TOP 公務労協情報 月例給の較差はプラス、俸給表全体の改定へ
一時金についても引上げの見通し
-人事院給与局長と2回目の交渉を実施-
公務公共サービス労働組合協議会 公務員連絡会
2023年度 公務労協情報 No. 26

月例給の較差はプラス、俸給表全体の改定へ
一時金についても引上げの見通し
-人事院給与局長と2回目の交渉を実施-

 公務員連絡会書記長クラス交渉委員は、1日13時30分から、2023年人勧期要求に関わり佐々木人事院給与局長と2回目の交渉を行った。
 冒頭、森永事務局長が「前回7月26日の交渉で局長からは、個々の産業や企業によって区々な状況にある中、決して楽観できないこと、最終的にどのような結果になるかという点については厳しい認識を持って臨んでいること、そのような状況のもと、仮に改定を行う場合は、人材確保の観点から、初任給にかなりの重点を置く必要があると現時点では考えていることが明らかにされた。私からは、次回の交渉において、月例給の較差、一時金の状況を明らかにすること、今年の要求は、あくまで『全職員に対する月例給の引上げ勧告』であることを強く主張し、われわれが納得できる回答を行うことを強く求めておいた。前回の交渉を踏まえた現段階の検討状況を回答されたい」と求めたのに対し、給与局長は以下のとおり答えた。

1 勧告について
勧告日は、来週前半で調整中である。具体的な日程は、総裁会見の際にお伝えすることができると思う。
2 官民較差等について
(1) 官民較差と月例給について
官民較差については、現在、最終的な詰めを行っているところであるが、今年の民間企業の春季賃金改定状況を反映して、プラスとなる見通しである。
(2) 特別給について
特別給についても、現在、最終的な集計を行っているところであるが、支給月数が引上げとなる見通しである。
支給月数の引上げがある場合には、期末手当及び勤勉手当に配分することを考えている。
令和5年度については、6月期は既に支給済みであるため、12月期に配分することとし、令和6年度以降については、6月期と12月期が同じ月数となるよう配分することを考えている。
3 本年の改定の考え方について
仮に、官民較差を埋めるため、引上げ改定が必要となった場合には、基本的な給与である俸給の引上げを行うことを考えているが、その場合、人材確保の観点等を踏まえ、初任給について相応の額の引上げを行うとともに、若年層に重点を置きつつ俸給表全体の改定を行いたいと考えている。
4 その他の取組みについて
社会と公務の変化に応じた給与制度の整備については、職員団体をはじめ幅広く関係者の意見を伺ってきたが、令和6年に向けて措置を検討する事項の骨格を本年勧告時に示すこととしている。
この骨格は、①人材確保への対応として、新規学卒者、若手・中堅職員の処遇や民間人材等の処遇、②組織パフォーマンスの向上として、役割や活躍に応じた処遇や円滑な配置等への対応、③働き方やライフスタイルの多様化への対応として、扶養手当の見直しやテレワーク関連手当の新設など、3つの課題に沿って整理している。
このうち、テレワーク関連手当については、在宅勤務等を中心とした働き方をする職員の光熱・水道費等の費用負担が特に大きいことを考慮し、その費用負担を軽減するため、当該職員を対象とした在宅勤務等手当を新設することとし、先行的に本年勧告を行うこととする。手当額は民間の同種手当の支給状況等を踏まえた額とする。なお、在宅勤務等手当の新設に伴い通勤手当の取扱いについてあわせて措置する。
来年に向けて、引き続き職員団体の意見も聞きながら、給与制度のアップデートに向けて一体的に取り組むこととしたい。

 回答に対し、森永事務局長は、「勧告日の具体的な日程については、総裁との回答交渉に委ねる」とした上で、次のとおり局長の見解を質した。
(1) 官民較差についてはプラスになる見通しのことだが、改めて、本年の民間実態についての認識如何。
(2) 国公実態について、前回の回答で平均年齢が0.3歳下がって42.4歳となったとのことだが、諸手当の変動を含めた平均給与額はどうなっているか。
(3) 配分については別途議論させてもらうこととするが、民間との初任給格差の解消が大きな焦点の一つであると認識している。本年の民間における初任給の改定状況如何。
(4) 昨年の勧告後において、大学卒で約3,000円、高校卒で約4,000円、公務が民間を下回る状況となっていた。本年の勧告において、初任給の官民格差は解消できたのか。また、解消を図るための相応の額とはどの程度の額なのか。
 
 これに対し、給与局長は次のとおり回答した。
(1) 官民較差については公務の人員構成、給与水準と民間の給与水準等様々な要素があり、その結果となるが、本年の民間の状況については定昇分を含む賃上げ率が約30年ぶりの高水準と言われており、その中でも個々の産業や企業によって区々な状況であると認識している。
(2) 行(一)の平均給与月額については404,015円であり、昨年に比べて1,034円減である。職員構成の変化により俸給が減少しているほか、扶養手当が引き続き減、住居手当は引き続き増と増減あるものの全体しては減となっている。
(3) 初任給の改定状況については、初任給について前年に比べて増額した事業所の割合については大卒で55.7%(前年32.9%)、高卒で62.5%(前年38.4%)となっており、初任給の引上げを実施した事業所の割合が昨年に比べて大きく増加している状況である。
(4) 公務と民間の初任給の差について、昨年の勧告後においても解消しきれていない状況である。特に地方において差が大きい。相応の額の引上げを行った場合は、全国平均でみれば、大卒高卒ともに民間水準を上回ることになると考えているが、地域手当の非支給地域においては依然として差が残る状況だと認識している。

 回答を受けて、森永事務局長は、「初任給の官民格差の解消については、われわれも問題意識を持って臨んでおり、本年の勧告期要求としても取り上げていた立場からすれば評価するが、今年のわれわれの要求は全職員の月例給の引上げ勧告だ」と指摘した上で、さらに局長の見解を質した。

(5) 前回の局長との交渉を踏まえて、われわれとしては中高年層にどこまでどの程度の配分ができるのかできないのかという強い危機感をもって臨んできた。先ほどの回答では、仮に、引上げ改定が必要となった場合は若年層に重点を置きつつ俸給表全体の改定を行いたいと考えているとのことだったが、全職員の月例給の引上げ勧告が行われるということで良いか。当然のこととして、再任用職員も含むと理解して良いか。
(6) 全職員の月例給の引上げ勧告が行われることについて、中高年層に一定の配慮を行ったものと我々としては認識するが人事院の認識如何。
(7) 問題は、どの程度の引上げとなるかである。官民較差や初任給を取り巻く情勢も大きく異なる状況ではあるが、直近で俸給表全体の改定を行ったのが、2014年が最低引上げ額200円、2015年が1,100円、2016年から2018年は400円であった。今年の改定の規模感を明らかにしてほしい。

 これに対し、給与局長は次のとおり回答した。
(5) 再任用職員を含め認識のとおりである。
(6) 全級、全号俸の引上げについて、職員団体の極めて強い要望があったということを認識をしたうえで改定を行いたいと考えている。
(7) その時々の官民較差や初任給といった取り巻く状況が大きく違う中において、必ずしも過去の改定の状況が直接参考になる訳では無いが、皆さんの強い要望がある中で検討をしているところである。

 交渉委員からは、「公共サービスの質と体制を維持するためにも中高齢層職員のこれまでの経験等を引き継ぐことも極めて重要であり、中高齢層への光の当て方というところが大事になっている。ぜひ具体的な措置を図っていただきたい」「組織のパフォーマンスを上げていくということからすれば、全世代への俸給の引上げは必要不可欠だ」との発言があり、給与局長は「強い要望として受け止めたい」と答えた。
 
 森永事務局長は、「今年の給与改定にあたっては、初任給の相応の引上げと若年層重点というもとで、中高年層の引上げ幅については極めて厳しいことは認識するが、物価上昇の局面で、少しでも生活改善に資するような改定となるよう強く求めておく」とした上で、続いて一時金について、次のとおり局長の見解を質した。
(1) 支給月数が引上げとなる見込みとのことだが、引き上げられる支給月数はどの程度のものか。
(2) この間、引下げの際は期末手当、引上げの際は勤勉手当で措置されているが、本年の民間における考課査定割合の状況如何。
(3) 再任用職員の支給月数の引上げはどのようになるのか。

 これに対し、給与局長は次のとおり回答した。
(1) 総裁の最終回答の際にお答えさせていただきたい。
(2) 民間における考課査定割合については、昨年と同程度の状況である。公務における特別給に占める勤勉手当の割合が45.5%であり、民間の賞与に占める考課査定分と概ね均衡している状況であると認識している。
(3) 再任用職員の支給月数については、定年前職員の期末勤勉手当との比率を基本として改定を行っている。例えば、定年前の職員が0.05月または0.1月引上げの場合は再任用職員は0.05月、定年前職員が0.15月上がると再任用職員は0.1月上がる計算になるので、それに従って行ってまいりたい。

 次に、森永事務局長は、前回の議論も踏まえて、「社会と公務の変化に応じた給与制度の整備」について、勧告時に表明する骨格案を明らかにするよう求めたのに対し、給与局長は次のとおり回答した。
(1) 3つの大きな観点がある。①人材の確保②組織パフォーマンスの向上③働き方やライフスタイルの多様化への対応。以上、3つに整理している。
①人材の確保について、問題意識の一つは初任給の措置。初任給の水準が地方によって民間を下回る状況である。また、近年では総合職の大卒と一般職の大卒との差が縮んでいる。そのような状況を踏まえて、初任給近辺の級、号俸を中心に俸給月額の引き上げを行うことによって、一般職(大卒・高卒)は民間並みの水準を確保し、総合職は一般職との一定の差を確保したい。
 採用後の給与上昇の関係については、若手、中堅優秀者について30代にかけて給与の伸びが鈍る傾向にある。また、20代後半から30代の給与満足度が低い。これらを踏まえて、係長から上席の補佐層(3級~7級)を対象とする最低水準の引上げを行いたい。これによって若手、中堅の優秀者の水準の引き上げを図る。また、勤勉手当の「特に優秀」区分の成績率の上限を引上げることによって、特に高い成果を挙げた者に、より高水準のボーナス支給を可能にする。
 ミッドキャリア人材、民間人材の確保の対応としては、採用時の俸給の見直しとして係長から上席の補佐層(3級~7級)を対象とする最低水準の引上げを行う。高度専門人材の確保にあたって、年収水準にさらに競争力が必要との指摘があり、特定任期付職員のボーナスを拡充することで、年収水準の引上げを可能にしたい。また、通勤手当(新幹線通勤)、単身赴任手当を採用時から支給できるようにしていく。
②組織パフォーマンスの向上について、役割や活躍に応じた処遇の観点から係長から上席の補佐層(3級~7級)を対象とする最低水準の引上げ、勤勉手当の「特に優秀」区分の成績率の上限の引上げを行いたい。また、本省課室長級について各級最低水準を引上げ級間の水準の重なりを解消したい。その上で号俸を大括り化し成績優秀の場合にのみ昇級する仕組みとしたい。また、地方の管理職も含め、緊急対応等で深夜に及ぶ超過勤務を相当程度行う実態もあることから、平日深夜に係る管理職員特別勤務手当の支給対象時間帯の拡大や支給要件の明確化をしたい。
 円滑な配置等への対応として地域手当について、市町村単位で細かく水準差が生じており不均衡であるとの指摘があることから級地区分設定を広域化するなど大括り化な調整方法に見直しを行いたい。また新幹線通勤による通勤手当について、職員の異動に当たっての新幹線通勤のニーズの高まりを受けて手当額の見直しを検討課題としている。再任用職員の給与について、近年、公務上の必要性により転居を伴う異動を余儀なくされる再任用職員が増加していることを踏まえ、再任用職員の支給される手当の範囲を拡大したい。
③働き方やライフスタイルの多様化への対応について、公務の中で配偶者に係る扶養手当を受給する職員の割合、民間の配偶者に対し家族手当を支給する事業所の割合が減少傾向にある中で、配偶者等にかかる手当を見直して生じる原資を用いて子にかかる手当を増額する検討を行いたい。またテレワークが拡大している状況において、テレワーク関連手当を新設することとし、先行的に本年勧告を行うこととしている。通勤手当(新幹線通勤)、単身赴任手当についても試験採用の者を含めて採用時からニーズが発生していることもあり「採用」の場合も含むよう拡大を検討したい。

 回答に対し、森永事務局長は、次のとおり見解を質した。
(1) 措置内容如何によっては、職員の年代、勤務地、家族構成など個々の実情によって大きく影響を及ぼすものとなることから、組合員の理解と納得が極めて重要であるとともに、合理的な理由が必要であることを強く指摘するが人事院の認識如何。
(2) 勧告時の報告で表明する骨格案の全体像、見直しの方向性が明らかにされたが、来年の成案に向け、個々のメニューを、どのように措置していくかという個別具体については、引き続き、公務員連絡会と十分に交渉・協議を行うことを当然のこととして強く求めるが、人事院の認識如何。

 これに対し、給与局長は次のとおり回答した。
(1) 「社会と公務の変化に応じた給与制度の整備」については具体的な内容はこれから検討していく。必要性、合理性等についてしっかり説明できるように検討したい。
(2) 令和6年勧告期の成案に向けて、皆さんと充分な意見交換をしながら検討を進めていきたい。

 これを受け、森永事務局長は、「来年の成案に向けた個々の検討項目の具体的な措置内容については、来年夏の勧告に向けて、今後とも十分な交渉・協議、合意に基づいて行うことを確認するとともに、少なくとも全世代の職員のモチベーションの維持・向上がはかられるものとなるよう強く求め、骨格案の提案を受け止める」として引き続き十分な交渉・協議、合意に基づいて行うことを改めて確認した。
 最後に森永事務局長が、配分については、職員団体審議官と別途議論するよう求めたのに対し、給与局長がこれを了とした。その上で「物価上昇のもとで実質賃金が低下している現状やコロナ禍の時も必死に奮闘してきた組合員に応え、モチベーションを確保するという観点からも、最終の総裁回答交渉では、われわれの要求を踏まえた前向きな回答を求める」と強く要請し、この日の交渉を締めくくった。