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-公務員連絡会は回答を確認し、人勧期闘争への決意固める「声明」を発出-
公務公共サービス労働組合協議会 公務員連絡会
2024年度 公務労協情報 No. 19

政府、人事院から春の段階の回答引き出す
-公務員連絡会は回答を確認し、人勧期闘争への決意固める「声明」を発出-

 公務員連絡会は、委員長クラス交渉委員が3月19日に川本人事院総裁と、22日に河野国家公務員制度担当大臣と2024年春季要求に関わる交渉を行い、春の段階における最終的な回答を引き出した。(資料1、2)
公務員連絡会は、代表者会議を開催し、「これらの回答はいずれも、春季における課題認識を共有するとともに公務員連絡会の意見を聞きながら検討を進めていく姿勢を確認したものの、要求に対して明確には応えておらず、決して十分とは言えない内容である。しかし、人事院勧告を基本とする賃金・労働条件決定制度のもとで、交渉過程において、各課題の現段階における関係当局の考え方や進捗状況を明らかにさせることができたことを踏まえ、春の段階における交渉の到達点と受け止める。今後、人事院勧告期に向け闘争態勢を堅持・強化していく」との声明(資料3)を確認した。
 また、25日を基本に全国統一行動を実施し、今後の取組に対する決意を固める観点から、各構成組織は、その実情に応じた行動を実施することを確認した。
 人事院総裁、国家公務員制度担当大臣との交渉経過は次のとおり。

<人事院総裁交渉の経過>
 川本総裁との交渉は、3月19日14時00分から行われた。
 冒頭、武藤議長は、「2月20日に、2024年の春季要求書を提出して以降、交渉・協議を積み重ねてきた。本日は、この間の交渉経過を踏まえ、総裁から春の段階の最終回答をいただきたい」として、2024春季段階の最終回答を求めたのに対して、川本総裁は、冒頭「本年の民間の春闘は、今月13日の大手企業の集中回答日以降、順次明らかになっている。ここまでの状況をみると、高水準の要求に対し、満額回答がなされている例が見られる。人事院は、今後、大手企業の妥結・回答状況に加えて、中小企業を含めた民間の動向を注視していきたいと考えている。本日は、皆さんからの要求等に対する現段階における人事院の考え方や取組みについて、回答させていただく」と述べたうえで、資料1のとおり回答した。

 この回答に対し、武藤議長は、勧告期を視野に入れて次のとおり見解を示した。
(1) 連合の2024春季生活闘争は、報道にある通り、平均賃金方式の組合の加重平均は16,469円・5.28%となり、1991年の5.66%以来33年ぶりに5%を超えている。また、賃上げ分が明確にわかる組合の賃上げ分は11,507円・3.70%となり、集計を開始した2015春闘以降最も高くなっている。
 このような情勢を踏まえ、本年の勧告に向けて、職種別民間給与実態調査、官民比較などを適切に行い、現場で奮闘する全ての職員の労苦に報いるべく、適切な賃金・労働条件を確保するという人事院の責務を果たすことを強く求めておく。
(2) 「社会と公務の変化に応じた給与制度の整備(アップデート)」について、見直しに当たっては、年齢や勤務地、採用区分などに関わらず、職員各層から理解を得られ、その意欲を引き出すものでなければならない。また、地方公務員、独立行政法人職員、政府関係法人職員等にも広く影響を与える課題であることも認識していただきたいと思う。引き続き、検討に当たっては、公務員連絡会との十分な交渉・協議、合意に基づく対応を強く求めておく。
(3) 長時間労働の是正の問題については、最新の私どもの調査でも、職員の超過勤務は減っておらず、「深夜まで勤務し翌朝に通常出勤したことがある」職員も、本省を中心に相当数に上っている。ただ今、総裁より、「他律部署と特例業務の範囲が必要最小限のものとなるよう指導を行って」いく、とのご回答がありましたが、職員や公務員志望者にとって魅力ある職場づくりのためにも、人事院から改めて、長時間労働の是正に向け、各府省に対する指導を強化するようお願いする。
(4) その他、非常勤職員の処遇改善と雇用の安定、フレックスタイム制や勤務間インターバルなどの「柔軟な働き方」に関する適切な運用など、引き続き、人事院の役割を十分に発揮していただくことを求めておく。

 最後に武藤議長は、「本日の回答は、人事院の春の段階の最終回答として受け止め、組織に持ち帰って確認したい」と述べ、春季要求をめぐる交渉を締めくくった。

<国家公務員制度担当大臣交渉の経過>
 河野国家公務員制度担当大臣との交渉は、3月22日17時15分から行われた。
 冒頭、武藤議長は、「2月20日に要求書を提出し、事務当局と交渉・協議を積み重ねてきた。本日は、この間の交渉経過を踏まえ、大臣から春の段階の最終回答をいただきたい」と、2024春季段階の最終回答を求めたのに対し、河野国家公務員制度担当大臣は、資料2のとおり回答した。

 この回答を踏まえ、武藤議長は次の3点について要請した。
(1) 連合の2024春季生活闘争は、報道にある通り、平均賃金方式の組合の加重平均は16,469円・5.28%となり、1991年の5.66%以来33年ぶりに5%を超えている。また、賃上げ分が明確にわかる組合の賃上げ分は11,507円・3.70%となり、集計を開始した2015春闘以降最も高くなっているところである。
 このような情勢を踏まえ、予期せぬパンデミックや激甚・頻発化する自然災害への対応などに現場で奮闘するすべての職員の労苦に報いるべく、人事院勧告制度の尊重を基本に、適切な賃金・労働条件を確保することを強く求めておく。
(2) 要員確保の課題については、大臣も強調されている通り、業務上目詰まりになっている部分はないか不断にチェックし、それを改善すること、その際にデジタル技術などを存分に活用することは重要だと考えている。そのため、私どもも、各職場で効率化に向け取組を進めて参りたいと思う。一方で、地方支分部局、出先機関を含めた要員の不足は明らかであり、定員管理のあり方全体の検証を求めておく。
(3) ワークライフバランスの推進について、残念ながら、最新の私どもの調査でも、職員の超過勤務は減っておらず、「深夜まで勤務し翌朝に通常出勤したことがある」職員も、本省を中心に相当数に上っている。この4月から、勤務間インターバル制度が導入されることとなっておりますが、改めて、大臣がリーダーシップを発揮され、長時間労働の是正の取組を一層強化していただきたい。引き続き、われわれも現場から取組を強化していく。

 そのうえで武藤議長は、「最後に、春季の最終回答において、大臣からは『今後とも職員団体とは誠意を持った話合いによる一層の意思疎通に努める』との決意が示されたことを確認し、ただ今の回答を、春の段階の政府からの最終回答として受け止め、組織に持ち帰って確認したい」と述べ、交渉を終えた。


資料1-人事院の2024春季要求に対する回答

                            
                   人事院総裁回答
                                                               2024年3月19日

1.賃金の改善について
○ 人事院は、労働基本権制約の代償措置としての勧告制度の意義や役割を踏まえ、情勢適応の原則に基づき、必要な勧告を行うことを基本に臨むこととしています。
○ 俸給や一時金は、国家公務員の給与と民間企業の給与の実態を精緻に調査した上で、その精確な比較を行い、適切に対処します。
○ 諸手当は、民間の状況、官民較差の状況等を踏まえ、必要となる検討を行っていきます。
○ 社会と公務の変化に応じた給与制度の整備については、現下の人事管理上の重点課題に対応するため、①人材の確保への対応、②組織パフォーマンスの向上、③働き方やライフスタイルの多様化への対応のために必要な制度整備に取り組むこととしています。
  要求書をみると、初任給をはじめ通勤手当など多くの要求をいただいています。人事院としては、取組に当たっては、関係者の御意見をお聴きしながら検討作業を進めるという姿勢に変わりはなく、措置内容の具体化に向け、既に議論を始めさせていただいているところです。引き続き職員団体の皆さんの御意見も伺ってまいります。

2.労働時間の短縮、休暇等について
○ 超過勤務の縮減については、引き続き、勤務時間調査・指導室の調査において、超過勤務時間の適正な管理について指導を行うとともに、他律部署と特例業務の範囲が必要最小限のものとなるよう指導を行っていきます。
  また、令和6年度以降、調査対象を増加させるなど、調査・指導を更に充実させていきます。
○ 両立支援、職員の休暇、休業等については、これまで民間の普及状況等を見ながら改善を行ってきました。引き続き、職員団体の皆さんの御意見もお聴きしながら必要な検討を行っていきます。
○ 公務における勤務間のインターバル確保については、昨年の勧告時に報告したとおり、国家公務員についても早期に取組を推進していく必要があるため、本年4月に、勤務間のインターバル確保に関する努力義務規定を人事院規則に設けることとします。各府省の参考となるよう「11時間」を確保の目安と示すことも検討しています。
  令和6年度以降も各府省の実態等を踏まえ、必要な取組を検討していきます。

3.非常勤職員の処遇改善について
○ 給与については、非常勤職員の給与に関する指針に基づく各府省の取組が進んでいます。昨年4月には、給与法等の改正により常勤職員の給与が改定された場合には、非常勤職員の給与についても常勤職員に準じて改定するよう努める旨を追加しました。指針に基づく各府省の取組状況については、定期的にフォローアップし必要な指導を行うなど、引き続き、常勤職員の給与とのバランスをより確保しうるよう取り組んでいきます。
  その他の非常勤職員の任用、勤務条件等についても、その適切な処遇等を確保するため、法律や人事院規則等で規定しており、これまでも職員団体の皆さんの御意見もお聴きしながら必要な見直しを行ってきているところです。なお、令和5年の勧告時報告において言及した「非常勤職員制度の運用等の在り方の検討」については、各府省の実態や関係者からの御意見等を踏まえつつ、公募要件の在り方を含め適切な運用等の在り方について検討を進めているところです。

4.高齢者雇用施策について
○ 定年の段階的引上げに係る各種制度が各府省において円滑に運用されるよう、引き続き、制度の周知や理解促進を図るとともに、運用状況の把握に努め、適切に対応します。
○ 定年引上げに伴う給与制度の在り方については、今後とも、民間企業における状況等や公務の人事管理の状況等を踏まえ、職員団体の皆さんの御意見もお聴きしながら、60歳前も含めた給与カーブの在り方について検討を行っていきます。
○ 再任用職員の給与についてですが、近年、高齢層職員の能力や経験の活用が進められてきている中で、公務上の必要性により再任用職員の人事運用の変化が生じてきています。多様な人事配置を可能とし、その活躍を支援するため、社会と公務の変化に応じた給与制度の整備の一環として、再任用職員に支給される手当の範囲について拡大することを検討しており、各府省における人事管理の状況を踏まえつつ、職員団体の皆さんの御意見もお聴きしながら必要な検討を行っていきます。

5.障害者雇用について
○ 人事院は、平成30年度に、障害者の方の柔軟な働き方ができるようフレックスタイム制の柔軟化等を実現するための人事院規則等の改正を行ったほか、各府省が採用時や採用後に適正な運用をすることができるよう指針を発出しています。
  このほかにも、厚生労働省と連携して、各府省における合理的配慮の事例共有などの支援を行っており、今後とも、必要に応じて適切に対応していきます。

6.女性の活躍推進について
○ 人事院としては、公務における女性の活躍推進を人事行政における重要な課題の一つと認識しています。人事院としても、これまで柔軟な働き方に対応した勤務時間制度等の整備、超過勤務の縮減、仕事と生活の両立支援策の拡充やハラスメント防止対策など、男女ともに働きやすい勤務環境の整備を積極的に進めており、女性の採用・登用の拡大に向けた様々な施策を行ってきているところです。
  今後とも、各府省の具体的な取組が進むよう支援していきます。

7.健康・安全確保等について
○ 人事院は、ハラスメント防止等の措置を講じるための人事院規則等に基づき、これまで、研修教材の作成・提供や、ハラスメント相談員を対象としたセミナーの開催など、各府省に対する支援を行ってきています。
  人事院としては、今後も、ハラスメント防止対策が適切に実施されるよう、必要な支援・指導を行っていきます。
  また、苦情相談を含めた公平審査制度において、パワー・ハラスメント事案に取り組み、人事院の役割を果たしていきます。


資料2-政府の2024春季要求に対する回答

                    
                 国家公務員制度担当大臣回答

                                                               2024年3月22日

○ 公務における優秀な人材の確保のため、国家公務員の働き方改革を推進し、職員がやりがいをもって、その意欲と能力を最大限に発揮し活躍できるよう取組を進めています。
  引き続き、現場の実情を含め、皆様からもご提案をいただきながら、前に進めますので、皆様方のご協力をお願いします。

○ 令和6年度の給与については、人事院勧告を踏まえ、国政全般の観点から検討を行い、方針を決定したいと考えています。その際には、皆様とも十分に意見交換を行いたいと考えます。

○ 非常勤職員については、引き続き、適正な処遇が確保されるよう、関係機関とも連携して、必要な取組を進めてまいりたいと考えています。

○ 自律的労使関係制度については、多岐にわたる課題があることから、皆様と誠実に意見交換しつつ、慎重に検討してまいりたいと考えています。

○ 最後になりますが、今後とも職員団体とは誠意を持った話合いによる一層の意思疎通に努めてまいります。


資料3-2024春季生活闘争に関わる公務員連絡会の声明

                           
                      声  明

1.公務員連絡会は、19日に人事院総裁と、そして本日国家公務員制度担当大臣と、それぞれ交渉を持ち、2024年春季要求に対する回答を引き出した。

2.2024春季生活闘争において、連合各構成組織・各組合は、連合の「賃上げ分3%以上、定昇相当分(賃金カーブ維持相当分)を含め5%以上の賃上げ」を目安とする方針のもと、従来を大幅に上回る要求をもって労使交渉に臨んだ。
 3月15日時点の連合の集計では、平均賃金方式の771組合の加重平均は16,469円・5.28%となり、1991年(5.66%)以来33年ぶりに5%を超えた。賃上げ分が明確にわかる654組合の賃上げ分は 11,507円・3.70%となり、集計を開始した2015闘争以降最も高くなっている。また、771組合のうち、300人未満の中小組合358組合の加重平均は11,912円・4.42%、うち賃上げ分が明確にわかる268組合の賃上げ分は8,388円・2.98%となった。さらに、有期・短時間・契約等労働者の賃上げ額は、加重平均で、時給71.10円・月給15,422円と、昨年同時期を大幅に上回っている。

3.このような中、公務員連絡会は連合に結集し、「全職員に対する賃金の積極的引上げ」を始め、公務・公共部門で働くすべての労働者の待遇改善をめざし、2024春季生活闘争を闘ってきた。2月20日の要求書提出以降、3月4、5日の幹事クラス交渉、12、13日の書記長クラス交渉を精力的に積み上げてきたところである。また、3月12日には、全国からの参加者を得て、中央行動を実施してきている。交渉過程において、公務員連絡会は、賃金引上げのほか、「社会と公務の変化に応じた給与制度の整備」の検討状況、非常勤職員の処遇改善、超過勤務の縮減と要員の確保等の課題を中心に、現段階の考え方を質してきた。

4.委員長クラス交渉委員による最終交渉で、人事院総裁からは、①労働基本権制約の代償措置としての勧告制度の意義や役割を踏まえ、情勢適応の原則に基づき、必要な勧告を行う、②「社会と公務の変化に応じた給与制度の整備」について、措置内容の具体化に向け、引き続き職員団体の皆さんの御意見も伺う、③超過勤務の縮減について、他律部署と特例業務の範囲が必要最小限のものとなるよう指導を行う、④非常勤職員の給与について、常勤職員の給与とのバランスをより確保するともに、任用、勤務条件等について、適切な処遇等を確保するよう取り組む、⑤再任用職員の給与について、多様な人事配置を可能とし、その活躍を支援するため、支給される手当の範囲について拡大することを検討する、等の回答があった。
 また、国家公務員制度担当大臣からは、①職員がやりがいをもって、その意欲と能力を最大限に発揮し活躍できるよう取組を進める、②令和6年度の給与については、人事院勧告を踏まえ、国政全般の観点から検討を行い、方針を決定する、③非常勤職員については、引き続き、適正な処遇が確保されるよう、関係機関とも連携して、必要な取組を進める、④今後とも職員団体とは誠意を持った話合いによる一層の意思疎通に努める、等との回答があった。

5.これらの回答はいずれも、春季における課題認識を共有するとともに公務員連絡会の意見を聞きながら検討を進めていく姿勢を確認したものの、要求に対して明確には応えておらず、決して十分とは言えない内容である。しかし、人事院勧告を基本とする賃金・労働条件決定制度のもとで、交渉過程において、各課題の現段階における関係当局の考え方や進捗状況を明らかにさせることができたことを踏まえ、春の段階における交渉の到達点と受け止める。今後、人事院勧告期に向け闘争態勢を堅持・強化していく。

6.引き続く物価高騰のもと、組合員の不満感が増している中、2024年度賃金については、好調な民間春闘の妥結状況を踏まえつつ、全職員の生活改善に向けた給与勧告の実現をめざす。「社会と公務の変化に応じた給与制度の整備」については、本年の勧告において、具体的な措置内容が示されることを踏まえ、交渉・協議を強化する。
 臨時・非常勤職員については、この間の要求により、月例給の遡及改定等の改善が図られてきているが、さらなる処遇改善と雇用安定を求め取組を強化する。
 パンデミックが一定の落ち着きを見せる一方で、本年も年初から能登半島地震が発災するなど、公務・公共サービス従事者に発揮すべき役割がますます増大していること等を踏まえ、中央・地方ともに、必要な人員の配置を求める。
 長時間労働の是正については、改めて、政府、人事院の果たすべき役割を追求するとともに、労使間での協議を強化し、実質的な改善を図る。
 議論の「中間とりまとめ」が公表される予定の人事行政諮問会議については、引き続き、その動向を注視する。

7.公務員連絡会は、国民の安心・安全の確保に向け、公務・公共サービス従事者として十分な役割と責任を果たしていく。また今後の、中小・地域民間労組、独立行政法人等関係組合の交渉強化に連帯し、すべての労働者の賃金引上げを実現するため、連合、公務労協に結集し、全力をあげる。

                                                  2024年3月22日
                                                  公務員労働組合連絡会