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公務公共サービス労働組合協議会 地方公務員部会
2022年度 公務労協情報 No. 21

地公部会が、総務省から春の段階の回答引き出す-3/24

 公務労協地方公務員部会は、3月24日、書記長クラス交渉委員による2022春季段階の最終交渉を行った。総務省からは、山越公務員部長ほか3名が出席した。
 冒頭、伊藤企画調整委員代表が「2月22日、金子総務大臣に要求書を提出し、これまで交渉・協議を積み重ねてきたが、本日はこうした交渉経過を踏まえながら、公務員部長から春の段階の最終回答をいただきたい」と、求めたのに対し、山越公務員部長は次のように回答した。

1.2022年度の賃金改善について
 地方公務員の給与については、地方公務員法の趣旨に沿って、国や他の地方公共団体の職員や民間事業の従事者の給与等を踏まえ、条例で定められるもの。各地方公共団体においては、情報公開を徹底するなど、自主的な取組を進めながら、適切に給与を決定することが肝要であると考えている。このため、総務省としても、引き続き必要な助言を行ってまいる。
また、令和4年度の地方財政計画における給与関係経費については、保健師や児童福祉司の増を見込むことなどにより、その所要額を適切に計上しているところ。

2.労働時間、休暇及び休業等について
(1)育児休業については、昨年8月10日の意見の申出を踏まえた国家公務員育児休業法に係る改正案と同様の措置を講ずるため、本年2月1日に、地方公務員育児休業法等の改正法案を閣議決定し、国会に提出している。また、不妊治療休暇の新設などについては、国の人事院規則の改正等の内容を踏まえ、総務省において、条例例を作成し地方公共団体に示すなど、地方公共団体における円滑な施行に向け、随時必要な助言、情報提供を行ってきている。
引き続き地方公共団体における円滑な施行に向けて必要な助言・情報提供を行ってまいる。
(2)地方公務員の時間外勤務の状況については、毎年度、地方公共団体の勤務条件等に関する調査の中で把握しているが、昨年12月に公表した令和2年度の状況を踏まえ、まず、本年1月に、適切な勤務時間の把握や、時間外勤務の要因の分析や検証など、上限規制や健康確保措置の制度の実効的な運用に当たっての留意点を自治体に通知したところである。
これに加え、本年度は、コロナ禍における時間外勤務の状況を把握するため、令和3年4月から6月までの期間について、上限時間を超えて、時間外勤務を実施した職員の状況を特別に調査したところである。
 この特別調査の結果を踏まえ、本年2月に、
・上限を超える時間外勤務を最小限にとどめるべく、業務分担の見直しや、人員の適正な配置などの時間外縮減対策に取り組むべきことや、
・医師による面接指導の効果的な実施方策
などについて、地方公共団体に通知したところである。
 総務省としては、引き続き、実態を丁寧に把握しながら、各団体における取組がしっかりと行われるよう、必要な支援を行っていく。
(3)職員の健康管理及び職場の安全衛生管理の体制の確立については、任命権者が労働安全衛生法の趣旨にのっとり、主体的に実施するものであり、各地方公共団体において、体制の整備が進められているものと認識している。
 総務省においては、従来から地方公共団体に対し、労働安全衛生法の遵守など、メンタルヘルス対策の推進に係る情報提供や助言を行ってきた。
特に、ストレスチェックについては、
・事業場の規模に関わらず、全ての職員を対象に実施すること、
・高ストレス者に対する医師の面接指導を勧奨すること、
・ストレスチェックの結果を集団分析し、これを踏まえて職場環境の改善に積極的に取り組むこと、
等について、重ねて通知を発出するなど、助言を行っているところである。
 また、今年度、地方公共団体におけるメンタルヘルス対策の現状や対策等を把握するため、初めて、全ての都道府県・市区町村を対象にアンケート調査を実施するとともに、関係団体と連携し、メンタルヘルス対策に関する研究会を開催し議論してきたところである。
アンケート調査結果や、研究会での議論を踏まえ、年度内に、地方公共団体のメンタルヘルス対策についての考え方をとりまとめ、助言してまいりたい。
(4)パワーハラスメントは、個人の尊厳や人格を不当に傷つける許されない行為であり、総務省では、改正労働施策総合推進法に基づく厚生労働大臣指針や人事院規則などを踏まえ、パワーハラスメント防止に必要な措置を講ずるよう、各種会議における働きかけなど、機会を捉えて助言を行っている。
 本年1月には、各種ハラスメント対策の取組状況調査結果を踏まえ、適切に措置していない団体においては、速やかな対応を要請するとともに、
・措置の内容を文書により定めた上で、職員に周知いただきたいこと
・周知・啓発に係る措置は、人事院や厚生労働省作成のリーフレット等も活用し、早急に講じること
などについても助言している。
 今後とも、地方公共団体におけるパワーハラスメント防止の実効性が確保されるよう、助言を行っていきたい。

3.会計年度任用職員をはじめとする臨時・非常勤等職員の待遇改善、雇用安定について
(1)会計年度任用職員に対する期末手当の支給については、今回の調査では、支給しないあるいは、年間支給月数が理由なく常勤職員と異なり、制度の趣旨に沿わない運用をしている可能性がある団体が未だ一定数存在していることが確認されたところ。
この調査結果を踏まえ、速やかに期末手当の適正な運用が図られるよう、常勤職員の取扱いとの権衡等を踏まえ適切に対応するよう、本年1月20日付けで改めて地方公共団体へ助言通知を発出したところ。
 勤勉手当に関しては、国の期間業務職員への期末・勤勉手当の支給に係る各省庁の最近の運用状況等も踏まえ、検討すべき課題と認識しており、会計年度任用職員制度の創設に当たり地方公共団体との意見交換等を行った経緯も考慮し、まずは、地方公共団体のご意見を改めて伺うこと等に着手してまいりたい。
 会計年度任用職員制度の導入に伴い新たに必要となる期末手当などの経費については、令和3年度地方財政計画において、制度の平年度化分も加え、2,402億円を計上し、新制度を円滑に運用できるよう必要な財源を確保している。また、令和4年度においても、必要となる財源を確保している。
 今後も、各地方公共団体が会計年度任用職員制度を適正かつ円滑に運用できるよう、総務省としても適切に対応してまいりたい。
(2)地方公共団体の非常勤職員の休暇制度については、国家公務員の非常勤職員の休暇制度との権衡を踏まえた措置としていただく必要があると考えている。
今般の非常勤職員に係る制度改善についても、国家公務員との均衡を図るよう、各地方公共団体において必要な措置を講じていただく必要があり、総務省においては、人事院規則の改正内容を踏まえて、条例例を作成し地方公共団体に示すなど、地方公共団体における円滑な施行に向けて必要な助言、情報提供を行ってきている。
 総務省としては、これまでも毎年度、各団体における休暇制度の措置状況を把握し、国家公務員の非常勤職員に措置されている制度を措置していない団体に対して速やかに適正化を図るよう助言をしてきているところであるが、引き続き、適正な処遇の確保に向け取り組んでまいる。
(3)今回の新型コロナウイルス感染症への対応は、これまで想定していない業務に緊急に対応しなければいけない状況の下、体制構築・確保に苦慮する中、各団体においては、
・職員の業務内容を見直して優先順位の高い業務に従事させる取組、
・職員を新たに発生した業務に従事させるとともに会計年度任用職員等を採用して既存の業務の一部に従事させる取組
等、地域の実情に応じ、様々な工夫が行われてきたものと承知している。
 総務省では、各団体における取組事例を周知するとともに、こうした事例を参考にしていただきながら、業務内容や勤務場所の変更といった柔軟な対応により、非常勤職員を含む組織全体としての業務体制を確保していただくよう通知を発出し、各団体に助言をしている。
 総務省としては、臨時・非常勤職員の雇用確保の観点からも、引き続き、職員全体の働く場の確保を図るよう地方公共団体に必要な助言を行ってまいりたい。

4.雇用と年金の確実な接続について
(1)定年の引上げを実施するためには、各地方公共団体において、適切な時期に関係条例や規則を整備していただくことが不可欠。
そのため、総務省としても、各団体がしっかりと対応できるよう、これまでも、団体向け説明会を何回か開催したり、質疑応答集を順次拡充するなど、必要な助言や情報提供に努めてきた。
 しかし、総務省が照会した本年1月現在の調査では、条例整備時期について「年度後半以降」又は「未定」との回答が全団体の2割程度で見られることを受け、総務省として、今後とも、引き続き定期的な調査を行うとともに、その結果を踏まえて必要な助言を行うことが重要であると考えている。
 先週には条例例を発出したところであり、また、今後制定される予定の国家公務員に関する政令等、国の関係規定を踏まえた運用通知の発出等も速やかに行っていきたいと考えており、令和5年度から、全ての団体において、定年引上げが円滑に実施されるよう、丁寧に取り組んでまいりたい。
(2)定年引上げに係る地方公務員の給与・勤務条件については、地方公務員法の趣旨に沿って、各地方公共団体の議会において条例で定められるものであるが、その内容に関し、地方公共団体の当局と職員団体が交渉・協議を行う場合にあっては、地域の実情を踏まえ、真摯な交渉・協議が行われることを期待している。
 総務省としては、国民・住民の理解と納得が得られる適正な内容とすべきものとの考えに立ち、必要な助言を行ってまいりたい。
地方公務員の役職定年制の対象となる職や年齢については、国家公務員との権衡を考慮した上で、条例で定めるものとしている。他方、役職定年制の例外的取扱いとして、職務と責任に特殊性があること又は欠員の補充が困難であることにより役職定年を原則どおりに適用することが著しく不適当な場合には役職定年制の対象外とする、あるいは60歳を超える役職定年年齢を定めることができるなどとされているところ。
 各地方公共団体においては、それぞれの団体の直面する行政課題、職種ごとの年齢構成や人材確保の困難さ、その団体の組織形態などの状況に応じて、法律の規定に基づき、適切に対応いただくべきものと考えている。
 総務省としては、各団体において、地域の実情を踏まえつつ、法の趣旨に沿って、役職定年制の導入等を円滑に行えるよう、必要な支援を行ってまいりたい。
(3)定年の引上げにより、現行の再任用制度が廃止されるが、定年の段階的な引上げ期間においては、年金受給開始年齢までの継続的な勤務を可能とするため、現行と同様の暫定的な再任用制度を設けることとしている。
暫定再任用制度では、平成25年3月に発出した総務副大臣通知において示している現行の再任用制度の取扱いと同様に、定年退職する職員が暫定再任用を希望する場合には、当該職員が年金支給開始年齢に達するまで、原則として常時勤務を要する職に再任用することが基本となるものである。
 暫定再任用職員の給与については、地方公務員法の均衡の原則等に基づき、現行の再任用職員の給与制度を基本として設計されている国家公務員の取扱いを踏まえ、各団体の条例において適切に定められるべきものと考えている。

5.公共サービス基本法に基づく適正な労働条件確保等について
公共サービス基本法第11条において、地方公共団体は、安全かつ良質な公共サービスが適正かつ確実に実施されるよう、公共サービスに従事する者の適正な労働条件の確保や労働環境の整備に関して必要な施策を講ずるよう努めるものとされている。
 これに関し、総務省としては、
・会計年度任用職員制度を創設し、新たに期末手当を支給可能とするなど、臨時・非常勤職員の適正な任用・勤務条件の確保や、
・時間外勤務の縮減と上限規制、年次有給休暇の取得推進、女性職員の活躍や各種ハラスメント対策など、地方公務員の働き方改革の推進に向けた助言
などを通じ、地方公共団体に対する支援に取り組んでいる。
 また、これまでも、地方公共団体に対し、公共サービスの実施に関する業務の委託に当たり、受託事業者等において労働条件への適切な配慮がなされるよう留意すること等について助言を行っており、今後とも、公共サービス基本法の趣旨を踏まえ、必要に応じて、助言等を行ってまいりたい。

 回答を受け、伊藤企画調整委員代表は以下3点の重点課題について、次のように述べた。

1.賃金改善について
 今ご回答があったように、地方公務員の給与については、言うまでもなく、地方自治の本旨と地方分権の理念に基づいて、当該地方自治体の条例で定めるべきものであり、その自治体の自主的・主体的判断で決定されるべきものである。それを損なうような指導・助言は控えるよう、その点を改めて強調しておく。
 とくに、今回の給与改定について、国家公務員と同じ6月一時金で調整するという団体をはじめ、その取扱いはばらつきが出ている。今もなお、労使交渉・合意・最終決着をめざし奮闘している団体もある。
 先に、申し上げたように、それぞれの団体の最終的な結論に対し、介入・制裁を行う事はあってはならない。このことは、特別交付税措置への対応も含まれるものである。自主的・主体的判断を尊重するよう強く申し添えておく。

2.会計年度任用職員をはじめとする臨時・非常勤職員の待遇改善、雇用安定について
 会計年度任用職員制度導入から2年が経過しようとしているが、依然として、常勤職員との均衡が図られていない実態や、国の期間業務職員との権衡も図られていない実態にある。
 したがって、こうした現場の実態も踏まえ、会計年度任用職員制度に関連する諸課題については、引き続き、改正地公法等の趣旨に即した待遇改善、雇用安定がはかられるよう、全般的かつさらなる見直しに向け、情報交換しながら、努力していくよう求めておく。
 取り急ぎ要請すべき事項として、総務省調査の結果も踏まえれば、ひとつが、全ての地方自治体において、適切に期末手当が支給されるよう地方自治体へあらためて助言を行うこと、ふたつに、これまでの交渉でも申し上げているように、国家公務員の非常勤職員や常勤職員との権衡の観点から、勤勉手当について早期に適用をはかるよう法整備も含め、先のご回答にあったように、地方の声をしっかりと集約することも含め、具体の検討に取りかかるよう求めておく。

3.雇用と年金の確実な接続について
 とくに、定年引上げについては、地方自治体における条例改正案の議会上程にむけて、各地方自治体の実情を踏まえた条例整備等が円滑に進むよう、検討状況等をしっかりと把握し、遅くとも6月議会までには条例改正案の議会上程ができるよう、総務省として適切な対応をはかるよう求めておく。
 また、定年引上げ期間中においても、とくに、公務職場は慢性的な人員不足の状態との報告を受けており、必要な新規採用が継続できるよう、定員管理の弾力的な運用等を含め、地方の実態を踏まえた適切な助言と財政措置を求めておく。

 最後に伊藤企画調整委員代表は、「地方公務員における課題は年々増え、積みあがる一方である。総務省も大変だと思うが、地方公共サービスに従事するすべての職員が安心して働き続けることができる環境整備に向け、適宜、我々地方公務員部会と情報交換を行いながら、総務省として尽力いただきたい」と要請し、回答交渉を終えた。