2025年春季要求事項で幹事クラスが内閣人事局と交渉-3/3
公務員連絡会は3月3日、内閣人事局内閣審議官と交渉を実施し、中間的な回答を引き出した。公務員連絡会は、今後行う書記長クラスの交渉において、より具体的かつ前向きな回答を要求し、回答指定日に向けて交渉を積み上げていくこととした。
<内閣人事局内閣審議官交渉の経過>
砂山内閣審議官との交渉は、3月3日14時00分から行われた。
冒頭、高柳副事務局長が中間的な回答を求めたのに対し、砂山内閣審議官は「先月17日に提出された要求書について、現時点における回答をさせていただく」と述べ、次のとおり答えた。
1.2025年度賃金について
国家公務員の給与改定に当たっては、国家公務員の適正な処遇の確保や、国民の理解を得る観点からも、また、労働基本権制約の代償措置といった観点からも、第三者機関としての人事院が専門的見地から行った官民比較に基づく人事院勧告を尊重することが政府としての基本姿勢である。
今後も、諸情勢を踏まえつつ、対応していく。
2.非常勤職員等の雇用、労働条件の改善について
給与については、人事院において、常勤職員との均衡をより一層確保することを目的として、一昨年4月に非常勤職員の給与に関する指針を改正し、給与法等の改正により常勤職員の給与が改定された場合には、非常勤職員の給与についても、常勤職員に準じて改定するよう努める旨を追加し、この指針に沿った適切な給与支給が行われるよう、各府省を指導していくものと承知している。
なお、給与の遡及改定については、昨年12月に人事院と内閣人事局から改めて周知を図ったところ。
また、非常勤職員の任用については、人事院において、各府省や職員団体の意見等も踏まえながら、制度官庁と協議をした上、各府省における円滑な運用に資するよう「期間業務職員の採用等に関するQ&A」を昨年11月に作成したと承知している。
内閣人事局としては、まずは各府省の運用を注視しつつ、必要に応じて対応を検討してまいりたい。
非常勤の両立支援制度については、昨年の国家公務員の育児休業等に関する法律の改正により、育児時間について、新たな選択肢を追加し、対象となる子の範囲を拡大するとともに介護休暇等の取得要件の緩和などの制度改正を行うなど、着実に整備を進めてきているところである。
引き続き、人事院とも連携し、各府省に対して、非常勤職員に関する給与や休暇等の制度の適切な運用を促してまいりたい。
非常勤職員制度については、非常勤職員には様々な勤務形態や類型があることから、一律に検討することは困難と考えられるが、目下人事院において、各府省の実態等を把握しつつ、その適切な運用の在り方等について検討を行っているものと承知している。内閣人事局としては、人事院における検討を踏まえ、適切に対応してまいりたい。
3.労働時間、休暇及び休業等について
超過勤務の縮減のため、各府省等は、「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」等に基づき、業務の廃止・効率化、デジタル化、マネジメント改革推進のための取組等を進めている。今後とも、勤務時間などの基準を定めている人事院と連携して超過勤務の縮減に取り組んでまいりたい。
各府省共通の勤務時間管理システムについては、令和8年度末までに必要な整備を行えるようデジタル庁及び人事院と連携して検討・作業を進めているところ。
「デジタル社会の実現に向けた重点計画」に基づく人事管理システムの進捗状況の情報提供については、ご意見として承った。
定員管理については、国民のニーズを踏まえて、新たな行政需要に的確に対応していくためには、既存の業務を不断に見直し、定員の再配置を推進していくことが重要である。
その上で、新たな行政課題や既存業務の増大に対応するため、各府省官房等から現場の実情を聴取しつつ必要な行政分野に必要な増員を行っているところ。
引き続き、既存業務の見直しに積極的に取り組みながら、内閣の重要政策に適切に対応できる体制の構築を図ってまいりたい。
柔軟な働き方の推進については、職員の希望や事情に応じた時間や場所での勤務を可能にすることが重要であると考えている。そのため、フレックスタイム制の更なる柔軟化を含め、テレワークやフレックスタイム制を推進するに当たり、これらの制度の周知や、各職場において個々の職員を尊重した働き方を実現する雰囲気の醸成に取り組んでまいりたい。
公務における勤務間のインターバル確保については、昨年3月に人事院から目安となる時間や確保に係る取組例等を示した通知が発出されたところ。
内閣人事局としても、人事院と連携し、各職場の実情も踏まえて取り組みを行ってまいりたい。
4.障害者雇用について
人事院が策定した合理的配慮に関する指針等を踏まえ、「公務部門における障害者雇用マニュアル」を昨年1月に改訂するなど、環境の整備に引き続き取り組むとともに、各府省における障害者雇用の取組を支援してまいりたい。
5.女性参画の推進及び多様性の確保について
女性の採用・登用の推進については、各府省の取組を毎年度フォローアップするとともに、女性の国家公務員志望者拡大に資する戦略的広報の実施、若手からのキャリア形成支援、管理職の意識改革などに取り組んでいるところであり、引き続き、各府省の取組を促進させるようなサポートを行い、女性活躍の動きを更に加速してまいりたい。
多様性の確保については、平成28年以降、各府省等の人事担当者等を含む全職員を対象とした勉強会等を開催し、国家公務員の性的指向・ジェンダーアイデンティティの多様性に関する理解の促進に取り組んでいるところ。
今後も全ての職員が働きづらさや不安を感じることなく、安心して働き続けることができる職場にしていくよう取り組んでまいりたい。
6.定年の段階的引上げに伴う各種施策について
定員管理について、定年引上げ期間中においては、令和6年度から2年に1度、定年退職者が発生しないことによる新規採用への影響を緩和するための措置を行うこととしており、令和6年度は、特例的な定員を1年間の期限付の定員として1,829人措置することとした。
令和8年度についても、各府省等の状況を踏まえ、必要な対応を行ってまいりたい。
また、令和4年3月に策定した「国家公務員の定年引上げに向けた取組指針」において、定年の段階的な引上げ期間中に、定年退職者が再任用を希望する場合には、平成25年の閣議決定に準じて、当該職員を公的年金の支給開始年齢に達するまでの間、再任用するものとしており、各任命権者を含め、政府全体で適切に対応してまいりたい。
7.福利厚生施策の充実と働きやすい職場づくりについて
内閣人事局としては、各府省の取組を補完するため、パワー・ハラスメントを含むハラスメント防止講習を提供しているところ。なお、ハラスメント防止に関する研修は管理職員、課長補佐、係長に加え、幹部職員、課長等への昇任時にも受講を必修としている。
また、「国家公務員健康増進等基本計画」では、各府省における相談窓口の実施状況や利便性等をフォローアップすることとしており、この結果を踏まえ、各府省の取組を支援してまいりたい。
8.公務員制度改革について
昨年6月のILO総会で採択された議長集約も踏まえ、昨年12月に使用者団体、労働者団体及び政府の三者での意見交換会を開催したところ。
自律的労使関係制度については、多岐にわたる課題があることから、引き続き皆様と誠実に意見交換しつつ、慎重に検討してまいりたい。
これらの回答に対し、高柳副事務局長は次のとおり内閣人事局の見解を質した。
1.2025年度賃金について
まず、ただ今、「第三者機関としての人事院が専門的見地から行った官民比較に基づく人事院勧告を尊重することが政府としての基本姿勢」との回答があった。国会の情勢は若干不安定な状況にあるが、公務員賃金が駆け引きの道具とされることのないよう、その姿勢を堅持していただくことを、改めてお願いしておきたい。私どもとしても、注意深く見守り、必要な対応を図って参りたい。
その上で、本年の連合春闘であるが、いわゆる集中回答日は来週であるが、少なくとも現時点では、大手を中心に一定の水準以上の成果も見込めるのではないか、という状況にある。一方、この間課題となっている中小の賃上げであるが、「価格転嫁が出来ている企業ほど賃上げ率も高い」との調査結果もあり、それぞれ奮闘中である。政府としても是非注視していただきたい。
一方、昨年末の基本要求の際にも紹介した、最新の私どもの組合員意識調査であるが(国公・一般行政職の回答者=5,000人強)、「昨年の今ごろと比べた生活」について、2022年から急速に悪化し、「苦しくなった」と回答した組合員が、この3年間一貫して4割を超えている状況である。実質賃金の低下が続いていることが影響しているのは明らかだと考える。「今後も、諸情勢を踏まえつつ、対応」との回答であったが、政府におかれては、このような実情も十分にご認識いただきたい。
2.非常勤職員等の雇用、労働条件の改善について
非常勤職員について、ご回答にあった通り、賃金関係、雇用関係、そして両立支援制度などについても、この間改善が図られていることは承知しており、内閣人事局としてもご努力いただいていることについては、労を多としたいと考える。
その上で、給与の遡及改定について、「昨年12月に人事院と内閣人事局から改めて周知を図ったところ」とのことだが、昨年同様、人事院・内閣人事局として各府省に対するフォローアップ調査が行われるものと理解して良いか。
また、全般的な非常勤職員制度のあり方について、「非常勤職員には様々な勤務形態や類型があることから、一律に検討することは困難」とのことだが、問題となるのは、委員・顧問・参与等ではなく、いわゆる労働者性のある非常勤職員である。内閣人事局のデータによれば、国家公務員については、常勤職員に対する非常勤職員の比率が約60%となっているものと承知しているが、これは同じく約27%の地方公務員に比しても、相当に高いと考える必要がある。また以前にもお示しした通り、現在の国公職場における非常勤職員の位置づけはかつてとは大きく異なっている。
社会的にも一定以上注目されている問題であり、人事院とともに、人事行政に責任を持つ立場として、改めて実態の把握と制度の検証を行うことを要望しておく。
3.労働時間、休暇及び休業等について
昨年の人事院の調査によれば、2023年度の上限超え超過勤務者は、全体として前年度プラスの状態となっており、改善が見られない。内閣人事局としても、様々工夫されているとは思うが、なお一層の努力をお願いしておきたい。
2025年度機構・定員の審査結果について、超過勤務縮減のための定員が、昨年措置したものに加え、プラス100人を措置し、合計200人が配置される予定であること、ワークライフバランス推進のための定員が352人措置される予定であることについては評価をしたい。ただし、定員全体を見ると、引き続き府省間に増減のバラツキがあるように見受けられる。ゆとりのある職場づくり、国民に対する十分な公務・公共サービスの提供という観点から、必要な人員確保を行うよう求めておきたい。
4.定年の段階的引上げに伴う各種施策について
定年の段階的引上げが開始された中で、定年前短時間再任用職員について、いずれの府省とも、それを希望する職員が極めて少数にとどまっている実態があるものと承知している。今回の給与制度のアップデートに伴う措置によって手当部分は多く改善されることになるが、私どもには、多くの組合員から、一時金の水準を始めとした、再任用職員の処遇に対する不満の声が寄せられていることを報告しておきたい。また、先ほど申し上げた組合員意識調査では、国家公務員の場合、既に60歳を超えている者、これから60歳を迎える者のいずれとも、「勤務地に関する希望が考慮されない」ことに対する不満あるいは不安が大きいことも申し上げておきたい。
要求書に記載した通り、再任用を希望する職員について、2013年の閣議決定等に基づき、フルタイムを基本とし、職員の希望に応じた再任用を実現するようお願いしておきたい。
5.福利厚生施策の充実と働きやすい職場づくりについて
パワハラについて、みたび、組合員意識調査の結果であるが、クロス集計をしてみると、一般事務職について、超過勤務時間が長くなるほど、また、超過勤務手当の不払いがある職場では、パワハラがより多く発生しているという結果となった。長時間労働や手当の不払いが存在するような職場は、パワハラを始め、「無理」が横行してしまう職場である可能性がある。その点では、パワハラの発生は職場環境の劣化の一つの表れと言える。
この間指摘している、公務職場のブラックイメージの払しょくの一環として、パワハラが発生する職場要因の分析と、対策の検討も必要であると考える。
これに対し、砂山内閣審議官が「非常勤職員の給与の遡及改定の各府省に対するフォローアップについては、現在調査中である」と回答したのに対し、高柳副事務局長は「フォローアップの結果については集計後、公務員連絡会に提供いただけるのか」と更に見解を質した。
これに対し、砂山内閣審議官は「フォローアップの結果については、公表予定はないが、各府省及び職員団体には共有する方向で検討している」と回答した。
また、交渉委員からは、「一昨年、昨年の賃上げ基調の中で、中堅・高齢層職員への配分が課題となり、士気やモチベーションの低下を招いている。若年層にも将来展望のない職場と映っており、この配分問題は公務だけでなく、連合でも2025春闘の課題とされている。バランスの取れた賃金のあり方について、政府としても考えていただきたい」「職場では、超勤の増加や若手職員の離職、女性の昇進機会の制約といった課題が発生している。現場の魅力を次世代に引き継ぐためにも、合理化目標ありきではなく、実態に即した定員措置をお願いする」「両立支援やワークライフバランスの推進には、人員不足が課題である。制度が整っても、補充要員がいなければ活用は困難である。公務の魅力を発信するためにも、両立支援をリードできるよう増員を含めた対応をお願いする」「職場によっては再任用職員が多く、定年前職員と同様の業務を担っている。しかし、処遇面では大きな差があり、定年前職員とのバランスの取れた対応をお願いする」等の意見があった。
これに対し、砂山内閣審議官は「賃金については、若手だけでなく中堅層も含め、公務全体のパフォーマンス向上が重要である。財源に限りがある中、民間との競争を考慮しつつ、バランスの取れた賃金体系が重要と認識しているが、人事院勧告を尊重するという基本方針の下、適切に対応してまいりたい。また、定員の問題よりも実員確保が課題であり、優秀な人材の確保と離職防止が重要である。定年引上げも進む中、高齢職員が生き生きと働ける環境整備も必要だと認識している。職員団体とも協力し、働きやすい職場づくりに努めたいと考えている」と答えた。
最後に、高柳副事務局長が「ご回答は承った。本日段階のご回答として受け止めたい。本日のやり取りを踏まえ、12日の政策統括官との交渉において、再度不明な点を質すとともに、私どもの意見を述べさせていただきたい」と述べ、交渉を締めくくった。