TOP 公務労協情報 人事院と民調作業方針をめぐって交渉
公務公共サービス労働組合協議会 公務員連絡会
2023年度 公務労協情報 No. 18

人事院と民調作業方針をめぐって交渉

 人事院は、本年の民間給与実態調査に関する方針が固まったとして、賃金・労働条件専門委員会にその骨格を示した。
 冒頭、早乙女職員団体審議官付参事官は以下のとおり基本的な骨格を明らかにした。

1.調査期間
 4月24日(月)から開始し、6月16日(金)までの54日間
 企業担当者にできる限り調査にご協力頂けるよう、前年と同様に、早期に調査を開始した上で、調査期間も昨年と同程度に設定した。
2.調査対象事業所
 昨年と同様に、国・地方の公務、外国政府、国際機関等を除く民間の全ての産業の中で、企業規模50人以上でかつ事業所規模50人以上の事業所数約58,800所(昨年約54,900所)のうちから、層化無作為抽出法により抽出した約11,900所(昨年約11,800所)である。本調査においては、4年ぶりに病院を調査対象とすることとした。
3.調査の方法
 人事院と、47都道府県、20政令指定都市、特別区及び和歌山市の69人事委員会が分担して実施する。調査員による実地調査を基本としつつ、必要に応じて対面によらない方法、具体的には、郵送や電子メール、オンラインによる調査等も活用する。調査員は約1,100人である。
4.調査のカバレッジ(網羅率)
 今年の調査対象事業所を抽出する基礎となっている全国の母集団事業所約58,800事業所についてみると、平成28年経済センサス-活動調査(総務省調査)における、従業員数(正社員)の占める割合は、6割(65.6%)を超えている。
5.調査の内容
 事業所単位で行う調査事項について、具体的には、①賞与及び臨時給与の支給総額と毎月きまって支給する給与の支給総額、②本年の給与改定等の状況(ベース改定の状況、定期昇給の状況、賞与の支給状況等)、③諸手当の支給状況(家族手当の支給状況、在宅勤務関連手当の支給状況、通勤手当の状況等)、④高齢者雇用施策の状況(一定年齢到達時に常勤従業員の給与を減額する仕組み等)、について調査する。
 調査内容は、基本的には例年と同様であるが、昨年の調査と異なっている主な点は、新幹線又は在来線の特急利用者に対する「通勤手当の支給状況」について調査することとしたこと。通勤手当の手当額については、これまで民間の同種手当の支給状況との均衡を図ることを基本として改定を行ってきている。近年、新幹線等の鉄道網の整備が進むとともに、勤務地を異にして異動する場合でも単身赴任を選択することが困難な事情等を有する職員が増えるなど、新幹線等による遠距離通勤のニーズが高まっており、民間企業における支給状況を把握するために調査することとした。
 従業員別に行う調査については、例年と変わりなく、調査事項は、4月分の初任給月額を調査するとともに、月例給の民間との比較の基礎として、役職、年齢、学歴等従業員の属性とその4月分所定内給与月額、すなわち4月分のきまって支給する給与総額とそのうちの時間外手当額、通勤手当額を調査する。調査職種は76、そのうち初任給関係が18で、昨年に比べて医療関係職種分が増えている。これらの職種について職種分類を行い、調査職種別に給与を調べることになる。
 調査の概要については以上のとおりである。

 これに対し、高柳副事務局長は次のとおり人事院の見解を質した。

1.今回の調査では、新幹線や特急電車の利用に関わる通勤手当の状況を調査するとのこと。我々としては、この間一貫して新幹線通勤を始め通勤手当の改善を求めてきたところであり、調査結果にも拠るとは思うが、本年勧告における前向きな対応を予め求めておきたい。

2.在宅勤務等手当については、人事院において制度概要に関する検討が続けられているものと承知しているが、様々な課題があるので、引き続き、我々に対する早めの情報提供と、我々との十分な協議を求めておきたい。

3.今回の調査で医療関係職種に関する調査が2019年以来4年ぶりに復活する形になると思うが、これに関わって3点確認したい。
(1)従前、病院関係職種については、医師、看護師、放射線技師など22職種が調査対象であったものと承知している。今回、対象職種が昨年の総計54職種から76職種に増加するということは、この22職種がそのまま復活するという理解でよいか。
(2)また従前の調査では、22職種のうち、初任給関係職種の調査として準新卒医師や準新卒看護師など6職種、医療職場関連職種の調査として病院長、副院長など16職種であったと思うが、それで相違ないか。
(3)調査後の作業に関わって、かつてと同様、医療関係の職種は民調の調査対象職種であるが、月例給の官民比較は、国の行(一)対象職種と民間の事務・技術系関係職種との間で行っており、比較対象外であると理解してよいか。

これに対し、早乙女参事官は、以下の通り答えた。

1.新幹線通勤を始め通勤手当の改善要求があることは承知している。調査をしっかりと行い分析をしてまいりたい。ご意見として受け止めてさせていただく。
2.在宅勤務手当は新しく検討を行っている手当であり、連絡会の皆さまとも十分に情報交換をしながら進めてまいりたい。
3.(1)その理解で相違ない。
  (2)その理解で相違ない。
  (3)その理解で相違ない。

 また、専門委員からは、通勤手当について「新幹線等を利用した通勤に加え、交通用具利用者に対して支給する手当の妥当性についても、しっかりと調査を行っていただきたい」「新幹線等の通勤手当については過去に同じような調査をしたことがあるか」といった質問、要望が出され、早乙女参事官は「交通用具利用者に対する手当については令和2年度に調査をしており、今回は調査対象から外している。ご意見として受け止めさせていただき、担当には伝えたい。また、令和2年度の調査において新幹線等の通勤手当については調査をしている。情勢等の変化に応じて今回は調査項目に入れさせていただいた」と回答した。
 最後に高柳副事務局長が「基本的には例年通りの内容だと理解する。調査の過程で何か新たな課題が起きた場合などは直ちに我々に情報提供願いたい」と述べ、この日の交渉を終えた。