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公務公共サービス労働組合協議会 公務労協
2021年度 公務労協情報 No. 25

2021公共サービスキャンペーン中央集会を開催-6/4

 公務労協は6月4日13時から、東京・連合会館203会議室で「2021公共サービスキャンペーン中央集会」を開催した。

 この集会は、『危機(大規模自然災害、感染症等)に備えたウイズ/アフターコロナ社会の創造と「国民の命と暮らしを守る」公務・公共サービスの実現に向けて』をスローガンとし、東日本大震災をはじめ、この間の頻発する大規模自然災害や、新型コロナウイルス感染症の拡大という社会的危機を踏まえ、公務・公共に従事する労働組合としての社会的責任と役割を果たすための対応を強化するとともに、新型コロナウイルス感染症対策により明らかとなった脆弱な行政体制の再構築に関して、社会的な理解を得ることを目的に開催したものである。新型コロナウイルス感染症対策として規模を縮小したため、会場参加は各構成組織代表者30人に限られたが、YouTubeによるリアルタイム配信により、全国約120人の仲間が視聴した。

 集会に先立ち、「みんなの力で~東日本大震災と公共サービス~」(公務労協作成DVD)を視聴した。東日本大震災から10年が経過する中、震災当時の被災地の様子や、地域住民のライフラインを守るべく尽力した公務員の声を改めて共有することで、継続的な復興支援・これからの防災・減災における公務・公共サービスの重要性について認識を新たにした。

 集会冒頭、主催者を代表して清水公務労協議長は「新型コロナウイルス感染症の感染状況は極めて厳しい状況だ。ワクチン接種についても大規模接種等の対応がとられているが、公務職場における職場単位の接種が進む中で生じる課題や、接種の有無による差別的な対応も懸念される。また、本年は例年より早く梅雨入りし、豪雨災害や台風による河川の氾濫、土砂崩れといった自然災害が懸念される。今年は東日本大震災から10年。引き続き被災地の要望に基づく復興への支援が必要だ。公務労協構成組織は、震災、原発事故を風化させず、公務・公共サービスの担い手として防災・減災への基盤整備及び拡充が求められる。この10年の間、社会・経済・政治の状況は大きく変わり、自己責任論が蔓延し、格差は更に拡大、社会的に孤立に陥る人が増えている。ウイズコロナ、アフターコロナにおける感染防止と経済活動の両立という極めて困難な局面において、公務・公共サービスが国民生活の安全、安心を支える基盤であるという認識に立ち、各構成組織の皆さんが、公務・公共サービスの確立に向けて日々尽力されていることに敬意を表する。引き続き各構成組織、地方公務労協、地方連合会官公部門連絡会の支援、協力をお願いする」と述べた。

代表して挨拶する清水議長

 挨拶に続き、慶應義塾大学の井手英策教授より「ベーシックサービス 当たり前に生きられる社会をめざして」、大阪大学の北村亘教授より「スリムすぎる日本の行政を再構築するために」と題した講演を受けた。

 井手教授は、自身の体験談を交えながら、「今の日本は、特に現役世代に向けての社会保障が貧弱であり、自己責任という風潮が根強い。しかし度重なる自然災害や新型コロナウイルス感染症等により、自己責任すら果たせない経済状況に追い込まれている。増税を行い、税金を正しく使うことで、社会的弱者はもとより、すべての国民の命と暮らし、教育や医療・介護といったベーシックサービスを保証することが重要だ」と述べた。
 北村教授は、公務員の予算執行についての国際比較、各省庁への意識調査結果等を基に、「各省庁の予算は増えているが、執行する職員の人数は減っている。特に自然災害・新型コロナウイルス感染症等の対応に当たる省庁が顕著であり、業務量が増大していることが分かる。非日常的な危機に対応するためには、公務員の数にある程度余裕を持たせることがとても重要だ。人事政策を強化し、働く職員への意識調査を毎年行うことで、「何が不足しているか」という情報を正確に把握していくべきだ」と述べた。

井手英策 慶應義塾大学教授
北村亘 大阪大学教授

 講演後、本集会のスローガンでもある「危機に備えたウイズ/アフターコロナ社会の創造と『国民の命と暮らしを守る』公務・公共サービスの実現に向けて」を踏まえ、加藤公務労協副事務局長の進行のもと井手教授、北村教授による対談を行った。議論の柱として、①新型コロナウイルス感染症が、社会にどのような影響を及ぼしたか、②特別定額給付金の支給についてどう考えるか、③国・地方は今後の危機に対してどう対応するべきか(国・地方の責務と役割とは何か)を設定し、両教授より提言をいただいた。

 ①について、井手教授は「国として、国民の所得・銀行口座等の情報を把握することが困難なことから、迅速な給付金の支給が行えない、といった生活保障インフラの貧弱性が明らかになった」「政府の感染予防と経済対策の方針はちぐはぐであり、その方針が一部の人間によって決定されているといった点に、この国の民主主義に対して大きく危惧をする」と政府の対応を批判した。北村教授は「日本は長期的に大規模な投資が必要な分野であるワクチン開発への投資に着手してこなかった。国際的にみるとワクチンを持っている、持っていないといったことが、国の安全保障にまで影響を及ぼしている。日本はワクチン開発の分野でパワーを持つことができていない。」といった世界情勢に言及した。
 ②について、北村教授は「政府が住民を把握していなかったということが、良くも悪くも明らかになった。ハイテク国家でローテク対応を行っている。情報のオンライン化、データ化にこれまで真剣に取り組んでこなかった結果であり、ガッツで取り組むには限界がある」と指摘した。一方、井手教授はベーシックサービスを例に、一律に現金を給付することとサービスを提供することについて解説し、一律定額給付が効率的でないこと、給付に要した13兆円があればどのようなサービスが提供できるかを示した。また、消費税についても言及。「消費税の逆進性ではなく、『集めた税金をどのように使うのか』という議論をすべき」と訴えた。これを受け北村教授は「国民は、増税に対して赤字国債への返済、財政再建に使われるのではないか、という懸念があり増税に反対する。税を使ってユニバーサルなサービスを提供すべきであり、それを支えるのが公務セクターの役割だ」と続けた。
 ③について、井手教授は「命と暮らしの保障といった観点から、制度をつくるのは国の役割だ。その制度の中での個人の生きづらさに寄り添っていくのが地方の役割」とまとめた。一方で北村教授は地域(コミュニティ)が力を持ちすぎることによる弊害にも触れ「現場で働く職員には、地域の決めたことを追認するだけでなく、一定の方向性をもって、ナビゲーターとしての役割も期待をする」とした。

 最後に現場で働く職員へのエールを求められた北村教授は「行政に近道はない。こうであるべきというものは無いので、現状を把握したうえで、足りないものがあれば堂々と求めていくべき」とまとめた。井手教授は「公共サービスに関わる人であれば、税を増やさない限りサービスが立ち行かなくなることは理解している、と私は信じている。取るべきものを取り、どのように使うのか、どんな社会を作るのかということを、皆さんの中でも議論をしていただきたい」とまとめた。

 終わりに、加藤副事務局長は「公務労協は、結成以来、「良い社会をつくる公共サービスキャンペーン」の取組を継続してきた。今年は、東日本大震災から10年の節目、そして、新型コロナウイルス感染症の拡大、また南海トラフ巨大地震をはじめ、大規模な地震が、近いうちに発生するのではないかともいわれている。公務労協として、国民の命と暮らしを守る公務・公共サービスの実現に向け、必要なときに必要なサービスを提供できるよう、「危機への対応を可能とする行政・公共セクターの創設」を中期的な活動の重点としながら、これまで継続してきた「現場の意見・要望の聴取及び要求化、それに基づく政府要求、政党要請」、そして「危機への対応を可能とする公務・公共サービスに関する実態調査」の実施を中心に、取組を進めていきたい」と公務労協としての決意を述べ対談を終了した。

左から井手教授、加藤副事務局長、北村教授 対談は感染症対策としてついたてを置いて実施

 続いて吉澤事務局長が、集会基調として「公共サービスキャンペーンは、2004年に小泉政権による新自由主義・小さな政府論への対抗軸としてスタートしたものであるが、その後、2009年に公共サービス基本法の制定に結実した。これまでの理念・スローガンは「有効に機能する「ほどよい政府」」であったが、以降この10年の大規模災害等の経過と今日の感染症対策を踏まえ、「現物給付による「大きな政府」」へと見直し、これからの活動を進めていく」と提起した。
 最後に、篠原副議長の「今回の集会を通じ、キャンペーンの成功を目指して、公務労協に集う仲間が明日から行動を始めることを期待したい」という閉会挨拶で今集会を締めくくった。

※今集会についてはブックレットを作成・配布し、各構成組織に広く周知を図る予定。

以  上