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公務公共サービス労働組合協議会 地方公務員部会
2023年度 公務労協情報 No. 16

地公部会が、総務省から春の段階の回答を引き出す-3/24

 公務労協地方公務員部会は、3月24日、書記長クラス交渉委員による2023春季段階の最終交渉を行った。総務省からは、大沢公務員部長他が出席した。
 冒頭、伊藤企画調整委員代表が「2月24日、松本総務大臣に要求書を提出し、これまで交渉・協議を積み重ねてきたが、本日はこうした交渉経過を踏まえながら、公務員部長から春の段階の最終回答をいただきたい」と、求めたのに対し、大沢公務員部長は次のように回答した。

1.2023年度の賃金改善について
 地方公務員の給与については、地方公務員法の趣旨に沿って、国や他の地方公共団体の職員や民間事業の従事者の給与等を踏まえ、条例で定められるもの。各地方公共団体においては、情報公開を徹底するなど、自主的な取組を進めながら、適切に給与を決定することが肝要である。このため、総務省としても、引き続き必要な助言を行っていく所存。
また、令和5年度の地方財政計画における給与関係経費については、保健師や児童福祉司の増を見込むことなどにより、その所要額を適切に計上したところ。
 さらに、「社会と公務の変化に応じた給与制度の整備」をはじめとした賃金制度のあり方については、現在、人事院において検討が行われていると承知しているが、総務省としても、人事院における検討の状況を注視しつつ、必要に応じて情報提供を行うなど、適切に対応してまいりたい。

2.労働時間、休暇及び休業等について
(1)地方公務員の労働環境の確保に関しては、平成30年の働き方改革関連法と、これに関連する人事院規則の改正を踏まえ、総務省として、時間外勤務の上限規制や、健康確保措置の強化に取り組んでいただくべく、地方公共団体に対して通知を発出してきた。
 具体的には、令和3年度の時間外勤務の状況等については、昨年12月に調査結果を公表し、新型コロナウイルス感染症対策業務の増加により時間外勤務が増加している実態を把握したところであり、これを受け、改めて制度の実効的な運用に向けた留意点を通知するとともに、時間外勤務縮減に向けて地方公共団体が様々な取組を進めているが、今年度新たに、その好事例を取りまとめ、情報提供を実施したところである。
 休暇・休業制度については、民間の状況やそれを考慮する国家公務員の動向に注視しながら、適正な勤務条件の確保を進めることが必要と考えており、国家公務員の非常勤職員の休暇制度との権衡を踏まえ、適切に対応するよう助言を行ってきた。
  総務省としては、引き続き、実態を把握しながら、各団体における取組がしっかりと行われるよう、必要な支援を行ってまいりたい。
  地方公共団体の定員については、各団体において自主的にご判断いただくことが基本であるが、行政の合理化、能率化を図るとともに、行政課題に的確に対応できるよう、地域の実情を踏まえつつ、適正な定員管理の推進に取り組むよう、助言しているところ。なお、近年では、地方創生や子育て支援などへの対応のため、一般行政部門の職員数は、平成26年を境に8年連続で増加しており、令和4年4月までの間で約2.9万人の増となっている。
総務省としても、令和5年度地方財政計画において、このような職員数が増加している実態などを勘案した上で、職員数全体で2,618人の増としており、今後とも、必要な対応を行ってまいりたい。

(2)職員の健康管理及び職場の安全衛生管理の体制の確立については、任命権者が労働安全衛生法の趣旨にのっとり、主体的に実施するものであり、各地方公共団体において、体制の整備が進められているものと認識している。
総務省においては、従来から地方公共団体に対し、労働安全衛生法の遵守など、メンタルヘルス対策の推進に係る情報提供や助言を行ってきた。
特に、ストレスチェックについては、
・事業場の規模に関わらず、全ての職員を対象に実施すること、
・高ストレス者に対する医師による面接指導を勧奨すること、
・ストレスチェックの結果を集団分析し、これを踏まえて職場環境の改善に積極的に取り組むこと、
等について、重ねて通知を発出するなど、助言を行っているところである。
また、地方公共団体におけるメンタルヘルス対策を推進するため、令和3年度から関係団体と連携して研究会を開催し、研究会の報告書も踏まえて通知により助言しているところであり、今年度の研究会においては、メンタルヘルス不調の予防から職場復帰、更には再発防止までの取組をとりまとめた計画を、各地方公共団体が自主的に策定できるよう、標準的な計画のモデルを作成することとしている。今月末を目途に、地方公共団体に情報提供するなど、地方公共団体のメンタルヘルス対策がより一層推進されるよう助言してまいりたい。

(3)パワーハラスメントは、個人の尊厳や人格を不当に傷つける許されない行為であり、総務省では、労働施策総合推進法に基づく厚生労働大臣指針及び人事院規則を踏まえ、パワーハラスメント防止に必要な措置を講ずるよう、各種会議における働きかけなど、機会を捉えて助言を行っている。昨年12月には、各種ハラスメント対策に関する調査結果を踏まえ、通知を発出し、パワーハラスメントの防止に必要な措置を講じていない団体に対し、速やかな対応を要請するとともに、
・措置の内容を文書により定めた上で、職員に周知すること
・周知・啓発に係る措置は、人事院及び厚生労働省作成のリーフレット等も活用し、早急に講じること
についても助言している。今後とも、地方公共団体におけるパワーハラスメント防止の実効性が確保されるよう、助言してまいる。

3.会計年度任用職員をはじめとする臨時・非常勤等職員の待遇改善、雇用安定について
(1)会計年度任用職員に対する勤勉手当の支給を可能とする法案については、3月3日に閣議決定され、今国会に提出されたところ。今回の法案が成立した場合には、勤勉手当の支給に関して、地方公共団体に対し調査を行うことを考えており、その結果も踏まえ、地方財政措置について、しっかりと検討してまいりたい。
(2)地方公共団体の非常勤職員の休暇制度については、地方公務員法第24条第4項の規定により、国家公務員の非常勤職員の休暇制度との権衡を踏まえた措置としていただく必要があると考えている。今般の非常勤職員に係る制度改善についても、国家公務員との均衡を図るよう、各地方公共団体において必要な措置を講じていただく必要があり、総務省においては、人事院規則の改正内容を踏まえて、条例例を作成し地方公共団体に示すなど、地方公共団体における円滑な施行に向けて必要な助言、情報提供を行ってきている。
総務省としては、これまでも毎年度、各団体における休暇制度の措置状況を把握し、国家公務員の非常勤職員に措置されている休暇制度を措置していない団体に対して速やかに適正化を図るよう助言をしてきているところであるが、引き続き、地方公務員の非常勤職員の適正な処遇の確保に向け取り組んでまいる。
(3)今回の新型コロナウイルス感染症への対応は、これまで想定していない業務に緊急に対応しなければいけない状況の下、体制構築・確保に苦慮する中、各団体においては、
・職員の業務内容を見直して優先順位の高い業務に従事させる取組、
・職員を新たに発生した業務に従事させるとともに会計年度任用職員等を採用して既存の業務の一部に従事させる取組
等、地域の実情に応じ、様々な工夫が行われてきたものと承知している。
総務省では、各団体における取組事例を周知するとともに、こうした事例を参考にしていただきながら、業務内容や勤務場所の変更といった柔軟な対応により、非常勤職員を含む組織全体としての業務体制を確保していただくよう通知を発出し、各団体に助言をしている。

4.雇用と年金の確実な接続について
(1)総務省では、これまで、各地方公共団体において、令和5年4月1日の施行に向けて必要な準備行為が計画的に実施されるよう、運用通知等の発出、質疑応答集の拡充、条例例の提供等を行ってきたが、引き続き、必要に応じて助言等を行ってまいりたい。
 定年引上げに係る地方公務員の給与・勤務条件については、地方公務員法の趣旨に沿って、各地方公共団体の議会において条例で定められるものであるが、その内容に関し、地方公共団体の当局と職員団体が協議を行う場合にあっては、地域の実情を踏まえ、真摯な協議が行われるものと考えている。
 総務省としては、国民・住民の理解と納得が得られる適正な内容とすべきものとの考えに立ち、必要な助言を行ってまいりたい。
(2)定年の引上げにより、現行の再任用制度が廃止されるが、定年の段階的な引上げ期間においては、年金受給開始年齢までの継続的な勤務を可能とするため、現行と同様の暫定的な再任用制度を設けることとしている。
 暫定再任用制度では、平成25年3月に発出した総務副大臣通知において示している現行の再任用制度と同様、定年退職する職員が暫定再任用を希望する場合には、当該職員が年金支給開始年齢に達するまで、原則として常時勤務を要する職に再任用する旨、令和4年3月に通知している。
 暫定再任用職員の給与については、地方公務員法の均衡の原則等に基づき、現行の再任用職員の給与制度を基本として設計されている国家公務員の取扱いを踏まえ、各団体の条例において適切に定められるべきものと考えている。

5.公共サービス基本法に基づく適正な労働条件確保等について
 公共サービス基本法第11条において、地方公共団体は、安全かつ良質な公共サービスが適正かつ確実に実施されるよう、公共サービスに従事する者の適正な労働条件の確保や労働環境の整備に関して必要な施策を講ずるよう努めるものとされている。
これに関し、総務省としては、
・会計年度任用職員制度を創設し、新たに期末手当を支給可能とするなど、臨時・非常勤職員の適正な任用・勤務条件の確保や、
・時間外勤務の縮減と上限規制、年次有給休暇の取得推進、女性職員の活躍や各種ハラスメント対策など、地方公務員の働き方改革の推進に向けた助言
などを通じ、地方公共団体に対する支援に取り組んでいる。
 また、これまでも、地方公共団体に対し、公共サービスの実施に関する業務の委託に当たり、受託事業者等において労働条件への適切な配慮がなされるよう留意すること等について助言を行っており、今後とも、公共サービス基本法の趣旨を踏まえ、必要に応じて、助言等を行ってまいりたい。

 回答を受け、伊藤企画調整委員代表は以下3点の重点課題について、次のように述べた。

1.賃金改善について
 自治体職員は、住民への安定的な行政サービスを提供するために、日々懸命に努力しているが、物価高騰が続く中、賃金が追いついていないというのが現状である。住民の信頼と期待に応え、より質の高い公務・公共サービスを確実に提供していくためには、積極的な賃金引上げが不可欠だ。
 今ご回答があったように、地方公務員の給与については、地方自治の本旨と地方分権の理念に基づいて、当該地方自治体の条例で定めるべきものであり、その自治体の自主的・主体的判断で決定されるべきものである。それを損なうような指導・助言は控えるよう、その点を改めて強調しておく。
 また、「社会と公務の変化に応じた給与制度の整備」について、人事院は社会や公務の変化に応じた人事管理上の課題に対応するため、今後の国家公務員給与の在り方について意見を聴取するための有識者との意見交換を実施するとし、具体の検討をはじめようとしている。給与制度の見直しについては、月例給及び各種手当を取り扱う総合的な見直しであり、地方公務員にも大きく影響することから、必要な情報提供をお願いしたい。あわせて、地方公務員部会としても、課題を整理していく予定であるので、適宜意見交換をお願いしたい。

2.会計年度任用職員をはじめとする臨時・非常勤職員の待遇改善、雇用安定について
 会計年度任用職員制度導入から3年が経過しようとしている。これまで地方公務員部会として求めてきた勤勉手当の支給について、その支給を可能とする地方自治法改正法案が国会に提出された。これまでの総務省のご尽力に感謝するとともに、今国会での円滑な審議となるよう、総務省としての対応を求めておきたい。また、勤勉手当の支給を始めとする必要な財政措置もあわせてお願いしたい。
 また、総務省の実態調査からも、依然として、常勤職員との均衡がはかられていない実態や、国の期間業務職員との権衡もはかられていない実態があることは否めない。会計年度任用職員制度に関連する諸課題については、引き続き、改正地公法等の趣旨に即した待遇改善、雇用安定がはかられるよう、全般的かつさらなる見直しに向け、情報交換しながら、努力していくよう求めておく。

3.雇用と年金の確実な接続について
 定年引上げについては、それにかかる地方公務員法がこの4月から施行となる。円滑なスタートが切れるよう、総務省として改めての対応を求めておく。
 また、定年の段階的な引上げが完成するまでの間、職員の希望通りの再任用の実現と高齢期の生活を支える給与及び適切な労働条件を確保すること、そして、必要な新規採用が継続できるよう、定員管理の弾力的な運用等を含め、地方の実態を踏まえた適切な助言と財政措置を求めておく。

 最後に伊藤企画調整委員代表は、「地方公務員における課題は年々増え、積みあがる一方である。総務省も大変だと思うが、地方公共サービスに従事するすべての職員が安心して働き続けることができる環境整備に向け、適宜、我々地方公務員部会と情報交換を行いながら、総務省として尽力いただきたい」と要請し、回答交渉を終えた。