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公務公共サービス労働組合協議会 公務員連絡会
2022年度 公務労協情報 No. 16

2022年春季要求事項で幹事クラスが内閣人事局と交渉-3/10

 公務員連絡会は3月10日、内閣人事局内閣審議官との交渉を実施し、中間的な回答を引き出した。公務員連絡会は、今後行う書記長クラスの交渉において、より具体的かつ前向きな回答を要求し、回答指定日に向けて交渉を積み上げていくこととした。

<内閣人事局内閣審議官交渉の経過>
 松本内閣審議官との交渉は、10時30分から行われた。
 冒頭、高柳副事務局長が中間的な回答を求めたのに対し、松本審議官は「先月22日に提出のあった要求書について、現時点における回答をさせていただく」と述べ、次の通り答えた。

1.2022年度賃金について
 国家公務員の給与改定に当たっては、国家公務員の給与を社会一般の情勢に適応させるとの原則の下、人事院勧告制度を尊重することが基本姿勢と考えている。
今後も、給与改定については、人事院勧告も踏まえ、国政全般の観点に立って総合的に検討を行った上で方針を決定してまいりたいと考えている。その際には、皆様とも十分に意見交換を行ってまいりたい。
なお、令和3年度の人事院勧告に基づく給与改定についても、同様の考えに基づき、人事院勧告を踏まえた給与法改正案を今国会に提出し、ご審議いただいているところである。

2.非常勤職員等の雇用、労働条件の改善について
 非常勤職員の処遇改善については、重要な課題であり、これまでも、各府省に対し必要な予算が確保されるよう働きかけを実施し、処遇の改善が図られてきたと認識している。
 今後とも、非常勤職員の給与等に係る具体的な基準を定める人事院と連携し、各府省における非常勤職員の処遇改善に向けた必要な予算確保がしっかりと行われるよう、適切に働きかけを実施してまいりたい。

3.新型コロナウイルス感染症への対応について
 「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」(令和2年3月28日新型コロナウイルス感染症対策本部決定)や都道府県の要請を踏まえ、人事院とも連携しながら、各府省に対しテレワークや時差通勤等の活用により、感染拡大防止に向けた取組を依頼してきたところ。引き続き、関係機関と連携しながら、適切に対応してまいりたい。
 また、ワクチン接種については、ワクチン接種する場合及び副反応が生じた場合に職務専念義務の免除を行えるよう、当局から働きかけた結果、昨年5月に人事院により措置がなされているところである。さらに、昨年夏に引き続き、当局が全体の調整を行い、国家公務員を対象とした職域でのワクチン接種に関して、3回目の追加接種についても開始したところである。

4.労働時間、休暇及び休業等について
 長時間労働の是正と職員のやりがい向上のため、各府省は、昨年1月に改正した「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」等に基づき、取組を行っているところである。具体的には、勤務時間管理について、各府省等において、勤務時間の状況の客観的把握を、本府省では原則として昨年8月までに開始しており、地方支分部局等についても、業務に応じた勤務形態の多様性に配慮しつつ、最も効果的な方法を遅滞なく措置するよう進めているところである。今後とも、勤務時間などの基準を定めている人事院と連携して超過勤務の縮減に取り組んでまいりたい。
 また、超過勤務手当予算について、令和4年度当初案において必要十分な額が措置されたものと承知しているが、予算があるからと超過勤務をさせてよいということではなく、既存業務の廃止・効率化をはじめとした働き方改革をしっかりと進めてまいりたい。特に管理職のマネジメントについては、研修の実施や人事評価で重点的に評価を行うことで徹底を図ってまいりたい。加えて、人事院で開催されている勤務時間制度等の在り方に関する研究会において、長時間労働是正に資する方策が取りまとめられるよう、当該研究会のオブザーバーである内閣人事局としても協力してまいりたい。
 なお、人手が足りないという部署については、なお不足する定員や、業務見直し・効率化やマネジメント改革を行うための定員を措置することとしている。

5.障害者雇用について
 「公務部門における障害者雇用に関する基本方針」に基づき、障害者の多様な任用形態を確保するとともに、障害者雇用マニュアルを作成するなど、障害のある職員が意欲と能力を発揮し、活躍できる環境の整備に取り組んできたところ。
 また、職場実習の実施や講習会の開催など、各府省における障害者雇用の推進に係る支援等に努めているところ。
 今後とも、関係機関と連携しながら、各府省において障害者雇用が適切に進むよう、取り組んでまいりたい。

6.女性公務員の労働権確立について
 男女双方のワークライフバランス及び女性職員の活躍推進については、女性活躍推進法及び令和2年12月閣議決定の「第5次男女共同参画基本計画」を踏まえ、「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」に基づき、女性の採用・登用の拡大、男性職員の育休取得促進等の取組を進めているところ。また、昨年の人事院の意見の申出に沿って、育児休業の取得回数制限を緩和するための国家公務員育児休業法等改正案を今国会に提出したところであり、これにより、男性職員の育休取得促進の効果も期待しているところである。
 引き続き、各府省の取組のフォローアップ等により、男女問わず全ての職員のワークライフバランスを実現し、女性活躍の動きを更に促進してまいりたい。

7.高齢者雇用施策について
 定年の段階的な引上げ期間中については、定年から65歳までの間の経過措置として現行の再任用制度と同様の制度を措置することとしたところであり、引き続き、適切に対応していきたい。
 また、令和5年度からの段階的な定年の引上げの円滑な運用が行われるよう、各府省の意見を聞きながら検討を行っているところであり、各府省における定年の段階的な引上げを見据えた計画的な取組を推進するため、来年度及び再来年度に重点的に取り組む事項等の指針を定める予定である。

8.福利厚生施策の充実について
 「国家公務員健康増進等基本計画」等に基づき、職員の能率増進のため、ハラスメントに関する研修・啓発の確実な実施や相談体制の整備等の取組を進めているところ。引き続き、各府省における基本計画の実施状況を把握し、必要な措置が講じられるよう取り組んでまいりたい。

9.公務員制度改革について
 これまで、勤務条件に関わる様々な課題について、ご意見を伺いつつ対応してきたところ、皆様とは、引き続き意見交換をさせていただきたいと考えているが、自律的労使関係制度については、多岐にわたる課題があり、慎重に検討する必要があると考えている。

 これに対して、高柳副事務局長は、次のとおり、改めて春季要求内容に対する認識を説明し、内閣人事局の見解を質した。

(1)2022年度賃金について、国公大臣に対する要求書提出時に武藤議長の方から申し上 げた通り、コロナ禍からの経済の回復は最重要課題であり、低迷する個人消費の拡大と、それを下支えする勤労者の賃金引上げが必要なことは明らかだと考えている。現在、民間春闘がヤマ場を迎えようとしているところであるが、おおよそ昨年ベースを上回る妥結水準で争われるものと思われる。
公務員賃金が、人事院勧告に基づいて決定されることは前提とするが、政府としても、このような認識をもってご対応いただきたい。
(2) 非常勤職員の処遇改善について、この間各種休暇など制度改善がさまざま図られているが、当該の職員に対する分かりやすい周知方法や、取得しやすい職場環境があってこそ、活用されるものと考える。よって、内閣人事局として、各府省の取り組み状況の把握や、指導・助言を行うべきと考えるが、認識如何。
 また、いわゆる「非常勤職員の給与に関する指針」が昨年7月に改正されたことも踏まえ、内閣人事局として、本年6月の一時金も含めて、各府省における期末・勤勉手当の支給実態の把握を行うべきと考えるが、認識如何。
(3) 労働時間、休暇及び休業等に関わって、2月28日に行われた人事院の研究会において、内閣人事局が提出された資料を拝読させていただいた。実際にどのような説明をされ、どのような質疑があったかは詳らかではないが、資料を見る限り、テレワークにしろ、勤務間インターバルにしろ、我々と大きな問題意識の差はないように感じたところである。その上で、何点か指摘したい。
①政府や人事院、あるいは私どもの調査結果からしても、本府省を中心に、上限を超える超過勤務の実態があり、「サービス残業」もある。「働く時間」や「働く場所」に柔軟性を持たせるためには、まずはこのような現状を改善することが前提である。政府として、一層の、具体的な超勤縮減策を講じられたい。
②各職場から上がってくる声として、職員が十分な休息が取れない、テレワークやフレックスタイムをうまく活用できない大きな理由が「職場の人員不足」である。頻発する大規模災害等も想定した、余裕ある人員配置に政府として取り組むべきである。
 その上で、お伺いしたいのは、28日の資料に基づけば、「テレワークに必要な費用の公費負担」や「職務専念義務の柔軟化・明確化」など、内閣人事局として「検討すべき課題」と認識していると理解してよいか。また、「使い勝手の良いフレックスタイム制度への見直し」や「柔軟な制度設計のもとでの勤務間インターバルの導入」についても、「十分にあり得る」と考えていると理解してよいか。
(4) 高齢者雇用施策に関わって、来年4月からの定年の段階的引き上げを前に、各府省における意向調査などが行われ、また役職定年となる職員の具体的な職務のあり方など、職場環境の整備に向けた作業が今後行われるものと考える。制度の円滑な実施に向けて、特に役職定年制の課題など、各府省任せにするのではなく、内閣人事局として、本府省のみならず地方支分部局も含めて、各府省の取り組み状況を把握し、指導を行うことが必要と考えるが、認識如何。
(5) 要求書そのものには明記していないが、人事評価制度について、内閣人事局において、人事評価マニュアルの改正等の検討が行われているものと承知している。3月末がひとつの作業の目安であったものと理解しているが、この点について、現状をご教示いただきたい。

 これらに対して、松本内閣審議官は、次のとおり回答した。
(1) 国家公務員の給与改定に当たっては、国家公務員の給与を社会一般の情勢に適応させるとの原則の下、人事院勧告制度を尊重することが基本姿勢である。民間の情勢を反映して給与を決めるということについては定着をしてきていると認識しており、民間給与の引上げを期待しているところである。給与改定については、人事院勧告も踏まえ、国政全般の観点に立って総合的に検討を行った上で方針を決定してまいりたいと考えている。その際には、皆様方とも十分に意見交換を行ってまいりたい。
(2) 非常勤職員の処遇改善について、内閣人事局としても、各種休暇に関する制度が十分周知され、利用しやすい職場環境が整備されるよう状況を注視してまいりたい。
 また、人事院による指針の改正部分の取組状況については、必要に応じて人事院においてフォローアップがなされるものと認識しているが、各府省の非常勤職員について適切な処遇が確保されるよう、内閣人事局としても、人事院と必要な連携をしてまいりたい。
(3) 労働時間、休暇、休業について、長時間労働の是正に向けて、職員の配置だけでなく、業務の見直し等について検討をしていきたい。人事院の研究会において、内閣人事局としても、テレワークに必要な費用の公費負担や、テレワーク勤務中における職務専念義務の解釈について問題意識を持っていることから問題提起したものである。また、フレックスタイム制度、勤務間インターバルについて、職員の健康を重視するという点は、皆さんの意識と大きく違いはない。人事院の研究会における検討が進むよう期待するとともに、内閣人事局としても検討をしていきたい。
(4) 定年の引上げについて、ご指摘のとおり役職定年となる職員にどのような仕事をしてもらうのかという点が重要であり、そのような職員に能力、経験を生かして働いていただくことが重要である。各府省において、取組状況に差があるところだが、地方支分部局を含めて検討が進むよう取組を支援してまいりたい。皆さんの方からも働きかけを行っていただければと思う。
(5) マニュアルの見直し等については、鋭意作業を進めているところである。

 最後に、高柳副事務局長は、「回答は承った。本日段階の回答として受け止めたい」と述べ、交渉を終えた。