI書記長が来日、意見交換と講演で全面支持表明
「日本の基本権制約問題は国際的共通取組み課題」と訴え


 ILOへの共同提訴団体であるPSIのハンス・エンゲルベルツ書記長が3月24日から3日間の日程で来日、25日は、対策本部書記長会議への参加をはじめ、国際組織日本事務所(PSI、UNI、EI、ITF、IFBWW)との懇談、講演、さらに民主党・鳩山代表及び坂口厚生労働大臣への表敬訪問など、終日、分刻みの日程をこなした。
 このうち、16時から総評会館の会議室で行った講演要旨は次のとおり。
(1) 日本に来る前に韓国を訪問してきた。韓国の公務員労組の結成大会に参加するためである。韓国では、かつての軍事政権下の労働法制がいまも引き継がれて労働者を弾圧している。公務員の場合、団結権すら否認され、教員組合では、組合結成に10年かかった。政府職員の場合、職場単位の組織は認められたが、全国規模は依然禁止されている。公務員労組の結成大会には警察が導入され、多くの代議員が逮捕され、委員長候補には逮捕状がでた。しかし、韓国の労働者は、「民主主義は職場から生まれる」ということで、不屈の精神で民主主義を獲得する闘いに挑んでいる。
(2) 韓国政府は、G8の一員である日本を引き合いにだして、労働基本権を否認する口実に使っている。その意味で、公務員の労働基本権を制約している日本政府の姿勢は、日本だけでなく、アジア地域全体に悪い影響を及ばしている。皮肉にも、日本政府は、韓国が96年にOECD(経済開発協力機構)に加盟する際、ILO条約の遵守を求めていた。その日本政府が自国の公務員の労働基本権を否認し続け、しかも、今回の制度改革では、代償機能をさらに後退させようとしている。みなさん方の闘いは、日本だけでなく働く者の権利が侵害されているアジア全体にも波及する大変重要な問題と理解してほしい。
 PSIは加盟900の組織に日本政府と国会に対する要請ハガキ運動を提起している。PSIは他の共同提訴団体であるEI、UNI、ITF、IFBWWなどとともに、みなさん方の運動を支持し、よりよい公務員制度の法案ができるよう望んでいる。それは、先に述べたように、国際労働運動の前進に寄与するものだ。


【参考資料】

国連経済社会理事会・委員会の日本政府への勧告内容(01.8.31)について
「労働基本権制限は国際人権規約上から問題」と指摘、「スト権の保障」求める
――留保条項の撤回、国内法の整備など一層の改善を厳しく要求――


 公務員の労働基本権の制限が、国際人権規約からも問題である、として国連の委員会から批判され、日本政府に改善勧告が行われている。
 日本は、国際人権規約(「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」<A規約>及び「市民的及び政治的権利に関する国際規約」<B規約>)を批准しているが、批准に際し「留保条項」や「解釈宣言」を行い、国内法制度の規約に沿った改正・整備などの十分な措置を取っていない。こうした規約の履行状況について、国連経済社会理事会の下にある「経済的、社会的及び文化的権利に関する委員会」は、各国から報告を求め審査を行っている。
 同委員会は、日本政府が98年10月に提出したA規約に関わる第2回報告について審査を行い、昨年8月に「審査結果」を取りまとめ、9月24日にその内容を明らかにしている。
 審査結果では、日本における公務員等の労働基本権制限は、国際人権規約から見ても問題があると指摘し、政府に対し改善勧告が行うとともに、次回審査までに関係者と話し合って勧告事項を履行するために取った措置を報告するよう求めている。
 審査内容は多岐にわたっているが公務員の権利関係について紹介すると次のことが指摘されている。
 第1に、11項で「委員会は、締約国の規約第7条(d)(注:公の休日の報酬)、第8条2項(注:軍隊、警察構成員の権利制限)、第13条2項(b)及び(c)(注:中等教育の無償、高等教育の漸次的無償化)への留保に関し、委員会が受け取った情報によれば、それらの権利の完全な実現はまだ保障されていないことが示されている一方、締約国が前述の条項で保障された権利をかなりの程度実現しているという理由に基づいて、留保を撤回する意図がないことに特に懸念を表明する。」として、34項でこれら留保の撤回を求めていることである。
 外務省は第8条2項は留保していないという訳注を付しているが、委員会が問題としているのはこの条項に関わる「警察には消防職員を含む」との解釈宣言と思われる(留保している第8条1項(d)は「ストライキ権」であり、委員会は言及していないがこの留保も問題である)。
 第2に、21項で「委員会は、全ての公務員について、教師を含め、不可欠な政府の業務に従事していない公務員についてまで、ストライキを全面的に禁止していることについて懸念を有する。これは、(締約国は留保しているが)、=規約の第8条2項に違反し、また、人事に関する委員会による代償措置があるにもかかわらず、結社の自由と団結権の保護に関するILO87号条約に違反する。」と明確に指摘し、49項で「委員会は、締約国が、ILOに従って、不可欠な業務に従事していない公務員のストライキを行う権利を保障することを勧告する。」と明言している。
 さらに第3に、18項及び45項でILO105号(強制労働禁止)、111号(雇用・職業の差別待遇禁止)、169号(原住民・種族民)条約の批准を求めていることである。とりわけ、105号条約については、公務員法制において、法律が禁止する組合活動に対し懲役刑を科すことを維持するため批准しようとしないものである。
 その他、「審査結果」では長時間労働の問題や男女平等の問題など幅広い問題を指摘し、63項において「社会の全ての層に最終見解を広く配布し、それらの実施のためにとったすべての措置について委員会に報告することを勧告する。また、委員会は、締約国に対し、第3回報告作成準備の早い段階において、NGO及び他の市民社会の構成員と協議することを勧奨」し、64項で「第3回報告を2006年6月30日までに提出し、その報告の中に、この最終見解に含まれている勧告を実施するためにとった手段についての、詳細な情報を含めることを要請する。」として具体的な措置の実施を強く求めている。

 連合及び連合官公部門連絡会は、昨年末に閣議決定された「公務員制度改革大綱」について、ILO87号、98号条約に違反するものとして提訴を行った。その内容は、労働組合権としての結社の自由及び交渉権の問題であったが、日本における公務員の権利問題は労働問題にとどまらない、国際人権規約における「経済的、社会的及び文化的権利」上の課題でもあることが国連から指摘されたものである。
 公務員制度改革はこうした点からも、「公務員制度改革大綱」がめざすす基本権の制約を維持する方向ではなく、国際的基準に沿って労働基本権を保障する抜本的な見直しが求められていることが明らかである。先進国である日本の動向が近隣アジア諸国に与える影響が大きいだけに政府の責任には重いものがあり、国連の委員会の勧告を実施するためにも、労働基本権を保障する公務員制度改革を実現させなければならない。

以上