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公務公共サービス労働組合協議会 地方公務員部会
2022年度 公務労協情報 No. 41

地方公務員部会が公務員部長交渉を実施し、給与改定等に関わる最終回答を
引き出す-10/5

 公務労協地方公務員部会は、10月5日、地方公務員給与の改定等に関わり、8月9日に総務大臣に提出した申入書に対する最終回答を引き出すため、総務省交渉を実施した。地方公務員部会からは伊藤企画調整委員代表(自治労書記長)ら書記長クラス交渉委員が出席し、総務省からは大沢公務員部長らが対応した。
 冒頭、伊藤企画調整委員代表が、地方公務員部会の要求に対する最終回答を求めたのに対し、大沢公務員部長は以下のように答えた。

1.2022年の地方公務員の給与改定について
○地方公務員の給与については、地方公務員法の趣旨に沿って、地域の実情を踏まえつつ、条例で定められるもの。
○各地方公共団体においては、国民・住民の理解と納得を得られるよう、情報公開を徹底することなど、自主的な取組を進めながら、適切に給与を決定することが肝要である。
○このため、総務省としても、引き続き必要な助言を行ってまいる。

2.公営企業および技能労務職員の給与について
○技能労務職員等の給与については、一般行政職と異なり、人事委員会勧告の対象とはならず、労使交渉を経て労働協約を締結することができるが、その決定に当たっては、同一又は類似の職種の国及び地方公共団体の職員並びに民間事業の従事者の給与等を考慮して定めることが法律上求められている。
○また、過去には、技能労務職員等の給与については、同種の民間事業の従事者に比べ高額となっているのではないかとの国民等の厳しい批判があったところ。
○各地方公共団体においては、給与に関する情報の開示を進めながら、住民の理解と納得が得られる適正な給与とすることが重要と考えている。

3.地方自治体における長時間労働の是正等について
○地方公務員の労働環境の確保に関しては、平成30年の働き方改革関連法と、これに関連する人事院規則の改正を踏まえ、総務省として、時間外勤務の上限規制や、健康確保措置の強化に取り組んでいただくべく、地方公共団体に対して通知を発出してきた。
○具体的には、本年1月及び2月に、
・勤務時間の適切な把握や、時間外勤務の要因の整理・分析・検証などの制度を適切に運用し、時間外勤務縮減に向けた取組を図ることや、
・医師による面接指導の効果的な実施、
といった制度の実効的な運用に当たっての留意点について、改めて自治体に通知したところ。
○また、休暇・休業制度については、民間の状況やそれを考慮する国家公務員の動向に注視しながら、適正な勤務条件の確保を進めることが必要と考えており、国家公務員の休暇制度との権衡を踏まえ、これまでも適切に対応するよう助言を行ってきた。
○総務省としては、引き続き、各地方公共団体における実態を把握し、取組がしっかりと行われるよう、必要な支援を行っていく。
○自治体の定員については、各自治体において、行政の合理化、能率化を図るとともに、行政課題に的確に対応できるよう、地域の実情を踏まえ、適正な定員管理に取り組むことが重要と考えている。
○例えば、令和3年度は、新型コロナ対応や子育て支援への対応のため、前年度と比べ、一般行政部門の職員が全国で6,872 人増えている。
○総務省としては、引き続き、自治体に対して、必要な助言を行ってまいりたい。

4.会計年度任用職員をはじめとする臨時・非常勤職員の待遇改善、雇用安定について
(1)会計年度任用職員の勤勉手当支給と、期末手当支給等に必要な財政措置
○会計年度任用職員への勤勉手当の支給に関し、地方公共団体に対して、ご意見を伺っているところ。
○会計年度任用職員制度の導入に伴い新たに必要となる期末手当等の経費については、令和2年度の地方財政計画において、1,738億円、令和3年度においては、制度の平年度化による経費の増を踏まえ、2,402億円を計上しており、新制度を円滑に運用できるよう必要な財源を確保している。
(2)臨時・非常勤職員の休暇制度の改善
○地方公共団体の非常勤職員の休暇制度については、地方公務員法第24条第4項の規定により、国家公務員の非常勤職員の休暇制度との権衡を踏まえた措置としていただく必要があると考えている。
○今般の非常勤職員に係る制度改善についても、国家公務員との均衡を図るよう、各地方公共団体において必要な措置を講じていただく必要があり、総務省においては、人事院規則の改正内容を踏まえて、条例例を作成し地方公共団体に示すなど、地方公共団体における円滑な施行に向けて必要な助言、情報提供を行ってきている。
○総務省としては、これまでも毎年度、各団体における休暇制度の措置状況を把握し、国家公務員の非常勤職員に措置されている休暇制度を措置していない団体に対して速やかに適正化を図るよう助言をしてきているところであるが、引き続き、地方公務員の非常勤職員の適正な処遇の確保に向け取り組んでまいる。
(3)臨時・非常勤職員の待遇改善、雇用安定
○昨年度調査の結果、給与や期末手当の支給について、制度の趣旨に沿わない運用をしている可能性がある団体が未だ一定程度存在していることが確認されたところ。
○引き続き、実態を丁寧に把握しつつ、ヒアリングの機会等を活用して、地方公共団体に対して助言を行うなど、任用と処遇の適正化が図られるよう取り組んでまいりたい。
○今回の新型コロナウイルス感染症への対応は、これまで想定していない業務に緊急に対応しなければいけない状況の下、体制の構築・確保に苦慮する中、各団体においては、
・職員の業務内容を見直して優先順位の高い業務に従事させる取組、
・職員を新たに発生した業務に従事させるとともに会計年度任用職員等を採用して既存の業務の一部に従事させる取組
を行う等、地域の実情に応じ、様々な工夫が行われてきたものと承知している。
○総務省では、各団体における取組事例を周知するとともに、こうした事例を参考にしていただきながら、業務内容や勤務場所の変更といった柔軟な対応により、非常勤職員を含む組織全体としての業務体制を確保していただくよう通知を発出し、各団体に助言をしている。
○総務省としては、臨時・非常勤職員の雇用確保の観点からも、引き続き、職員全体の働く場の確保を図るよう地方公共団体に必要な助言を行ってまいりたい。

5.パワーハラスメント対策について
○パワーハラスメントは、個人の尊厳や人格を不当に傷つける許されない行為であり、総務省では、改正労働施策総合推進法に基づく厚生労働大臣指針及び人事院規則を踏まえ、パワーハラスメント防止に必要な措置を講ずるよう、各種会議において要請するなど、機会を捉えて助言を行っている。
○本年1月に公表した各種ハラスメント対策の取組状況調査結果においては、パワーハラスメント対策について、全ての措置を履行している団体は、前回調査と比べ大幅に増加(552団体・30.9%→1,215団体・68.0%)しているところであるが、パワーハラスメント防止のために必要な措置を講じていない団体に対しては、速やかな対応を要請するとともに、
・措置の内容を文書により定めた上で、職員に周知すること
・周知・啓発に係る措置は、人事院及び厚生労働省作成のリーフレット等も活用し、早急に講じること
についても助言している。
○今後とも、地方公共団体におけるパワーハラスメント防止の実効性が確保されるよう助言していく。

6.雇用と年金の確実な接続について
○定年の引上げを実施するためには、各地方公共団体において、適切な時期に関係条例や規則を整備していただくことが不可欠。
○そのため、総務省としても、各団体がしっかりと、対応できるよう、これまでも、団体向け説明会の開催や、質疑応答集の拡充、条例例の提供など、必要な助言や情報提供に努めてきた。
○各団体において、令和5年4月1日の施行に向け、必要な準備行為が計画的に実施されるよう、引き続き必要な情報提供や助言をしっかりと行ってまいりたい。
○定年引上げに係る地方公務員の給与・勤務条件については、地方公務員法の趣旨に沿って、各地方公共団体の議会において条例で定められるものであるが、その内容に関し、地方公共団体の当局と職員団体が協議を行う場合にあっては、地域の実情を踏まえ、真摯な協議が行われるものと考えている。
○総務省としては、国民・住民の理解と納得が得られる適正な内容とすべきものとの考えに立ち、必要な助言を行ってまいりたい。
○定年の引上げにより、現行の再任用制度が廃止されるが、定年の段階的な引上げ期間においては、年金受給開始年齢までの継続的な勤務を可能とするため、現行と同様の暫定的な再任用制度を設けることとしている。
○暫定再任用制度では、平成25年3月に発出した総務副大臣通知(「地方公務員の雇用と年金の接続について」)において示している現行の再任用制度と同様、定年退職する職員が暫定再任用を希望する場合には、当該職員が年金支給開始年齢に達するまで、原則として常時勤務を要する職に再任用する旨を令和4年3月に通知している。
○暫定再任用職員の給与については、地方公務員法の均衡の原則等に基づき、現行の再任用職員の給与制度を基本として設計されている国家公務員の取扱いを踏まえ、各団体の条例において適切に定められるべきものと考えている。

これに対し、伊藤企画調整委員代表は、特に重点とする3点について、意見・要望を述べた。

1.賃金改善について
 今、回答にもあったように、地方公務員の給与については、地方自治の本旨と地方分権の理念に基づいて、当該地方自治体の条例で定めるべきものであり、その自治体の自主的・主体的判断で決定されるべきもの。したがって、そのことを損なうような指導・助言は控えるよう、その点を強調しておきたい。
 とくに、今年の人事院勧告における勤勉手当への配分の一部を用いて、上位の成績区分に係る原資の確保をはかることについても、地方自治体の自主的・主体的判断を尊重するよう強く申し添えておきたい。
 また、ご案内のように、人事院は、「社会と公務の変化に応じた給与制度の整備」において、給与制度の全般的な見直しの検討を行っていくこととしている。このことは、当然地方公務員にも影響することから、総務省として適宜必要な情報提供、および地方公務員部会との意見交換・協議等を踏まえ、適切な対応をはかるよう求めておきたい。

2.会計年度任用職員をはじめとする臨時・非常勤職員の待遇改善、雇用安定について
 会計年度任用職員制度導入から2年が経過しているが、依然として、常勤職員との均衡が図られていない実態や、国の期間業務職員との権衡も図られていない実態にある。節々で助言あるいは周知の対応をいただいているが、引き続き、こうした現場の実態も踏まえた対応はもとより、会計年度任用職員制度に関連する諸課題については、改正地公法等の趣旨に即した待遇改善、雇用安定がはかられるよう、全般的かつさらなる見直しに向け、情報交換を適宜行いながら、努力していただくよう求めておきたい。
 また、総務省調査の結果を踏まえ、取り急ぎ要請すべき事項としては、ひとつが、全ての地方自治体において、適切に期末手当が支給されるよう地方自治体へあらためて助言を行うこと、ふたつに、これまでの交渉でも申し上げているように、国家公務員の非常勤職員や常勤職員との権衡の観点から、勤勉手当について早期に適用をはかるよう法整備も含め、具体の検討に取りかかるよう求めておきたい。
 さらに、今年の人事院勧告では、一時金の引上げ勧告とはなったが、引上げ分を勤勉手当に配分するとなれば、期末手当の支給のみの会計年度任用職員にとっては、賃金改善とはならない。
 こうした矛盾を解消する上で、各自治体・団体等の労使交渉によって工夫した対応などに対しては、自主的・主体的判断を尊重するよう求めておきたい。

3.雇用と年金の確実な接続について
 まずは、定年引上げについて、地方自治体における条例改正案の議会上程にむけ、各地方自治体の実情を踏まえた条例整備等が円滑に進むよう求めてきた中で、すでに10月に入り、いよいよ定年引上げに係る改正地公法等の施行が目前となってきたところ。総務省におかれては、地方自治体の検討状況等をしっかりと把握し、まだ必要な条例改正を行っていない自治体に対し、早期に条例改正案の議会上程ができるよう、適切な対応をはかるよう求めておきたい。
 あわせて、定年引上げに伴い、生じる諸課題については、関係労働組合との十分な交渉・協議、合意に基づいて、地方の実情を踏まえた地方自治体の自主的・主体的な検討、判断を尊重するよう求めておく。
 また、定年引上げ期間中においても、とくに、公務労協の調査、各産別の調査からも公務職場は慢性的な人員不足の状態との報告を受けている。総務省調査でも同様と認識しているが、必要な新規採用が継続できるよう、定員管理の弾力的な運用等を含め、地方の実態を踏まえた適切な助言と財政措置を求めておきたい。

 最後に、伊藤企画調整委員代表が、「地方公務員における課題は年々増え、積みあがる一方である。総務省も大変だと思うが、地方公共サービスに従事するすべての職員が安心して働き続けることができる環境整備に向け、適宜、我々地方公務員部会と情報交換などを行いながら、総務省として尽力いただくよう要請する」と述べ、本日の回答交渉を終えた。