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公務公共サービス労働組合協議会 公務員連絡会
2023年度 公務労協情報 No. 11

2023年春季要求事項で幹事クラスが人事院、内閣人事局と交渉-3/7,8

 公務員連絡会は3月7日に人事院職員団体審議官と、3月8日に内閣人事局内閣審議官との交渉を実施し、中間的な回答を引き出した。公務員連絡会は、今後行う書記長クラスの交渉において、より具体的かつ前向きな回答を要求し、回答指定日に向けて交渉を積み上げていくこととした。

<人事院職員団体審議官交渉の経過>
 人事院の大滝職員団体審議官との交渉は、3月7日10時30分から行われた。
 冒頭、高柳副事務局長が中間的な回答を求めたのに対し、大滝審議官は「2月22日にいただいた公務員連絡会からの要求書については、現在最終回答に向け、検討を行っているところである。最終回答は、3月の20日以降にさせていただく予定であるが、本日、私の方からは、現段階における状況について、回答させていただく。」と述べ、次のとおり答えた。

1.賃金要求について
 今年の春闘では、連合は、賃上げ要求について「各産業の『底上げ』『底支え』『格差是正』の取り組み強化を促す観点とすべての働く人の生活を持続的に維持・向上させる転換点とするマクロの観点から、賃上げ分3%程度、定期昇給相当分(賃金カーブ維持相当分)を含む賃上げを5%程度とする。」との目標を掲げ、その実現に向けて取組を進めることとしている、と承知している。
 一方、日本経団連は、「約30年ぶりの物価上昇という特別な状況の下、物価を重要な要素と考え、『成長と分配の好循環』の形成に向けた正念場との認識を企業労使で深く共有しながら、『賃金決定の大原則』に則り、『人への投資』として『賃金引上げ』と『総合的な処遇改善・人材育成』を積極的に検討し、成長の果実を働き手に適切に分配していくことが望まれる。」とした上で、「近年に経験のない物価上昇を考慮した基本給の引上げにあたっては、制度昇給に加え、ベースアップの目的・役割を再確認しながら、前向きに検討することが望まれる。」とする一方、「収益状況がコロナ禍前の水準を十分回復していない企業においては、労使で真摯な議論を重ね、できる限りの対応を期待したい。」としている、と承知している。
  こうした状況の中、3月中旬以降、経営側からの回答・妥結が行われるので、人事院としてもその動向を注視しているところである。

○ 国家公務員の給与について
 国家公務員の給与について、本年も情勢適応の原則に基づき、民間給与の実態を精緻に調査した上で、民間給与との精確な比較を行い、必要な勧告を行うという基本的スタンスに変わりはない。
 官民給与の比較方法については、これまでも必要な見直しを行ってきており、比較対象企業規模を含め、現行の取扱いが適当と考えている。
 諸手当については、民間の状況、公務の実態等を踏まえ、職員団体の皆さんの意見も聴きながら、必要となる検討を行っていくこととしたい。
 再任用職員の給与については、公務における人事運用の実態や民間企業の再雇用者の手当の支給状況を踏まえ、これまでも見直しを行ってきているところである。
 昨年の職員の給与に関する報告においても述べたとおり、人事院としては、定年前再任用短時間勤務職員等をめぐる状況を踏まえた再任用職員の給与について取組が必要と考えており、各府省における人事管理の状況等を踏まえつつ、職員団体の皆さんの意見も聴きながら、引き続き給与の在り方について必要な検討を行ってまいりたい。
 社会と公務の変化に応じた給与制度の整備については、公務における人員構成の変化や各府省の人事管理、民間における給与の状況等を踏まえつつ、制度の様々な側面から一体的に取組を進めることとしている。
 取組に当たっては、昨年の職員の給与に関する報告においても述べたとおり、関係者等の意見を聴取しつつ、本年夏に具体的な措置についての骨格案を示すことができるよう検討を進め、その後更に関係者と意見交換を行った上で、令和6年にその時点で必要な措置の成案を示すことを目指しているところであり、職員団体の皆さんの意見も伺ってまいりたい。 

2.非常勤職員等の雇用、労働条件の改善について
 非常勤職員の任用、勤務条件等については、その適切な処遇等を確保するため、法律や人事院規則等で規定しており、これまでも職員団体の皆さんの意見も聞きながら見直しを行ってきているところである。
 非常勤職員の給与については、平成20年8月に非常勤職員の給与に関する指針を発出し、各府省において適正な給与の支給が行われるよう、必要な指導を行ってきている。この指針は、これまで2度改正し、期末手当及び勤勉手当に相当する給与の支給に関して取り組むべき事項を追加するなどの見直しを行い、現在、これに基づく各府省の取組が進んでいるところであり、引き続き、職員団体の皆さんの意見も聞きながら常勤職員の給与との権衡をより確保し得るよう取り組んでまいりたい。
 非常勤職員の休暇制度等については、業務の必要に応じてその都度任期や勤務時間が設定されて任用されるという非常勤職員の性格を考慮しつつ、民間の状況等を考慮し、必要な措置を行っている。近年の措置を挙げれば、結婚休暇の新設及び忌引休暇の対象職員の要件の削除(平成31年1月施行)、夏季休暇の新設(令和2年1月施行)、出生サポート休暇、配偶者出産休暇及び育児参加のための休暇の新設並びに産前休暇・産後休暇の有給化(令和4年1月施行)などがある。
 今後も、引き続き民間の状況等について注視し、必要に応じて検討を行ってまいりたい。

3.新型コロナウイルス感染症対策について
 新型コロナウイルス感染症への対応については、これまで、感染拡大防止に資するよう、職場における感染拡大防止対策の周知、柔軟な時差出勤のための勤務時間割振りの特例措置、出勤困難な場合の特別休暇の取扱いに関する通知の発出、予防接種を受ける場合等における職務専念義務の免除などの対策を講じてきたところである。現在、政府において進められている同感染症の感染症法上の位置付けの変更に係る検討を踏まえて、職員団体の皆さんの意見も聞きながら、必要な対応を行ってまいりたい。

4.労働時間の短縮及び休暇、休業等について
○ 超過勤務の縮減等について
 勤務時間調査・指導室において、勤務時間の管理等に関する調査を昨年6月から実施しており、客観的な記録を基礎とした超過勤務時間の適正な管理について指導を行っている。
 また、同室の調査や、各府省の令和3年度の整理、分析及び検証の状況の報告を踏まえて実施している各府省人事担当課長等へのヒアリングの機会を通じて、特例業務の考え方や、他律的な業務の比重が高い部署の指定の考え方、業務の状況を踏まえた指定の見直しについて、各府省における運用の統一がより図られるよう指導・助言を行っている。

○ 休暇・休業制度について
 両立支援制度を含む職員の休暇、休業制度については、従来より情勢適応の原則の下、民間における普及状況に合わせることを基本に、適宜見直しを行ってきたところであり、引き続き民間の動向等を注視してまいりたい。
 また、国家公務員の定年が段階的に65歳まで引き上げられ、今後は、介護と仕事との両立支援が一層重要になることから、「令和4年度民間企業の勤務条件制度等調査」において、民間企業における介護のための短時間勤務制度について調査を実施したところであり、今後も社会情勢等を踏まえつつ、制度の改善や環境整備に努めていきたい。
 さらに、両立支援制度の活用については、令和4年4月から各省各庁の長等に対して育児休業を取得しやすい勤務環境の整備に関する措置等を義務付ける改正人事院規則等を同年2月17日に公布・発出しており、これに伴い、平成30年3月に本院が発出した「仕事と育児・介護の両立支援制度の活用に関する指針」を改正した。
 なお、「出生サポート休暇」については、各府省に対して、制度担当者向けのQ&Aを配布し、プライバシーの配慮等について周知啓発や指導を行うとともに、職員向けのリーフレット及びQ&Aを配布し、人事院HPにも掲載した。また、本年2月には、不妊治療と仕事の両立に関するシンポジウムを開催したところである。引き続き、両立支援制度を活用したい職員が取得できるよう、各府省への指導、周知啓発等を行ってまいりたい。

○ 柔軟な働き方に対応した勤務時間制度等について
 フレックスタイム制及び休憩時間制度の柔軟化に当たっては、本年4月の制度改正の施行に向けて、各府省における円滑な実施を支援するため、内規や表計算アプリによる申告様式の例、職員向け周知用資料を作成して各府省に提供した。各府省において適切な運用がなされるよう、引き続き、助言・指導を行ってまいりたい。
 また、公務における勤務間インターバル確保の方策については、昨年1月から学識経験者により構成する研究会を開催し、各府省の運用状況や民間の動向等を踏まえつつ議論を行ってきており、本年度内に最終報告を得たいと考えている。最終報告を取りまとめる過程で職員団体の皆さんから聴取した意見も踏まえ、引き続き、検討を進めていくこととしたい。
 テレワークに関する給与面での対応については、昨年の勧告時報告で述べたとおり、テレワークの実施に係る光熱・水道費等の職員の負担軽減等の観点から、テレワークを行う場合に支給する新たな手当について、具体的な枠組みの検討を進めていくこととしている。検討に当たっては、テレワークに関する民間企業及び公務の動向を引き続き注視しつつ、手当の支給に関する事務負担等にも留意し、職員団体の皆さんの意見も聴きながら、措置内容をまとめていくこととしたい。

5.障害者雇用について
 令和4年6月1日現在において、国の機関全体の実雇用率は2.85%で、全ての機関において法定雇用率(2.6%)を達成しているものの、今後、国の法定雇用率は令和6年4月から2.8%、同8年7月より3.0%に引き上げられる方向で検討されている。
 障害を有する職員が自らの希望や障害等の特性に応じて、無理なく、かつ、安定的に働くことができるよう、平成30年12月にフレックスタイム制の柔軟化等を実現するための人事院規則等の改正(平成31年1月施行)を行うとともに、公務の職場における障害者雇用に関する理解を促進し、障害を有する職員が必要な配慮を受けられるよう、「職員の募集及び採用時並びに採用後において障害者に対して各省各庁の長が講ずべき措置に関する指針」を平成30年12月に発出し、各府省に対して、当該指針に沿って適切に対応することを求めている。
 このほか、厚生労働省と連携して、各府省における合理的配慮事例の情報共有などの支援を行っており、今後とも、必要に応じて各府省への支援を行ってまいりたい。

6.女性公務員の労働権確立について
 人事院としては、公務における女性の活躍推進を人事行政における重要な課題の一つと認識しており、国家公務員法に定める平等取扱の原則、成績主義の原則の枠組みを前提とした女性の参画のための採用・登用の拡大、両立支援、ハラスメント防止対策など様々な施策を行ってきているところである。引き続き、各府省の具体的な取組が進むよう支援してまいりたい。

7.高齢者雇用施策について
 定年の段階的引上げに係る各種制度が各府省において円滑に運用されるよう、引き続き、制度の周知や理解促進を図るとともに、運用状況の把握に努め、必要に応じて適切に対応してまいりたい。
 また、定年引上げに伴う級別定数措置については、昨年12月23日に人事院から各府省に提示した「令和6年度における級別定数措置に関する考え方」のとおり、役降り後の職務や異動先、ポスト数のほか、定年引上げ後の昇格ペースを含む人事運用などに関する各府省・人事グループの検討を踏まえた上で、必要な級別定数を措置することとしている。  

8.福利厚生施策の充実について
○ 心の健康づくり対策について
 心の健康づくり対策については、平成16年3月に発出した「職員の心の健康づくりのための指針」を基本として対処しており、これまでも「こころの健康相談室」の運営など様々な取組を進めてきている。引き続き、各府省と連携しつつ、適切に対応してまいりたい。
 なお、「こころの健康相談室」については、令和4年度からは、より相談しやすい環境の整備に資するため、オンラインによる相談を本院及び一部地方事務局において実施している。令和5年度からは、全ての窓口でオンライン相談に対応できるよう、各地方事務局(所)において準備を進めているところである。

○ ハラスメント防止対策について
 人事院は、ハラスメント防止等の措置を講じるための人事院規則等に基づき、これまで、研修教材の作成・提供や、各府省のハラスメント相談員を対象としたセミナーの開催など、各府省に対する支援を行ってきている。
 また、令和4年12月から同5年1月にかけて、各府省における相談体制等に係る実情・課題を把握するためのアンケート調査を実施し、現在集計中であり、今後、この結果も踏まえて必要な対応を検討していく。
 さらに、「幹部・管理職員ハラスメント防止研修」について、組織マネジメントの観点も反映したより実効性のあるものとなるよう研修内容を見直して令和5年度から実施することとし、研修の具体的な内容の企画等を進めている。
 今後も、各府省のハラスメント相談員を対象としたセミナーを引き続き開催し、研修用教材の改訂等を行うなど、各府省においてハラスメント防止対策が適切に実施されるよう、必要な支援・指導を行ってまいりたい。また、苦情相談を含めた公平審査制度において、パワー・ハラスメントに関する事案についても人事院の役割を果たしてまいりたい。

 回答に対し、高柳副事務局長は次のとおり人事院の見解を質した。
(1) 賃金要求について
 昨年の基本要求の際にも申し上げた通り、私どもの組合員意識調査でも、「昨年より生活が苦しくなった」と回答した組合員が大きく増加し、また生活に対する不満感が強まっているという結果も出ている。物価の高騰は、本年の夏以降に落ち着くとの見方もあるが、こののちも電気料金の大幅な引き上げなどが待ち構えており、組合員の生活は、苦しい環境が続くことは間違いがない。
 昨年の勧告では、若年層に限定した月例給の引上げが勧告され、若年層の賃金改善自体は私どもも評価しているが、このような状況だからこそ、やはり若年から高齢層に至るまで全職員の賃金改善が必要だと考える。この間、たとえ民調の結果として官民較差が僅かであったとしても、再任用職員を含めた中堅・高齢層の職員にも賃金改善原資の配分を勧告した年度もある。このことに十分留意した上で、勧告に至る作業を行っていただきたい。
 関連して、民調に関する作業であるが、現時点でスケジュール的に例年通りのイメージであると認識して良いか?

(2) 「社会と公務の変化に応じた給与制度の整備」について
 これについて、私どもの要求は、今申し上げたような全体的な賃金改善を図ることを基本としながら、中央で働く職員のみならず地方で働く職員にも十分配慮した見直しを行うことを求めるということである。
 その上で、「60歳前後の給与カーブの連続性確保」については、拙速に結論を出すことのないよう求めておきたい。また、地域手当の見直しについては、前回の見直しの際に人事院自身が述べている通り、これ以上の地域間格差の拡大は行わないよう求めておきたい。
 一点質問であるが、本年夏の勧告時には「骨格案」を示すとの予定であるが、この際に、対象となる手当について何らか言及があるものと理解して良いか?

(3) 非常勤職員等の雇用、労働条件の改善について
 昨年の勧告に基づく給与法の改正に伴う非常勤職員の月例給の改定について、昨年11月の国会での質疑応答を踏まえ、昨年4月に遡及して支給するよう各府省で進められたものと考えている。さらにこれに関わって、人事院においても、いわゆる「非常勤職員に関する給与指針」について、改定を行う旨、先日説明を受けた。これについては別途質問や意見を出させていただくが、引き続き、均等待遇の考え方に立って、非常勤職員の処遇改善に努められたい。

(4) 新型コロナウイルス感染症対策について
 今のご説明にもあった通り、勤務時間割振りの特例、出勤困難な場合の特別休暇、防疫等作業手当の支給など、この間人事院が措置してきた各種対応があるわけだが、本年5月8日から感染症法上の新型コロナの分類を5類に引き下げることに伴って、関係する措置を全般的に検討・見直しを行う、という理解で良いか?
 その上で、見直し検討に当たっては、極力早い段階での我々との協議を行うよう求めておきたい。
  
(5) 労働時間の短縮及び休暇、休業等について
 ①適正な勤務時間の管理について
 今、他律部署や特例業務について、各府省における運用の統一がより図られるよう指導・助言を行っているとの報告があった。また、近々、取りまとめられる予定の「テレワーク等研究会」の最終報告でも、各府省における超過勤務の上限に関する運用状況を把握した上で、各府省に対して、 他律部署の範囲について業務の実態に即して課室よりも細かく指定することや、特例業務の範囲を必要最小限とすることについて指導を行うことなど、人事院に対する、より具体的な取組要請が明記されるものと認識している。
 他律部署、特例業務ともに、各府省において大括りの範囲指定が行われているなどの指摘もあり、この点厳格に対応していただきたい。

 ②「テレワークに伴う費用負担」について
 研究会報告において、国による費用負担について、「検討を進めることが適当」と明記されるものと認識している。また、今述べられた通り、テレワークに伴う新たな手当について、人事院において現在検討が進められているものと承知している。通勤手当の在り方、必要となる機器の貸与等の環境整備、あるいは事務処理の問題なども容易に想定されるため、我々とも十分な協議の上、進めるよう求めておきたい。
 
(6) 高齢者雇用施策について
 12月23日の「令和6年度における級別定数措置に関する考え方」あるいは内閣人事局による「定年引上げに伴う新規採用のための特例的な定員措置に関する考え方」でも言及されているが、級別定数や定員の硬直的な扱いを続けてしまえば、中堅・若手職員の昇格などへの影響が生じ、そのモチベーションの維持・向上にマイナスとなる可能性があり、組織の円滑な運営や国家公務員の志望者確保に支障をきたすおそれがあること等が容易に想定される状況にある。そのため、定年の段階的引上げについては、「当該の高齢層職員に関する諸問題」に限らず、これに伴う、「中堅・若年層職員および公務員志望者に関する問題」でもあると捉える必要があると考える。
 そこで我々としても、各構成組織において各府省の人事当局と広く協議を行うよう取組を進めているところである。その結果、来年度以降の級別定数の措置に関わって、何らか各府省を超えた課題があれば、別途人事院に対して申し入れなども行わせていただきたいと思っているので、その点予めよろしくお願いしたい。
 
 これに対し、大滝審議官は次のとおり答えた。
 民調の実施については、追って、ご説明させていただく場を設けたいと考えているが、現時点では、例年通りのスケジュールで検討しているところである。
 「社会と公務の変化に応じた給与制度の整備」について、昨年の勧告時の報告において、今夏に具体的な措置についての骨格案を示すことができるよう検討を進めるとしており、また、具体的な取組事項の一つとして諸手当の見直しも掲げているところ、職員団体の皆さんのご意見も伺いながら検討を進めてまいりたい。
 新型コロナウイルス感染症については、特段の事情が生じない限り、令和5年5月8日から感染症法上の5類感染症に位置付けられる見込み。これに先立ち、令和5年3月13日からマスク着用の考え方について見直しが行われ、新たな考え方が適用されることとなった。これに向けて、職場内の新型コロナウイルス感染症の感染防止に係るマスクの着用の考え方について、3月13日までに通知等を発出する予定である。
 マスクの着用以外の施策(風邪症状がみられる場合等の特別休暇等)については、政府における議論を踏まえて全般的に検討を行い、今後改めて通知等を予定である。

 また、交渉委員からは、①一時金に関わって、勤勉手当にのみ配分することの問題、②通勤手当に関わって、新幹線通勤の問題や橋梁を渡った通勤時の問題、③地域手当に関わって、職員間の納得感の問題や人員確保に影響が生じている問題などが指摘された。また「社会と公務の変化に応じた給与制度の整備」について、早期に骨格案を明らかにすることなどを求めた。

 これに対し、大滝審議官は「いただいたご意見はいずれも要望として受け止めたい。『社会と公務の変化に応じた給与制度の整備』の骨格案についてはできる限り速やかに検討を進めたい」と答えた。

 最後に、高柳副事務局長が「ご回答は承った。本日段階のご回答として受け止めたい。本日のやり取りを踏まえ、14日の職員福祉局長、給与局長との交渉において、再度不明な点を質すとともに、私どもの意見を述べさせていただきたい。また、「柔軟な働き方」関係、新型コロナ関係など、別途の協議を行わせていただきたい。以上2点申し上げて、本日の交渉を終わりたい」と要請し、交渉を締めくくった。

<内閣人事局内閣審議官交渉の経過>
 松本内閣審議官との交渉は、3月8日10時30分から行われた。
 冒頭、高柳副事務局長が中間的な回答を求めたのに対し、松本審議官は「先月20日に提出のあった要求書について、現時点における回答をさせていただく」と述べ、次の通り答えた。

1.2023年度賃金について
 国家公務員の給与を社会一般の情勢に適応させるとの原則の下、人事院勧告制度を尊重することが基本姿勢と考えている。
 給与改定については、人事院勧告も踏まえ、国政全般の観点に立って総合的に検討を行った上で方針を決定してまいりたいと考えており、その際には、皆様とも十分に意見交換を行ってまいりたい。

2.非常勤職員等の雇用、労働条件の改善について
 平成29年5月に、基本給・特別給・給与改定に係る平成30年度以降の取扱いについて各府省間で申合せを行っている。この申合せに沿って各府省で取組みを行った結果、期末手当や勤勉手当に相当する給与について、確実に支給がなされているところ。また、昨年11月の給与法改正の公布に際し、改めて同申合せの周知を図るとともに、基本となる給与の遡及改定を行うなど、改定時期についても引き続き改善に努めるよう、各府省に求めたところ。
 皆様とも、引き続き意見交換を重ねつつ、各府省において申合せに沿った処遇改善が一層進むよう、人事院と連携しつつ、必要な取組を進めてまいりたい。

3.新型コロナウイルス感染症への対応について
 「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」(新型コロナウイルス感染症対策本部決定)や都道府県知事の要請を踏まえ、人事院とも連携しながら、各府省に対しテレワークや時差通勤の活用により、感染拡大防止に向けた取組を依頼してきたところ。引き続き、関係機関と連携しながら、適切に対応してまいりたい。
 また、国家公務員を対象とした職域でのワクチン接種を行っており、オミクロン株対応ワクチンの追加接種についても、昨年10月下旬から実施したところである。

4.労働時間、休暇及び休業等について
 超過勤務縮減のため、各府省等は、「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」等に基づき、取組を行っている。
具体的には、ルーティン業務の廃止・効率化・デジタル化やテレワークで完結できる業務フローの構築、マネジメント改革のための取組のほか、適正な勤務時間管理の徹底のため、勤務時間管理のシステム化や本府省で開始している業務端末の使用時間の記録等を利用した勤務時間の状況の客観的把握を進めている。
勤務時間の状況の客観的把握については、地方支分部局等でも業務に応じた勤務形態の多様性に配慮しつつ、最も効果的な客観把握を計画的に導入することとしている。今後とも、勤務時間などの基準を定めている人事院と連携して超過勤務の縮減に取り組んでまいりたい。
 フレックスタイム制および休憩時間制度については、人事院主催の「テレワーク等の柔軟な働き方に対応した勤務時間制度等の在り方に関する研究会」において柔軟化が提言され、本年1月に改正規則等が公布されたことを踏まえ、導入後の制度の利用を促進してまいりたい。加えて、当該研究会において、勤務間インターバル確保の方策等についても検討されているところであり、オブザーバーである内閣人事局としても報告書の取りまとめに向けて協力してまいりたい。

5.障害者雇用について
 「公務部門における障害者雇用に関する基本方針」に基づき、非常勤職員として採用された方が、一定期間勤務した後に、選考を経て常勤職員となることを可能とするステップアップの枠組を導入するなど、障害者の多様な任用形態を確保するとともに、人事院が策定した合理的配慮に関する指針を踏まえ、障害者雇用マニュアルを作成するなど、障害のある職員が意欲と能力を発揮し、活躍できる環境の整備に取り組んできたところ。また、相談支援事業の実施や講習会の開催など、各府省における障害者雇用の推進に係る支援等に努めているところ。
 今後とも、厚生労働省や人事院等の関係機関と連携しながら、各府省において障害者雇用が適切に進むよう、取り組んでまいりたい。

6.女性公務員の労働権確立について
 男女双方のワークライフバランス及び女性職員の活躍推進については、女性活躍推進法及び「第5次男女共同参画基本計画」を踏まえ、「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」に基づき、女性の採用・登用の拡大、男性職員の育休取得促進等の取組を進めているところ。この結果、令和3年度に新たに育休を取得した男性職員の取得率が34%となり、第5次男女共同参画基本計画に定める成果目標(30%)を上回った。
 引き続き、各府省の取組のフォローアップ等により、男性職員の育休取得を一層推進するとともに、男女問わず全ての職員のワークライフバランスを実現し、女性活躍の動きを更に加速してまいりたい。

7.定年の段階的引上げに伴う各種施策について
 今年4月から2年に1歳ずつ、段階的に定年を引き上げるところ。昨年3月に策定した「国家公務員の定年引上げに向けた取組指針」において、定年の段階的な引上げ期間中に、定年退職者が再任用を希望する場合には、平成25年の閣議決定に準じて、当該職員を公的年金の支給開始年齢に達するまでの間、再任用するものとしている。
 また、定年引上げに当たっては、定年退職者が発生しないことにより、年度ごとの新規採用数が大きく変動することから、組織の円滑な運営や国家公務員の志望者確保に支障をきたすおそれがある。このため、定年引上げ期間中においては、令和6年度から2年に1度、定年退職者が発生しないことによる新規採用への影響を緩和するための措置を行うこととする。

8.福利厚生施策の充実について
「国家公務員健康増進等基本計画」等に基づき、職員の能率増進のため、ハラスメント防止対策に関する研修・啓発の確実な実施や相談体制の整備等の取組を進めているところ。引き続き、各府省における基本計画の実施状況を把握し、必要な措置が講じられるよう取り組んでまいりたい。

9.公務員制度改革について
 自律的労使関係制度については、多岐にわたる課題があることから、皆様と誠実に意見交換しつつ、慎重に検討してまいりたいと考えている。

 これに対して、高柳副事務局長は、次のとおり、改めて春季要求内容に対する認識を説明し、内閣人事局の見解を質した。

(1) 2023年度賃金について
 昨年の基本要求の際にも申し上げた通り、私どもの組合員意識調査でも、「昨年より生活が苦しくなった」と回答した組合員が大きく増加し、また生活に対する不満感が強まっているという結果も出ている。物価の高騰は、本年の夏以降に落ち着くとの見方もあるが、こののちも電気料金の大幅な引き上げなどが待ち構えており、組合員の生活は、苦しい環境が続くことは間違いがない。
 今、「人事院勧告も踏まえ、国政全般の観点に立って総合的に検討を行った上で方針を決定」するとの回答であったが、このような状況だからこそ、やはり若年から高齢層に至るまで全職員の賃金改善が必要だと考える。内閣人事局におかれても、方針決定に当たっては、このことに十分留意し検討するよう求めておきたい。

(2) 非常勤職員等の雇用、労働上の改善について
 昨年11月の給与法改正に関する国会での質疑を踏まえ、各府省に対して、月例給の遡及改定を行うよう求めたとのことであるが、「人事管理運営協議会幹事会申合せ」(平成29年5月)の見直しが必要になると考える。その方向での対応を願いたい。なお、これに伴って、1月30日に、内閣人事局より非常勤職員の給与改定に係る実態把握に関する事務連絡が、2月17日締め切りで各府省に発せられたと思うが、その結果について、何らかの形で共有化願いたい。

(3) 新型コロナウイルス感染症対策について
 ご回答の通り、新型コロナが感染拡大する中で、テレワークや時差通勤の活用、あるいは人事院が措置してきた勤務時間割振りの特例、出勤困難な場合の特別休暇など、各種の施策が実施されている。本年5月8日から感染症法上の新型コロナの分類を5類に引き下げることに伴って、関係する措置の再検討・見直しがあるかとは思うが、これらは言わば「柔軟な働き方」の一環でもあると捉える必要がある。よって、再検討・見直しを行うとしても、全て単純に元に戻す必要はないのではないか、と考える。その点十分考慮して対応されたい。

(4) 労働時間の短縮及び休暇、休業等について
 ①勤務時間の客観的把握について、「地方支分部局等でも業務に応じた勤務形態の多様性に配慮しつつ、最も効果的な客観把握を計画的に導入する」とのご回答であるが、地方支分部局や交代制勤務職場では、やむを得ない理由により勤務時間管理システムの導入を果たしていない職場が少なくないのが実態であり、その点十分に配慮するよう求めておきたい。
 ②ご回答の通り、人事院の研究会「中間報告」に基づき、本年4月からフレックスタイム制および休憩時間制度のさらなる柔軟化が始動するが、基本要求の際にも申し上げた通り、我々の組合員意識調査では、本府省の職員でさえ、現在のフレックスタイム制について、「自分が活用できるかどうか分からない」と15%近くが回答していること、また勤務時間管理システム上の対応が間に合うのか、といった声が各府省の事務部門から指摘されていることを注意喚起しておきたい。
 ③同じく組合員意識調査では、この間、「職場の要員不足」が、組合員の仕事上の最も大きな「不満」項目となっている状態が続いている。また、多くの組合員から柔軟な働き方を拡充するにあたっての課題(前提)」として挙げられているのが、「超勤の縮減」と並んで「人員の確保」となっている。この間、大規模災害が毎年頻発し、またパンデミックなども起きている中で、行政需要は確実に増しており、平時からこれらにも対応できる、余裕ある職場環境・人員の確保が必要であると考える。平成26年に閣議決定された「国の行政機関・定員管理に関する方針」に基づく定員合理化目標数の見直しも含めて、柔軟な対応を求めておきたい。

(5) 定年の段階的引上げに伴う各種施策について
 ご回答の通り、級別定数や定員の硬直的な扱いを続けてしまえば、中堅・若手職員の昇格などへの影響が生じ、そのモチベーションの維持・向上にマイナスとなる可能性があり、組織の円滑な運営や国家公務員の志望者確保に支障をきたすおそれがあること等が容易に想定される状況にある。そのため、定年の段階的引上げについては、「当該の高齢層職員に関する諸問題」に限らず、これに伴う、「中堅・若年層職員および公務員志望者に関する問題」でもあると捉える必要があると考える。
 そこで我々としても、各構成組織において各府省の人事当局と広く協議を行うよう取組を進めているところである。その結果、定年引上げ期間中の定員や新規採用に関わって、何らか各府省を超えた課題があれば、別途内閣人事局に対して申し入れなども行わせていただきたいと思っているので、その点予めよろしくお願いしたい。

 これらに対して、松本内閣審議官は、次のとおり回答した。
(1) 国家公務員の給与改定に当たっては、国家公務員の給与を社会一般の情勢に適応させるとの原則の下、人事院勧告制度を尊重することが基本姿勢。給与改定については、人事院勧告も踏まえ、国政全般の観点に立って総合的に検討を行った上で方針を決定してまいりたいと考えている。
 民間の賃金水準の引上げや物価高騰対策については、経済対策の中でしっかりと取り組んでいくものであるが、各種施策を通じて民間の賃金水準が改善されれば、それを受けて国家公務員の給与水準の改善も期待できると考えている。

(2) 非常勤職員等の雇用、労働条件の改善について、御要望については、承った。どのような形で共有できるか、検討したい。

(3) 新型コロナウイルス感染症への対応については、「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」や都道府県知事の要請を踏まえ、人事院とも連携しながら、各府省に対しテレワークや時差通勤の活用により、感染拡大防止に向けた取組を依頼してきたところ。テレワークや時差通勤の活用などは「柔軟な働き方」の観点からも引き続き重要であり、新型コロナウイルス感染症の分類が5類に引き下げられることに伴う各種通知等の見直しに当たっては、御指摘の点も十分考慮して対応してまいりたい。

(4) 勤務時間の客観的把握について、御指摘については、承った。
 フレックスタイム制の周知については、制度の意義や活用方法の国家公務員全体への浸透を図るための啓発ポスターや活用事例を掲載したチラシを作成し内閣人事局ホームページに掲載するなど、活用の促進に取り組んでいるところ。今般のフレックスタイム制の柔軟化に際しても、制度の活用方法等がより一層わかりやすくなるよう、周知の方法等も含め検討してまいりたい。
 また、各省が独自に導入している勤務時間管理のシステムに係る対応については、原則としては各省で取り組んでいただくものであるが、引き続き内閣人事局としても各府省におけるシステム導入を支援してまいりたい。なお、内閣人事局で構築を行っている勤務時間管理システムについては、来年度半ばまでを目途に新制度に対応したシステム改修作業を進めている。
 職員の要員不足について、厳しい財政状況の中、国民のニーズを踏まえて、新たな行政需要に的確に対応していくためには、既存の業務を不断に見直し、定員の再配置を推進していくことが重要である。その上で、新たな行政課題や既存業務の増大に対応するため、各府省官房等から現場の実情を聴取しつつ必要な行政分野に必要な増員を行っているところ。引き続き、既存業務の見直しに積極的に取り組みながら、内閣の重要政策に適切に対応できる体制の構築を図ってまいりたい。
  
(5) 定年の段階的引上げに伴う各種施策」について近年、若年層の職員の離職が増加している実態もあり、高齢層職員にとどまらず、中堅・若年層職員や公務員志望者にも関わるものと認識し、対応してまいりたい。

 また、交渉委員からは、人員確保に関わって、定員等審査における厳しい査定実態を踏まえ、必要な人員をしっかりと確保するよう要請した。

 最後に、高柳副事務局長は、「ご回答は承った。本日段階のご回答として受け止めたい。本日のやり取りを踏まえ、15日の政策統括官との交渉において、再度不明な点を質すとともに、私どもの意見を述べさせていただきたい」と述べ、交渉を終えた。