TOP 公務労協情報 政府、人事院から春の段階の回答引き出す-3/25
-公務員連絡会は回答を確認し、人勧期闘争への決意固める「声明」を発出-
公務公共サービス労働組合協議会 公務員連絡会
2021年度 公務労協情報 No. 17

政府、人事院から春の段階の回答引き出す-3/25
-公務員連絡会は回答を確認し、人勧期闘争への決意固める「声明」を発出-

公務員連絡会は3月25日、委員長クラス交渉委員が河野国家公務員制度担当大臣、一宮人事院総裁と2021春季要求に関わる交渉を行い、春の段階における最終的な回答を引き出した。(資料1、2)
公務員連絡会は、企画調整会議を開催し、「回答は、春季における課題認識を共有するとともに公務員連絡会の意見を聞く姿勢を確認したものの、組合員の切実な要求に対して明確には応えていない。しかし、人事院勧告による給与・勤務条件決定制度のもとでの春の段階における交渉の到達点と受け止め、今後、人事院勧告期に向け闘争態勢を堅持・強化していく」との声明(資料3)を確認した。
また、26日を基本に全国統一行動を実施し、今後の取組に対する決意を固める観点から、各構成組織は、その実情に応じた行動を実施することを決定した。
この日行われた国家公務員制度担当大臣、人事院総裁との交渉経過は次のとおり。

<国家公務員制度担当大臣交渉の経過>
河野国家公務員制度担当大臣との交渉は、15時から行われた。
冒頭、武藤議長が2021春季段階の最終回答を求めたのに対し、河野国家公務員制度担当大臣は、資料1のとおり回答した。
この回答を踏まえ、武藤議長は次の2点について要請した。
(1) 第一に、職員は、新型コロナウイルス感染症対策という国民生活における喫緊かつ最重要な課題や、今月11日で東日本大震災から10年が経過したが、近年頻発する自然災害への対応など、各職場では奮闘が続いている。
河野大臣におかれては、職員の処遇改善が、良質な公務公共サービスの提供につながるとの認識のもと、引き続き、積極的な役割を果たしていただきたい。
(2) 第二に、超過勤務の縮減を含む働き方改革の推進について、この間の、河野大臣のリーダーシップにより、霞が関の働き方が「見える化」され、また、超過勤務手当の全額支給など、着実な改善がはかられている。一方で、引き続き、魅力ある職場づくりと、職員が英知と情熱をもって職務に従事できる職場環境をつくるため、われわれも現場から取組を強化していくので、河野大臣におかれては、必要な定員と予算の確保に向けて、積極的にご対応いただきたい。
そのうえで武藤議長は、「最後に、春季の最終回答において、大臣からは、引き続き、労使関係に基づいて、公務員連絡会と誠意をもって話し合っていくとの決意が示されたことを確認し、本日の回答は、国家公務員制度担当大臣の春の段階の最終回答として受け止め、組織に持ち帰って協議したい」と述べ、交渉を終えた。

<人事院総裁交渉の経過>
一宮総裁との交渉は、13時30分から行われた。
冒頭、武藤議長が2021春季段階の最終回答を求めたのに対し、総裁から本年の民間春闘の動向について、「本年の民間の春闘については、今月17日の大手企業の集中回答日以降、順次明らかになってきているが、ここまでの状況をみると、ベースアップを見送る動きや昨年の実績を下回る結果が見られるなど、昨年と比べて厳しい状況にある。また、年間の一時金についても、昨年の実績を下回る回答が多く見られる。新型コロナウイルス感染症の影響により、社会経済情勢は依然として不透明な状況にあるが、人事院としては、引き続き中小企業を含めた民間の動向を注視していきたいと考えている」と述べた上で、現段階の考え方等を資料2のとおり回答した。
回答に対し、武藤議長は、勧告期を視野に入れて次のとおり見解を示した。
(1) 連合の2021春季生活闘争は、分配構造の転換につながりうる賃上げと誰もが安心・安全に働くことのできる環境整備の実現を目指し、各労使が精力的に交渉を重ねているが、先行組合の賃上げ回答では、昨年に引き続き2%を割り込むなど、極めて厳しい状況となっている。
しかしながら民間の情勢は、業種間・企業間で新型コロナウイルス感染症による影響が大きく異なることから、本年の勧告に向けては、職種別民間給与実態調査、官民比較など慎重な対応を強く求めておく。
(2) また、非常勤職員の処遇改善に向けては、給与そして休暇について、引き続き、人勧期における建設的な結論が得られるよう、議論を継続していきたい。さらに、長時間労働の是正やパワー・ハラスメント防止対策については、実効性確保がより強く求められているという立場から、引き続き、誠意ある対応を求めておく。
最後に武藤議長は、「新型コロナウイルス感染症対策や頻発する自然災害への対応などに現場で奮闘する職員の労苦に報いるべく、適切な賃金・労働条件を確保するという人事院の責務を果たすことを強く求める。本日の回答は、人事院の春の段階の最終回答として受け止め、組織に持ち帰って協議する」と述べ、春季要求をめぐる交渉を締めくくった


資料1-政府の2021春季要求に対する回答

国家公務員制度担当大臣回答

2021年3月25日

○ 働き方改革については、現在、各府省において、超過勤務手当の確実な支払いの取組を進めているところです。
しかし、最終的なゴールは、長時間労働を是正し、職員がやりがいを持って、高い成果を効率的に上げられるようにすることであり、それが優秀な人材の確保という次のステップにつながると考えます。
各府省には、長時間労働の要因分析、廃止を含めた業務の見直し、人員配置・業務分担の見直しなどのマネジメントにしっかりと取り組むよう要請したところです。
現場の実情を含め、皆様からもご提案をいただきながら、しっかりと前に進めますのでご協力をお願いします。

○ 令和3年度の給与については、人事院勧告を踏まえ、国政全般の観点から検討を行い、方針を決定したいと考えています。その際には、皆様とも十分に意見交換を行いたいと考えます。

○ 非常勤職員については、各府省申合せに沿った処遇改善を進めてまいりますが、期末・勤勉手当の支給水準については、人事院に明確な考え方、具体的な統一基準を示していただくことが重要であり、それを踏まえた上で、人事院と連携しながら、対応を検討してまいります。

○ 障害者雇用については、障害者が能力を存分に発揮して活躍できるよう、定着支援などに重点的に取り組んでまいります。

○ 自律的労使関係制度については、多岐にわたる課題があることから、皆様と誠実に意見交換しつつ、慎重に検討してまいりたいと考えています。

○ 最後になりますが、今後とも職員団体とは誠意を持った話合いによる一層の意思疎通に努めてまいります。



資料2-人事院の2021春季要求に対する回答

人事院総裁回答

2021年3月25日

1.賃金の改善について
○ 人事院としては、労働基本権制約の代償措置としての勧告制度の意義及び役割を踏まえ、情勢適応の原則に基づき、必要な勧告を行うことを基本に臨むこととしています。

○ 俸給及び一時金については、国家公務員の給与と民間企業の給与の実態を精緻に調査した上で、その精確な比較を行い、適切に対処したいと考えています。

○ 諸手当については、民間の状況、官民較差の状況等を踏まえ、必要となる検討を行っていきたいと考えています。

○ 再任用職員の給与については、民間企業における定年制や高齢層従業員の給与の状況、各府省における再任用制度の運用状況を踏まえつつ、引き続き再任用の給与の在り方について必要な検討を行っていきたいと考えています。

2.労働時間の短縮、休暇等について
○ 長時間労働の是正に関して、令和元年度から人事院規則により超過勤務の上限を設定しており、この上限を超えた要因の整理、分析及び検証の状況について各府省から報告を受け、その報告を基に各府省に対して指導等を行っているところです。引き続き、制度の適切な運用が図られるよう、必要な指導等を行っていきたいと考えています。

○ 職員の休暇、休業等については、これまで民間の普及状況等を見ながら改善を行ってきたところです。不妊治療を受けやすい職場環境の整備を含めた両立支援、職員の休暇、休業等については、引き続き、職員団体の皆さんの意見も聴きながら必要な検討を行っていきたいと考えています。

3.非常勤職員の処遇改善について
非常勤職員の給与については、平成29年7月に改正した指針に基づく各府省の取組が進んでいるところであり、各府省に必要な指導を行うなど、引き続き、常勤職員の給与との権衡をより確保しうるよう取り組んでいきたいと考えています。
非常勤職員の休暇については、民間の状況等を見ながら、引き続き適切に対応していきたいと考えています。

4.障害者雇用について
障害者雇用に関しては、人事院として、フレックスタイム制の柔軟化等を実現するための人事院規則等の改正や「職員の募集及び採用時並びに採用後において障害者に対して各省各庁の長が講ずべき措置に関する指針」の発出等の措置を行っています。
このほか、厚生労働省と連携して、各府省における合理的配慮事例の情報共有などの支援を行っており、今後とも、必要に応じて各府省への支援を行っていきたいと考えています。

5.女性の活躍推進について
人事院としては、公務における女性の活躍推進を人事行政における重要な課題の一つと認識しており、第5次男女共同参画基本計画が決定されたことを踏まえ、令和3年2月1日、「女性国家公務員の採用・登用の拡大等に向けて」の一部改正を行い、女性を対象とした人材確保活動や女性職員の登用に向けた研修、両立支援策、ハラスメント防止対策等により、引き続き各府省の取組を支援しているところです。
今後とも、各府省の具体的な取組が進むよう支援していきたいと考えています。

6.健康・安全確保等について
ハラスメント防止対策について、人事院は、昨年4月、パワー・ハラスメントの防止等の措置を講じるための人事院規則を制定し、あわせて、セクシュアル・ハラスメント及び妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメントに係る人事院規則についても、所要の規定の整備を行い、同年6月に施行したところです。人事院としては、今後も、各府省においてハラスメント防止対策が適切に実施されるよう、必要な支援・指導を行っていきたいと考えています。また、苦情相談を含めた公平審査制度において、パワー・ハラスメントに関する事案についても人事院の役割を果たしていきたいと考えています。
新型コロナウイルス感染症への対応については、感染拡大防止に資するよう、これまで、いわゆる出勤困難休暇や時差出勤に関する休憩時間の特例の措置を行うとともに、職場における感染拡大防止対策の周知などの対策を講じてきたところです。今後とも、感染状況等を注視しつつ、必要な対応を行っていきたいと考えています。


資料3-2021春季生活闘争に関わる公務員連絡会の声明

声 明

(1) 本日、公務員連絡会は、国家公務員制度担当大臣、人事院総裁と交渉を持ち、2021春季要求に対する回答を引き出した。

(2) 2月17日の要求提出以降、3月3日の幹事クラス、16日及び17日の書記長クラス交渉を積み上げ、委員長クラス交渉委員による最終交渉で、国家公務員制度担当大臣は、①働き方改革については、各府省において、超過勤務手当の確実な支払いの取組を進めているところ、公務員連絡会からの意見も聞き、長時間労働の是正を着実に前に進める、②2021年度賃金については、公務員連絡会の意見を聞く、③非常勤職員の処遇改善については、期末・勤勉手当の支給水準について、人事院が明確な考え方、具体的な統一基準を示すことが重要、④公務員連絡会とは誠意を持った話合いによる一層の意思疎通に努めていく、などと回答した。
また、人事院総裁は、①賃金等については、情勢適応の原則に基づき、必要な勧告を行う、②長時間労働の是正については、制度の適切な運用が図られるよう、各府省に対して必要な指導を行う、③非常勤職員の処遇改善については、常勤職員の給与との権衡をより確保しうるよう取り組む、休暇については、民間の状況等を見ながら適切に対応する、④ハラスメント防止対策については、苦情相談を含めた公平審査制度において、人事院の役割を果たしていく、などと回答した。

(3) 連合の2021春季生活闘争は、新型コロナウイルス感染症の影響を乗り越え、感染症対策と経済の自律的成長の両立に向けて、分配構造の転換につながりうる賃上げと誰もが安心・安全に働くことのできる環境整備の実現を目指し、各労使が精力的に交渉を重ねているが、先行組合の賃上げ回答では、昨年に引き続き2%を割り込むなど、極めて厳しい状況となっている。今後、本格化する中堅・中小組合の交渉においても、すべての働く者の将来不安の払拭に向けて、「人への投資」にこだわった交渉を粘り強く進め、最大限の回答を引き出していくことが求められている。

(4) 公務員連絡会は、民間における極めて厳しい賃金・雇用の実態を受けた公務員給与に対する社会的評価と、とくに昨年は、人事院の職種別民間給与実態調査が大幅に遅れ、瀬戸際で決着した給与法改正の経過を踏まえ、職員が安心して安全に働くことのできる勤務環境の整備や適切な賃金・労働条件の確保が、喫緊の課題であるとの認識に基づき、2021春季生活闘争を進めてきた。

(5) 新型コロナウイルス感染症対策という国民生活における喫緊かつ最重要な課題への対応が引き続き求められるもと、春季の交渉においては、①新型コロナウイルス感染症が民間の賃金・雇用に与える影響が極めて深刻なもと、本年の給与改定に当たっては、政府の基本的な立場には何ら変更がないこと、②人事院が実施する職種別民間給与実態調査の企業規模及び官民の比較方法に変更がないこと、③人事院勧告については、一昨年以前の社会的、政治的に定着しているスケジュールに沿って取り組むこと、などを確認した。一方、回答は、春季における課題認識を共有するとともに公務員連絡会の意見を聞く姿勢を確認したものの、組合員の切実な要求に対して明確には応えていない。しかし、人事院勧告による給与・勤務条件決定制度のもとでの春の段階における交渉の到達点と受け止め、今後、人事院勧告期に向け闘争態勢を堅持・強化していく。

(6) 非常勤職員の処遇改善は、①政府、内閣人事局との間で春季交渉を通じ、課題に関する一定の認識の共有化をはかったもと、人事院に対し非常勤給与ガイドラインにおける主に一時金の支給水準の統一化に向け、本年人勧期における措置へと焦点化するとともに、②休暇については、人事院と公務員連絡会との間の検証の場における対応を精力的に行い、抜本的改善に向けた交渉・協議を人勧期へと継続した。また、長時間労働の是正については、政府側の主導による超過勤務手当の全額支給を踏まえ、人事院規則15-14に基づく、2019年度分の上限を超えた超過勤務の状況について、早々にも人事院との間で検証を行い、これを踏まえたより実効性ある超過勤務の縮減に向けて取り組む。さらに、パワー・ハラスメント防止対策については、相談員等を含めた体制の整備が課題であり、引き続き、ハラスメントのない職場の実現に向けて取組を強化する。

(7) 定年の引上げを措置するための「国家公務員法等の一部を改正する法律案」の取扱いは、内閣人事局より「社会にとっても、公務員制度にとっても重要な課題であるとの認識のもと、最大限の努力をしていく」との政府側の姿勢を引き出したものの、なお再提出に至っていない。引き続き、今通常国会における同法案の再提出と継続審議となっている「地方公務員法の一部を改正する法律案」を含めた早期成立に向け、公務労協による対政府交渉及び国会対策への結集を正念場の対応として強化する。

(8) 公務員連絡会は、引き続き、中小及び地域民間構成組織、独立行政法人等関係組合の交渉強化に連帯し、すべての労働者の処遇改善を実現するため、連合、公務労協に結集し、全力をあげる。

2021年3月25日

公務員労働組合連絡会