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給与改定等に関わる最終回答を引き出す-10/19
公務公共サービス労働組合協議会 地方公務員部会
2023年度 公務労協情報 No. 35

地方公務員部会が公務員部長交渉を実施し、
給与改定等に関わる最終回答を引き出す-10/19

 公務労協地方公務員部会は、10月19日、地方公務員給与の改定等に関わり、8月8日に総務大臣に提出した申入書に対する最終回答を引き出すため、総務省交渉を実施した。地方公務員部会からは伊藤企画調整委員代表(自治労書記長)ら書記長クラス交渉委員が出席し、総務省からは小池公務員部長らが対応した。
 冒頭、伊藤企画調整委員代表が、地方公務員部会の要求に対する最終回答を求めたのに対し、小池公務員部長は以下のように答えた。

1.2023年の地方公務員の給与改定について
○ 地方公務員の給与については、地方公務員法の趣旨に沿って、地域の実情を踏まえつつ、条例で定められるもの。
○ 各地方公共団体においては、国民・住民の理解と納得を得られるよう、適切に給与を決定することが肝要である。
○ このため、総務省としても、引き続き必要な助言を行ってまいる。

2.公営企業および技能労務職員の給与について
○ 技能労務職員等の給与については、一般行政職と異なり、人事委員会勧告の対象とはならず、労使交渉を経て労働協約を締結することができるが、その決定に当たっては、同一又は類似の職種の国及び地方公共団体の職員並びに民間事業の従事者の給与等を考慮して定めることが法律上求められている。
○ また、過去には、技能労務職員等の給与については、同種の民間事業の従事者に比べ高額となっているのではないかとの国民からの厳しい批判があったところ、各地方公共団体においては、給与に関する情報の開示を進めながら、適切に給与を決定することが重要と考えている。

3.「社会と公務の変化に応じた給与制度の整備」について
○ 本年の人事院勧告において示された「社会と公務の変化に応じた給与制度の整備」(給与制度のアップデート)における個々の措置内容については、国の動向を注視しつつ、関係団体の意見や地方独自の課題を踏まえながら、総務省設置の検討会において必要な検討を行ってまいる。
○ なお、新設を勧告された在宅勤務等手当については、在宅勤務等を中心とした働き方をする職員の光熱・水道費等の費用負担を軽減するための手当であり、その支給額は、民間の同種の手当の支給状況等を勘案して設定されているものである。
○ 地方においては、今般の国における在宅勤務等手当の新設を受けて、同趣旨の手当を支給可能とするよう、地方自治法の改正を予定しているところ、各地方公共団体におかれては、国の制度改正などを踏まえながら、適切に対応いただく必要があると考えている。

4.地方自治体における長時間労働の是正等について
○ 地方公務員の労働環境の確保に関しては、平成30年の働き方改革関連法と、これに関連する人事院規則の改正を踏まえ、総務省として、時間外勤務の上限規制や、健康確保措置の強化に取り組んでいただくべく、地方公共団体に対して通知を発出してきた。
○ 昨年12月には、令和3年度の時間外勤務の状況を踏まえ、改めて制度の実効的な運用に向けた留意点を通知するとともに、時間外勤務縮減に向けた地方公共団体の好事例を取りまとめ、情報提供を実施したところである。
○ 現在、令和4年度の時間外勤務の状況について調査を行っているところであり、この結果を踏まえて、地方公共団体に対して助言を行っていく。
○ 休暇・休業制度については、国家公務員との均衡を考慮し、適切に対応するよう助言を行ってきた。
○ 特に昨年度は、妊娠・出産・育児等と仕事の両立支援の観点から、国家公務員において休暇・休業制度の改正が実施されたところであり、これを踏まえ、地方公務員においても適切に対応するよう通知を発出してきた。
○ 地方公共団体の定員については、各団体において、行政の合理化、能率化を図るとともに、行政課題に的確に対応できるよう、地域の実情を踏まえ、適正な定員管理に取り組むことが重要と考えている。
○ 各地方公共団体においては、行政需要の変化に対応した、メリハリのある人員配置を行っていただいているものと承知しており、近年では、一般行政部門の職員数は、平成26年を境に、8年連続で増加し、令和4年4月までの間で約2.9万人の増となっている。
○ 総務省としては、引き続き、地方公共団体に対して、必要な助言を行ってまいりたい。
○ 地方公務員についても、多様なワークスタイル・ライフスタイルの実現は重要であり、国家公務員における見直し内容を踏まえ、必要な対応を図っていく。
○ 総務省としては、引き続き、実態を把握しながら、各地方公共団体における取組がしっかりと行われるよう、必要な支援を行っていく。

5.会計年度任用職員をはじめとする臨時・非常勤職員の待遇改善、雇用安定について
(1)会計年度任用職員の期末手当及び勤勉手当の支給と、支給等に必要な財政措置
○ 総務省としては、期末・勤勉手当について、各地方公共団体において適切に支給されることが必要であると考えており、今後とも、ヒアリングの機会等を活用して適切な対応を促してまいる。
○ また、会計年度任用職員制度の導入に伴い新たに必要となる期末手当等の経費については、令和2年度の地方財政計画において、1,738億円を計上し、令和3年度以降、制度の平年度化による経費の増を踏まえ、2,402億円を計上し、制度を円滑に運用できるよう必要な財源を確保している。
○ 勤勉手当の支給に関する必要な経費については、各地方公共団体に対し調査を行っており、その調査結果を踏まえ、地方財政措置について、しっかりと検討してまいる。
(2)臨時・非常勤職員の休暇制度の改善
○ 地方公共団体の非常勤職員の休暇制度については、地方公務員法第24条第4項の規定により、国家公務員の非常勤職員の休暇制度との権衡を踏まえた措置としていただく必要があると考えている。
○ 令和4年度に順次施行された非常勤職員に係る制度改善についても、国家公務員との均衡を図るよう、各地方公共団体において必要な措置を講じていただくため、総務省においては、人事院規則の改正内容を踏まえて、条例例を作成し地方公共団体に示すなど、地方公共団体における円滑な施行に向けて必要な助言、情報提供を行ってきた。
○ 総務省としては、これまでも、各団体における休暇制度の措置状況を把握し、国家公務員の非常勤職員に措置されている休暇制度を措置していない団体に対して、速やかに適正化を図るよう助言をしてきているところであり、引き続き、地方公務員の非常勤職員の適正な処遇の確保に向け取り組んでまいる。

6.各種ハラスメント対策について
○ ハラスメントは、個人の尊厳や人格を不当に傷つける許されない行為であるとともに、職員の能力の発揮を阻害し、公務能率の低下を招くものでもあることから、地方公共団体におけるハラスメント対策は重要であると考えている。
○ 総務省としては、関係法律及びこれらの法律に基づく各厚生労働省指針並びに各人事院規則を踏まえ、各種ハラスメントを防止するために必要な措置を講ずるよう、各種会議において要請するなど、これまでも機会を捉えて地方公共団体に対して助言を行ってきた。
○ 昨年12月に公表した各種ハラスメント対策に関する調査結果においては、措置を講じている団体が年々着実に増加しているところ。
○ このような中、各種ハラスメントを防止するために必要な措置が講じられていない団体に対しては、
・法律上の義務が履行できていない状態であることから、速やかに必要な措置を講じなければならないこと
・措置の内容を規則、要綱、指針等の文書により定めた上で職員に周知すること
について、速やかな対応を要請したところ。
○ 今後とも、地方公共団体における取組状況をフォローアップしつつ、各種ハラスメント対策の実効性が確保されるよう助言していく。

7.定年の段階的引上げについて
○ 定年引上げに係る地方公務員の給与・勤務条件については、地方公務員法及び各地方公共団体の条例等に基づき、定められたものである。その運用にあたり、地方公共団体の当局と職員団体が交渉・協議を行う場合にあっては、地域の実情を踏まえ、真摯な交渉・協議が行われるものであると考えている。
○ 総務省としては、国民・住民の理解と納得が得られる適正な内容とすべきものとの考えに立ち、必要な助言を行ってまいりたい。
○ 定年の引上げにより、再任用制度が廃止されたが、定年の段階的な引上げ期間においては、年金受給開始年齢までの継続的な勤務を可能とするため、再任用制度と同様の暫定的な再任用制度を設けたところである。
○ 暫定再任用制度では、平成25年3月に発出した総務副大臣通知「地方公務員の雇用と年金の接続について」において示している再任用を希望する職員の取扱いと同様、定年退職する職員が再任用を希望する場合には、当該職員が年金支給開始年齢に達するまで、原則として常時勤務を要する職に再任用する旨、令和4年3月に通知している。
○ 暫定再任用職員の給与については、地方公務員法の均衡の原則等に基づき、国家公務員の取扱いを踏まえ、各団体の条例において適切に定められるべきものと考えている。

これに対し、伊藤企画調整委員代表は、特に重点とする2点について、意見・要望を述べた。

1.賃金改善について
○ すでに、9月から出された各県・政令市などの人事委員会勧告では、月例給及び一時金とも引上げ勧告となり、今後、給与法案の国会動向と並行し、地方においてもその取り扱いが議論される。
 言わずもがな、公共サービスに従事する地方公務員は、コロナ対策に加えて恒常化する自然災害への対応等を含め、住民への安定的な行政サービスを提供するために、日々懸命に努力している。
 残念ながら、日々奮闘する働きに対し、依然として物価高騰は続き、賃金水準が追いついていない現状にある。
 地方公務員部会としては、こうした中、総じて、同一労働・同一賃金の観点も含め、住民の信頼と期待に応え、より質の高い公務・公共サービスを確実に提供していくためにも、積極的な賃金引上げ、底上げが不可欠であると認識している。
 こうした状況を踏まえ、今、回答にもあったように、地方公務員の給与は、地方自治の本旨と地方分権の理念に基づいて、当該地方自治体の条例で定めるべきもの。その自治体の自主的・主体的判断で決定されるべきものとして、そのことを損なうような指導・助言は控えるよう、強調しておく。
○ 加えて、今年の人事院勧告と取り扱いなどについて。
 勧告の内容については、とくに月例給について、全職員の引上げ勧告として、一定の評価はできつつも、引上げ率やその配分については、とくに高齢層職員のモチベーション維持の観点からいえば不十分であることを指摘しておく。
 その上で、内容に不満はありながらも、生活を支える賃金の底上げは急務。労働基本権の代償措置として出された引上げ勧告の取り扱いについては、最低限の手立てとして、国の給与法並びに地方議会での早期決定、年内支給ができうるよう総務省としてのご努力、働きかけを求めておく。
 併せて、若年・中堅はもちろんのこと、高齢層職員・再任用職員の人材確保も重要であるとの観点を持ちながら、根本的な待遇改善、積極的な賃金改善に向けた総務省の努力も期待する。
○ また、「社会と公務の変化に応じた給与制度の整備」の骨格案が示され、今後成案の提案に向けて、具体的に検討される。当然、地方公務員にも大きく影響することから、地方公務員部会として課題を整理し、今回の要求書に留意事項としてあげたところ。
 人事院は、「人事行政諮問会議」を開催し、人材確保や給与、働き方など横断的な人事管理の方向性を議論。総務省としても、地方公務員の人事管理に関する検討会を設置し、議論を進めるようだが、いずれも決定機関ではなく、参考意見の集約の場として受け止めておく。
 今般の課題に対する組合員の関心は高く、現場の実態や切実な思いは極めて重要。人事院の検討の動向を踏まえつつ、適宜必要な情報提供とともに、引き続き、地方公務員部会との意見交換・協議等を踏まえ、適切な対応をはかるよう求めておく。
 とくに、地域手当については、地方公務員は全国で等しく住民の福祉の増進のために同様の職務を行っている中で、出されている声は、現行の指定基準では近隣自治体間においても格差があるなど多くの矛盾を抱え、人材確保に支障をきたしていること。
 人事院は、地域手当を含めた給与の見直しについて、級地区分の設定を広域化するなど大括りな調整方法により、見直していこうと示している。
 現時点で求めておきたい事項として大きく3点。①まずは、その制度設計にあたっては、地方の実態を踏まえた対応が必須であり、是非、人事院に対し、近隣自治体間の格差縮小を求める地方の意見を的確に反映いただきたい。②制度見直し後においても、国の制度を画一的に強制することなく、地域の実情を踏まえた自治体の裁量を尊重すること。③手当の支給水準が国の基準を超えている自治体に対して行われている「特別交付税の減額措置」については、明らかに自治体の給与決定に対する介入・制裁であって、ただちに廃止すること。
 以上、この3点について、要請しておきたい。

2.会計年度任用職員をはじめとする臨時・非常勤職員の待遇改善、雇用安定について
○ 地方公務員部会としては、この間、会計年度任用職員制度に関連する諸課題について、改正地公法等の趣旨に即した待遇改善、雇用安定がはかられるよう、全般的かつさらなる見直しに向け、情報交換を適宜行いながら、努力いただくよう求めてきたところ。
 こうした中、私たちの要求に対する総務省の努力もあり、来年4月から、会計年度任用職員への勤勉手当が支給される法改正へとつながったが、まずは、期末手当の支給同様、全地方自治体で漏れることなく、きちんと支給されるよう、条例化に向けた総務省の適切な対応を求めておきたい。
 また、勤勉手当の支給に関して必要な経費については、所要の地方財政措置を講じるとともに、地方交付税の算定に適切に反映すべきことを強く求めておく。
○ なお、今年の人事院勧告では、一時金の引上げも勧告されたが、引上げ分を期末手当及び勤勉手当に配分することからすれば、期末手当の支給のみの会計年度任用職員にとっては賃金改善とはならない。
 したがって、常勤職員との均衡を図る立場からも、各地方自治体・団体等の労使交渉によって工夫した対応などに対しては、自主的・主体的判断を尊重するよう求めておく。

 最後に、伊藤企画調整委員代表が、「地方公務員における課題は年々増え、積みあがっている。地方公共サービスに従事するすべての職員が安心して働き続けることができる環境整備に向け、適宜、我々地方公務員部会と情報交換などを行いながら、総務省として尽力いただくよう要請する」と述べ、本日の回答交渉を終えた。