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公務公共サービス労働組合協議会 公務員連絡会
2021年度 公務労協情報 No. 16

2021春季要求で人事院の職員福祉局長、給与局長と書記長クラスが交渉-3/17

公務員連絡会書記長クラス交渉委員は、3月17日13時30分から人事院職員福祉局長、14時から給与局長との交渉を実施し、2021年春季要求に対する現段階における回答を引き出した。
この日に行われた交渉経過は次のとおり。

<職員福祉局長交渉の経過>
冒頭、吉澤事務局長が、現時点での回答を求めたのに対し、合田局長は以下の通り答えた。

1.労働時間の短縮、休暇等について
国家公務員の超過勤務については、平成31年4月から、超過勤務命令を行うことができる上限を人事院規則で設定したところである。勤務時間管理については、上限設定の規則を制定した際に発出した職員福祉局長通知において、超過勤務の運用の適正を図るため、課室長等による超過勤務予定の事前確認や、所要見込み時間と異なる場合の課室長等への事後報告を徹底させるとともに、超過勤務時間の確認を行う場合は課室長等や周囲の職員による現認等を通じて行うものとし、客観的な記録を基礎として在庁の状況を把握している場合は、これを参照することもできる旨を規定したところである。
なお、本年1月29日に改正された「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」(女性職員活躍・ワークライフバランス推進協議会決定)において、各府省等は「勤務時間管理システム」の導入等により勤務時間管理をシステム化し、職員の勤務時間を「見える化」することとされている。
各府省において、人事院規則に定める上限を超えて超過勤務を命じた者がいた場合には、その要因の整理、分析及び検証を行わなければならないとしており、人事院としても、各府省から提出された令和元年度の整理、分析及び検証の状況に関する報告を分析するとともに、その報告に基づいて、他律的部署の指定状況、上限を超えるに至った業務の内容、上限超えを回避するための取組等を聴取し、超過勤務の状況の改善方策について指導、意見交換を行ったところである。
上限の基準別に上限を超えた職員の割合、上限を超えるに至った業務の内容などについては、職員団体の皆さんにも、おって情報提供することとしたい。
超過勤務の縮減については、引き続き、制度の適切な運用が図られるよう、人事院として必要な指導等を行ってまいりたい。
また、この問題については、引き続き職員団体の皆さんの意見を聞きながら対応してまいりたい。
両立支援制度を含む職員の休暇、休業等については、従来より情勢適応の原則の下、民間における普及状況に合わせることを基本に、適宜見直しを行ってきたところであり、引き続き民間の動向等を注視してまいりたい。
また、両立支援制度の活用については、平成30年3月に発出した「仕事と育児・介護の両立支援制度の活用に関する指針」の内容が各府省において徹底されるように更なる周知に取り組んでまいりたい。
現在、民間労働者については、男性の育児休業取得促進等のため、育児・介護休業法等改正法案が今次通常国会に提出されているところである。国会における法案の審議を注視し、国家公務員の育児休業制度等について必要な検討を行うこととしたい。
なお、不妊治療のための支援については、昨年の勧告時報告において、民間の状況を注視しつつ、不妊治療と仕事の両立に関する実態や職場環境の課題等を把握し、必要な取組の検討を進めていく旨言及したところであり、具体的には、職員向けの、不妊治療と仕事の両立のための職場環境に関するアンケート調査を、本年1月中旬から2月上旬にかけて実施し、現在、アンケート結果の集計・分析を進めているところである。また、並行して、不妊治療のために使用できる休暇等を設けている自治体に対して制度の詳細についてヒアリングを行っているところである。今後、アンケートの結果や自治体ヒアリング結果等を踏まえ、必要な取組の検討を進めてまいりたい。

2.非常勤職員等の休暇について
非常勤職員の休暇制度等については、業務の必要に応じてその都度任期や勤務時間が設定されて任用されるという非常勤職員の性格を考慮しつつ、民間の状況等を考慮して必要な措置を行っているところである。
今後も、引き続き民間の状況等について注視し、必要に応じて検討を行ってまいりたい。

3.障害者雇用について
障害を有する職員が自らの希望や障害等の特性に応じて、無理なく、かつ、安定的に働くことができるよう、平成30年12月にフレックスタイム制の柔軟化等を実現するための人事院規則等の改正(平成31年1月施行)を行うとともに、公務の職場における障害者雇用に関する理解を促進し、障害を有する職員が必要な配慮を受けられるよう、「職員の募集及び採用時並びに採用後において障害者に対して各省各庁の長が講ずべき措置に関する指針」を平成30年12月に発出し、各府省に対して、当該指針に沿って適切に対応することを求めている。
このほか、厚生労働省と連携して、各府省における合理的配慮事例の情報共有などの支援を行っている。

4.健康・安全の確保等について
ハラスメント防止対策について、人事院は、昨年4月、パワー・ハラスメントの防止等の措置を講じるための人事院規則を制定し、あわせて、セクシュアル・ハラスメント及び妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメントに係る人事院規則についても、所要の規定の整備を行い、同年6月に施行した。これらの人事院規則においては、ハラスメントの防止等のための各省各庁の長の責務や、研修等の実施、苦情相談への対応等が定められているところ、人事院はこれまで、各府省における取組状況を把握しつつ、研修教材の作成・提供や、各府省のハラスメント相談員を対象としたセミナーの開催など、各府省に対する支援を行ってきており、今後も、各府省においてハラスメント防止対策が適切に実施されるよう、必要な支援・指導を行ってまいりたい。また、苦情相談を含めた公平審査制度において、パワー・ハラスメントに関する事案についても人事院の役割を果たしてまいりたい。
新型コロナウイルス感染症への対応については、これまで、感染拡大防止に資するよう、柔軟な時差出勤のための勤務時間割振りの特例措置、出勤困難な場合の特別休暇の取扱いに関する通知の発出、職場における感染拡大防止対策の周知などの対策を講じてきたところである。今後とも、感染状況等を注視しつつ、必要な対応を行ってまいりたい。

 回答に対し、吉澤事務局長は以下のとおり、職員福祉局長の見解を質した。
(1) 民間の育児休業法等の改正に関わって、民間の改正点等を踏まえれば、慎重に検討すべきと考えるが、人事院としての検討に向けた認識如何。なお、意見の申出ありきではないニュートラルな対応を求めておく。
(2) 非常勤職員の休暇制度に関しては、昨年秋の民調で項目を絞って調査を実施しているが、調査結果の状況等如何。現在、人事院との間で休暇制度の検証を含めた協議を開始したが、夏には改善に向けた前向きな対応を求めておく。
(3) 新型コロナウイルス感染症対策に関わって、とくに妊娠中の職員に対する各省段階の取組状況をフォローするよう求めてきたが状況如何。
(4) ワクチン休暇について、具体的な内容についての検討はこれからだが、昨日の内閣人事局との交渉において、人事院と連携して取り組むとの回答であった。実効あるものとして対応するよう求めるが認識如何。
(5) 各府省の超過勤務に関わる整理、分析、検証等の結果については、情報提供するとのことだが、いつ頃になるのか。また、超過勤務手当の全額支給も踏まえて、超過勤務の縮減をより一層強く求められると認識しており、人事院規則15-14について検証を行った上で、必要な改善を求めるが、まずは元年分の上限を超えた超過勤務の状況について、われわれとの詳細にわたる検証の場を求めておく。
(6) パワハラ防止対策の人事院規則が施行されて1年に満たないが、まずは相談員等含めた体制の整備だが、各省の状況如何。お互いに問題意識は共有していると認識しているが、人事院における対応強化を求めておく。

これに対し、合田職員福祉局長は次のとおり回答した。
(1) 人事院としては、法案の審議動向を注視しながら検討をしていく。また、通常国会で成立すれば、今夏の意見の申出も視野に入れて検討をしていくこととなろうが、改正点に当たっては、民間法制と公務員制度で建て付けが異なるなど根本的な課題もあると認識している。
(2) 昨年秋の民調は、例年より一月程度遅れて開始しており、現在、結果については集計中である。基本的に、民間準拠ということはあるが、どのように考えていくかについては、色々と知恵を出していかないといけないと思っており、職員団体の皆さんの意見も聞きながら、今年の夏の勧告時期における見解の表明に向けて検討を進めていきたい。また、個々の休暇のあり方についてどのように考えるのか、民間のデータをどのような角度から分析できるのか等、引き続き、意見交換を進めていきたいと考えている。
(3) 各省段階の取組状況の調査については、各省の現場への負担を考えると難しいことは、昨年も申し上げたところ。超過勤務に関して各府省から聴取した際に、新型コロナウイルス感染症対応でかなりの長時間の勤務があるとしている府省もあるが、妊娠中の職員についてピンポイントで聴取するというのは難しい状況である。職員団体の皆さんからも、具体的に問題がある実態があれば、それを端緒に、各省の担当者に対してフォローしていきたいと思うのでご協力をお願いしたい。
(4) 政府において、民間企業の従業員に対して、どのようにワクチン接種の便宜をはかるのかというスタンスが固まってくれば、国家公務員の勤務条件を預かっている人事院として適切な対応をしていきたい。
(5) 情報提供については、来週中を予定しており、どのような形にするかはあるが、意見交換、議論は行っていきたい。
(6) 人事院規則で求めている体制はとられていると認識はしているが、パワハラ事案等の実態があれば、職員団体の皆さんからも人事院に言っていただきたい。

最後に、吉澤事務局長から「本日の議論も含めて、25日には、要求に沿った積極的な回答を求める」と強く要請し、職員福祉局長交渉を締めくくった。

<給与局長交渉の経過>
冒頭、吉澤事務局長が、現時点での回答を求めたのに対し、佐々木局長は以下のとおり答えた。

1.賃金要求について
最近の経済情勢についてみると、2月の月例経済報告は、景気は「持ち直しの動きが続いているものの、一部に弱さがみられる。」と基調判断を引き下げており、先行きについては、「持ち直していくことが期待される。ただし、内外の感染拡大による下振れリスクの高まりに十分注意する必要がある。」等としているところ。また、1月の景気動向指数の速報においては、「上方への局面変化を示している」との基調判断を示しており、今後の景気の動向を注視している。
次に雇用情勢についてみると、本年1月の有効求人倍率は1.10倍と昨年同月比で0.41ポイント低下し、また、完全失業率は2.9%と昨年同月比で0.5ポイント上昇している。
今年の春闘について、連合は、賃上げ要求について「定期昇給相当(賃金カーブ維持相当)分(2%)の確保を大前提に、産業の『底支え』『格差是正』に寄与する『賃金水準追求』の取り組みを強化しつつ、それぞれの産業における最大限の『底上げ』に取り組むことで、2%程度の賃上げを実現し、感染症対策と経済の自律的成長の両立をめざす。」としているものと承知している。
経団連は、最優先すべきは「事業の継続」と「雇用の維持」であるとし、コロナ禍の影響で業績が大きく落ち込んでいる企業がある一方、業績が堅調な企業もある中、「業種横並びや各種一律の賃上げを検討することは現実的ではない」としており、その上で、基本給については、収益が安定的に高い水準で推移・収益が増大している企業においては定期昇給を含む制度昇給を実施した上で、自社の実情に適した形でのベースアップも選択肢になり得るとし、他方、収益状況が悪化している企業においては制度昇給などを含めて労使で検討せざるを得ないとしているところである。
経済情勢が不透明感を増す中で、順次行われる経営側からの回答の動向を注視していくこととしている。
いずれにしても国家公務員の給与について、人事院としては例年と同様、情勢適応の原則に基づき、国家公務員の給与と民間企業の給与の実態を精緻に調査した上で、その精確な比較を行い、必要な勧告を行うことを基本に臨むこととしている。
諸手当については、民間の状況、公務の実態等を踏まえ、職員団体の皆さんの意見も聴きながら、必要となる検討を行ってまいりたい。
再任用職員の給与については、これまでも適時見直しを行ってきており、引き続き民間企業における定年制や高齢層従業員の給与の状況、各府省における再任用制度の運用状況を踏まえつつ、職員団体の皆さんの意見も聴きながら、再任用職員の給与の在り方について必要な検討を行ってまいりたい。

2.非常勤職員の給与について
非常勤職員の給与については、平成29年7月に、勤勉手当に相当する給与の支給に努めることを追加するなどの非常勤職員の給与に関する指針(平成20年8月発出)の改正を行い、現在、これに基づく各府省の取組が進んでいるところであり、引き続き、職員団体の皆さんの意見も聞きながら、常勤職員の給与との権衡をより確保し得るよう取り組んでまいりたい。

回答に対し、吉澤事務局長は以下のとおり、給与局長の見解を質した。
1.賃金要求について
(1) 官民給与の比較方法・企業規模については、変更がないこということでよいか。
(2) 勧告にむけた日程について、昨年は新型コロナウイルス感染症への対応もあり、例年より大幅に遅れることとなったが、人事院としてどう総括しているのか。
(3) 感染拡大防止対策を取りつつ、一昨年以前のスケジュールに基づき、給与法改正まで見据えて対応すべきと考える。人事院のゆるぎない覚悟と見解を問う。
(4) 今後設置される「デジタル庁」の常勤職員には、俸給の調整額が支給されるのか。調整額については、人事院が認定することとなっているが、どういう手続きで、何を基準に決定しているのか。公務の専門性が高まる中、全体的な検証が必要と考えるが人事院の認識如何。

 これに対し、佐々木給与局長は次のとおり回答した。
(1) 以前より国会等で議論はあるが、本年の民間給与実態調査については現行どおりに実施することを予定している。
(2) 民調は企業への訪問に基づく実地調査により精確な調査を行っている。昨年の状況では、例年通りの手法・時期に実施することができず、時期を遅らせることとなったため、調査に時間がかかることとなった。
(3) 昨年の経験も踏まえ、例年通りのスケジュールとなるよう準備を進めている。国家公務員に対し社会一般の情勢に対応した適切な給与を確保するのが人事院の責務であり、勧告はもちろんのこと、勧告後においても、関係各方面に対して勧告の意義や役割への理解とその速やかな実施を求めており、給与法の改正に至る一連のプロセスが適時・適切に行われるよう必要な対応を行う責務があると認識している。
(4) サイバーセキュリティの確保、情報システムの整備若しくは管理又はこれらと併せて行われる事務の運営の改善及び効率化に関する業務に直接従事することを本務とする職員のうち人事院が定める者が占める官職について、俸給の調整額を措置する予定である。調整額は各府省からの要望を受けて、認めて然るべきものについて認めているが、要求がなければ措置について検討しないというわけではない。適正に評価されていないものがないかを見ていくことも重要と考える。措置の判断については、著しい特殊性を有することや、通常の職員とは異なる専門性が求められること、資格を有することなどを個別に見て行っている。

次に、吉澤事務局長は以下のとおり、非常勤職員の給与について、給与局長の見解を質した。
2.非常勤職員の給与について
(1) 非常勤職員については、給与法22条2項に基づき、各府省の裁量により決定されることは、常勤職員との権衡という観点から、問題ではないか。
(2) 22条2項の制定時とは、公務における非常勤職員の果たすべき役割が変わっている。非常勤職員の給与に関する指針も含めて、改めて見直すべきではないか。
(3) 例えば、同じ「事務補助」の非常勤職員にも関わらず、一時金の支給月数に差異があるということは明らかな不合理であり、是正すべきであると長年指摘し続けている。今年の勧告期には何らかの改善を求めるが、人事院の見解如何。

 これに対し、佐々木給与局長は次のとおり回答した。
(1) 非常勤職員の職務内容や勤務時間等は多様であることから、その給与については、職務内容等を踏まえ、常勤職員との権衡を考慮して、各府省において適切に支給する必要があると考えている。
(2) 非常勤職員の役割が当時とは変わっているのは指摘のとおりだと思うが、他方で、統一的な対応は困難であり、指針をつくり、徐々に処遇を確保する努力をしてきている。現在がベストだとは言わないが、流れの中で、今の状況があると考えている。
(3) あくまで常勤職員との権衡が前提であり、常勤職員と職務内容が類似する非常勤職員については、常勤職員に相当するような一時金の取扱いになる。より府省間の均衡が確保されるよう取り組んでいきたい。

 その後、交渉委員からは、①再任用職員の生活関連手当の適用、②非常勤職員の処遇確保のための予算措置についての意見・要望が出された。
最後に、吉澤事務局長から「春の段階で重要な事項として、比較方法・企業規模には変更がないこと、例年通りのスケジュールで調査等を進めるということを受け止める。25日の総裁回答では、われわれの要求内容に則したものとなるよう、積極的な回答を求める」と要請し、給与局長交渉を締めくくった。