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2023年度 公務労協情報 No. 4

「公共サービス基本法に基づく東日本大震災の復興・創生をはじめとする危機への対応に関する政府要請を実施

 公務労協は、12月2日及び6日、「良い社会をつくる公共サービスキャンペーン」の取組の一環として、「公共サービス基本法」に基づく東日本大震災の復興・創生をはじめとする危機への対応に関する政府要請(資料1、資料2)を実施した。
 公務労協からは、村上政策・制度専門委員長(全水道書記長)、荘司委員(国公連合書記長)、加藤専門委員会事務局長(公務労協副事務局長)が出席した。冒頭、村上専門委員長による要請趣旨の説明後、加藤事務局長が要求事項を説明し、政府の見解を求めた。また、政府からの回答後、被災3県から出された現状や課題、国への要望等(別紙)について意見交換を実施した。

【要求事項】
1.東日本大震災の復興・創生について、「第2期復興・創生期間以降における東日本大震災からの復興の基本方針」に基づき、被災地が納得する復興・創生に向け、必要な措置を講ずること。
 とくに、被災住民及び関係自治体のニーズに応じた予算措置及び国や地方自治体における人員配置は、行政機関間の連携のもと、国の責任において行うこと。
2.頻発する大規模自然災害や感染症などの危機への対応について、応援派遣職員や専門職員を含めた人員体制の適正化及び予算措置を図るとともに、国による省庁を超えた一元的な対応ができるよう、危機への対応を可能とする行政・公共セクターの創設を検討すること。

○要求事項に対する復興庁回答
【今井和哉参事官、馬場真一朗補佐】
(1)要請書の趣旨は承った。令和3年に始まった第2期復興・創生期間における基本方針により、復興庁は設置期間を延長し、引き続き具体的な復興ニーズに対応しているところである。
 地震・津波地域については、インフラ整備はおおむね完了している。一方、心のケア等は引き続きの対応が必要である。原子力災害の被災地域に関しては、集中的に除染・インフラ整備を行い、避難区域を解除して住民が戻れるように対応している真っ最中である。これから中長期的対応が必要になることから、まさに本格的な復興に入ったと認識している。
 具体的な現場のニーズがあるのであれば、復興庁として必要な措置を講じ、被災者、被災地に寄り添いながら真摯に対応していく。
(2)大規模自然災害やコロナ等の危機に対し、一元的に対応してほしいという要求は受け止めるが、復興庁は東日本大震災の復興に関する行政事務に限定されて設置されているため、回答はいたしかねる。しかし今後、廃止または他の機関へ後継される等で復興庁がなくなった場合に、減災・防災にどう取り組んでいくのかという課題は様々議論があるところであり、意識していかなければならないと考えている。
 近年、災害は本当に増加している。大規模自然災害、感染症など、国としての危機管理能力の必要性がどんどん高まっていく中で、復興庁として何ができるのかを考え、努力していく。

<意見交換における復興庁の発言>
 東日本大震災から10年以上が経過し、復興庁では、災害対応について、反省やノウハウの振り返りの議論を進めている。あってはならないことだが、同じような災害が再び起こったときに、災害大国としてどう対応していくか。反省や教訓をしっかり残していく必要があることから、有識者会議を開き、取り組んでいる。
 技術系職員の不足について、定員削減の嵐の中で、現場のニーズに対応したくても対応しきれないという現状は理解している。政治的な応援などを得て、少しでも増員できるよう努力している。

総務省への要請を行う公務労協政策・制度専門委員

○要求事項に対する総務省回答
【大西一禎管理官、髙田迪主査】
 要請書の趣旨は承った。機構・定員の所管部局は内閣人事局であるため、行政管理局の立場から回答申し上げる。
 行政管理局で現在行っていることの重点は、業務の見直しである。新型コロナ等で現場のご苦労も相当多いと思うが、霞ヶ関でも同じような事態であり、通常業務にしわ寄せが出ている。
 公務を滞りなく進めるために何が必要かを考え、今一度仕事の仕方を見直し、現場やベテラン職員のノウハウ、知見を広く共有することで、有事の際に対応できるように取り組んでいる。
 また、デジタルツールを使って、人にかかる負担を減らすことも重要である。人間がやるべき仕事、やりがいのある仕事に特化することで仕事へのモチベーションを保ち、良い仕事の仕方をすすめていく。
 行政管理局は、現在、内閣人事局とともに、各省庁への業務見直しを求めている。非効率な業務やムダが無いかを点検し、見直すことで、国の職員がやるべきと期待されている、本当にやるべき仕事に集中することが目的である。
 行政管理局として、機運を盛り上げながら貢献できればと思っている。これからも様々な情報共有を行っていきたい。

<意見交換における総務省の発言>
(1)デジタル化の推進について
 デジタルに馴染みがない、機器を使いこなすことに不安があるという意見は理解する。人が使いこなすことを目的として導入されるデジタルツールがある一方で、正確な情報伝達を瞬時に行う等のために、裏で走らせるツールもある。デジタルの使い方も様々であり、バランスが重要である。何から何までデジタルということではなく、本当に必要な所で、困っていることをデジタルがサポートする仕組みや、現場の人間が動くところは変えず、サポートするシステムを走らせる等、人間が行う業務とデジタルとの融合は、デジタルツールのデザインの仕方で可能であると考える。そのためにはやはり、現場の実態を踏まえたうえで、業務の見直しを進めていく必要がある。
(2)業務効率化の推進について
 一般的に多くの職員は、前職から引き継いだ仕事をそのまま全力でこなそうとしてしまうが、ちょっと視点を変えれば、「本当に必要なのか」「やり方を工夫すればいいのに」というものがあると思う。今までなかなか言い出せなかった、そういったことを活発に議論できるような環境が必要である。
職員の、「スキルを積んで、それを活かすことで国に貢献したい」という思いを活かせるような職場にするために、そうではない雑務を区別し、本来のスキルを積んで、やりがいを持って働いてもらうのが理想である。これは若手職員の離職防止にもつながる。
また、管理職のマネジメントも重要であると実感している。


(別紙)

1.国・地方自治体による災害対策への評価
(1)東日本大震災からの被災地の復旧・復興についての評価

 インフラ、住宅再建、区画整理、学校の校舎など、ハード面での復旧・復興はほぼ完了しているが、人員確保、特に、技術職員や教職員の復興加配の不足が大きな課題。また、福島第一原発から20km圏内の全町・全村避難した自治体については、本来の復旧・復興事業の進捗が必要な期間であり、予算の確保(補助金、交付金等)をはじめ、被災地に寄り添った対応が必要。

(2)この10年間における災害対策の充実度
 職員の絶対数の不足、専門職(保健師や技術職員等)の不足、全国的な職員派遣における支援体制の構築が必要。また、首長の認識、意識が低いことから、マネジメントが必要。

(3)甚大な災害における行政機関間(国と都道府県、都道府県と市区町村)の連携
 事務作業の効率化、正確な情報伝達における連携が必要。また、自治体から国に働きかけられる体制の構築が必要。

2.災害対応での応援体制の課題
 応援職員の派遣について、ミスマッチや指導が必要なケースもあることから、平時からの防災訓練や行動マニュアルの作成など災害を想定した備えも必要。

3.危機対応に求められる条件整備
(1)行政機関間の連携を改善するために必要な条件整備

 計画的な人員確保、財政支援、メンタルヘルス体制の構築等、ネットワークの強化が必要。また、被災時、復旧時に渡る災害対応において、縦割り行政に時間と労力を費やしている自治体も多いと考え、防災・災害対応に特化した機関の設置は必要。

(2)災害時に国民の命と暮らしを守るために、公務関連職場で必要な対応
 「特例的な対応」ができる人材確保及び派遣、様々なステージを想定したマニュアル、シミュレーション等の作成・準備、教育現場における採用枠の増加(絶対数の確保)や、民間も含めた技術者支援のネットワーク(技術の継承や相互支援)の構築が必要。

4.今後の課題、国への要望事項等(コロナ禍での課題も含む)
 計画的な人員確保、専門職の確保、余剰人員の確保、メンタルヘルス対策の体制構築、心の安心・安全の確保


資料1.総務省への要請書


2022年12月6日

総 務 大 臣
 松  本  剛  明 様

公務公共サービス労働組合協議会
議 長  川本 淳

「公共サービス基本法」に基づく東日本大震災の復興・創生をはじめとする危機への対応に関する申入れ

 貴職におかれましては、日ごろから良質な公共サービスの提供に向けて尽力されていることに、敬意を表します。
 「公共サービス基本法」(2009年成立)が制定されて10年以上が経過していますが、わが国における公共サービスを取り巻く環境は大きく変化しています。現在の厳しい財政状況下にあって、頻発する災害や新型コロナウイルス感染症への対応について、「公共サービス基本法」に基づく施策の充実をはかる立場から、従事する労働組合の社会的責任を強く認識しているところです。
 なかでも、発生から11年が経過した東日本大震災の被災地では、今もなお多くの被災者が避難生活を余儀なくされている中、現状の課題を十分に把握するとともに、「第2期復興・創生期間以降における東日本大震災からの復興の基本方針」に示される課題や取組については、最後まで国の責任において対応すべきです。
 また、近年頻発する大規模自然災害や新型コロナウイルス感染症は、国民・住民の生活に多大な影響を及ぼしていることは言うまでもありません。
 公務労協は、東日本大震災の被災地における復興状況やこの間行われてきた施策、今後の課題などについて、公共サービス基本法の基本理念・基本的施策が十分に活かされたものとなるよう、直接職場からの意見・要望等の集約を行いました。また、頻発する大規模自然災害や新型コロナウイルス感染症などの危機に対し、より質の高い公務・公共サービスを提供する体制を確立し、公務・公共サービスのあり方や充実・強化に向けた課題を明らかにすることを目的とした「危機調査」を実施しました。
 つきましては、「公共サービス基本法」を所管する立場から、今後の東日本大震災からの復興・再生をはじめとする危機への対応に関する以下の事項について、最大限努力するよう申し入れます。

1.東日本大震災の復興・創生について、「第2期復興・創生期間以降における東日本大震災からの復興の基本方針」に基づき、被災地が納得する復興・創生に向け、必要な措置を講ずること。
 とくに、被災住民及び関係自治体のニーズに応じた予算措置及び国や地方自治体における人員配置は、行政機関間の連携のもと、国の責任において行うこと。

2.頻発する大規模自然災害や感染症などの危機への対応について、応援派遣職員や専門職員を含めた人員体制の適正化及び予算措置を図るとともに、国による省庁を超えた一元的な対応ができるよう、危機への対応を可能とする行政・公共セクターの創設を検討すること。

以上


資料2.復興庁への要請書


2022年12月2日

復 興 大 臣
 秋 葉 賢 也 様

公務公共サービス労働組合協議会
議長 川本 淳

「公共サービス基本法」に基づく東日本大震災の復興・創生をはじめとする危機への対応に関する申入れ

 貴職におかれましては、日ごろから良質な公共サービスの提供に向けて尽力されていることに、敬意を表します。
 「公共サービス基本法」(2009年成立)が制定されて10年以上が経過していますが、わが国における公共サービスを取り巻く環境は大きく変化しています。現在の厳しい財政状況下にあって、頻発する災害や新型コロナウイルス感染症への対応について、「公共サービス基本法」に基づく施策の充実をはかる立場から、従事する労働組合の社会的責任を強く認識しているところです。
 なかでも、発生から11年が経過した東日本大震災の被災地では、今もなお多くの被災者が避難生活を余儀なくされている中、現状の課題を十分に把握するとともに、「第2期復興・創生期間以降における東日本大震災からの復興の基本方針」に示される課題や取組については、最後まで国の責任において対応すべきです。
 また、近年頻発する大規模自然災害や新型コロナウイルス感染症は、国民・住民の生活に多大な影響を及ぼしていることは言うまでもありません。
 公務労協は、東日本大震災の被災地における復興状況やこの間行われてきた施策、今後の課題などについて、公共サービス基本法の基本理念・基本的施策が十分に活かされたものとなるよう、直接職場からの意見・要望等の集約を行いました。また、頻発する大規模自然災害や新型コロナウイルス感染症などの危機に対し、より質の高い公務・公共サービスを提供する体制を確立し、公務・公共サービスのあり方や充実・強化に向けた課題を明らかにすることを目的とした「危機調査」を実施しました。
 つきましては、今後の東日本大震災からの復興・創生をはじめとする危機への対応に関する以下の事項について、最大限努力するよう申し入れます。

1.東日本大震災の復興・創生について、「第2期復興・創生期間以降における東日本大震災からの復興の基本方針」に基づき、被災地が納得する復興・創生に向け、必要な措置を講ずること。
 とくに、被災住民及び関係自治体のニーズに応じた予算措置及び国や地方自治体における人員配置は、行政機関間の連携のもと、国の責任において行うこと。

2.頻発する大規模自然災害や感染症などの危機への対応について、応援派遣職員や専門職員を含めた人員体制の適正化及び予算措置を図るとともに、国による省庁を超えた一元的な対応ができるよう、危機への対応を可能とする行政・公共セクターの創設を検討すること。

以上