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公務公共サービス労働組合協議会 公務員連絡会
2021年度 公務労協情報 No. 27

人勧期要求をめぐり連絡会幹事クラスが人事院交渉-7/14

好岡審議官(右)に署名を提出

 公務員連絡会幹事クラス交渉委員は7月14日13時30分から、2021年人勧期要求に関わり、好岡人事院職員団体審議官との交渉を実施した。また、交渉前日の13日には、2021人勧期署名行動「ネットシグネ」の取組で全国の仲間から寄せられた49万310筆の署名を提出した。
 交渉冒頭、森永副事務局長が「6月30日に本年の人事院勧告に関わる要求書を人事院総裁に提出した。要求に対する現時点での回答を伺いたい」と求めたのに対し、好岡審議官は「令和3年勧告期要求について、現段階における検討状況についてお答えする」として次のとおり回答した。

1.勧告等について
(1) 勧告作業について
 今年の職種別民間給与実態調査は、4月26日から6月22日までの期間で実施したところであり、現在集計中である。
 本年も労働基本権制約の代償機関として、人事院としての責務を着実に果たすよう、国家公務員の給与と民間企業の給与の精緻な調査に基づき、その精確な比較を行い、必要な勧告、報告を行いたいと考えている。
(2) 賃金の改善について
 月例給与・一時金については、現在、民調結果を集計中であり、今の段階では何とも言えない状況である。
本年においても民調の結果に基づき、適切に対処したいと考えている。
(3) 諸手当について
 諸手当については、民間の状況、公務の実態等を踏まえ、職員団体の皆さんの意見も聴きながら、必要となる検討を行っていくこととしたい。
(4) 再任用職員の給与について
 再任用職員の給与については、民間企業における定年制や高齢層従業員の給与の状況、定年引上げに伴い設けられる定年前再任用短時間勤務制等も含めた再任用制度の各府省における運用を踏まえつつ、職員団体の皆さんの意見も聴きながら、引き続き必要な検討を行っていくこととしたいと考えている。


2.新型コロナウイルス感染症への対応について
 新型コロナウイルス感染症への対応については、これまで、感染拡大防止に資するよう、柔軟な時差出勤のための勤務時間割振りの特例措置、出勤困難な場合の特別休暇の取扱いに関する通知の発出、職場における感染拡大防止対策の周知などの対策を講じてきたところである。
 さらに、新型コロナウイルス感染症の予防接種について、本年5月、職員が新型コロナウイルス感染症のワクチン接種を受ける場合又は当該ワクチン接種により副反応が発生し療養する必要がある場合で、勤務しないことがやむを得ないと認められるときに勤務しないことを各府省等において承認することができるよう措置したところである。今後とも、感染状況等を注視しつつ、必要な対応を行ってまいりたい。


3.労働諸条件の改善について
(1) 労働時間の短縮等について
(超過勤務の縮減、上限規制について)
 国家公務員の超過勤務については、平成31年4月から、人事院規則により、超過勤務命令を行うことができる上限を設定し、この人事院規則等の規定の下で、超過勤務の縮減に取り組んでいるところである。
各府省において、人事院規則に定める上限を超えて超過勤務を命じた場合には、その要因の整理、分析及び検証を行わなければならないとしており、各府省においては、それぞれが行った令和元年度の整理、分析及び検証の結果を活用し、超過勤務の更なる縮減に向けて取り組んでいる。
 人事院としても、各府省の令和元年度の整理、分析及び検証の状況について報告を受け、それを踏まえて、昨年11月から本年2月にかけて、勤務時間制度の担当課長が各府省人事担当課長等にヒアリングを行い、特例業務の考え方や、他律的業務の比重が高い部署の指定の考え方、業務の状況を踏まえた指定の見直しなどについて指導・助言を行ったところである。なお、把握した状況については、整理した上で本年3月に公表するとともに、超過勤務の更なる縮減に向けた取組を促進する観点から各府省及び職員団体に共有している。
 引き続き、令和2年度に上限を超えて超過勤務を命じた場合における各府省による要因の整理、分析及び検証の状況を把握するとともに、制度の適正な運用に向けた各府省への指導・支援を行ってまいりたい。
(休暇制度等の改善について)
 職員の休暇、休業については、従来より情勢適応の原則の下、民間における普及状況も踏まえて、適宜見直しを行ってきており、今後も社会情勢等を注視しつつ、制度の改善や環境整備に努めていきたいと考えている。
 不妊治療と仕事の両立については、昨年の勧告時報告において、民間の状況を注視しつつ、不妊治療と仕事の両立に関する実態や職場環境の課題等を把握し、必要な取組の検討を進めていく旨言及したところであり、具体的には、職員向けの、不妊治療と仕事の両立のための職場環境に関するアンケート調査を、本年1月中旬から2月上旬にかけて実施しており、今後、アンケートの結果等を踏まえ、必要な取組の検討を進めてまいりたい。
 また、今般、民間労働者については育児・介護休業法が改正され来年4月以降順次施行されることから、国家公務員についても、同法の改正内容や国会での審議等を踏まえ、各府省や職員団体の意見も聞きながら、必要な法令改正について検討を進めてまいりたい。
(2) 障害者雇用について
 障害を有する職員が自らの希望や障害等の特性に応じて、無理なく、かつ、安定的に働くことができるよう、平成30年12月にフレックスタイム制の柔軟化等を実現するための人事院規則等の改正を行うとともに、公務の職場における障害者雇用に関する理解を促進し、障害を有する職員が必要な配慮を受けられるよう、「職員の募集及び採用時並びに採用後において障害者に対して各省各庁の長が講ずべき措置に関する指針」を平成30年12月に発出し、各府省に対して、当該指針に沿って適切に対応することを求めている。
 このほか、厚生労働省と連携して、各府省における合理的配慮事例の情報共有などの支援を行っている。今後とも、必要に応じて各府省への支援を行ってまいりたい。
(3) 女性国家公務員の採用等の推進について
 女性職員の採用・登用の拡大等については、政府全体で取組が進められており、人事院としても、女性を対象とした人材確保活動や女性職員の登用に向けた研修、両立支援策、ハラスメント防止対策等により各府省の取組を支援してきている。
 人事院としては、今後とも、各府省の具体的な取組が進むよう支援していきたいと考えている。
(4) 福利厚生施策について
(心の健康づくり対策について)
 心の健康づくりについては、これまでも研修の充実・強化、心の健康相談室の運営、ストレスチェック制度の実施など、様々な取組を行い対処してきたところである。引き続き心の健康づくり対策にしっかりと取り組んでいきたいと考えている。
(ハラスメントの防止について)
 人事院は、昨年4月、パワー・ハラスメントの防止等の措置を講じるための人事院規則を制定し、あわせて、セクシュアル・ハラスメント及び妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメントに係る人事院規則についても、所要の規定の整備を行い、同年6月に施行したところである。これらの人事院規則においては、ハラスメントの防止等のための各省各庁の長の責務や、研修等の実施、苦情相談への対応等が定められているところ、人事院はこれまで、各府省における取組状況を把握しつつ、研修教材の作成・提供や、各府省のハラスメント相談員を対象としたセミナーの開催など、各府省に対する支援を行ってきているところである。今後も、各府省のハラスメント防止対策の実施状況を把握するほか、各府省のハラスメント相談員を対象としたセミナーを引き続き開催し、研修用教材の改訂等を行うなど、各府省においてハラスメント防止対策が適切に実施されるよう、必要な支援・指導を行ってまいりたい。また、苦情相談を含めた公平審査制度において、パワー・ハラスメントに関する事案についても人事院の役割を果たしてまいりたい。


4.非常勤職員制度等について
(1) 非常勤職員の給与について
 非常勤職員の給与については、平成20年8月に非常勤職員の給与に関する指針を発出し、各府省において適正な給与の支給が行われるよう、必要な指導を行ってきている。平成29年7月には、勤勉手当に相当する給与の支給に努めることを追加するなどの指針の改正を行い、現在、これに基づく各府省の取組が進んでいるところであり、引き続き、常勤職員の給与との権衡をより確保し得るよう取り組んでまいりたい。
 その一環として、任期が相当長期にわたり、かつ、常勤職員と職務、勤務形態等が類似する非常勤職員の期末手当及び勤勉手当に相当する給与の支給月数については、常勤職員と同等とすることが適当と判断し、現在、指針の改正に向けた準備を進めているところである。
(2) 非常勤職員の休暇等について
 非常勤職員の休暇制度等については、業務の必要に応じてその都度、任期や勤務時間が設定されて任用されるという非常勤職員の性格を考慮しつつ、情勢適応の原則の下、必要な措置を行っている。これについては、公務員連絡会との間でこれまでも意見交換を行ってきたところである。今後も、意見交換を継続していくとともに引き続き民間の状況等について注視し、必要に応じて検討を行ってまいりたい。
(3) 期間業務職員制度について
 期間業務職員制度は、従来の日々雇用の非常勤職員の在り方を見直すため、職員団体をはじめ各方面の意見等を踏まえ、平成22年10月に導入したものであり、人事院は、各府省において、本制度を設けた趣旨に則った適正な運用がなされるよう、制度の周知徹底や指導助言を行うなどして取り組んでいる。

森永副事務局長は回答を踏まえ、4点の課題について、さらに人事院の見解を求めた。

1.賃金要求について
(1) 勧告作業について
 新型コロナウイルス感染症の感染拡大の中での民調となったが、人事院の受け止め及び調査完了率はどのような状況か。また、国公実態について、平均年齢及び給与水準の状況はどうか。本年の勧告スケジュール如何。
(2) 月例給与について
 連合、経団連の賃上げ集計結果を見れば、前年よりも厳しい状況、他方、4月の毎月勤労統計調査(厚生労働省)による一般労働者の所定内給与は前年同月0.3ポイント増となっている。官民較差の見込みは現時点では見通せないが、いずれにしても、客観的な官民比較に基づいて、要求にあるとおり、月例給与の水準の維持を最低として、公務員連絡会との交渉・協議、合意による措置を求めておく。
(3) 一時金について
 連合、経団連の集計結果や各種報道ベースによる民間動向を見る限り、官民比較の対象となる昨年冬、本年夏ともに、昨年にも増して厳しい状況となっている。業種によっては、ボーナスの支給をとりやめる事業所も多くみられ、リーマンショック時以上に厳しい状況にあると認識している。このような民間動向を踏まえ、要求にあるとおり、職員の生活を守る支給月数の確保を求めておく。
(4) 諸手当について
 現時点で、具体的に見直しを検討している手当があれば検討状況を明らかにすること。
(5) 再任用の職員の給与について
 6月4日に改正国家公務員法が成立し、定年の段階的な引上げが2023年度(令和5年度)から開始されることとなる。定年引上げによる60歳超職員の給与との整合を含め、再任用職員の給与制度全般の改善を求めるが、人事院の認識如何。

これに対し、好岡審議官は以下の通り回答した。
〇職種別民間給与実態調査については、調査の完了率も含め現在精査中であるが、今回も、この厳しい状況の中、たくさんの企業にご協力をいただいた。国公実態調査については、現在、精査中である。勧告時期については、現時点で確たることを申し上げられない。
○諸手当の見直しについては、現時点では承知していないが、仮に何らかの見直しを検討する場合、皆さんの意見を十分に聞く機会を設けたい。
○再任用職員の給与については、とくに手当の見直しについて毎年強い要望をいただいている事は認識している。

2.新型コロナウイルス感染症への対応について
 直近では、新型コロナウイルス感染症に係る予防接種(ワクチン接種)を受ける場合等の職務専念義務の取扱いについて定める人事院指令の発出などをはじめとして、この間の人事院のタイムリーな対応についてはその努力を多とする。一方で、感染拡大の収束の兆しが見えないなかで、各現場では、必死の奮闘が続いている。この間、人事院が講じてきた措置事項等について、各府省における対応状況等に問題が生じていないかを把握するとともに、適時適切に指導を行うことを改めて求めておく。

3.労働諸条件の改善について
(1) 労働時間の短縮及び休業制度等について
 ① 超過勤務の縮減に向けた取組は、2019年4月に施行された改正人事院規則のも とで3年度目に入っており、これまでの課題等を十分に整理した上で、必要な改善 が求められるが、
 ア とくに、客観的で厳格な勤務時間管理に関わって、具体的にどのように進めていくのか。
 イ 特例業務に関わって、現行の枠組みのもとで、事後的な要因の整理・分析・検証が義務付けられているだけでは、実際に超過勤務の縮減を進めることは困難ではないかと考えるが、人事院の認識如何。
 ウ これまでの各府省における「他律的業務の比重が高い部署」の指定状況について、人事院としての受け止めと各府省に対する指導状況如何。

これに対し、好岡審議官は以下の通り回答した。
 ア 本年3月31日に決定された令和3年度における人事管理運営方針において、各府  省等は、業務端末の使用時間の記録等を利用した勤務時間の状況の客観的把握を  原則として本年8月までに開始することとされており、人事院としても、勤務時間 制度の適正な運用をはかる観点から、必要な協力を行っていく。
 イ 人事院では、各府省の令和元年度の整理・分析及び検証の状況について報告を  受け、それを踏まえて担当課長が各府省人事担当課長等にヒアリングを行い、指 導助言を行ったところ。引き続き、制度の適切な運用に向けた各府省への指導・ 助言を行っていく。
ウ 他律部署の指定状況については、各府省において各部署の業務の状況を考慮し て指定が行われた結果と考えているが、指定の考え方や業務の状況を踏まえた指定 の見直しについて、引き続き、各府省に対する指導を行っていく。

 ② 不妊治療に関わっては、人事院が実施した「不妊治療と仕事の両立に係るアンケート調査」の結果も踏まえて、必要な取組を検討するとのことだが、現時点での検討状況について明らかにすること。是非、職員にとって利用しやすい仕組みとなるよう求めておく。
 ③ 改正育児・介護休業法の国家公務員の措置について、必要な法令改正について検討を進めていくとのことだが、現時点での検討状況について明らかにすること。公務員連絡会としては、公務において「休業中の就労」は認めないことをはじめ、関係人事院規則の整備を基本とし、交渉・協議、合意による措置を改めて求めておく。

これに対し、好岡審議官は以下の通り回答した。
 ② 不妊治療については、今後、アンケートの結果、自治体のヒアリング結果等を踏まえ、必要な取組について検討していく。その際、課題となる論点として、不妊治療に関する特別の措置を講じると不妊治療を受けていることを関係者などに伝えなければならないということや、アンケート結果を見ると、希望する治療の受け方については、一定期間仕事を休んで治療に専念するのではなく、勤務時間中でも必要な時に通院し治療を受けたいという希望が最も多くなっていること等があることから、これらを踏まえて検討を進めている。
 ③ 民間における育児介護休業法の改正においては、子の出生直後の時期における柔軟な育児休業の枠組みとしての出生時育児休業の創設、育児休業を取得しやすい勤務環境の整備の措置等の義務づけ、育児休業の分割取得等の措置を講じることとされ、そのうち、出生時育児休業については、労使協定を締結した場合に「休業中の就労」が可能とされている。この「休業中の就労」については、職員としての身分を保有するが職務に従事しないという国家公務員の育児休業の位置づけと相容れないことから国家公務員について措置することは困難というふうに考えている。

(2) 福利厚生施策の充実について
 パワー・ハラスメントの防止対策については、昨年6月に人事院規則が施行されて1年が経過するが、組合に対してパワハラの相談も寄せられており、実効性の確保が引き続き求められる。春季の職員福祉局長との交渉において、局長からは、「職場において具体的な問題があれば指摘いただきたい」との回答もあったところ。われわれとしても、職場における労働相談などを通じて「ハラスメントのない職場」をめざして取組を強化していくが、引き続き、人事院の役割が極めて重要になることから、その役割を着実に果たすこと。

 これに対し、好岡審議官は「パワー・ハラスメントの防止については、人事院としての役割をしっかりと果たしてまいりたい。」と回答した。

4.非常勤職員等の制度及び待遇改善について
 非常勤職員の給与決定指針の改正については、公務員連絡会として、長年にわたって求めてきたことであり、できるだけ早期に指針の改定を行っていただき、各府省における具体化に向けた対応を求めておく。
 非常勤職員の休暇制度については、この間、無給休暇の有給化を強く求め、人事院との間では、休暇制度全般等について検証等意見交換を行ってきたところであり、現時点における検討状況如何。

 これに対し、好岡審議官は「非常勤職員の休暇については、民間の状況等を注視して検討を行ってまいりたい。とくに、無給休暇の有給化等、かねてより強い要望をいただいていると認識している。」と回答した。

 また、各交渉委員からは、「育児・介護休業法が改正され、民間の有期雇用者における1年以上の在職期間といった取得要件が撤廃される。国家公務員においては人事院規則、地方公務員は条例で改正が必要。地方での条例改正のためにも人事院規則のできるだけ早い改正をお願いしたい。」、また、「非常勤職員の休暇について、民間との比較ということは理解するが、公務職場の中において常勤職員との格差があるということを十分に認識いただいて、前向きに改善の検討をお願いしたい。」と求め、好岡審議官は「いずれも、皆さんのご意見、ご要望についてはしっかりと受け止め、担当に伝える」と回答した。
 最後に、森永副事務局長が「新型コロナウイルス感染症の感染拡大は収束が見通せないもとで、現在も緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が発令されるなど、感染拡大防止と社会経済活動の両立は困難を極めている。このような状況において、全国の職場では、職員が感染症対策を含めて懸命の奮闘を続けており、その頑張りに応えるためにも、給与や勤務条件を適正に確保するという人事院の役割は、従前にもまして重要になってくる。本日の交渉では、現時点における人事院の検討状況を共有するに止まったが、28日に予定している給与局長、職員福祉局長との交渉では、公務員連絡会の要求に沿った具体的な回答を求めておく。」とし、本日の交渉を締めくくった。