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公務公共サービス労働組合協議会 地方公務員部会
2022年度 公務労協情報 No. 4

地方公務員部会が公務員部長交渉を実施し、給与改定等に関わる最終回答を引き出す-11/22

公務労協地方公務員部会は、11月22日、地方公務員給与の改定等に関わり、8月20日に総務大臣に提出した申入書に対する最終回答を引き出すため、総務省交渉を実施した。地方公務員部会からは伊藤企画調整委員代表(自治労書記長)ら書記長クラス交渉委員が出席し、総務省からは山越公務員部長らが対応した。
 冒頭、伊藤企画調整委員代表が、地方公務員部会の要求に対する最終回答を求めたのに対し、山越公務員部長は以下のように答えた。

1.2021年の地方公務員の給与改定について
○地方公務員の給与については、地方公務員法の趣旨に沿って、国や他の地方公共団体の職員や民間事業の従事者の給与等を踏まえ、条例で定められるもの。
○各地方公共団体においては、情報公開を徹底することなど、自主的な取組を進めながら、適切に給与を決定することが肝要である。
○このため、総務省としても、引き続き必要な助言を行っていく所存。

2.公営企業および技能労務職員の給与について
○技能労務職員等の給与については、一般行政職と異なり、人事委員会勧告の対象とはならず、労使交渉を経て労働協約を締結することができるが、その決定に当たっては、同一又は類似の職種の国及び地方公共団体の職員並びに民間事業の従事者の給与等を考慮して定めることが法律上求められている。
○また、過去には、技能労務職員等の給与については、同種の民間事業の従事者に比べ高額となっているのではないかとの国民等の厳しい批判があったところ。
○各地方公共団体においては、給与に関する情報の開示を進めながら、住民の理解と納得が得られる適正な給与とすることが重要と考えている。

3.「育児休業制度等の改正」と「不妊治療休暇の新設」に関する地方公務員への措置について
○本年8月10日の育児休業法の改正についての意見の申出に併せて、人事院は、妊娠・出産・育児等と仕事の両立支援のため、人事院規則の改正等により、休暇・休業等に関する措置を一体的に講じることを言及している。
○地方公共団体の職員の勤務時間・休暇等については、国家公務員の措置との権衡を踏まえることが求められていることから、国家公務員に関し一体的に講じられる措置の内容を踏まえ、各地方公共団体において必要な措置を検討いただくことになると考えている。
○総務省としては、国家公務員における検討状況を踏まえて、地方公務員育児休業法の改正の検討のほか、条例例の作成など必要な対応を行うこととしており、人事院規則の改正案等について随時情報提供するなど、地方公共団体における円滑な施行に向けた対応を行ってきているところ。
○引き続き、今後とも必要な助言・情報提供を行ってまいる。
○地方公共団体において不妊治療のための休暇を措置するに当たっては、国家公務員に新設される不妊治療のための休暇の趣旨・内容等を総合的に勘案し、各地方公共団体において検討いただくものになると考えている。
○総務省としては、これまでも地方公共団体の休暇制度の措置状況について、毎年度実施している地方公共団体の勤務条件等に関する調査の中で把握し、必要な助言を行ってきたところであり、不妊治療のための休暇についても同様の対応を行ってまいる。

4.地方自治体における長時間労働の是正について
○地方公共団体における長時間労働の是正については、平成30年に制定された働き方改革関連法と、これに対応する国家公務員に関する人事院規則の改正を踏まえ、各地方公共団体において、時間外勤務の上限規制制度の導入等に取り組んでいただいている。
○総務省として、
 ・これまでも、時間外勤務の上限規制制度について未導入団体において直ちに措置いただきたい旨を助言しているほか、
 ・地方公務員の時間外勤務の状況について、昨年度から地方公共団体の勤務条件等に関する調査の中で把握を始め、今年度も引き続き把握することとしており、時間外勤務縮減など、引き続き地方公務員の勤務環境の整備・改善に資する助言を行ってまいる。

5.会計年度任用職員をはじめとする臨時・非常勤職員の待遇改善、雇用安定について
(1)会計年度任用職員の勤勉手当支給および休暇制度の改善
○会計年度任用職員については、臨時・非常勤職員の適正な任用と適正な処遇を確保する観点から、平成26年度の通知や平成28年度の研究会を通じ、地方公共団体の意見も丁寧に伺いながら制度設計を進め、令和2年度から導入されたもの。
○制度開始初年度となる令和2年度の調査では、会計年度任用職員への期末手当の支給について、支給の有無や支給月数の点において、一部にまだ対応が十分でない団体も見受けられたところであり、現在、より詳細な支給状況等に関する調査を改めて実施しているところ。
○今後、当該調査結果を踏まえ、速やかに期末手当の適正な運用が図られるよう、常勤職員の取扱いとの権衡等を踏まえた適切な対応について、地方公共団体への助言等を進めたい。
○加えて、勤勉手当に関しても、国の期間業務職員への勤勉手当支給の取組等も踏まえ、各団体における期末手当の定着状況などを注視しながら検討すべき課題と認識している。
○地方公共団体の職員の勤務時間・休暇等の勤務条件については、国家公務員の措置との均衡を踏まえることが求められていることから、人事院が示した休暇・休業等に関する非常勤国家公務員に係る措置の内容を踏まえ、各地方公共団体において必要な措置を検討いただくことになると考えている。
○総務省としては、国家公務員に係る制度も踏まえて速やかに条例例等を作成し地方公共団体に示すなど、地方公共団体における円滑な施行に向けて必要な助言、情報提供を行ってまいる。
○会計年度任用職員の休暇制度については、国家公務員の非常勤職員の休暇制度との権衡を踏まえた措置としていただく必要があると考えている。
○総務省としても、各団体における休暇の措置状況を把握し、通知や各団体とのヒアリングにおいて、国家公務員の非常勤職員に措置されている休暇制度を措置していない団体に対して速やかに適正化を図るよう助言しており、引き続き適正な処遇の確保に向け取り組んでまいる。

(2)臨時・非常勤職員の待遇改善、雇用確保
○会計年度任用職員の給料・報酬については、単に財政上の制約のみを理由に、新たに期末手当を支給する一方で、給料や報酬を削減することなどは、制度の趣旨に沿うものではないと指摘し、適切に対応していただくよう、地方公共団体に対しこれまでも強く助言しているところであるが、引き続き対応してまいりたい。
○今回の新型コロナウイルス感染症への対応は、これまで想定していない業務に緊急に対応しなければいけない状況の下、体制構築・確保に苦慮する中、各団体においては、
 ・職員の業務内容を見直して優先順位の高い業務に従事させる取組、
 ・職員を新たに発生した業務に従事させるとともに会計年度任用職員等を採用して既存の業務の一部に従事させる取組
等、地域の実情に応じ、様々な工夫が行われてきたものと承知している。
○総務省では、各団体における取組事例を周知するとともに、こうした事例を参考にしていただきながら、業務内容や勤務時間の変更といった柔軟な対応により、非常勤職員を含む組織全体としての業務体制を確保していただくよう通知を発出し、各団体に助言をしている。
○総務省としては、臨時・非常勤職員の雇用確保の観点からも、引き続き、職員全体の働く場の確保を図るよう地方公共団体に必要な助言を行ってまいりたい。
○地方自治体への財政支援については、「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金」が創設され、当該交付金を会計年度任用職員等の人件費に充当することも可能としており、総務省としても地方公共団体への周知に努めてきたところである。

6.パワーハラスメント対策について
○総務省では、改正労働施策総合推進法に基づく厚生労働大臣指針と人事院規則を踏まえ、パワーハラスメント防止に必要な措置を講ずるよう、各種会議における働きかけを行うなど、機会を捉えて助言を行っている。
○昨年10月には、パワーハラスメント対策の取組状況の調査結果を踏まえ、未だ措置が適切に講じられていない地方公共団体に対し、速やかな対応を要請するとともに、
・措置の内容を文書により定めた上で、職員に周知することが望ましいこと
・周知・啓発に係る措置については、厚生労働省作成のリーフレット等を活用し、早急に講じること
についても助言している。
○今年度についても、取組状況について調査を実施しているところであり、今後とも、地方公共団体におけるパワーハラスメント防止の実効性が確保されるよう、助言を行っていきたい。

これに対し、伊藤企画調整委員代表は、特に重点とする3点について、意見・要望を述べた。

1.2021年の地方公務員の給与改定について
(1)今年は政治日程等の関係もあって、国家公務員給与の取扱いについては、11月12日の給閣を踏まえ、来年6月の一時金から減額することで調整を行うことも含めて検討するとうかがっている。一方地方では、人事委員会のある都道府県、政令市においては、労使関係の決着含め、12月の一時金で調整を行う自治体も少なくない。これらは、人事委員会勧告を踏まえて行う措置であって、地方自治体の主体的判断で決定したものと考える。また、人事委員会のない市町村においても、当該都道府県の動向を参考に措置をするという自治体も少なくないが、これについても、同様に地方自治体の判断で決定したと考える。
(2)改めて、地方公務員の給与については、地方自治の本旨と地方分権の理念に基づいて、当該地方自治体の条例で定めるべきものであり、当然、その自治体の自主的・主体的判断で決定されるべきものと認識している。そのことを損なうような指導・助言は控えるよう、この点を強く求めておく。
(3)来年6月の一時金で調整を行うと決めた自治体においては、一部マスコミから「完全実施した場合には人件費の削減につながった」という報道もなれさていることから、住民感情をはじめとして当該自治体に混乱が生じないよう、総務省としても万全の対応をはかるよう求めておく。
(4)先週の内閣人事局との交渉では、「一時金の調整時期については、異例の状況のもとでの措置として検討している」等の回答があった。
(5)給与法案提出の先行きが不透明な中、国家公務員給与の取扱い決定後に発出される、「地方公務員の給与改定等に関する取扱いについての総務副大臣通知」については、先に触れた原則とこうした本来の姿ではない異例の対応であることも併せて、「国における給与法の改正の措置を待って行うべきもの」とはならない。繰り返しになるが、地方の自主性、主体性を尊重するよう強く求めておく。

2.会計年度任用職員をはじめとする臨時・非常勤職員の待遇改善、雇用安定について
(1)本年の人事院勧告内容は、一時金がマイナス0.15月、しかも期末手当からの引下げを求めていることから、期末手当支給のみの会計年度任用職員にとっては、冷酷無情であることをこの場で強調しておきたい。現場職員からは悲痛な声が届いていることを受けとめていただきたい。
(2)現場で働く職員の声をはじめ、国家公務員の非常勤職員や常勤職員との権衡の観点からも、勤勉手当については、早期に適用をはかるよう検討に取りかかるべきだと考える。制度は導入したが、運用・実態からすれば問題点はたくさん出されている。引き続き、会計年度任用職員制度に関連する課題については、改正地公法等の趣旨に即した待遇改善、雇用安定がはかられるよう、全般的かつさらなる見直しに向け、情報交換しながら、ともに努力していくよう求めておく。

3.定年の引上げについて 
(1)定年引上げについては、それぞれの地方公共団体・自治体・関連団体などなかなか協議が進んでいないとの状況報告を受けている。まずは、「地方公務員法の一部を改正する法律」を踏まえ、引き続き、各地方自治体の条例整備が円滑に進むよう総務省としての対応をはかるよう求めておく。特に、現在各地方自治体では、条例を整備するための検討が行われつつある中、検討状況等をしっかりと把握し、適切な対応をはかるよう求めておく。
(2)さらに、そのことを推進する立場からも、総務省として今後の総務省としての対応スケジュール等を明確にし、運用通知や条例例等の個々の対応など、地方公務員部会との十分な協議を踏まえて行うよう求めておく。

 これに対し、山越公務員部長は「地方自治体においては、会計年度任用職員の待遇・処遇の改善や定年引上げ等、様々なことに取り組んでいただいている。地方公共団体において適切な運用が円滑に図られるよう、総務省としても引き続き可能な限り、速やかに、また丁寧に情報提供に努めていくとともに、必要な助言を併せて行ってまいりたい」と述べた。

 最後に、伊藤企画調整委員代表が、「地方公務員における課題は山積しているが、特に給与改定、育児休業制度の改正及び不妊治療休暇の新設、定年引上げについては、どれも条例整備・改正等が必要な喫緊の課題である。職員が安心して働き続けることができる環境整備に向け、適宜、我々地方公務員部会と情報交換を行いながら、総務省として尽力いただくよう要請する」と述べ、本日の回答交渉を終えた。